電子回路の品質技術

電子部品ですので、品質は重要です。
原則は、全数検査(保証)です。
原則は数ロットの実績を元に。抜き取り検査への移行をはかります。
一番の品質は、電気的な結線の完全性です。
断線・回路パターンの部分欠損・銅箔の厚み不足等他の能動部品を「接続する」機能の欠落は回路板自体の最小限の機能が無いことであり、製造者はこれは保証する必要があります。
配線には、接続以外に、電流容量・電磁誘導・経年劣化・他の部品との接続性・一般的な電気特性などあらゆる事を満たす必要があります。
本来は、製品図面を作成した需要者の設計に含まれている筈です。
回路板の製造者は借用図面の内容を実現させれば良いはずです。
しかし、現実は製品図面の作成者が詳細な知識を持っていない事も多く、製造側から提案・承認の手続きを経て、機能を実現させる事も多数あります。
(2007/04/11)

電子・電気回路の基本特性である回路パターンの品質は、通常「オープン・ショート・チェッカー」を使用して行います。
文字通り、断線と隣接パターンとのショート不良を検査します。
パターン・チェッカーにも標準仕様は存在します。
あくまでも標準ですので、用途によってはそれにあった方法を選ぶ必要があります。
基本は電気の導通チェックです。
規定の電圧を掛けてオープン・ショートを調べます。
ハンドプレス仕様から大型プレス仕様まで色々とあります。
このなかで、高い電圧時での検査が必要な時は、耐圧チェッカーを使用します。
電気チェックは一般的ですが、欠点は○×判定であり、パターンの細りや欠損による電気容量不足は検出できません。
電気チェックは、検査ですが破壊試験的・寿命への影響の問題もあります。
また、基本データの作成方法にも注意が必要です。
一番多いのは、良品を複数枚検査してそれを比較データとします。
しかしこの方法では、マスク欠陥やアートワークミスは発見できません。
CADによる作成データを比較データとする事もありますが、アートワークミスは検出できません。
また、回路パターンにリング状の部分があると欠損は発見できません。
これの対策として、画像認識方法の開発が行われています。
技術的・コスト的・時間的に電気チェックに置き換わるにはまだ多くの課題があります。
用途的に併用から拡がると思います。
また多層等の直接目視できない部分は、X線の利用等が開発されています。
(2007/08/10)

電子回路板は、片面に限定されません。
従って、2層以上では層間の接続を取る必要があります。
そのひとつは、バイアホールという導通用の孔をあけてそこに導通体を設けて2層間の電気的接続を取ります。
この方法は2層以上にも共通です。
上下の層は原則としてバイアホールと接する導体回路が存在して電気的につながります。
具体的な接続法は用途や目的で複数に別れます。
金属かしめ部品でつなぐ事も可能です。
半田等の低融点導体を流しこんで接続を取る事も可能です。
バイアホールを実装部品の足の差し込み孔と共用する場合があります。
この場合は、部品の足と上下層での半田接続で導通がとれます。
しかし信頼性では弱いでしょう。
一番多く使用されるのが、バイアホールの中に銅メッキを行い接続する方法です。
電気的導通チェックは、これらの層間接続が正しくされているかの品質も確認出来る事が必要です。
この接続部分の品質は要因が多く一般に難しいです。
また機械的・環境的な耐久性も問題になり易いので品質保証項目が増加します。
特に難しいのが、閉鎖回路を形成する場合です。
1ヶの不良導通部があっても、チェッカーでも目視・画像認識でも見つけ難いです。
対策には、設計・製造・品質担当の協力が必要です。
(2008/03/16)

バイアホールの電気容量の計算を忘れている時があります。
電気容量は目安として「1オンス(通常の銅箔では35マイクロメートル)・導体幅1mm幅で1アンペア」とされています。
これは経験則で放熱処理が特にされていないし、逆に断熱処理もされていない時です。
最近の電子回路は、導体幅はもっと狭いです。
その時の電気容量はというと、単純ではありません。
導体幅が狭くなると共に導体厚みも薄くならざるを得ないからです。
微細回路は、薄い銅箔暑さでしか対応できません。
加工性と基材との密着性等から通常は導体幅よりも導体厚みが薄くなる程度が大きいです。
従って、電力用途のバルク導体の電気容量の数値よりも、箔状になりますので一般には放熱性が向上して必要導体幅は狭くて可能になる傾向があります。
同時に回路の密集度・使用環境の影響が大きくなります。
その結果、具体的な数値やデータは公表されにくくなります。
バイアホールの部分の電気容量は理想的な状態では、「バイアホール径*パイ(3.14)*バイアホール厚み」です。
実際は均一にメッキされない事が多く、ホールの中央が薄くなる傾向があり、ホールのバリ等の形状障害、機械的ひずみなど阻害要因がありますので、実験値を理想とする安全度を掛ける必要があります。
(2008/09/15)

電気特性以外の品質

部品であるからには、機械的仕様は重要です。
特に狭いスペースに組み込む設計の回路板の場合は形状加工精度は重要です。
回路板単体の使用は少なくなり、他の部品との接続が重要になっています。
従って、あらゆる接続部の嵌め合い精度は重要です。
電子部品ですので、外観特に用途によっては見えない汚染・アウトガスなどの制御が必要になります。
回路板は非能動部品との考え方が従来からあります。
最近では、能動的な機能が要求されるケースも複数登場しています。
これらについては、回路板製造の立場のみでは品質管理が難しいです。
いわゆる実機試験(実際に使用する状態での機能検査)で機能確認が必要になります。
これは原則は需用者で実施しますし、需用者の支援の元に回路板製造者で検査する事もあります。
(2007/04/12)

