雑誌・幻影城のベスト99(11-20)
11.本陣殺人事件
横溝正史
第1回探偵クラブ賞受賞作です。かなり短い作品ですが知名度は高いです。しか し、本作の内容を正確に理解している人は少ないと思います。これは映像化の弊 害と思います。本作は「金田一耕助」の初登場作です。後半からの登場になり、 探偵役捜しも作品の中に含まれます。しかし現在では、謎ではなくなっています 。また本作は叙述トリックの作品でもあります。しかし映像化では省かれている ので注目する人が限られています。密室ばかりに注目が行きがちですが、戦後第 1作長編として既に多くの試みがなされた本作の評価はもっと高くて良いと思い ます。
12.猫は知っていた
仁木悦子
第三回(公募は第1回)江戸川乱歩賞受賞作です。個人的には作者のベストとは 思えませんが、松本清張と共に20年代の推理小説から、30年代の開かれた推 理小説への移行果たした作品の意味は大きいです。内容は特徴のあるとは言えま せんが登場人物や文体などはそれまで推理小説を読まなかった人を呼び込む、明 るく親しみ易いものでした。現代では女流推理小説作家は珍しくありませんが、 その先駆者としての意味は、その作風と幅広い読者層と共に功績は大きいです。
13.悪魔の手毬唄
横溝正史
横溝正史ブームですので、得票の高い所に多くあります。投票するには読んでい る必要があり、読者数が多い作品が得票が多いのは自然です。本作は見立て殺人 を有効に使っており、設定等も推理小説の本道を行くものです。内容も横溝らし さが溢れており、読者が何冊目に読んだかによって印象が変わるのではないかと 推察します。
14.孤島の鬼
江戸川乱歩
乱歩と言えば「陰獣」が定番ですが、原稿枚数が本投票の規定に達しなかったた めにはずれました。本作は純粋な本格推理とは言い難い面もあり、かと言ってど の様な分類にいれれば良いか迷う作品です。乱歩ファンは多く、選ばれた無難な 作品として投票が多かったと思います。読んで面白い小説である事は間違いない ですから。乱歩の功績を長編小説のベスト選びで表すこと自体に無理があるので しょう。
15.ゼロの焦点
松本清張
松本の代表作として、まず浮かぶのが本作です。推理小説としての完成度も高く 読みやすく、時代の世相を背景にし欠点の少ない作品です。松本の他の作品同様 にけれん味は有りませんので、支持しない読者もあると思いますが、これはどの 作家にもあてはまります。ある人物の隠された過去が暴かれるのは、定番的とも いえますが逆に作者の筆力が反映されやすいといえます。鮎川哲也の「黒い白鳥 」と平行で連載されたのは偶然の不思議さです。
16.白昼の死角
高木彬光
多彩な作品と名探偵を生んだ高木の、ノンシリーズキャラクターの代表作の一つ です。ジャンルとしては「コン・ゲーム」詐欺でしょう。戦後、東大生から始め 生涯に多彩な詐欺を行った主人公を、暴こうとする者との駆け引きと手口の巧妙 さで見事に描いています。法律にも詳しい高木の1面がよく出ています。
17.高層の死角
森村誠一
社会派を経験した後の本格派と呼ばれた頃の森村のデビュー作です。密室から始 まり、ダイイングメッセージ、アリバイ崩しと惜しげも無くトリックを盛り込ん でいます。ホテル従業員の経験を生かした密室トリックは○○のアリバイと言え るもので、肩すかしというよりは新工夫というべきでしょう。また、アリバイも 方法自体はオーソドックスですが、後に類似・応用が多く書かれた盲点を狙った ものです。
18.薫大将と匂の宮
岡田鯱彦
作家の代表作はそれほど選び易くはないのですが、岡田に関しては本作が選ばれ る事に疑問が全くありません。作家にとって喜ばしいのか、残念なのかはよく分 かりません。国文学者の知識を生かした、源氏物語の新しく見つかった章と設定 された本作は、題材と共にその時代ならではのトリックと重なり記憶に残ります。
19.伯林 一八八八年
海渡英祐
高木彬光の資料集めを手伝い、「成吉思汗の秘密」に感動してペンネームにした (海を渡る英雄)作者の乱歩賞受賞作です。本当かどうか不明の噂では、女性名 のペンネームで乱歩賞募集を考えていた高木が本作を読んで応募をあきらめたと もいわれています。歴史小説でも戦記小説でもなく、しかし有名な歴史上の人物 を主人公にした本作は最初の試みではないとしても、その完成度とインパクトは 大きく、この後に多くの類似作を生みました。
20.誘拐
高木彬光
高木の生んだ5人の名探偵の一人、百谷泉一郎・明子夫妻の登場する本作もまた ミステリの新しい可能性と1分野の成功例で代表作です。高木は法廷物の日本で の先駆者で百谷はそこに登場する弁護士です。本作では、兜町の女将軍の異名を 持つ明子の捜査(?)方法が非常に特徴的です。仮面を着た人物の存在はミステ リの定番ですが「彼・」と言う表現で冒頭から正体が明らかになるまで登場する 人物の設定は、これも新しい趣向です。そして表面的な誘拐事件と、陰の陰謀の 存在は誘拐ジャンルの一つの手法を示しました。そして、明子が全く報道以外の 情報なしで犯人にたどりついた方法は斬新としか言えません。
←雑誌・幻影城のベスト99(top)へ戻る
横溝正史
