推理小説読書日記(2025/07)
2025年07月01日
帝国妖人伝<伊吹亜門>
2024年の連作集で、5話からなる。明治時代の文士・那珂川二坊が不思議な事件の原稿を書くために、奇怪な事件を求めてゆく。「帝国妖人伝」として実在の5名との出会いと その成り行きを描く。その中に不可解事件や不可能事件が埋め込まれている。出会った時は歴史に名を残すかどうかは判っていない設定だ。
2025年07月01日
踏切の幽霊<高野和明>
2022年の作品だ。新聞記者・松田は退職して、女性向け雑誌の編集者に拾われて友軍記者となった。そこで投書にあった踏切に現れた幽霊談の取材を行うことになった。その取材の なかでその幽霊事件に関わる事件の存在に気づく。過去に起きた幽霊事件を調べてゆき、実証実験を実施して解明を目指すことになってゆく。
2025年07月01日
マーダー・ミステリ・ブッククラブ<ラーマー>
2021年の作品で、2022年に翻訳して日本で紹介された。アガサ・クリスティが好きな姉妹・アリシアとリネットは読書会を開くためにメンバーを募集した。多彩なメンバーが集まり、 会が始まるが、メンバーの一人が出席しなくなる。アリシアらはそれが事件と考えて解明のために捜査を始めた。
2025年07月01日
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 抹茶の香る密室草庵<山本巧次>
2023年の作品だ。現代のOLが江戸時代にタイムスリップして、現代の科学を使って捜査する捕物帳のシリーズの1冊だ。本作は日本家屋でしかも茶室で起きた密室殺人事件を 解明する。折しも現代はコロナウィルス感染騒ぎの真っ最中の設定だ。裏にタイムスリップを疑う人物と手がかりが語られる。
2025年07月01日
おさかな棺<霞流一>
2003年の作品で、電子書籍で読んだ。私立探偵・紅門福助が主人公のシリーズだ。四季とその旬の魚を題名にした短編4作を収録する。完結した4短編とそれらがつながる設定とが 存在する、連作長編との形をとる。日常の謎的な展開だが、殺人の謎も加わり、双方が関わる真相につながってゆく。
2025年07月01日
三世代探偵団 生命の旗がはためくとき<赤川次郎>
2020年の作品で、電子書籍で読んだ。天本幸代とその娘・文乃と孫・有里の三世代が主人公のシリーズの1作だ。幸代は天才画家で、文乃はシングルマーザーで、有里は 行動派のしっかり者で、それぞれの立場で事件に関わり、最後の皆が巻き込まれる。多数の事件が同時進行して時間と共に、状況が大きく変わってゆく。
2025年07月07日
夜と霧の誘拐<笠井潔>
2025年の作品だ。パリ等のヨーロッパを舞台に矢吹駆とナデイア・モガールが主人公のシリーズの8作目だ。長く書き継がれているシリーズで作者は10冊目での完結を目指すようだ。 全てのシリーズは2年程度の短い期間に続いて起きていて、時代ミステリとも言えて現代の科学捜査とは異なる。間違われた誘拐と同時に起きた複数事件が展開する。
2025年07月07日
最後の告発 警視庁文書捜査官<麻見和史>
2025年の作品集だ。警視庁捜査1課文書解読班が舞台で、そこの鳴海や矢代らが持ち込まれた事件を調べる。告発状が届き、そこでは過去の事件と容疑者の写真があった。 解読班は不審ながら調べるて解決する。さらに次の告発状が届く、その次にもまたもや告発状が届く。
2025年07月07日
家政夫くんは名探偵! 春の終わりの洗濯と選択<楠谷佑>
2020年の作品集だ。刑事・連城怜と家政夫・三上光弥が主人公のシリーズの3作目で、短編3作が収録されている。大学生で家政夫の三上は連城の家で時々働くが、住むところが なくなり連城の家で暮らすことになっる。三上の親友らと、連城の同僚らと共に、事件に関わり、最後に三上が謎を解く。
2025年07月07日
雪山書店と嘘つきな死体<アン・クレア>
2022年の作品で、2024年に翻訳して日本で出版された。アメリカ・コロラドの雪山にある書店が舞台で書店員の姉妹とその家族らがいる。そこで書店に来た後に殺害された 死体が発見されて、姉妹の妹・エリーが調べ始める。
2025年07月07日
拳銃無法地帯<九鬼紫郎>
1959年の作品で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。東洋探偵社の白井青児が主人公で同僚らと依頼された事件を調査・捜査する。その中で、次々と事件が起きて 拡大してゆき、ハードボイルド的なアクション万歳の展開となる。
2025年07月07日
佐渡伝説殺人事件<内田康夫>
1985年の作品で、電子書籍で読んだ。浅見光彦シリーズの1冊だが、浅見以外の視点から書かれた部分も多く、浅見の関わり方もいつもとは異なり、異色の展開を見せる。 過去の佐渡で起きた事・犯罪?、それに関わった複数の青年、その繋がりで現代に起きた事件を調べる。細い糸の捜査が、意外なほどに繋がってゆく。
