推理小説読書日記(2025/08)
2025年08月06日
嘘つきたちへ<小倉千明>
2025年の連作集で、5話からなる。デビュー短編を含む、デビュー作品集であり、連作ではなくて、純粋の短編集だ。長さも内容もバラバラであり、背景設定とキャラクターと ストーリーとの組み合わせに工夫を凝らした作品が並ぶ。
2025年08月06日
任侠楽団<今野敏>
2022年の作品で。2025年に文庫化された。経営再建に興味を示すヤクザの親分・阿岐本と、いやだが仕方なく従う代貸・日村、そして組の子分たちが活躍する。今回の依頼は 楽団員の揉め事があるコンサートが近い楽団の対策だったが、暴力事件が起きる。そこに捜査に来たのが警視庁の碓氷刑事で、今回はヤクザと組んで捜査することになる。
2025年08月06日
メナハウス・ホテルの殺人<ノイバウアー>
2020年の作品で、2023年に翻訳して日本で紹介された。1926年のエジプトとそこのメナハウス・ホテルが舞台だ。若い未亡人のジェーンが主人公で探偵役だ、そこに正体不明の 自称銀行員が絡む。ジェーンは死体発見者になるが疑われてしまい、調べ始めると別の事件も起きる。
2025年08月06日
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 妖刀は怪盗を招く<山本巧次>
2020年の作品だ。現代のOL・関口優佳が江戸時代にタイムスリップして、女十手持ち・おゆうになって現代の科学を使って捜査する捕物帳のシリーズの1冊だ。歴史より1年早く 鼠小僧があらわれ、さらに妖刀村正の盗難事件が起きる。
2025年08月06日
朝からブルマンの男<水見はがね>
2025年の作品集で、5話からなる連作集だ。大学ミステリ研の会長で先輩の・葉山緑里とむりやり引き込まれた1年生の主人公の私・冬木志亜が探偵役だ。日常の謎と、盗難等の 小さな事件、あるいは過去の事件について推理を楽しみながら、謎を解き明かしてゆく。楽しんではいけない事件まで楽しんでしまう。
2025年08月06日
昼下がり 夜明日出夫の事件簿<笹沢左保>
1991年の作品で、電子書籍で読んだ。元刑事のタクシードライバー・夜明日出夫が探偵役のシリーズの1作だ。ついていない日に乗せた女性客、支払いでひともめする。トラブルに巻き込まれた 社長秘書を乗せて、その相談を聞く。その男に関わる犯罪に関わることになってしまい、遠距離運転となる。
2025年08月12日
不可解事件請負人火垂柚葉<安萬純一>
2025年の作品だ。探偵・火垂柚葉と助手・油杵島慎二はどこかからの依頼で不可解事件を捜査する。捜査する刑事らからも情報を聞く。だが火垂の妹の刑事・菊井梨穂は敵意を持って 火垂を疑う。不可解事件は続き被害者が増えるが、捜査陣も、火垂らも苦慮する。捜査側でも手を結んだり、敵対したり錯綜する。
2025年08月12日
沙漠の白鳥<渡辺啓助>
1940-1943年の作品を、再編集した復刊作品集だ。戦前・戦中に禁止されていなかった、防諜小説と呼ばれるジャンルの作品集であり、当時の軍の要請等で背景・設定が制限された 中でのスパイ・冒険小説だ。時代背景を前提にして読むことになる作品だ。
2025年08月12日
祝祭の子<逸木裕>
2022年の作品だ。14年前に宗教団体で大量殺人事件が起きた、そこでは指導者が育てた子供らに信者らを殺害させたという。そこで生き残った子供らは「生存者」と呼ばれ、 人目を避けて暮らした。その事件の指導者が殺害され、「生存者」らも狙われ、互いに再会する。
2025年08月12日
芦辺倶楽部 第3号<>
2025年の同人雑誌だ。長編・獅子宮敏彦「三ッ贄島の惨劇」と前橋梨乃「イセカイ・ネスティング」と、短編・芦辺拓「抛物線殺人事件」を掲載する。「三ッ贄島の惨劇」は 作者が「横溝の名作を元にし、歴史のトンデモ解釈を挟む。トンデもなトリックのミステリ」と紹介している。
2025年08月12日
東京ゴリラ伝<渡辺啓助>
