「点と線」について
昭和33年に出版された松本清張の「点と線」は非常に評価の分かれて いる作品です。 事実としては、非常に多くの版数を重ねたベストセラーでこれ以降 作者は多数の著書でベストセラー作家になった事です。 松本清張の代表作かどうか、社会派の出発作か、推理小説としての 完成度はどうか、動機の社会性はどうか、リアリズムかどうか等の 事は個々の解釈であり一定したものではありません。 所が過度の評価とそれに反対する意見が、作品と著者と時代性を忘れ てひとり歩きするという不幸な扱いを受けています。 最初とか画期的とか名作とかの主観的評価をむやみに使い過ぎます。 作品の大ヒットを受けて直ぐに映画化されました。 映画版:昭和33年:「点と線」 監督:小林恒夫 脚本:井手雅人 出演者:南廣・加藤嘉 ・山形勲・高峰三枝子 映画は同時代でもあり、原作に近いオーソドックスな内容と言えます。 テレビドラマは、2007/11/24に第一部・2007/11/25に第二部という大 作に作られています。 内容を大幅に変えた事、「ドラマ化不可能と言われていた」という 不思議なキャッチフレーズが付いていたり、およそ松本清張作品とも 推理小説とも言えない内容にしてしまっていながら、それらを表面に 出した事など大きな疑問を抱えました。 それが映像的に高い評価された事から、小説自体も再度不幸な評価が むしかえされる事があったようです。
台本について
私が保有している台本はテレビドラマの第1部の準備稿の 「松本清張ドラマスペシャル 第1部」です。 準備稿のせいでしょうか?どこにも「点と線」の記載はなしです。 キャストは、鉛筆書きです(一部のみ) 題名:「松本清張ドラマスペシャル 第1部」:2007/11/24放映 原作:「点と線」松本清張 脚本:竹山 洋 演出:石橋 冠 主なキャスト 鳥飼重太郎: ビートたけし 三原紀一: 高橋克典 博多警察署 永井捜査課長: 平泉 成 同 田中捜査係長: 小林稔侍 同 中西刑事: でんでん 警視庁捜査2課 寺崎捜査課長: 名高達男 同 笠井捜査係長: 橋爪 功 同 児島刑事: 金児憲史 お時(桑山秀子):原沙知絵 佐山憲一 産建省課長補佐: 大浦龍宇一 中尾正 産建省推進課長: 本田博太郎 桑山ハツ: 市原悦子 石田芳男 産建省開発課長: 竹中直人 安田亮子: 夏川結衣 安田辰郎: 柳葉敏郎
小説「点と線」と
ドラマ・「点と線」について
原作は博多署の鳥飼刑事と警視庁の三原刑事の二人の捜査過程を 描いています。 ドラマ化に際して、博多署の刑事が東京等に休暇で出掛けて捜査 するという最近のサスペンスドラマの悪影響を受けた、非現実な 設定に変えられています。 映像のはやりに従い原作と著者のリアリズム指向を無視する事に なりました。 読んでいない人も知っている「東京駅のプラットホームの1日に 4分のみ間のホームに列車がない時間」は話としては面白いの ですが、それを知っていたから絶対犯人だと言う鳥飼刑事の主張 の非現実設定はドラマとしてもひどいでしょう。 元々原作でも、被害者2名をその時間にその場所に並んで立たせ る事の実現性可能性が不足していると指摘があります。 1日1回繰り返される事を知っているから犯人と考える警察が 存在したらそれは恐ろしい事です。 飛行機トリックの問題点・社会的動機への偏向・複数犯の必要 性等ミステリ的な疑問は、すべて持ち越しています。 時代性を含めるとどうかは、殆どの人は実感はないでしょう。 三原と鳥飼は、もっと長い作品でも登場しますが、ドラマでは これ1回だけとなっています。 これもどうでもよい事なのでしょう。 著者名を表に出した割りには、その意志とはかけはなれた 最近の2時間サスペンス的な作り方をした事に映像化の限界を 見た気がします。
原作がある場合はそれも考慮します
色々な呼び方があり、少しずつ意味は異なります
ここではやや影の部分といえるシナリオを読みます