「花嫁の叫び」について
泡坂妻夫は、本格推理小説・時代小説(捕物帳)・現代小説(人情物 ・紋章上絵師)等を書き分けて、それぞれの分野で高い評価を受けて いましたが、2009年はじめに死去しました。 1970年台の中頃に、雑誌「幻影城」の新人賞・佳作でデビュー しました。従って、初期は本格推理小説が主体に活動していました。 「乱れからくり」で日本推理作家協会賞受賞・ 「蔭桔梗」で直木賞受賞等多数の賞をうけています。 推理小説的には、がちがちの本格派ですが、外観的に全てをトリック に利用するために、小説の外見のみでは恋愛・ユーモア・サスペンス・ その他あらゆるスタイルが見られますが、読み終わると伏線を張った 本格だった事が分かり驚く仕掛けです。 作家の他に、紋章上絵師でありそれを背景にした現代小説があります。 また、奇術でも有名で、それを背景にした作品も多く、奇術書もあり ます。そして、奇術と推理小説を比較したエッセイもあります。 「花嫁の叫び」は、4作目の長編です。 表面的には、サスペンスのスタイルと読者に思わせる書き方をして いますが、実はがちがちの本格推理小説です。 あまりに大仕掛け故に、細部に書きミスがあるとの指摘も ありましたが逆にそこまで、踏み込んだ推理小説自体が少ないのです。
台本について
私が保有している台本は、テレビ朝日「土曜サスペンス劇場」 台本です。 準備稿で、スタッフは書かれていません。 キャストは、主人公のみ鉛筆書きで記入されています。 題名「花嫁の叫び」 原作「泡坂妻夫:『花嫁の叫び』」 脚本「篠崎好」 主なキャスト 松原伊津子:浅野ゆう子 北岡早馬:西岡徳馬 北岡貴緒:多岐川裕美 大和田山遊: 三栗達樹: 荒垣佐起枝: 北岡順一郎: TVリポーター:下地美香
「ドラマ:花嫁の叫び」について
筆者の知る限りでは、ドラマ化は2回です。 上記台本は、2回目のものです。 1回目は、 松原伊都子(原作の主人公名):島田陽子 北岡早馬:山口崇 北岡貴緒:中島ゆたか でした。 ドラマで細部を変えるのは、一般的な事なのでそれについては多数 ありますが省略します。 華やかな亡き妻を持った、しかも有名人の夫と結婚した、いわゆる 玉の輿と言われる地味な主人公というのが原作の設定です。 小説的には、伊キ子の三人称で書かれており、伊キ子の感情は 描いていません。(筈ですが、細部に?指摘?) 元の職業やくらしや性格まで、地味な伊キ子に対して、結婚後に襲い かかる、夫の前の亡き妻の陰という設定です。 まさにサスペンスそのものですが、実は本格推理小説ですから、 ひっくり変える結末になります。 しかし、原作でさえ細部の指摘がある(重箱の隅?)ほどの微妙な 表現を脚本やドラマで再現するのは、非常に困難です。 本格推理小説のドラマ化の限界が生じるのは、やむを得ないでしょう。 ドラマ化で問題になるのはキャストですが、早馬と貴緒は華やかな 設定ですのでキャスティングも容易でしょう。 問題は、松原伊キ子(北岡伊都子)役です。この役の設定は、この 作品の一番難しい所ですが、ドラマ化では逆に、原作を無視せざるを 得ないようです。 小柄で地味で、ささやかな生活をひとり過ごしてきた地味な女性と いう設定は難しいキャストです。 まして、その内面まで最後に立ち入る事は実に難しいです。
原作がある場合はそれも考慮します
色々な呼び方があり、少しずつ意味は異なります
ここではやや影の部分といえるシナリオを読みます