推理小説読書日記(2025/09)
2025年09月05日
まやかしうらない処 災い転じて福となせ<山本巧次>
2022年の作品で、シリーズの2冊目だ。女占師・千鶴が主人公で、仲間は元役者の梅治と元岡っ引き・権次郎だ。千鶴はニセ占師だが観察眼と推理力で客を丸め込む。 さらには儲け話と気づくと調べてゆく。贋金騒ぎを調べてゆくと、事件は巨大化してゆくことになる。
2025年09月05日
古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸<小山力也>
雑誌への長期連載後に、2025年に出版された。本を膨大に買い込んで魔窟化した日下三蔵邸を、本人と著者と古書店主・小野の3人で少しずつ整理してゆくドキュメントだ。 マムアックな本、レアな本、同人誌等が続々と出てくる、まさかのダブり本が続出する。色々な方法で多数を処分して整理してゆく。
2025年09月05日
趣味のモダン・アラカルト<湯浅篤志>
2024年に出版された研究書だ。副題が「大正、昭和、戦後のひととき」で、著者によると2010年の「夢見る趣味の大正時代」の続編だという。テーマは「趣味のモダン」で、 時代順に並べて、人々がこだわった文化表象の流れが見える形にしたとも言う。
2025年09月05日
横溝正史探偵小説選4<横溝正史>
2016年の再編集の作品集で、時代小説を収録した。「黒門町伝七捕物帳」の短編6作を収録し、「お役者文七捕物暦」から3作を収録する。それに加えて、ジュブナイル中編 「しらむ火秘帖」を収録した。「黒門町伝七捕物帳」は捕物作家クラブの共同企画で横溝も参加した。
2025年09月05日
ドナウ川五つの驚異<ジブコビッチ>
2011年の作品集で、2025年に翻訳されて日本に紹介された。セルビアの作者が、ドナウ川をテーマに、レーゲンスブルク、ウィーン、ブラチスラヴァ、ブタペスト、ノヴァ・サド の各地にかかる橋を舞台に書いた。
2025年09月05日
雪よ荒野よ<佐々木譲>
1994年の作品で、1997年に文庫化された。明治時代の北海道を舞台に、アメリカ西部を舞台にしたウエスタンをモチーフにして描いた、「雪よ荒野よ」「二風谷決闘録」 「誰ぞ許さん」「犬は踊らず」の4作を収録した。作者のあとがき「移植の試み」も収録する。
2025年09月11日
雪山書店と愛書家殺し<アン・クレア>
2023年の作品で、2025年に翻訳されて日本で出版された。雪山の書店のエリーが主人公で、姉のメグとの姉妹が中心となる。姉妹の従姉妹のローナが始めたのが結婚仲介業で 断れない二人が無理やり参加される。その後にメグの相手が殺害されて、2人は連続して起きる事件や過去の事件に巻き込まれてゆく。
2025年09月11日
花伏せて<山本巧次>
2020年の作品で、副題が「江戸の闇風2」だ。主人公は常磐津師匠のお沙夜で、裏家業を持つ。仲間に彦次郎と鏑木左内がいて、悪党から金を盗むべく動く。だが色々な人物が からみ、それぞれが互いに出しぬきを図る。詐欺同士の争いが展開する。
2025年09月11日
アミュレット・ワンダーランド<方丈貴恵>
2025年の作品集だ。犯罪者専用ホテル・アミュレットホテルを舞台にして、女ホテル探偵・桐生が警察を排除した独自のホテルのルールで事件を解決してゆく。5話からなり、 独立した話だが弱い関わりはある。犯罪者・元犯罪者と、特技の持ち主と情報も持ち主が続々と登場して、バトルしたり協力したりで急に話が展開してゆく。
2025年09月11日
五稜郭残党伝<佐々木譲>
1991年の作品だ。明治2年の五稜郭の降伏の前に逃亡した隊士二人の逃亡生活を描く。残党狩りの小部隊が作られて残党を追う。広い蝦夷には処処に町や、開拓地域や先民族らが 存在する。それらが、逃亡者と追跡者に関わり、それぞれが悲劇的な結果になってゆく。
2025年09月11日
コージーボーイズ、あるいは四度ドアを開く<笛吹太郎>
