「悪霊島」について
横溝正史は、江戸川乱歩よりデビューが早く、幾度か作風を変え ながら、長期に渡って多彩な作風の探偵小説を書いてきました。 時々の執筆中断時を交えて、高齢で死去するまで、現役作家として 書き続けました。 その最後の作品が、この「悪霊島」です。 生涯の最後に、「病院坂の首くくりの家」に続いて、最長の長編を 書きました。 こと本格探偵小説では、長い事は必ずしも良い事とは限りません。 横溝正史の、2作品は過去と現在の複数の事件を同時に扱う物で あり構想上長くなったものです。 けっして、密度が薄くなった訳でなく、巨匠健在を示しました。 横溝正史が、本格探偵小説を書き始めたのは、戦後直ぐの昭和20年 からで、多くの作者に色々な影響を与えました。 戦前の耽美の世界を残し、家系・家・相続という日本の古い世界 を背景にする作品が多く、反発を受けた時期もあります。 他の作家が影響を受ける必然はなかったのですが、昭和30-40年代 は社会派と呼ばれるジャンルに、仇にされた気配があります。 反動で、昭和50年前から大きなブームが起きて、ほとんどの作品 が出版されました。 しかし、未だに単行本未収録作品が見つかるようです。 ブームの時期を中心に、現在まで多数の作品が映像化されています。 特に戦後登場させた探偵役「金田一耕助」は作者以上に有名とも いえます。 演じた俳優のイメージが残っている面もありますが、特徴的な 外観・服装や癖があり、ばらばらの印象では無いでしょう。
台本について
題名:「シナリオ 悪霊島」 :台本:角川文庫 1981年10月 原作:「悪霊島」:横溝 正史 脚本:清水 邦夫 演出:篠田 正浩 キャスト 金田一耕助:鹿賀丈史 磯川 警部:室田日出男 三津木五郎:古尾谷雅人 真帆・片帆:岸本加世子 松本克子:中島ゆたか 越智多年子:大塚道子 広島の御寮人:二宮さよ子 尾道の御寮人:宮下順子 浅井 はる:原 泉 刑部 辰馬:加藤 嘉 刑部 守衛:中尾 彬 刑部 大膳:佐分利信 越智 竜平:伊丹十三 吉太郎 :石橋蓮司 ふぶき・巴御寮人:岩下志麻
映画「悪霊島」について
シナリオが、文庫のシリーズの1冊として出版されたのは、 うれしい事です。 映像は、原作に対して、加えて消す事が普通です。 それが原作が長いとなると、消す部分が多くなりそうです。 本格探偵小説では、伏線が多いので消す作業が難しいです。 本作では、そこは無難に処理したと思います。 映像で変えた部分は、語り手に三津木五郎を持ってきた事です。 そして、1980年>1967年へと戻って事件は始まります。 また、シャム双生児がモチーフの原作に対して、鵺の鳴き声が モチーフに変わっています。 1967年に3御寮人もかと思います。 しかし、年代設定・モチーフ・3御寮人全てが、伏線に絡みます。 そして、前半の展開の順はかなり並び変えています。 このあたりが、長い作品を映画の長さに入れられた理由でしょう。 配役を見れば犯人が分かると言われる横溝作品映画ですが、 どうもそれは本作にもあれはまる様に思います。 原作には登場人物表はなく、シナリオのキャスト表は厳密には ミステリ的にまずい所がありますが、そこまで気にしないのが 普通でしょう。
原作がある場合はそれも考慮します
色々な呼び方があり、少しずつ意味は異なります
ここではやや影の部分といえるシナリオを読みます