角落で、下手が二枚落ち定跡を応用して駒組する指し方があります。
通常は、「4五歩止め」とか呼ばれます。正式な名称は無いと思います。
角落の通常の定跡では、下手は位負けしない事を優先するために、自分の
角道も止める事が普通です。
それで不満ではありませんが、積極的に角道を止めずに戦う指し方もあります。
二枚落では、本定跡とされている「3歩突ききり」「銀多伝」ともに、4五歩
の位を確保して、角道を通す事で上手の左辺の2枚の金銀を固定させます。
もし、他の駒落でも同様に上手の左辺の2枚の金銀を守りに固定できれば
非常に有利に戦えるという発想はあります。
これが実現出来るのは、上手に角が無い場合です。
現実には、角落しかありえません。
この有効な戦略が、本定跡となっていない理由は、二枚落のように上手に
攻撃力がない手合いでは、下手は玉を堅く固める必要がないので、4五歩
の位の確保を囲いより優先出来る事。
上手の金銀2枚を守備に固定できれば、その後の下手の囲いが薄いものでも
十分であること。等があります。
角落の場合は、上手の左辺の駒を守備に固定してもまだ右辺の駒で攻撃力があります。
また、下手が位の確保を優先させている間に上手が何かを主張する事が出来ます。
上手が何かの対応をする筈ですが、それが限定されないので定跡化されていないと思えます。
下手が角道を止めない指し方として、5五歩を交換して5六銀とする下手
中飛車が有力とする意見が多いです。
上手は向飛車から飛先をのばします。下手は2六歩は受けるべきと
思いますが、それを4五歩確保に使用しました。
4五歩と角道で上手の左辺での発展性は、極めて悪くなりました。
この部分に関しては、下手の成功例です。
上手が1三桂とする時点では、相当な作戦負けです。
ただ下手は、上手向飛車に慣れていないのでしょう。
上手は攻撃は、右辺の金を使用するのが普通です。
将来的には飛を含めて多くの駒が右辺に移動して来ます。
その事を想定しない下手は、上部に弱い舟囲いで2段目に玉を囲いました。
角道を通した手数の短い囲いですが、上手の攻めてくる所が一番の弱点であると
いうまずい囲いでした。
結果的には、この囲いの弱点を攻められて、攻め合い負けになりました。
序盤の作戦勝ちを、玉の囲いの選択間違いで失った事になります。
この点を修正すれば有力な作戦です。
逆に上手は、下手の4五歩と角道の確保作戦を予想しない序盤でした。
対応策に工夫がかけています。