第1回探偵クラブ賞受賞作です。かなり短い作品ですが知名度は高いです。しか し、本作の内容を正確に理解している人は少ないと思います。これは映像化の弊 害と思います。本作は「金田一耕助」の初登場作です。後半からの登場になり、 探偵役捜しも作品の中に含まれます。しかし現在では、謎ではなくなっています 。また本作は叙述トリックの作品でもあります。しかし映像化では省かれている ので注目する人が限られています。密室ばかりに注目が行きがちですが、戦後第 1作長編として既に多くの試みがなされた本作の評価はもっと高くて良いと思い ます。
12.猫は知っていた
仁木悦子
第三回(公募は第1回)江戸川乱歩賞受賞作です。個人的には作者のベストとは 思えませんが、松本清張と共に20年代の推理小説から、30年代の開かれた推 理小説への移行果たした作品の意味は大きいです。内容は特徴のあるとは言えま せんが登場人物や文体などはそれまで推理小説を読まなかった人を呼び込む、明 るく親しみ易いものでした。現代では女流推理小説作家は珍しくありませんが、 その先駆者としての意味は、その作風と幅広い読者層と共に功績は大きいです。
13.悪魔の手毬唄
横溝正史
横溝正史ブームですので、得票の高い所に多くあります。投票するには読んでい る必要があり、読者数が多い作品が得票が多いのは自然です。本作は見立て殺人 を有効に使っており、設定等も推理小説の本道を行くものです。内容も横溝らし さが溢れており、読者が何冊目に読んだかによって印象が変わるのではないかと 推察します。
14.孤島の鬼
江戸川乱歩
乱歩と言えば「陰獣」が定番ですが、原稿枚数が本投票の規定に達しなかったた めにはずれました。本作は純粋な本格推理とは言い難い面もあり、かと言ってど の様な分類にいれれば良いか迷う作品です。乱歩ファンは多く、選ばれた無難な 作品として投票が多かったと思います。読んで面白い小説である事は間違いない ですから。乱歩の功績を長編小説のベスト選びで表すこと自体に無理があるので しょう。
15.ゼロの焦点
松本清張
松本の代表作として、まず浮かぶのが本作です。推理小説としての完成度も高く 読みやすく、時代の世相を背景にし欠点の少ない作品です。松本の他の作品同様 にけれん味は有りませんので、支持しない読者もあると思いますが、これはどの 作家にもあてはまります。ある人物の隠された過去が暴かれるのは、定番的とも いえますが逆に作者の筆力が反映されやすいといえます。鮎川哲也の「黒い白鳥 」と平行で連載されたのは偶然の不思議さです。
16.白昼の死角
高木彬光
多彩な作品と名探偵を生んだ高木の、ノンシリーズキャラクターの代表作の一つ です。ジャンルとしては「コン・ゲーム」詐欺でしょう。戦後、東大生から始め 生涯に多彩な詐欺を行った主人公を、暴こうとする者との駆け引きと手口の巧妙 さで見事に描いています。法律にも詳しい高木の1面がよく出ています。
17.高層の死角
森村誠一
社会派を経験した後の本格派と呼ばれた頃の森村のデビュー作です。密室から始 まり、ダイイングメッセージ、アリバイ崩しと惜しげも無くトリックを盛り込ん でいます。ホテル従業員の経験を生かした密室トリックは○○のアリバイと言え るもので、肩すかしというよりは新工夫というべきでしょう。また、アリバイも 方法自体はオーソドックスですが、後に類似・応用が多く書かれた盲点を狙った ものです。
18.薫大将と匂の宮
岡田鯱彦
作家の代表作はそれほど選び易くはないのですが、岡田に関しては本作が選ばれ る事に疑問が全くありません。作家にとって喜ばしいのか、残念なのかはよく分 かりません。国文学者の知識を生かした、源氏物語の新しく見つかった章と設定 された本作は、題材と共にその時代ならではのトリックと重なり記憶に残ります。
19.伯林 一八八八年
海渡英祐
高木彬光の資料集めを手伝い、「成吉思汗の秘密」に感動してペンネームにした (海を渡る英雄)作者の乱歩賞受賞作です。本当かどうか不明の噂では、女性名 のペンネームで乱歩賞募集を考えていた高木が本作を読んで応募をあきらめたと もいわれています。歴史小説でも戦記小説でもなく、しかし有名な歴史上の人物 を主人公にした本作は最初の試みではないとしても、その完成度とインパクトは 大きく、この後に多くの類似作を生みました。
20.誘拐
高木彬光
高木の生んだ5人の名探偵の一人、百谷泉一郎・明子夫妻の登場する本作もまた ミステリの新しい可能性と1分野の成功例で代表作です。高木は法廷物の日本で の先駆者で百谷はそこに登場する弁護士です。本作では、兜町の女将軍の異名を 持つ明子の捜査(?)方法が非常に特徴的です。仮面を着た人物の存在はミステ リの定番ですが「彼・」と言う表現で冒頭から正体が明らかになるまで登場する 人物の設定は、これも新しい趣向です。そして表面的な誘拐事件と、陰の陰謀の 存在は誘拐ジャンルの一つの手法を示しました。そして、明子が全く報道以外の 情報なしで犯人にたどりついた方法は斬新としか言えません。
←雑誌・幻影城のベスト99(top)へ戻る
雑誌・幻影城のベスト99。
選ばれた作品の感想です。
あくまでも主観的なものです。
選ばれた作品の感想です。
あくまでも主観的なものです。