2025年07月13日
スクランブル<若竹七海>
1997年の作品で、2000年に文庫化された。1980年に高校で起きた殺人事件が描かれる青春ミステリだ。15年後に仲間の一人の結婚式に、仲間らがあつまる。そこで、 参加者らは高校時代の事件の謎と真相に思いをかけてゆく。
2025年07月13日
読書会は危険?<パンディアン>
2023年の作品で、2025年に翻訳されて日本に紹介された。副題は「<秘密の階段建築社>の事件簿で、元手品師で娘のテンペストが主人公だ。社が改築した地下スペースで 読書会が行われて、その中で死体が突然に現れる事件が起きた。背景にテンペストの家族の秘密が存在するようだ。
2025年07月13日
新三郎捕物帖<楠田匡介>
1952から1959年の作品を再編集して、2025年に編んだ作品集だ。主人公は浪人・小松新三郎で、取り巻きが咄家の三笑亭夢楽で、さらに岡っ引きの豊田屋平吉が主人公の グループとなっている。苗字が異なる作品もある。時代背景は異なるがトリッキーな作品も含まれるミステリ色も濃い捕物帖だ。
2025年07月13日
謎解きエドガー・アラン・ポー<竹内康浩>
2025年の研究書・評論だ。副題は「知られざる未解決事件」であり、ポーの「犯人はお前だ」に隠された未解決事件を解きあかす。著者による「犯人はお前だ」の全訳が ついている。全体の半分くらいが「犯人はお前だ」に関することで、残りでポーの作品全体について述べている。
2025年07月13日
名犬ルパンと地獄谷<辻真先>
1988年の作品で、電子書籍で読んだ。中学校と中学生を舞台にした青春ミステリで、全10章の章題が「校訓第1条」のように統一さえている。そこに紛れ込んだ、ルパンや その仲間らが誘拐事件に関わってゆく。事件は猿が入る温泉で知られる地獄谷へと向かってゆく。
2025年07月13日
愛の殺人気流<山村美沙>
2000年の作品で、電子書籍で読んだ。京都の証券会社とそこの証券マン・岩木が主人公の作品だ。株取引が電子化される前の世界であり、証券マンが個人投資からの 買い注文、売り注文を電話等で受けて場に注文を出す取引が行われていた。株価が上がったり、暴落したりの中で、投資家の殺人事件が起きる。
2025年07月19日
イヴの末裔たちの明日<松崎有理>
2019年の作品集で、2025年に文庫化された。「未来への脱獄」「ひとを惹きつけてやまないもの」「イヴの末裔たちの明日」「まごうかたなき」「方舟の座席」を収録する。 タイムマシンや宇宙ステーション等の未来世界の中での、別れ道での主人公の選択を描いている。
2025年07月19日
家政夫くんは名探偵! 夏休みの料理と推理<楠谷佑>
2022年の3作からなる連作集だ。大学生で家政夫の三上光也が探偵役のシリーズの4冊目だ。三上が関わった事件や刑事・連城怜を通して関わることになった事件が描かれる。 ある時は安楽椅子探偵として、あるいは事件現場に関わりながら、謎を解いてゆく。
2025年07月19日
南九州噴煙の下で誰かが死ぬ<辻真先>
1990年の作品だ。イベントキャスターの葉月麻子が主人公で探偵役のシリーズの1作だ。マネジャーの堀喜平の父が突然に鹿児島から来て、葉月に喜平が殺人容疑で逮捕された ので助けて欲しいと頼んだ。葉月は桜島の噴煙の中でドタバタ騒ぎの中で調べ始める。
2025年07月19日
彼女が探偵でなければ<逸木裕>
2024年の連作作品集だ。私立探偵の森田みどりが主人公のシリーズの1作で、5作からなる。みどりは父の探偵社の課長として仕事している。時計師・九条の視点、みどりの 視点が3作、探偵社員・須見要の視点で描かれている。さらには最終話はみどりの父と、夫と子供らの家庭が描かれている。
2025年07月19日
扼殺のロンド<小島正樹>
2010年の作品で、2014年に文庫化された。4章それぞれに「??密室」の章題がついていて。不可能犯罪が続々と登場して進んでゆく。静岡県警・小沢と笠木刑事は困惑するが、 笠木の友人の海老原浩一が探偵役として飄々と自分のペースで事件を解決してゆく。
2025年07月19日
八月の降霊会<若竹七海>
1998年の作品で、2000年に文庫化された。富士山麓の山荘に多数の人が集められて、霊媒師による降霊会が行われた。そこで、霊媒師は参加者たちの隠されていた過去を 語るはじめた。降霊会の目的は何か、霊媒師は本物か、過去の秘密は本当か。謎が深まってゆく。
2025年07月25日
ミノタウロス現象<潮谷験>
2024年の作品だ。世界各地に角を生やした牛頭の怪物が現れるようになった。だがそれはあまり強くはなかった。その怪物の出現は予測できず当然にコントロールもできなかった。 そのような架空設定のなかで、不可能犯罪が起きる、そこでは誰かが怪物出現を利用したのだろうか。
