雑誌・幻影城のベスト99(43-50)
43.殺意の演奏
大谷羊太郎
執念で乱歩賞を受賞したイメージの作品です。このころは、乱歩賞=本格=密室 の作品が大部分を占めていました。本作もこれにあたります。作者は芸能関係 に詳しくそこをテーマにした作品が多くあります。クイズを出題する司会者の死 が密室の為、自殺か他殺か分かりません。クイズをダイイングメッセージにそし て密室トリックにまで結びつける大技です。作者はこれ以降も、地味ながら堅実 に本格ミステリを書き継いでいます。
43.玉嶺よふたたび
陳舜臣
推理作家協会賞を、長編2作で受賞したのは鮎川と陳舜臣である事は「黒い白鳥」 で述べました。鮎川は2作ともこのベストに選ばれていますが、陳の同時受賞の 「孔雀の道」は選ばれていません。鮎川はアリバイトリックの類似ジャンルです が本作は中国を舞台にした冒険ロマンの味が強い作品です。「孔雀の道」は日本 に戻ってきた女性が過去を調べてゆく、いわゆる手堅い本格です。当時は中国物 の書き手が少なく本作の方がより記憶に残っているのだと推察します。
43.大いなる幻影
戸川昌子
未読です。
46.炎に絵を
陳舜臣
デビュー5年目に発表された本作は、完成度が高いという評価があり、作者の 代表作と言われています。中国での事件を背景に神戸での事件解決を主人公がめ ざします。題名がダイイングメッセージというべきキーワードになり、激しい展 開の後に意外な真相が待っています。色々と特徴が含まれていますが、全体が調 和して描かれているので一つを取り上げるよりも高い完成度となるのでしょう。
46.内部の真実
日影丈吉
日影作品の舞台として多く登場する台湾ものです。歴史的にも有名なトリックの 応用を使用していますが、意外性よりも現実性を持たすことに特徴を出していま す。日本人と台湾という事で戦時中の話です。 密室物でもありますが双方のトリックの結び付きが鍵となっています。2部構成 ですが、短い2部が解明編にあたります。
48.人生の阿呆
木々高太郎
作者の知識人としての著名性が先に立ち、推理小説への貢献以上に有名です。 短篇では医学知識を使用した作品群はファンも多いですが、長編はあまり見るべ きものはないと感じます。本作も現在でみれば何故直木賞か疑問ですし、果たし て推理小説なのかさえ感じます。やはり、歴史的意義を含めて考えるべき作品と 言うべきでしょう。
49.三重露出
都筑道夫
初期の推理小説の可能性に拘っていたころの作品です。最近では類似の趣向も、 見られるようになっています。外国人が書いた、誤った日本の認識と知識の小説 という趣向になっています。 忍者が登場して、不思議な展開をする作品です。面白いと感じるか、遊びが多す ぎると感じるかは読者次第です。 推理小説の可能性の追求であり、出来上がった作品を推理小説として見るかどう か自体が読者に委ねられます。
50.憎悪の化石
鮎川哲也
「黒い白鳥」と共に推理作家協会賞を受賞しています。大きく二つのトリックか ら成り立ちます。アリバイものではあまり、連続殺人には拘っていないように感 じます。 メイントリックに説明不足があると言われていましたが、作者の死の直前に出た 版で改訂されました。
50.ソクラテス最後の弁明
小峰元
「アルキメデスは手を汚さない」で乱歩賞を受賞後、一貫して青春推理小説を 書き続けた作者の第3長編です。乱歩賞作品は最近「テロリストのパラソル」に 抜かれるまでは、ハードカバーの初出部数で1番でした。第3長編の本作はこれ を抑えてベストに選ばれました。青春小説はしばしば同年代に書かれますが、年 上の作者が若者たちの風変わりな生活と考え方を暖かい目でややユーモラスに描 く所に特徴があります。本作は推理小説要素は抑え気味で、より青春小説に比重 が置かれています。その面で代表作と言われると考えます。
50.上を見るな
島田一男
戦後直ぐに出発して、多くの本格物からはじめ、事件記者や捜査官ものに新境地 を開いてゆきました。本作は初期の後半ころの作品で、人気の南郷二郎私立探偵 の登場する第1作です。シリーズ中でも本格味が強い作品です。連続殺人の被害 者が上を見る状態で殺されることから題名が付いています。 長期の作家生活を続けた作者ですが、最後まで推理小説から離れる事はありませ んでしたが、本格好きは初期の作品群に特に愛着があります。
50.動脈列島
清水一行
犯罪小説・経済小説・情報小説の書き手である作者ですが、とりあげる背景によ ればストーリーの展開に強いサスペンスが生まれ優れた推理小説が誕生します。 新幹線爆破犯人と科学捜査陣との双方から描いた本作は、時間制限との戦いを含 め読者の予想を超える知恵くらべとなり、完成度の高い作品になっています。 沢山の捜査員を配置しても、誰もが自分が犯人に出会わないと思う心理状態は真 実味があり、一人対多数の対決でも実はそうとも言えない事が分かります。
50.消えたタンカー
西村京太郎
「寝台特急殺人事件」以来次第にトラベルミステリの大量生産に移ってゆく作者 ですが、色々なジャンルの作品を残しています。本作も十津川警部物ですが、ト ラベルミステリ直前に、海洋ミステリの作品を多く発表していた中の1作です。 本作は典型的なフーダニットで一見犯人が分からない状況から、犯人を特定する 展開が非常に印象的です。
←雑誌・幻影城のベスト99(top)へ戻る
大谷羊太郎
