準急ながら

「準急ながら」について

鮎川哲也は、復刊・増刷等の機会に、改稿が多い作家と
されています。
微妙な、論理的本格ミステリ作品という事もありますが、時刻表・
交通手段・時代背景・小道具・人々の生活感覚等の、他面で先入観
や知識がたえず、変わる事も影響しているでしょう。

上記のいくつかは、小説の背景の時代に合えば、それでよしとする
事ですが、時代の変化と共に生活感覚が変わり、論理的思考にも
影響する事も多いです。

それは、仕方がないとする人が多く、それが現実的です。
鮎川も根本的な変更は、間違い・勘違い以外は少ないです。
ただ、読者の時代背景知識で影響される事は避けられません。

長編は2時間では短すぎるので、枝狩の必要があります。
ノスタルジーを表に出す場合を除いて、連続ドラマでは、時代は
撮影等の都合から現在に近くしたい。
長い作家生活の作品群を、短い期間で起きた事件にする必要がある。
シリーズ化出来やすいキャスティングにしたい。
原作に忠実に作るメリットは少なく、デメリットは多数あります。

「刑事・鬼貫八郎」シリーズは、そんな状況で、1993-2005の間に
18作制作されました。
八郎という名前も、家庭の妻と娘という設定も、シリーズ的に必要
だったのでしょう。
配属も、相棒的な刑事も度々変わる事になりました。

幾多の事情が、原作と離れる必要制を示していても、準急ながら
はなおかつ、謎の多いドラマ化となりました。

テキストは、別冊・幻影城(昭和51)を使用。
「ながら」は列車名でたぶん漢字なら「長良」か?。

台本について

題名:「刑事鬼貫八郎(17)
     炎の記憶(仮題)」:台本:決定稿
   2004年11月
原作:「準急ながら」:鮎川哲也
脚本:坂上 かつえ
演出:吉本 潤

キャスト
鬼貫八郎・東中野署刑事:大地康雄
鬼貫良子:鬼貫の妻  :左時枝
鬼貫真奈美:鬼貫の娘 :須藤温子
碓氷道夫・東中野署刑事:羽場裕一
神保亜希子・下山の元妻:山口果林
下山剛 ・墨田署刑事 :竜雷太
黒川課長・東中野署刑事:天田俊明
原田和則・宇野の同級生:野村祐人
宇野英生・銀行員   :山本陽一
沢村ゆかり・宇野の部下:松永玲子

ドラマ「刑事鬼貫八郎シリーズ」について

1993-2005の間に18作放映された、2時間サスペンスの
シリーズです。
鮎川作品のレギュラー探偵の鬼貫警部は、名字以外は全く異なる
キャラになっています。
妻と娘がいます、娘は12年の間に、3名が変わっています。

相棒の丹那刑事は、丹那孫六という名で、第3作まで登場しますが、
以降は多数の刑事が変わって行きます。

一番不思議な事は、「準急ながら」は、2回原作となっている
ことです。
第6作 1996年8月13日 十六年目の殺人
第17作 2004年11月30日 炎の記憶
の2回です。
台本は、第17作目です。

そして、どちらも原作とは大きく違います。
ただし、「十六年目の殺人」は、細部は異なるものの全体の背景や
登場人物や人物名に、同じ所があり、原作を元に発展させた台本と
思えます。

本台本の、第17作「炎の記憶」は、原作として「準急ながら」と
明記されていますし、2度目の原作とも紹介されています。
しかし、内容は全く異なるもので、鮎川に別の原作があるのか、
オリジナル台本かは不明です。
あえて言えば、写真トリックが応用されている事です。

トリックの盗用は不可だが、原作という意味がなかなか理解できない
ドラマになっています。

原作がある場合はそれも考慮します

色々な呼び方があり、少しずつ意味は異なります

ここではやや影の部分といえるシナリオを読みます