2025年07月25日
断捨離血風録<日下三蔵>
長く雑誌連載した内容を2025年に出版した、ルポ風のエッセイだ。作者の家は長年に買い集めた本で埋まっていた。それを整理して処分しながら、並べ直して生活空間を確保してゆく。 日下に応援の古書マニア・小山と古書店・小野が加わり、さらの日下の家族を巻き込んでの長時間にわたる断捨離の大プロジェクトが描かれる。
2025年07月25日
あなたのためのショコラショー<内山純>
2025年の作品だ。主人公の八重樫靖羽は40才になり15年ぶりに財団法人で働き始めた。慣れぬ仕事と、色々な先輩同僚らに囲まれて戸惑ってしまう。そして同時期に出会ったチョコレート とその歴史を知ることになる。その双方が交わって、靖羽は仕事にも前抜きに対応してゆく。
2025年07月25日
戦国怪盗嵐丸<山本巧次>
2024年の作品だ。副題が「今川家を狙え」で、時代は桶狭間合戦後の駿府で力は衰えてきたが街は賑わっている。主人公の嵐丸は偶然に隠し金山の地図を見たことで、横取りを 狙う。そこに怪しげな仲間が増えて、ややこしい騒動にまき揉まれてゆく。
2025年07月25日
東海道綺譚<>
2025年に編まれたアンソロジーだ。東海道を舞台にした、時代小説・怪奇小説が集められた。「江戸珍鬼草子」入江鳩斎、「柳女」京極夏彦、「死神の松」澤田瞳子、「精進池」永井紗耶子、 「ばんば憑き」宮部みゆき、「ガリヴァー忍法島」山田風太郎を収録した。
2025年07月25日
迷犬ルパン、ハウステンボスを走る<辻真先>
1992年の作品で、電子書籍で読んだ。迷犬ルパンシリーズのトラベルミステリで、舞台の一つが長崎のハウステンボスとなるが、イベントキャスターの葉月麻子とこちらの登場人物らもまた 登場して、ビデオ撮影にルパンを登場させようとする。そして朝日刑事らも登場すると殺人事件が起きる。
2025年07月31日
暗転<堂場瞬一>
2012年の作品で、2015年に文庫化された。朝の通勤ラッシュで満員電車が脱線する事故が発生した。雑誌記者・辰巳はそれに乗り合わせた。滝本はその事故で恋人を亡くして生活が一変 した。老刑事・高石はそれまでの経験を超えた事故現場に衝撃を受けた。それぞれが真相を求めて事実を隠す鉄道会社に対する。真相がわかりづらく長期にわたる列車事故を短期間で描く ために後半が、強引な解決になった面が強い。
2025年07月31日
ルシファーは闇に煌めく<高野史緒>
2025年頃作品で、副題は「東京アークエンジェル・オーケストラ2」だ。アークエンジェル・オーケストラの次回演奏会が決まり、準備に入るが色々のトラブルが起きる。さらには 堕天使を名乗るオーケストラから批判と聞き比べ競争の話題が起きて、ネットで広がる。その経過と顛末とが描かれる。
2025年07月31日
英龍伝<佐々木譲>
2018年の作品で、202年に文庫化された。幕末の時代小説で、主人公は伊豆韮山代官・江川太郎左衛門英龍だ。英龍は若くして洋風の学問や技術に注目して学び、そのなかで黒船の 来航を予見して幕府に具申したが反応はなく、自ら砲術等の技術を学び、独自に兵器等の制作をも目指した。ペリー来航時には自ら交渉をおこなった。
2025年07月31日
電報予告殺人事件<岡本好貴>
2025年の作品だ。ヴィクトリア朝時代のイギリス・ロンドン近郊が舞台だ。拠点局間を電信で繋いでいた時代で、電信士が文を信号に変えて送り、受けた電信士が文に戻す。主人公の 電信士・ローラが殺人事件のたびに届く奇妙な電報の謎を追う。被害者名と別名があり、それは予告のようだった。電信という情報手段の時代を背景にした本格ミステリだ。
2025年07月31日
世界の終わりのためのミステリ<逸木裕>
2023年作品だ。人類が消えた近未来が舞台だ。半永久的な不老不死のヒューマノイドのミチは2つの安全機構が意識にプログラムされており自殺ができない。人が消えた世界でミチは 少年ヒューマノイド・アミと出会って、人類消失の謎や永遠に生きる意味を探す旅を続ける。
2025年07月31日
天草四郎の犯罪<西村京太郎>
2008年の作品で、電子書籍で読んだ。通りがかりの人物が棒術で度々に著名人を含む人を助けて、名を天草四郎と書いててんぐさと呼ぶと言った。助けられた人を中心に英雄と言われた。 男が望みは原城跡の整備だと言うと、そのために基金が集まった。だが棒術達人は嘘だと噂がたち、十津川も不審を持ち始める。
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2025/07に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。