2025年の作品集で、短編7作からなる。「コージーボーイズ」シリーズの2作目であり、おおまかな設定も本としての構成も、「アシモフの黒後家蜘蛛の会」を愛して意識している。 4人の会合にはゲストが呼ばれ、謎は店長が解き明かす。店長の助手が登場して、店長不在時には代わりを務める。
2025年09月11日
火の十字架<森村誠一>
1980年の作品で、電子書籍で読んだ。多くのページが、第二次大戦のミッドウエィ海戦を描く、その勝敗を分けた顛末が書かれており、その中のアメリカ操縦士と日本の操縦士 とのエピソードが語られる。戦後長く立ち、殺人事件が起こりその関係者に戦士たちと遺族が関わっていた。
2025年09月17日
ネメシスの契約<吉田恭教>
2013年の作品だ。記者・周防正孝と、厚労省の向井俊介と、警視庁刑事の副島佳苗らの複数の視点で複数の事件が描かれてゆく。それぞれは家庭や職場に事情を持っている。 過去から現在までの多数の事件が、次第につながるとともに新たな問題が浮かんでくる。誰が誰に復讐していおるのか。
2025年09月17日
エルギスキへの旅<森下一仁>
2025年の作品で、1991年から長く雑誌連載された。世界騒乱ごの時代に主人公の少年は父とロシアからの移住民の村にゆき、行方不明の母の消息を探した。少年は出会った少女に 関心を持ち、シャーマンにも興味を持つ。のちに少年は研究員の調査隊とバイカル等のロシアを訪れ、大きく運命が変わる。
2025年09月17日
合作探偵コレクション1<>
2022年の再編集作品集だ。リレー形式で書かれた合作探偵小説集の1冊目だ。「五階の窓」「江川蘭子」「殺人迷路」「黒い虹」を収録する。戦前作品で、当時の代表 作家が参加しているが、リレー合作故の制約も多い。江戸川乱歩はほぼ初回を担当する。代作もあるかもしれない。
2025年09月17日
無気力探偵2<楠谷佑>
2017年の連作集で、4章からなる。副題が「赤い紐連続殺人事件」で、無気力な天才高校生・霧島智鶴が主人公の2冊目だ。1作目の登場人物に加えて、ライバル的な警察庁の警部・ 上諏訪雅臣が登場して色々な形で事件と霧島に絡んでゆく。霧島は、持ち込まれる友人や所轄刑事らからの事件を解決する。
2025年09月17日
小説の神様<相沢沙呼>
2016年の作品だ、推理小説かどうかは微妙だ。売れない高校生作家・一也は、転校生の人気作家・詩凪と合作をすることになってしまった。ストリーを詩凪が考えて、一也が 小説に書いてゆく。たびたび揉めてゆくうちに、詩凪の抱える秘密に気づいてゆく。
2025年09月17日
江戸っ子浪人<九鬼紫郎>
1960年の作品で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。題名通りの時代小説で、江戸が舞台だが伝奇的な味も強い。主人公は松平京四郎でその取り巻きらと、 多数の人物が入れ替わり登場し、平賀源内も登場する。
2025年09月23日
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 司法解剖には解体新書を<山本巧次>
2022年の作品だ。現代のOLがタイムスリップして江戸時代で岡っ引きになり活躍するシリーズの9作目だ。科学おたくが江戸の事件の科学捜査に協力する。この本では死体の 解剖を図るが失敗する、だが何故に妨害されたのかで不審が広がる。題名「司法解剖には解体新書を」は内容とは、ずれがあると感じた。
2025年09月23日
黄色毒矢事件 少年探偵春田龍介<山本周五郎>
1930-33年の作品を再編集した作品集だ。先に「山本周五郎探偵小説全集」として出されたシリーズの1巻目が「少年探偵春田龍介」でありそれと、一部をのぞいて重複する。 上記を含めて、文庫版で4冊で「少年探偵春田龍介」を組んだので、その1冊目は重複が多くなったようだ。
2025年09月23日
粒と棘<新野剛>