1957年の作品集で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。長編「東京ゴリラ伝」と短編「海の墓は閉ざされず」「吸血劇場」を収録する。「東京ゴリラ伝」は、私立探偵の 一本木万助が主人公で、奇妙な死体が見つかり、目撃情報からゴリラらしきものとそれをあやつる四本指の男が浮かぶ。
2025年08月12日
清少納言殺人事件<山村美沙>
1996年の作品で、電子書籍で読んだ。キャサリンと浜口一郎のコンビのシリーズの1作だ。清少納言と枕草子、さらには紫式部らの歴史と文学と関わる謎の話題も登場する。 そして、それらもやや関わる現代の連続殺人事件が起きて狩矢警部らとキャサリンが調べはじめる。
2025年08月18日
堕天使の秤<吉田恭教>
2014年の作品だ。警視庁捜査1課・南雲とその班長・牛島と同僚の茂木と高村らが交通事故を調べる、事故車の4人の身元と関係が疑問で、犯罪が絡むと思われた。さらに厚労省の職員 が調査していた事件との関わりも浮かんでくる。そして次第に、それらに関わる裏の大きな犯罪も浮かんでくる。そして捜査員個人はそれぞれの事情を持っていた。
2025年08月18日
貧乏カレッジの困った遺産<ジル・ウオルシュ>
2006年の作品で、2024年に翻訳されて日本に紹介された。アガサ・カレッジの保健師のイモージェン・クワイが主人公で探偵役のシリーズの3作目だ。カレッジの卒業生で実業家の ファランと引き抜かれて役員になったアンドルーがいた。カレッジの新・会計係がファランの会社に多額の投資をしたが、ファランの死で暴落してカレッジの経営も一気に悪化した。
2025年08月18日
翹望<橘外男>
1939年の新聞連載長編作の単行本化で、短編「恋愛異変あり」も収録する。橘は実話風小説でも知られているが、その内容には偽りが含まれたり、故意に隠されたりする内容も 多くあると言われている。橘は幼年期に長崎の大村にいたとされ、そこを舞台にした作品がある、本作も大村を皮切りにして姉と弟の運命が描かれてゆく。
2025年08月18日
無気力探偵<楠谷佑>
2016年の連作集で、5章からなる。副題が「面倒な事件、お断り」で、天才高校生・霧島智鶴は解決能力があるが無気力だ。そこに落ちこぼれ刑事や、同級生らが事件を持ち込む。 頭脳では解くが、それ以上は何もやりたくない。さらにそのようなやり方の仕事があればとも考えている。
2025年08月18日
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 殺しの証拠は未来から<山本巧次>
2024年の作品だ。現代のOLが江戸時代と自由に行き来して、さらには江戸で女岡っ引きとして活躍するシリーズの1作だ。現代にその江戸時代と思われる骨が見つかり、年代は アバウトだがその場所を調べはじめる。そもそも江戸では事件になっていない事件の捜査は可能か。
2025年08月18日
赤い雲伝説殺人事件<内田康夫>
1986年の作品で、電子書籍で読んだ。浅見光彦シリーズの1作だが、複数の視点で描かれる。その代表の一人が新進画家の小松美保子であり、その作品「赤い雲の絵」がモチーフで あり、さらには動機にもなっている。事件は山口の島の原発建設計画であり、賛成反対の両派が関わるのか。
2025年08月24日
残虐性連鎖反応<都筑道夫>
主に昭和30年代の作者の未刊行作品を集めて、2025年に出版された。編者によれば「実話小説」で「主に海外の実話を元にした小説風の読み物」であり、「小説ともエッセイ ともつかない特殊な作品」だ。それがかなりの量が未刊行だった。
2025年08月24日
爬虫類館の殺人<カーター・ディクスン>
1944年の作品で、2025年に新訳で出版された。第二次世界大戦で空襲がはじまりつつあるロンドンが舞台だ。その背景が作品全体に深く関わっている。動物園では閉園と 動物の処置が必要であり、特に爬虫類等では対応が必要だ。その中で起きる、目ばり密室をメリベールが解く。
2025年08月24日
ジャーロ100<>
