檻の中の妖精

「檻の中の妖精」について

2011年死去の団鬼六は、途中から官能小説特に、SM系の小説を
書き始めました。
本人によれば、未開拓の分野で競争者がいなかったと言う理由です。

これも本人によれば、今ではクラシックスタイルと言っています。
確かに、現在は種々のバイオレンス系列の小説が増えており、競争者
は溢れていますし、特徴を出す事が小説から離れてしまう結果になり
かねません。

本作家は自身の作を、ソフトスタイルといい、官能をひとつの軸に
おき、そのほかに悪漢もの・ロワール要素や、戦前・戦時の貴族や
憲兵への悪行を描きます。
また、現代に近いものでは、社会・企業の風刺・諧謔もあります。

しかし、そうは言っても作品の発表先や、小説と同時に映像化の原作
としてのイメージが、小説及び作家のイメージとして固定されました。

本作は、戦中を舞台に、豪華な生活と身分に明け暮れる貴族階級と
権力を悪用する警察・軍・憲兵と、拷問による自白を描きます。
その細部に、官能・SMが登場するのは作者のスタイルです。

小説的には、官能・SM部分の比重や置き換えで、プロレタリア小説
にもなれる物ですが、出発が「未開拓の分野で競争者がいない」
という理由ですから、現実にはありえない選択です。

登場人物の悪漢役に、異常趣味性格者を配すれば狙い通りに進行
します。

台本について

題名:「檻の中の妖精」:台本:準備稿
原作:「檻の中の妖精」:団鬼六
脚本:松岡清治
監督:小原宏裕

実にシンプルな台本です。

主なキャスト
菊島貴美子・菊島財閥夫人:谷ナオミ
田岡啓太・新米憲兵:
村山男爵・異常性格者:
西崎中尉・憲兵:
井上仙之助・歌舞伎役者:
加代・村山の妾:
浪路・芸者:
下島・社会活動家:
菊島善之助・菊島財閥会長:

映画「檻の中の妖精」について

日活が、ロマンポルノを制作しはじめましたが、基本的にオリジナル
台本だと思っていました。
初期は原作になりそうな小説も少ないし、原作が表面に出る事は、
少なかったですから。

例外は、団鬼六作品で、映画に「団鬼六」という原作者名が大きく
表面に出されました。

需要と知名度とのバランスの結果と思うが、それでも台本的には、
オリジナル部が主体と思っていました。

映画には目標設定があり、それに合う原作が丁度あるとは思え
なかったのです。

ただ、一般的にはどうかは不明ですが、本作に限れば、原作と
映像の部分に重なる部分が非常に多く、予想外でした。

長編を1時間あまりの映画にするには、省略が必要ですし映画
制作側で加えたい部分も多いでしょう。

それでも、なおほぼ原作の通りにストーリーが出来ています。
個人的には、かなり驚きです。

なぜならば、映画の視聴者は原作に近く作られていても、主に見る
のは、官能・SM部分だと予想するからです。

たぶん、原作の映像化というよりも、映像化出来る原作だったと
ので、台本が作成しやすかったと推測するのは、どうでしょうか。

原作がある場合はそれも考慮します

色々な呼び方があり、少しずつ意味は異なります

ここではやや影の部分といえるシナリオを読みます