雑誌・幻影城のベスト99(55-69)
55.空白の起点
笹沢左保
未読です。
55.一本の鉛
佐野洋
シリーズ名探偵不要論の作者ですが、個々の作品では名探偵は登場します。 結局、探偵役探しの要素もあるのでシリーズ探偵でない方が自由度があるという 見方と解釈していますし、本作もそれをいかした作品です。 題名が小説の最後にならないと、意味がわからないのも工夫がされています。新 聞記者なれではのイメージといえます。密室??トリックも逆説的で、これも作 者の主張というるでしょう。
57.追いつめる
生島治郎
ハードボイルドと冒険小説のスタイルを探し続けた作者です。本作はハードボイ ルド推理小説の代表作です。このジャンルは、その後急激に発達したので、現在 の作品と比べると比較的単純な構成になっていますが、初期開拓者とはいつも、 そのようになります。現在の推理小説の中のこの分野がしめる位置を見ると決し て省くことのできない作品です。
57.蝶たちは今……
日下圭介
新聞記者出身でも、それに拘った作品を書くとは限りません。動植物や歴史や文 学作品など多彩な題材で独自の世界を作った作者のデビュー作です。 この作者の作品には、本格でありながらサスペンス要素が持ち込まれており特徴 となっています。デビュー時から、すでに特徴が現れており、このベスト時には ほとんど作品は発表されていませんでしたが、現在みると妥当な選考と感じます。
59.四万人の目撃者
有馬頼義
未読です。
59.暗黒告知
小林久三
多彩な作品を発表した作者の江戸川乱歩賞作です。ただ、メイントリックに前例 が有ることや、時代設定に矛盾があるという指摘などあり、いくつかの問題点を かかえています。実力のある作者で、その後多くの作品を発表していますが、本 作については、やや疑問とするのが平均的と思います。
59.錦絵殺人事件
島田一男
事件記者シリーズでも有名な作者ですが、初期には重厚な本格推理も多く書いて います。本作はその代表です(改題されています)。 義経北行説を絡めて、事件を進行させるスタイルは、その後いくつかの方法に、 分かれて複数の作者で複数の分野になっています。後期には、軽快な作風になっ てゆきますが、長い作家生活を本格推理とともに進んだ作家です。
59.異郷の帆
多岐川恭
多作で早くから第一線で活躍したために、意外にも推理作家協会賞を受賞しなか った作者です。平均した作品を発表し続ける事は実力のある証拠ですが、代表作 が人により異なる事になります。本作は、時代と場所設定が特殊であり完成度も 高く多くの人に押されています。江戸時代の長崎の出島は閉ざされた空間です。 憧れをもつ主人公の目で広義の密室で展開される事件は印象的です。
63.銀と青銅の差
樹下太郎
管理職と一般職でつけるバッチが銀と青銅の差がある会社での話です。 たとえ実力でも、誰かの意志でもなくても、銀から青銅に落ちた主人公は、他か ら全く異なる目で見られる事になります。 偶然がもたらす悲劇を、特に特殊な舞台と人物を使用せずに描いた作品ですが、 優れた内容である事に違いはありません。
63.疑問の黒枠
小酒井不木
医者の視点とユーモラスな文章で知られる多才な戦前作家です。短編は今でも、 面白いです。長編は時代を考慮して評価する必要があります。複数の登場人物に 推理をさせる趣向は、現在でははやりとまでは行きませんが珍しくありません。 本作はそのさきがけ的な作品です。結果的に当時としては長い作品と言えるでし ょう。趣向的によくばった感はあります。
63.安楽死
西村寿行
冒険小説で知られている作者ですが、はじめは社会派推理小説を書いていました。 次第に冒険・サスペンスの要素が強くなってゆきますが、複数の要素を持った作 品も存在する事になります。本書は初期の、社会派推理小説ですが、内容的に忘 れてしまっており、未読に近い状態です。
66.透明受胎
佐野洋
非常に作品数が多く、またジャンル的にも広い作家です。本作はSFミステリと 呼ぶべき作品かも知れません。処女受胎といおうか、プラハレデイの架空の存在 を元に話が進みます。なかには、存在を信じこんだ人もいたとか・・。 架空の設定は常套手段であり、現在は極端な作品もおおいですが、過去にもすで に書かれている事は忘れてはいけないでしょう。
66.轢き逃げ
佐野洋
一つの小説が途中から全くスタイルが変わる事も、現在では珍しくはありません。 そして、この作品がこれに当たります。前半は倒叙ミステリのスタイルです。轢 き逃げ犯がいかに犯行から逃れようとする事が書かれています。ところがそこに 予想外の事件が生じて、後半は普通の本格推理小説になります。ただ作品的に長 いので2作を合わせた感もあります。ミステリは最後まで読む必要があるの典型 です。
