「風の日にララバイ」について
樋口有介 原作の「風の日にララバイ」は、1990/11に出版されて、 1991/08に、「殺意の誕生石 娘にスターサファイア 死体にダイヤ モンド!」という長い題名でテレビの2時間サスペンスドラマ化され ました。 決定稿の台本には、「風の日にララバイ(仮題)」となっています。 仮題とは言え大きく変わっています。 小説「風の日にララバイ」は、主人公・佐原の1人称視点で全て描か れています。ミステリでは、ハードボイルドスタイルという方法です。 主人公がハードボイルドかどうかは微妙ですし、内容も地味な捜査物 です。主題は、ミステリとしての犯人探しとアリバイトリックですが、 それ自体単独で支える作品ではありません。 主人公の性格、特に女性との関係・関心と見方と見られ方を描く事 (15才から74才)と、ハードボイルドスタイル特有のしゃれた会話が 大きな比率です。美しい女性が登場しすぎますが・・。
台本について
私が保有している台本は決定稿の「風の日にララバイ(仮題)」です。 放映時に題名が変更された事は先に書きました。 題名:「風の日にララバイ(仮題)」 放映時題名:「殺意の誕生石 娘にスターサファイア 死体にダイヤ モンド!」1991/08放映 原作「風の日にララバイ」樋口有介 脚本:岡田正代 演出:小谷承靖 主なキャスト 佐原旬介:鹿賀丈史 朝倉文子:梶芽衣子 沢村 萌:佐野量子 南 礼子:一色彩子 正木耕市:阿藤 海
「風の日にララバイ」とドラマ「殺意の誕生石 娘にスターサファイア 死体にダイヤ モンド!」について
長編作品の映像化では、大幅な省略が必要です。本作も同様ですが 場面内の省略は少なく、エピソード単位で削っています。 そして、主人公の視点と感情は、視点のみになり感情は一部が会話 に置き換わっています。 ハードボイルドスタイルの会話を活かす為に、原作の会話部分を かなりそのままに、台本でも移しています。 これは、面白い台本化と思います。 それでは、感情や長い説明風の会話はというと、過去のフラッシュ バックの映像で表しています。映像でしばしば使用される手法です。 謎のキーポイントである、背格好の類似した二人の人物・芥子色の コートは、映像の方が自然な伏線が張れます。 エピソードを省略せざるを得なかったですが、その影響は複数の 動機面が一部省略になった事・主人公と女性との関係・関心絡みが 描ききれない事があります。 どちらも、時間の制約でやむを得ないのですが、結果として何の為 に登場したのか分からない女性が生じた事があります。 その最大は、主人公のアシスタント的な沢村萌でしょう。 ドラマでは、主人公的な程に登場しますが必要性が希薄になりま した。 映像化では原作と離れる事は仕方がないのですが、結果的に時間の 許す範囲で原作に忠実な映像化になった事は、むしろ意外です。 樋口作品は、映像化に向いているような気がします。 1人称の継続的捜査を堅実に描いていますし会話部も適度ですから。 本作では、登場人物の年齢が重要な面があります。 キャストの20年弱の現在と当時の差は、年月の経過を感じさせ られます。
原作がある場合はそれも考慮します
色々な呼び方があり、少しずつ意味は異なります
ここではやや影の部分といえるシナリオを読みます