実は、電気回路板には仕様の数だけ必要な品質が存在します。
もし、電気接続だけならば、回路板の種類は小数でよい筈ですので理解出来ると思います。
電気回路板は、汎用+低コスト化と、高機能化に分かれて進歩しています。
前者は標準仕様化へ、後者は個別仕様化へ進むことも当然に予想できることです。
(2007/08/10)

電子回路板は当然ながら単独使用はありません。
他の部品・導体等との接続が必ず存在します。
その接続部の品質は微妙です。
すなわち、部面仕様と接続相手との相性・相互作用とから生じる仕様があるからです。
電子回路板製造の立場では前者のみで良い筈ですが、実用にならなければ量産製品にならないので結果的に後者も電子回路板の性能・品質で決まる仕様は対象となります。
電子回路板単独製造のみ行うメーカーもありますが、部品実装・コネクター実装・熱圧着性導電性フィルム等の接続等を合わせて行うメーカーが増えています。
その中には、他メーカーへの外注も含みますが、品質的には納入メーカーが責任を持つ事になります。
(2008/03/16)

最終的には実機試験が必要です。
その結果から、品質試験項目を決めて行きます。
もし納入先に、実機試験能力がないと非常に品質問題は複雑になります。
これは納入先が中間加工メーカーの時に起きます。
現実には品質問題は複雑になり、製品価格よりも高くなりかねません。
同じ仕様・形状の製品でも、品質問題でコストは大きく変わります。
「品質は良くて当然」の考えは思想上であり現実は異なります。
ただし、品質を製造で作りこむ・製造工程に品質検査を組み込む事はメーカーの大きな課題です。
(2008/09/15)

抜き取り検査・4シグマ管理-6シグマ管理

全数検査は機能により、原理的に可能なものと、人間の目視等に頼るものがあります。
人間にはミスや見逃しはついて廻ります。
現実には、最終抜き取り検査との併用が多く採用されます。
この時の管理方法としては、Cp,Cpk が使用されています。
これらは、平均と標準偏差と規格とを組み合わせた上で数値化したものです。
工程能力と呼ぶ事もあります。
以前は標準偏差(シグマ)を基準に、2シグマ(約95%)、3シグマ(約99%)で運用されてきました。
部品数が増えるとトータル不良率は、個々の部品の不良率のかけ算になるので加速度的に低下します。
同様に、回路板を含めた部品も工程数が増加の傾向にあります。
個々の工程の良品率を非常に高いレベルで管理する必要があります。
その結果、4シグマ・6シグマでの管理が要求されるようになりました。
(2004/04/12)

工程の多い製品ほどに、高い工程能力が必要になります。
各工程が独立な不良要素を持つとすると、良品率のかけ算がトータルの製品の良品率になります。
現実には、律速となる工程が存在しますが、今は品質は検査で調べるのではなく各工程で作り込む事が一般的な考え方となっています。
ではその各工程の工程能力はどれほど必要かというと、3シグマでは全く不足となります。
(2007/08/10)

高い製造品質要求は、高い設計技術と製造技術を要求します。
逆に品質的にはほとんど不良がない状態ですので一見楽に見えます。
しかし現実は異なります。
その要求品質が維持されているかの確認は、実は非常に厄介です。
少数の抜き取り検査では無理です。
製造工程に含まれる品質管理とその統計処理で可能になる新しい手法が必要になります。
(2008/03/16)

品質検査の製造工程への組み込み

工程の増加と検査項目・品質管理項目の増加を述べてきました。
そして、それは個々の工程の管理が重要である事も述べてきました。
その結果は、明らかです。
製品を完成させてから検査するのではなく、個々の工程ごとに管理する・良品率を向上させる仕組み及びその結果をモニターできる仕組みを組み込む必要があります。
不良の早期発見・不良原因の正確な把握を行う事で、品質を向上させる仕組みを作る事が重要です。
初期製品設計・工程設計または製造設備の導入時にまで遡って、製造への品質の組み込みを行う必要があります。
(2004/04/12)

前の項目で、各製造工程で工程能力を上げる必要性を述べました。
工程能力を上げる事が困難な時には、工程内検査により次工程に不良を廻さない、方法が必要です。
それが品質検査の製造工程への組み込みです。
検査方法によっては、工程内に追加になる場合もありますが、基本的な目標は製造中に同時に検査を行う・製造のはじめと最終に検査を行えば中間は検査不要の工程能力があることです。
すなわち、各製造工程が責任を持った品質管理をする事が前提かつ目標にあります。
対外的な客観的な品質保証の必要性からは品質を管理する係・部門は必要ですが、そこの充実では製品本来の品質向上には繋がりません。
(2007/08/10)

前項目で、高い品質管理は製造工程中の管理で可能になると述べました。
不良を取り除く製造ではなく、不良を作らない製造が要求されます。
品質管理は、そのモニターと結果の設計・製造へのフィードバックにより品質の向上と維持を行う事になります。
そこには、結果を検査する品質管理から、設計段階から品質管理のために関与してゆく積極的な技術が必要です。
元々は独立した部門で独自に判断する仕事でしたが、次第に設計・製造に詳しくなり積極的に参加する仕事になりました。
ただし、妥協ではなく独立した立場からの意見を出すという意味です。
(2008/03/16)

現在では「インライン検査」と呼ばれる事もあります。
品質保証は、検査頻度の設定とデータの中期以上の管理と最終抜き取り検査との相関を管理します。
複雑の工程の、要所で関門を設けてチェックするというイメージです。
全ての工程が同じ様に機能に影響するのでなく、機能に直接影響する工程またはその直後に関門を設けるのが普通です。
製造・品質保証管理が、他に任せるのではなく必要な所は協力して、またそれぞれの立場で管理を行う事が要求されています。
(2008/09/15)

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