66.ひげのある男たち
結城昌治
色々なジャンルを書く作家の位置はこの位が適当なのでしょうか。本作者のデビ ューは郷原警部3部作です。本格推理から入り、次第にジャンルを広げてゆくの が比較的に多くみられる傾向です。処女作であり、刑事ものでありながら舞台を 田舎に設定してどこかユーモラスな雰囲気をだすのに成功しています。作者の多 才ぶりはここから出発しています。
69.殺意という名の家畜
河野典生
昭和30年台にスタートしたハードボイルドスタイルは、色々な作家が個性を発 揮したが、この作品もその一つです。しばしば言われるのが、若さと完成度です。 あとから言われると分かりにくいですが、若さ=感性であると言われます。この ジャンル自体が作者の感性による部分が大きいので、若くして完成度の高い作品 を書くと期待が大きくなり、一時作品数が減ったともいわれます。
69.錆びた炎
小林久三
解決に時間の制約のある推理小説は現在も多く書かれています。本作は今では、 あまり話題になっていませんが、賛否両論あり問題作でした。それは時間の制約 があいまいな設定になるものを用いたからです。病気の子供の命があとどれくら い持つかという不確定要素です。新しい試みですが、医学的問題はたえず議論に なります。サスペンスを高めたがあまりに現実問題に立ち入りすぎたのでしょう。
69.殺人の棋譜
斎藤栄
未読です。
69.黒い福音
松本清張
未読です。
69.密閉山脈
森村誠一
犯人捜しの推理小説でも、いつも容疑者を沢山登場させる訳ではありません。 本作は容疑者はふたりで、山を舞台に密室状況とアリバイとを掛け合わせた作品 です。構成を極端に整理して、単純化する事で逆に本格推理小説の本質を明確化 しようとした試みと理解しています。また、アリバイトリックも別の人間が別々 のきっかけで解決する構成も特徴があると感じます。
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笹沢左保
未読です。
55.一本の鉛
佐野洋
シリーズ名探偵不要論の作者ですが、個々の作品では名探偵は登場します。 結局、探偵役探しの要素もあるのでシリーズ探偵でない方が自由度があるという 見方と解釈していますし、本作もそれをいかした作品です。 題名が小説の最後にならないと、意味がわからないのも工夫がされています。新 聞記者なれではのイメージといえます。密室??トリックも逆説的で、これも作 者の主張というるでしょう。
57.追いつめる
生島治郎
ハードボイルドと冒険小説のスタイルを探し続けた作者です。本作はハードボイ ルド推理小説の代表作です。このジャンルは、その後急激に発達したので、現在 の作品と比べると比較的単純な構成になっていますが、初期開拓者とはいつも、 そのようになります。現在の推理小説の中のこの分野がしめる位置を見ると決し て省くことのできない作品です。
57.蝶たちは今……
日下圭介
新聞記者出身でも、それに拘った作品を書くとは限りません。動植物や歴史や文 学作品など多彩な題材で独自の世界を作った作者のデビュー作です。 この作者の作品には、本格でありながらサスペンス要素が持ち込まれており特徴 となっています。デビュー時から、すでに特徴が現れており、このベスト時には ほとんど作品は発表されていませんでしたが、現在みると妥当な選考と感じます。
59.四万人の目撃者
有馬頼義
未読です。
59.暗黒告知
小林久三
多彩な作品を発表した作者の江戸川乱歩賞作です。ただ、メイントリックに前例 が有ることや、時代設定に矛盾があるという指摘などあり、いくつかの問題点を かかえています。実力のある作者で、その後多くの作品を発表していますが、本 作については、やや疑問とするのが平均的と思います。
59.錦絵殺人事件
島田一男
事件記者シリーズでも有名な作者ですが、初期には重厚な本格推理も多く書いて います。本作はその代表です(改題されています)。 義経北行説を絡めて、事件を進行させるスタイルは、その後いくつかの方法に、 分かれて複数の作者で複数の分野になっています。後期には、軽快な作風になっ てゆきますが、長い作家生活を本格推理とともに進んだ作家です。
59.異郷の帆
多岐川恭