電子版雑誌・ジャーロの100号記念号で、紙媒体で2025年に出版された。長編・「最後のあいさつ」阿津川辰海と、「アトミック・ブレイバー」呉勝浩が収録されている。前者は 本格ミステリで、後者はSFでありミステリかは微妙だ。その他記念号記事が多数ある。
2025年08月24日
放課後ミステリクラブ7<知念実希人>
2025年のジュブナイルだ。シリーズ7作目で副題は「音楽堂のゆうれいとおどるがいこつ事件」だ。主人公のミステリクラブの3人が、副題そのままの事件を夜の校舎に忍び込んで 解決する。子供向けのおばけ屋敷ミステリだという。
2025年08月24日
名犬ルパンの檜舞台<辻真先>
1984年の作品だ。名犬ルパンシリーズの1作だ。本作は軽井沢が舞台でさらにはそこでのSF大会が描かれる。当然に書かれた当時のSF作家が実名で大量に登場することになる。 大挙して参加したルパンらの一行はそこでの仮装イベントでの事件に遭遇する。
2025年08月24日
悪魔の唇<渡辺啓助>
1956年の作品で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。私立探偵・一本木万助が主人公であり、事件は阿矢子からの依頼から始まるが、捜査小説の形で始まるが、展開は 奇妙でかつ意外で幻想・怪奇なんでもありで進んでゆく。
2025年08月30日
明智卿死体検分<小森収>
2022年の作品集で、2025年に文庫化された。作者のデビュー作であり、長編「明智卿死体検分」と短編1作を収録する。時代は天正時代で、さらに魔術が発達した架空の世界が 舞台だ。作者はギャレットの世界を、日本の時代におきかえたという。探偵・明智卿と陰陽師・安部天晴とが不可能犯罪を捜査する。
2025年08月30日
雨水 東京湾岸署安積班<今野敏>
2024年の連作集を、2025年に文庫化された。東京湾岸署安積班の安積警部補が主人公で、班のメンバーと署の各部署員らと、事件関係者らが活躍する短編10作を収録する。 ロングシリーズのお馴染みのメンバーと時々登場する人と、初めて登場する色々な部署の担当者が新しい話題を提供する。
2025年08月30日
ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介<川瀬七緒>
2021年の作品で、2023年に文庫化された。桐ヶ谷京介の初登場作で服飾の特殊な知識を持つ、さらにその関係の特殊技能を持つ人々と繋がりを持っている。古着屋・水森小春 や手芸店主・寺嶋ミツが京介の相棒だが、複数の技能者らが登場する。警察側は特命捜査対策室の南雲警部と畑山刑事が関わる。
2025年08月30日
ウエッジフィールド館の殺人<ノイバウアー>
2021年の作品で、2023年に翻訳されて日本に紹介された。未亡人・ジェーンが主人公で謎深きその友人・レドヴァースが探偵役になる。旅行先のエジプトの事件後に、ジェーンは 叔母の恋人の男爵の館に滞在する。館で事件が起きて、館主に容疑がかかり、叔母に頼まれてジェーンは事件を調べ始める。
2025年08月30日
銀座事件<三上於菟吉>
1930年の作品で、2024年に復刊された。「銀座事件」は初出時の竹中英太郎の挿絵が共に復刊された。発行が竹中英太郎記念館であり、開館20周年記念復刊せあり、竹中の挿絵の復刊が 目的になっている。解説等でも、三上と竹中に関して語られている。
2025年08月30日
ハイビスカス殺人事件<西村京太郎>
1984年の作品で、電子書籍で読んだ。舞台は昭和46年の与論島で、沖縄の日本への返還前なので、鹿児島県奄美の南端の島の与論島はアメリカ領の沖縄に一番近い島だ。 頼まれて滞在する女性に会いに来た若杉が主人公だ。もう一人は東京の殺人事件を捜査する田島刑事で捜査で与論島にゆく。。
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2025/08に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。