「秘密」について
東野圭吾は、ミステリの登龍門といわれる江戸川乱歩賞を「放課後」 で受賞デビューして、いわゆる狭議の本格ミステリを多く書いて います。 高い水準の作品群は、このジャンルの作者としては多作に属します。 しかし全くレベルが落ちない事は脅威です。 作品数が増えるにつれて、狭議の本格ミステリから広義の本格ミス テリへ執筆は広がり、そして本格というジャンルにとらわれない自由 な発想で作品を発表するようになりました。 「秘密」はその頃に書かれた作品のひとつです。 広義の本格ミステリには入らないとの意見もありますが、作品全体を 通しての謎の設定もありますし、全体に評価は高い作品です。 作者は、本作で「日本推理作家協会賞」を受賞しています。 最近は事情も変わっていますが、「江戸川乱歩賞」「日本推理作家協 会賞」「直木賞」を三賞・三冠と呼んでいました。 正確には「直木賞」が本格ミステリを非常に嫌う選考であり、ミステリ をこの様に呼ぶとジャンルを固定する傾向になり問題はあります。 いずれにしても、この三冠作家は少ないです。東野圭吾は、本書の後に 「容疑者Xの献身」で直木賞を受賞して三冠になりました。 本書は、広義の本格ミステリにSF的な設定を持ち込んで、親子と夫婦の 不思議な関係を描いています。 妻と娘がバスの事故にあって、助かったのは娘のみでした。 ところが、娘に宿っていたのは妻の人格でした。 やがて、娘の姿の中に同居する妻と娘の時間的バランスが崩れて行って ・・・やがて。 ミステリは、全ては書けません。 本書は今も文庫で現役ですが、初出ハードカバーには仕掛けがありま した。持っていて仕掛けにまだ気づいていない人もいるかと思います。 最近では、本とカバーが一体化しています。 カバーを取って本の表紙を見ない人もいるようです。 そこに手がかりを描いても見もしない人が・・・・・。
台本について
私が保有している台本は、決定稿です。 題名「秘密」 原作「東野圭吾」 映画「東宝系 1999年9−10月」 制作「TBS」 脚本「斉藤 ひろし」 監督「滝田 洋二郎 主なキャスト 杉田藻奈美・直子: 広末涼子 杉田平介: 小林薫 杉田直子: 岸本加世子 梶川文也: 金子賢 梶川幸広: 大杉漣 橋本多恵子: 石田ゆり子 相馬春樹: 伊藤英明 台本の特徴は、妻・杉田直子の微妙な二役でしょう。 台本の台詞では、「(OFF)」という記入で分けています。
ミステリ映画について
本格味のあるミステリのドラマ化は制約があり難しいとされています。 謎と伏線をいかにはるか?。一度見た人が、いわゆるネタばらしをし た時にも映像を見るに耐えるか。 原作は活字ですが、映像化に向いているか?。 原作に問題部がないか、映像でのモチーフはいかにするか・・等です。 本書は広義の本格ミステリですので、謎の解明は原作通りで自然に ストーリーに含まれるので問題ないでしょう。 妻と娘の人格の入れ替わりが全体での比率で適当かどうかの問題が あります。 ただ、ストーリーが後半で決定的場面になりますので、あまり悩む事は ないでしょう。 映像でのモチーフは、活字と異なり妻の人格をもつ娘と夫とのふたり きりの場面は映像ではかなり印象的となります。その場面を中心に すれば自然とモチーフになるでしょう。 ミステリの映像化では作者が1カット登場する趣向が、常識化してい ます。本映画でも東野圭吾は大学講師役で講義を行っています。
原作がある場合はそれも考慮します
色々な呼び方があり、少しずつ意味は異なります
ここではやや影の部分といえるシナリオを読みます