電子回路の製品設計技術
設計とは、要求機能を実現させる技術活動全般を指します。
電子回路は複数段階に分かれた設計の積み重ねで最終製品まで作り上げます。
当然ながら現在では、全てを一貫して行うよりも、複数の部門・企業等で分担して行う事が普通になっています。
順番から言えば、1:論理的な配線設計、2:実回路板の選定、3:回路板配線の設計、4:要求特性と実配線図に基づき製造可能な配線図の作成(アートワーク)、5:製造方法・工程・マスク配列の決定、6:製造次工具・ツール等の作成、7:工程表・作業指示書・検査表とのドキュメントの作成、8:サンプル表の作成 と進めてゆきます。
(2007/04/08)
回路板の製造という場合は、その部署またはメーカーは上記の4,5以降から行います。
4は、製作する回路板の種類により作業を行う部署またはメーカーが異なるます。
非常に単純で製造方法やら、配線等にノウハウの要素が無ければどこで行っても同じです。
しかし、製造方法が特殊でノウハウが多くある場合は、それを知らない人が作成したものは基本的に使用できません。
一方、回路板の使用用途が特殊または高度で、1-4までが重要な設計やテストを行って決まった内容であるならば、5以下の製造上で問題があっても製造担当で変更する事はできません。
この状態は、非常に困った事です。
これを避ける為には、回路板の設計の初期段階から基本設計担当と製造担当が詳細を打ち合わせる必要があります。
現実は前者が、後者の事を詳しくはしらず色々なトラブルが発生しています。
(2007/06/05)
設計担当と、製造担当の事前の打ち合わせは有用な事はかなり確かですが、現実には非常に実現は困難です。
なぜならば、回路板技術は日々進歩していますし、受注する製品の要求機能も日々難しくなっているからです。
製造技術は、一般に詳細内容は製品設計担当は関わりません。
理由は単に仕事量の問題です。
はじめに要求機能等の新しいかつ難しいものが出されてきます。
製品見積もり・少量試作段階で量産実現性の検討を行います。
検討結果として新しい技術・装置等が必要と判断すると、技術担当に対応を依頼します。
連絡機能・役割分担機能が正確に働いておれば、量産設計担当が新製品の設計を始める頃には必要な製造技術が稼働している筈です。
従って、担当技術部門と製造部門を加えて製品設計の新技術使用部分を確認する必要があります。
新技術は、書類と移行会議で共有化するのが常識ですし、それは回路板でも同じです。
ただ、回路板業界の動きの速さや量産確認を新製品の量産で確認して新技術移行を完了する事が多いので、上記常識では時間的に対応は難しいです。
結局は定期的にいかに複数部門の担当者が製品設計レビューを含む打ち合わせ・会議を行うかが重要になります。
そこで方向つけを行い、その後は設計担当が必要に応じて個別に対応する事になります。
(2007/12/25)
回路板の製品設計に限れば、汎用品ではコストダウンとの争いになります。
製品設計の内容で製造工程・品質管理が変わります。
理由は簡単で回路板の製造の容易さと品質の維持は、製品設計にかなり比例的に依存します。
いわゆる作り込みの可能な製品設計がどの程度出来るかの問題です。
作り込みが可能とは、1:熟成した技術で安定した製造・品質が期待できる事、2:製造設備・ツール等で製品機能が決まり製造上のバラツキ等の管理がツールと装置の管理に置き換えられる事、3:日々安定量の類似製品・製造工程が稼働していて新規製品であっても安定した製造・品質が期待出来る事です。
それが何故製品設計に関わるのかというと、製品の要求仕様の実用的理解・製品品質仕様の実用的理解・製品自体に設定された使用上の機能余裕の有無の理解などで製品設計の内容が変わり・製品設計の自由度が変わるからです。
(2008/06/03)
論理設計・機能設計・配線設計(結線)
基本的に電子回路板は部品のひとつです。
従って、最終製品に必要な要求内容から次第に、実回路として現実化してゆきます。
すなわち、他の部品の種類や配置が決まってから、それに合わせて回路板の要求内容が決定されてゆきます。
従って、一番最後に仕様がきまる部品とも言われます。
一番自由度が少ない状態で、設計されるので共通部品になる事は少なく、ほとんどが新規設計品になります。
簡単にいえば他の部品・部分の機能からくる設計上の歪みをすべて引き受ける形になるのが回路板といえます。
(2007/04/08)
回路板のコストはその構造の単純さや、製造コストや要求特性で決まります。
しかし他の部品が決まってから、それらを使用することを前提に回路板を作ると、僅かな事で非常にコストがアップします。
最終製品全体から見て、回路板のコストと機能を如何にバランスを取るかは、初期設計者の能力による所が多いです。
しかし一般に回路板に関わる部分はノウハウの多い実務的な内容で、初期設計者が理解して設計に取り入れる事は多くありません。
むしろ、量産に入ってから全体の見直しを行い、結果として設計の変更を行う事が非常に多いです。
その時に回路板は必ずと言ってよいほど変更がある部品といえます。
回路板の製造は、同時に設計変更にいかに対応するかの技術とノウハウとも言えます。
(2007/06/05)
新設計品の量産移行方法は、各メーカーごとに独自の工夫でおこなっています。
いくつの段階を設けて対応するかで変わります。
この部分はノウハウになっており、詳細は公表されません。
組織自体の問題でもあります。
量産移行された製品または量産移行中の設計変更も同様です。
段階・組織のどの部分で設計変更の対応をするのかを明確に事前に定めておく必要があります。
そして、この部分の仕組みがしばしば発生する設計変更に対していかに強いかを決めます。
設計変更には費用が発生します。
費用の見積もり後に実施する場合と、設計変更を優先させる場合があります。
後者の場合は併行作業が可能な組織・仕組みになっている必要があります。
(2007/12/25)
設計変更は基本的にはユーザー・機能設計者の承認が必要です。
しかし現実は、機能が変わらない・機能仕様が不足している時の改良等は回路板製造側で判断します。
理由は、製造ノウハウに関わる事でユーザーで判断できない事であると共に製造側では判断出来る事項だからです。
勿論、ユーザー設計ミスによる設計変更は、ユーザーのみ判断可能ですので、新製品と同様の事を行います。
(2008/06/03)