推理小説読書日記(2025/11)
2025年11月04日
バスカヴィル館の殺人<高野結史>
2025年の作品だ。「推理ゲーム」を舞台にしたシリーズ?の1作だ。運営者組織は高額で請負った「探偵」役のために、実際の殺人事件を計画して演じて、「探偵」に犯人を見つけさせる。 客の「探偵」を満足させるために難しいが、解けるように誘導する。だが予期せぬ事件が起きて、どんどん混乱してゆく。
2025年11月04日
神の光<北山猛邦>
2025年の作品集だ。5作の個別の短編からなる短編集なのだが、全てに統一されたテーマがあり、それが「消失」となっている。時代も、背景も、設定も、さらには謎のジャンルも異なる。 それらが異なることが、謎の設定と密接な関係があり、登場人物にとっての奇跡が起きるかのように見える。
2025年11月04日
しらない町<鏑木蓮>
2011年の作品だ。主人公の門川は映画監督が志望だ、メンテナンス関連の会社でアルバイトしている、そこでは高齢者の孤独死と出会い、その事後処理も仕事になっている。その一人 が残した、映像等から自主制作映像を見つけ、その映像と死者に興味を持ち、そのドキュメント映画を計画して取材を始める。
2025年11月04日
手妻の珊次捕物控<黒部渓三>
1954年の作品集で、再編集で復刊された。手妻が得意な岡っ引きの珊次と、その手下で生活も共にする金時の金太郎が主人公の、捕物帖だ。上司の江戸定め廻り同心・瀬尾金四郎と、 少数の他の岡っ引きが加わり、多数の事件が起きて解決してゆく。大掛かりな仕組みが真相の事件が多いのが目立つ。
2025年11月04日
地下鉄伸公<三木鬼一>
1956年の連作作品集で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。作者名は「草冠に鬼」だ。浅草のスリの小山伸吉、通称地下鉄伸公が主人公のユーモア小説だ。洋裁店主の お京の居候の主人公が、関わったり頼まれるトラブルをしばしばスリの腕を利用して解決してゆく。
2025年11月04日
天河伝説殺人事件<内田康夫>
1998年の作品で、電子書籍で読んだ。浅見光彦シリーズで長めの長編だ。能の家元の事件と、不思議な形の鈴が絡む事件とが並行して描かれる。その先には、奈良県吉野とその奥の 天川村とそこの天河神社が絡む。取材で現地にいた浅見が、それぞれの被害者の家族女性と出会うことで事件に巻き込まれてゆく。
2025年11月10日
闇に用いる力学 赤気篇<竹本健治>
1997年の作品で、2021年に改訂決定版が出版された。本作に「黄禍篇」「青嵐篇」とが続く大作だ。本作「赤気篇」もそこそこ長いが「登場人物一覧表」(なげこみ栞)の登場人物 が概ね登場して終わり、それはようやく序章が終わった進行具合のようだ。
2025年11月10日
聖女の論理、探偵の原罪<紺野天龍>
2025年の作品だ。章ごとに個別の事件がある様にも見えるが、全体が繋がる構成であり、連作長編とも普通の長編とも言える。連作的には、探偵は新興宗教の聖女・聖天祢で ワトソン役は元高校生探偵の新道寺浩平として進行してゆく。そして、長編としての展開が始まってゆく。
2025年11月10日
私のハートにあなたのメスを<辻真先>
1983年の作品だ。現在でいうと、架空設定のミステリになるだろう。大学学長が女子大生・久米志摩子を絞殺してしまい、同じ派閥のメンバーらは隠蔽のためにバラバラにして、 それぞれが異なる死体処理を行う。学長の息子の家庭教師の岩手軍太はなぜか志摩子の幽霊が見えて、その救出のためにバラバラの死体の行方を追うことになる。
2025年11月10日
蝦夷大王の秘宝<芦辺拓>
2025年の作品で、時代小説文庫の1冊だ。副題が「お江戸三爺からくり帖」で、3人の主人公は、画家の葛飾北斎と、作家の式亭三馬と、戯曲作家の鶴屋南北で、シリーズに なる様だ。本作では、松前藩が持つ秘宝の隠し場所を探す謎に絡む、事件に対して3人の特技を発揮して都合よく収める。
2025年11月10日
本好きに捧げる英国ミステリ傑作選<>
2021年に英国でマーティン・エドワードが編んだミステリのアンソロジーで、2025年に翻訳されて日本で出版された。16作家の作品を収録しており、多くは日本でも名を知られた 作者であり、本格ミステリのファンにはうれしい作家・作品も多くある。続編も期待したい。
2025年11月10日
刑事捜査<鷲尾三郎>
1960年の作品集で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。短編「悪の末路」「悪魔の罠」「悪の代償」「悪女の顔」「悪の囁き」「悪の敗北」「悪魔の海」を収録する。 内容、スタイルは多彩な短編集だが、全てに内藤信吉警部が登場する。「悪魔の海」は内藤が石川県輪島署の警部補時代の作品で、その後に異動になる。
2025年11月16日
幽霊病院の惨劇<篠田秀幸>
2000年の作品だ。作者は、デビュー作以来、「読者が犯人で被害者」の大技に再度挑戦する、と言う。当然の様に、作中作や独白や手記やドキュメントを含み、複数視点の構成に なっている。さらには時代背景も大きく2つに分かれている。作者と同名の主人公であり、いかにも大技向きの仕組みと構成だ。
2025年11月16日
「真」犯人<石持浅海>
2025年の作品だ。芸術村という閉ざされた空間が舞台で登場人物はニックネームで呼ばれ、「村長」の基準にあった芸術家が一定のルールで生活している、視点は女性のわたしこと 「丁稚」だ。死体が見つかりスタッフらは「村長」の指示で「仮犯人」を決めて隠滅を図る、わたしはその偽のストーリーを考えて、隠滅工作をすることになる。
2025年11月16日
熱帯夜<山崎洋子>
1991年の作品だ。離婚して執筆活動からテレビ出演をする女性評論家、理解しないが経済的に頼る夫に悩む女性弁護士とが主人公で、どちらも家庭に問題を持つ。女性弁護士は子殺しの女の弁護で それを社会問題化しての無罪を狙い、女性評論家と手を組む。だが思惑が異なり、それぞれの抱える問題もあった。その結果でストーリーが次々かわる展開になる、サスペンスだ。
2025年11月16日
不思議なソオダ水<小沼丹>
1970年の作品集で、2025年に復刊された。電子書籍とペーパーバックとが同時に出版される「ピー、プラス、ディー、ブックス」の1冊だ。短編を10作収録する。登場人物は カタカナ書きの名前で語られており、それらの内容とテーマは色々だが、全作品にユーモアが強く流れる。
2025年11月16日
風を彩る怪物<逸木裕>
2022年の作品だ。音感に優れるが自分の演奏に悩むフルート奏者・名波陽菜と、オルガン製作者の父・芦原幹の側でその仕事を見て学んだ娘・芦原朋子が主人公だ。幹は地方のホールから オルガン制作を頼まれ、朋子や地域の仲間らと作り始め、さらには陽菜にも協力を求めた。幹が森の中で死に、朋子は反対も多い中でオルガン制作を続ける。朋子と陽菜は幹の思いを知ろうとする。
2025年11月16日
歪んだ空白<森村誠一>
作者の初期作品から1997年に編まれた作品集で、電子書籍で読んだ。短編6作を収録している。内容的には、本格ミステリが含まれる、さらには犯罪小説風に描かれている作品でも トリックを含む作品が多い。作者の活動初期の傾向がわかる作品集だ。
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2025/10に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。