執念で乱歩賞を受賞したイメージの作品です。このころは、乱歩賞=本格=密室 の作品が大部分を占めていました。本作もこれにあたります。作者は芸能関係 に詳しくそこをテーマにした作品が多くあります。クイズを出題する司会者の死 が密室の為、自殺か他殺か分かりません。クイズをダイイングメッセージにそし て密室トリックにまで結びつける大技です。作者はこれ以降も、地味ながら堅実 に本格ミステリを書き継いでいます。
43.玉嶺よふたたび
陳舜臣
推理作家協会賞を、長編2作で受賞したのは鮎川と陳舜臣である事は「黒い白鳥」 で述べました。鮎川は2作ともこのベストに選ばれていますが、陳の同時受賞の 「孔雀の道」は選ばれていません。鮎川はアリバイトリックの類似ジャンルです が本作は中国を舞台にした冒険ロマンの味が強い作品です。「孔雀の道」は日本 に戻ってきた女性が過去を調べてゆく、いわゆる手堅い本格です。当時は中国物 の書き手が少なく本作の方がより記憶に残っているのだと推察します。
43.大いなる幻影
戸川昌子
未読です。
46.炎に絵を
陳舜臣
デビュー5年目に発表された本作は、完成度が高いという評価があり、作者の 代表作と言われています。中国での事件を背景に神戸での事件解決を主人公がめ ざします。題名がダイイングメッセージというべきキーワードになり、激しい展 開の後に意外な真相が待っています。色々と特徴が含まれていますが、全体が調 和して描かれているので一つを取り上げるよりも高い完成度となるのでしょう。
46.内部の真実
日影丈吉
日影作品の舞台として多く登場する台湾ものです。歴史的にも有名なトリックの 応用を使用していますが、意外性よりも現実性を持たすことに特徴を出していま す。日本人と台湾という事で戦時中の話です。 密室物でもありますが双方のトリックの結び付きが鍵となっています。2部構成 ですが、短い2部が解明編にあたります。
48.人生の阿呆
木々高太郎
作者の知識人としての著名性が先に立ち、推理小説への貢献以上に有名です。 短篇では医学知識を使用した作品群はファンも多いですが、長編はあまり見るべ きものはないと感じます。本作も現在でみれば何故直木賞か疑問ですし、果たし て推理小説なのかさえ感じます。やはり、歴史的意義を含めて考えるべき作品と 言うべきでしょう。
49.三重露出
都筑道夫
初期の推理小説の可能性に拘っていたころの作品です。最近では類似の趣向も、 見られるようになっています。外国人が書いた、誤った日本の認識と知識の小説 という趣向になっています。 忍者が登場して、不思議な展開をする作品です。面白いと感じるか、遊びが多す ぎると感じるかは読者次第です。 推理小説の可能性の追求であり、出来上がった作品を推理小説として見るかどう か自体が読者に委ねられます。
50.憎悪の化石
鮎川哲也
「黒い白鳥」と共に推理作家協会賞を受賞しています。大きく二つのトリックか ら成り立ちます。アリバイものではあまり、連続殺人には拘っていないように感 じます。 メイントリックに説明不足があると言われていましたが、作者の死の直前に出た 版で改訂されました。
50.ソクラテス最後の弁明
小峰元
「アルキメデスは手を汚さない」で乱歩賞を受賞後、一貫して青春推理小説を 書き続けた作者の第3長編です。乱歩賞作品は最近「テロリストのパラソル」に 抜かれるまでは、ハードカバーの初出部数で1番でした。第3長編の本作はこれ を抑えてベストに選ばれました。青春小説はしばしば同年代に書かれますが、年 上の作者が若者たちの風変わりな生活と考え方を暖かい目でややユーモラスに描 く所に特徴があります。本作は推理小説要素は抑え気味で、より青春小説に比重 が置かれています。その面で代表作と言われると考えます。
50.上を見るな
島田一男
戦後直ぐに出発して、多くの本格物からはじめ、事件記者や捜査官ものに新境地 を開いてゆきました。本作は初期の後半ころの作品で、人気の南郷二郎私立探偵 の登場する第1作です。シリーズ中でも本格味が強い作品です。連続殺人の被害 者が上を見る状態で殺されることから題名が付いています。 長期の作家生活を続けた作者ですが、最後まで推理小説から離れる事はありませ んでしたが、本格好きは初期の作品群に特に愛着があります。
50.動脈列島
清水一行
犯罪小説・経済小説・情報小説の書き手である作者ですが、とりあげる背景によ ればストーリーの展開に強いサスペンスが生まれ優れた推理小説が誕生します。 新幹線爆破犯人と科学捜査陣との双方から描いた本作は、時間制限との戦いを含 め読者の予想を超える知恵くらべとなり、完成度の高い作品になっています。 沢山の捜査員を配置しても、誰もが自分が犯人に出会わないと思う心理状態は真 実味があり、一人対多数の対決でも実はそうとも言えない事が分かります。
50.消えたタンカー
西村京太郎
「寝台特急殺人事件」以来次第にトラベルミステリの大量生産に移ってゆく作者 ですが、色々なジャンルの作品を残しています。本作も十津川警部物ですが、ト ラベルミステリ直前に、海洋ミステリの作品を多く発表していた中の1作です。 本作は典型的なフーダニットで一見犯人が分からない状況から、犯人を特定する 展開が非常に印象的です。
←雑誌・幻影城のベスト99(top)へ戻る
雑誌・幻影城のベスト99。
選ばれた作品の感想です。
あくまでも主観的なものです。
選ばれた作品の感想です。
あくまでも主観的なものです。