大誘拐

「大誘拐」について

原作者の天藤真は、マニアには評価の高い作者ですが、一般の知名度
はそれ程ではなかったようです。

本格ミステリが中心ですが、ちょっと変わった視点で描く作品が多い
です。
ユーモア派とする読者も多いです。

「大誘拐」は、日本推理作家協会賞を受賞した代表作とされています。
誘拐を犯人側と、捜査側から描きますので、本格ミステリというよりも
サスペンス要素が強いです。
ただし、どたばたの影に隠れた動機や、誘拐ならではの取引方法や
意外な展開が満載です。

誘拐の規模が大きい、いや正確には誘拐された刀自(本家の未亡人)
が身代金を引き上げさせました。

ニュースが報道される中での、劇場型誘拐事件という設定も重要です。
見た目の外観のスケールと、内部の詳細の決め細かい謎と工夫の積み
重ねが、雄大な作品にしています。

天藤真の作品には、本当の悪人が少ないという特徴があります。
本作についても、同様の事がいえます。
登場人物の誰も、憎めない人物の集まりで、安心して楽しめる要素が
あります。

この作者の作品のユーモアには、ブラックユーモアや諧謔ともいえる
皮肉が含まれていると考える人もいます。
今時、先祖代々の膨大な土地の所有という設定や、マスコミ・国会の
対応を描く部分等は、報道や国会に対する皮肉を感じる人もいると
思います。

とにかく、隠す部分が少なく、双方の側からの並行した描かれかたは
サスペンス映画にとっても魅力的であり、かなり原作に近い映画化が
行われました。

台本について

題名:「大誘拐 rainbowkids」:台本:決定稿
   1990/02
原作:「大誘拐」:天藤真
脚本:岡本 喜八
演出:岡本 喜八
主なキャスト
戸波健二:風間トオル
秋葉正義:内田勝康
三宅平太:西川弘志

柳川とし子刀自:北林谷栄
柳川国二郎:神山繁
  可奈子:水野久美
  英子:田村奈巳

井狩大五郎(警察本部長):緒方拳
佐久間(警察刑事部長):竜雷太
鎌田(捜査一課長):常田富士男

くーちゃん事 中村くら:樹木希林
吉村紀美:松永麗子
串田老人:天本英世
邦子:岡本真美
安西(運転手):奥村公延
高野(へり・パイロット):本田博太郎

和歌山テレビ 東社長:中谷一郎
和歌山放送 吉井社長:藤木悠
長沼アナ:松澤一之
田辺警察署長:大木正司
龍神村老駐在:山本廉

映画「大誘拐」について

原作と、岡本喜八の相性が良いのか原作が生きた内容になったと
思います。
お互いを知り尽くしている、とし子刀自と恩人として助けようと
する井狩との駆け引きが魅力です。
勿論、井狩はとし子刀自が誘拐犯を仲間にして動かしている事は
事件中は知らないのですが・・。

本作・映画ともに、大胆な背景・設定に目がゆきがちですが、実は
細部のきめ細かい伏線と駆け引きと展開がポイントです。
最初から最後まで驚きが続くのは、原作の特徴でありその映像化
でも引き継がれています。

作品の年代を見て、かなり前にやや驚きです。
同時にキャストに、物故者が多い事も同様です。

実は、別の映画に前例があると言う指摘がありました。
誘拐された老婦人が先頭になり、捜査側とやりとりするコメディ
らしいですが、私は見ていません。
後日に、原作者がその映画を観て全く異なる事を確認した旨を
書いています。
たぶん、設定の一部のみにとらわれた指摘だったのでしょう。
本作はそこは、極一部で、細部の緻密な構成や謎の連続、そして
最後まで隠された謎までが全て、巧妙に組込まれている所が
最大の傑作のゆえんです。

原作がある場合はそれも考慮します

色々な呼び方があり、少しずつ意味は異なります

ここではやや影の部分といえるシナリオを読みます