2025年の作品集だ。戦後の東京を舞台にした短編6作からなるが、一部に登場人物の重複があるので連作として見ることもできる。それぞれの主人公は異なり、視点も変わるが、 背景の占領軍やGHQの影響の比重が高く、強い時代背景を感じる作品となっている。
2025年09月23日
クローゼットファイル<川瀬七緒>
2022年の連作作品集だ。仕立屋探偵・桐ケ谷京介と古着屋・水森小春が探偵役の2作目であり、初の短編集で6作を収録する。第1作目で知り合った所轄警部・南雲隆史は2人の 能力を認めて、なんとか警察捜査に組み込みたいと動き、新たな相棒の八木橋刑事と対応する。主に古い未解決事件が服等の証拠品が手掛かりになる構成が多い。
2025年09月23日
神の地は汚された<橘外男>
2017年に復刊された作品集で、5作を収録する。副題が「橘外男選集2 悲哀の満洲編」であり、日本の満洲侵攻から満洲国設立、そして第二次対戦後のロシアの攻撃と支配と 殺戮と占領の時代を描く。そのなかで右往左往する日本人たちを中心に描く。一人称視点の多くは橘外男となっている。
2025年09月23日
京友禅の秘密<山村美沙>
1986年の作品集で、電子書籍で読んだ。キャサリンと浜口一郎のコンビのシリーズで、中編「京友禅の秘密」「十条家の惨劇」と、短編3作を収録する。京都府警の狩矢警部らも 登場するが、警察が自殺扱いした事件や、事件として認識していなかった事件を、キャサリンが他殺に気づく構成を取る。
2025年09月29日
十戒<夕木春央>
2023年の作品で、2025年に文庫化された。和歌山の小さな島の館に爆発物を敷けられて閉じ込められた人々は、殺人事件が起きて、さらには犯人からの手紙で10の事柄の順守 を求められる。「殺人犯を見つけてはいけない」を含む指示のなかで、さらに事件が起きてゆく。
2025年09月29日
冒険小説論<北上次郎>
1993年の評論・研究書で、改訂と文庫化され、2024年にも文庫出版された。19世紀の欧州のヒーロー小説を中心に描き始めて、多数のジャンルの多数の作家を読んで紹介してゆく。 アメリカを経て、中国の水滸伝を紹介する。そして日本で、里見八犬伝から明治の各種小説に進み、順次に大薮春彦・夢枕漠まで展開してゆく。
2025年09月29日
雪の花<秋吉理香子>
2009年の作品集だ。作者の最初期に書かれた短編を集めた作品集だ。「女神の微笑」「秘跡」「たねあかし」「雪の花」を収録する、テーマ的には多彩な作品集だ。それに ついては、作者の「あとがき」で詳しく書かれている。
2025年09月29日
拒絶の理由<堂場瞬一>
2025年の作品だ。「警視庁総合支援課」シリーズの4作目で、柿谷晶が主人公だ。本作では柿谷の家庭と過去についても並行に描かれている。母の入院と行方不明の兄との偶然の 出会いとがある。事件は同僚を殺害した事件だが動機は黙秘し、家族は対応がおかしく、新潟に逃げるように引っ越す。関係者の拒絶に理由はあるのだろうか。
2025年09月29日
甘いものには棘がある<山本巧次>
2024年の作品だ。副題が「奥様姫様捕物綴り(一)」で、主人公は藩主の奥様で好奇心が旺盛で実は剣術の達人だ。その相方はその娘の姫様でやはり好奇心強く、剣術も強い。 その世話役は剣術が駄目で、この二人の勝手な行動を止められない。二人はあちこちで起きた菓子で体調を崩した事件を調べ始めた。
2025年09月29日
坊ちゃん殺人事件<内田康夫>
1992年の作品で、電子書籍で読んだ。浅見光彦が主人公のシリーズの1冊だ。浅見の一人称で、さらには夏目漱石の「坊ちゃん」の語りで書かれており、登場人物の仇名にも同じ 名称が使われている。浅見も坊ちゃんの性格が乗り移り、いつにもまして気が短く喧嘩ごしだ。
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2025/09に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。