多作で早くから第一線で活躍したために、意外にも推理作家協会賞を受賞しなか った作者です。平均した作品を発表し続ける事は実力のある証拠ですが、代表作 が人により異なる事になります。本作は、時代と場所設定が特殊であり完成度も 高く多くの人に押されています。江戸時代の長崎の出島は閉ざされた空間です。 憧れをもつ主人公の目で広義の密室で展開される事件は印象的です。
63.銀と青銅の差
樹下太郎
管理職と一般職でつけるバッチが銀と青銅の差がある会社での話です。 たとえ実力でも、誰かの意志でもなくても、銀から青銅に落ちた主人公は、他か ら全く異なる目で見られる事になります。 偶然がもたらす悲劇を、特に特殊な舞台と人物を使用せずに描いた作品ですが、 優れた内容である事に違いはありません。
63.疑問の黒枠
小酒井不木
医者の視点とユーモラスな文章で知られる多才な戦前作家です。短編は今でも、 面白いです。長編は時代を考慮して評価する必要があります。複数の登場人物に 推理をさせる趣向は、現在でははやりとまでは行きませんが珍しくありません。 本作はそのさきがけ的な作品です。結果的に当時としては長い作品と言えるでし ょう。趣向的によくばった感はあります。
63.安楽死
西村寿行
冒険小説で知られている作者ですが、はじめは社会派推理小説を書いていました。 次第に冒険・サスペンスの要素が強くなってゆきますが、複数の要素を持った作 品も存在する事になります。本書は初期の、社会派推理小説ですが、内容的に忘 れてしまっており、未読に近い状態です。
66.透明受胎
佐野洋
非常に作品数が多く、またジャンル的にも広い作家です。本作はSFミステリと 呼ぶべき作品かも知れません。処女受胎といおうか、プラハレデイの架空の存在 を元に話が進みます。なかには、存在を信じこんだ人もいたとか・・。 架空の設定は常套手段であり、現在は極端な作品もおおいですが、過去にもすで に書かれている事は忘れてはいけないでしょう。
66.轢き逃げ
佐野洋
一つの小説が途中から全くスタイルが変わる事も、現在では珍しくはありません。 そして、この作品がこれに当たります。前半は倒叙ミステリのスタイルです。轢 き逃げ犯がいかに犯行から逃れようとする事が書かれています。ところがそこに 予想外の事件が生じて、後半は普通の本格推理小説になります。ただ作品的に長 いので2作を合わせた感もあります。ミステリは最後まで読む必要があるの典型 です。
66.ひげのある男たち
結城昌治
色々なジャンルを書く作家の位置はこの位が適当なのでしょうか。本作者のデビ ューは郷原警部3部作です。本格推理から入り、次第にジャンルを広げてゆくの が比較的に多くみられる傾向です。処女作であり、刑事ものでありながら舞台を 田舎に設定してどこかユーモラスな雰囲気をだすのに成功しています。作者の多 才ぶりはここから出発しています。
69.殺意という名の家畜
河野典生
昭和30年台にスタートしたハードボイルドスタイルは、色々な作家が個性を発 揮したが、この作品もその一つです。しばしば言われるのが、若さと完成度です。 あとから言われると分かりにくいですが、若さ=感性であると言われます。この ジャンル自体が作者の感性による部分が大きいので、若くして完成度の高い作品 を書くと期待が大きくなり、一時作品数が減ったともいわれます。
69.錆びた炎
小林久三
解決に時間の制約のある推理小説は現在も多く書かれています。本作は今では、 あまり話題になっていませんが、賛否両論あり問題作でした。それは時間の制約 があいまいな設定になるものを用いたからです。病気の子供の命があとどれくら い持つかという不確定要素です。新しい試みですが、医学的問題はたえず議論に なります。サスペンスを高めたがあまりに現実問題に立ち入りすぎたのでしょう。
69.殺人の棋譜
斎藤栄
未読です。
69.黒い福音
松本清張
未読です。
69.密閉山脈
森村誠一
犯人捜しの推理小説でも、いつも容疑者を沢山登場させる訳ではありません。 本作は容疑者はふたりで、山を舞台に密室状況とアリバイとを掛け合わせた作品 です。構成を極端に整理して、単純化する事で逆に本格推理小説の本質を明確化 しようとした試みと理解しています。また、アリバイトリックも別の人間が別々 のきっかけで解決する構成も特徴があると感じます。
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選ばれた作品の感想です。
あくまでも主観的なものです。
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