推理小説読書日記(2025/02)
2025年02月01日
ロイストン事件<ディヴァイン>
164年の作品で、1995年に日本で翻訳して出版された、それを2024年に復刊された。ディヴァインの長編は前年に全て翻訳されたが、別の版元で絶版になっている作品が 復刊された。イギリスの本格派で、シリーズキャラクターを持たない。本作は主人公が父の死の謎と、過去の事件の謎とを調べる。
2025年02月01日
闇に消えた男<深木章子>
2024年の作品で、副題は「フリーライター・新城誠の事件簿」だ。新城と編集者・中島好美が、取材旅行中に行方不明になったノンフィクション作家の行方を追う。依頼人 は作家の妻だが、複雑な事情がありそうだった。原因不明の失踪とあいの動機探しは、謎の多すぎる関係者の中で進まない状況だった。
2025年02月01日
黒猫の小夜曲<知念実希人>
2015年の作品で、2018年に文庫化された。主人公の死神の僕と同業者は、天から地上に来て自縛霊を救う仕事をするが、黒猫と意識不明だった少女に乗り移った。 その姿で色々な迷う魂の救いに駆け回る。その中でそれぞれがある会社とつながりがあることが判ってくる。
2025年02月01日
名探偵犬コースケ 怪盗スカルの正体<太田忠司>
2024年の作品で、「名探偵犬コースケ」シリーズの2冊目だ。1冊で完結はしているが、それを取り巻く大きなストーリーは次号に続く形になっている。いつに完結するか 、あるいはしないのかは不明だ。主人公の少年が私立探偵の母を助けて、相棒犬のコースケと事件の謎を追う。
2025年02月01日
黎明に吼える<海渡英佑>
1981年の作品で、電子書籍で読んだ。明治15年に自由民権運動が盛んだが、その取り締まりも行われている。主人公・松岡良助は東京で色々な人物と出会うが、自由運動と 対立者らとも絡みを持つ。会津に帰郷するが家の事情や、福島自由党事件に巻き込まれる。
2025年02月07日
潮騒のアニマ<川瀬七緒>
2016年の作品で、2019年に文庫化された。法医昆虫学捜査官シリーズの5作目だ。舞台は伊豆七島の神ノ出島でミイラ化した死体は自殺とされたが、発見者のライターの 記事で疑問の声が大きくなり、昆虫学者・赤堀涼子と岩楯刑事らが再度調べ始めた。昆虫相がない不思議な状況の謎を追うと、意外な謎が浮かぶ。
2025年02月07日
ミセス・ハリス、国会へ行く<ポール・ギャリコ>
1965年の作品で、1981年に翻訳されて日本に紹介され、2023年に復刊された。ハリスおばさんシリーズの3作目で、「パリへ行く」「ニューヨークへ行く」に続く。 ハリスはロンドンの通い家政婦で階級社会の底辺の庶民だ。色々あって国会議員選挙に出ることになる。イギリスの小選挙区制選挙の制度の中で描かれてゆく。
2025年02月07日
大量死と探偵小説<笠井潔>
2024年の評論で、1998年から2008年に出版した評論から選んで再構成して再録した。作者は「第三の波と20世紀の終わり、の2要素が化学反応を起こして、探偵小説= 20世紀小説のアイデアが生じた。そのアイデアから1991年に哲学者の密室を執筆して、1992年にエッセイ・大量死と探偵小説を書いた」と始まりを書いている。
2025年02月07日
白い女の謎<ポール・アルテ>
2020年の作品で、2024年に翻訳されて日本に紹介された。名探偵のオーウェン・バーンズのシリーズの8作目で、日本への紹介は6作目になる。本作の巻末には、 飯城勇三の評論風の長い解説がある。本作も不可能犯罪ものだが、消失・呪い等に比重が移っている。残り2作の翻訳予定は無いようだが、期待したい。
2025年02月07日
クイーンのフルハウス<エラリー・クイーン>
1965年の作品集で、電子書籍で読んだ。最初と最後に中編2作を配して、その間に短編3作を配した作品集だ。題名通りに、全てエラリー・クイーンが安定役だ。 クイーンでお馴染みのダイイング・メッセージもんが多いが、それは短編の方が向いていると感じた。
2025年02月13日
永劫館超連続殺人事件<南海遊>
2024年の作品だ。副題が「魔女はXと死ぬことにした」で、あとがきによると作者が最初に書いたミステリのようだ。某所の閉ざされた館で起きる事件が描かれる。 不老不死の道連れ魔女・リリィは一定の条件の人物を道連れにして1-3日前に戻るという、時間ループの架空ミステリだ。それは死の連続ループの超連続殺人事件だ。
2025年02月13日
ヴィラ・マグノリアの殺人<若竹七海>
1999年の作品で、2002年に文庫化された。神奈川県の架空の町・葉崎に建つヴィラが舞台で、そこの1室で死体が見つかった。所轄の担当の刑事が聞き込み 捜査を開始するが、そこの住人は色々で聞き込みだけでも一向に終わらない。そのうちに次の殺人が起こり、ますます混乱してゆく。
2025年02月13日
ルナ・ゲートの彼方<ロバート・ハインライン>
1955年の作品で、1989年に翻訳されて日本で出版された。ジュブナイルのSF長編だ。ハイスクールの資格試験のサバイバル・テストは受験者を未知の惑星に送りこみ 無事に生き延びれば合格する。志願者の少年少女らは転送先の惑星でグループになり生き残りを目指す。解説者は十五少年漂流記に例える。
2025年02月13日
日本ハードボイルド全集1 死者だけが血を流す/淋しがりやのキング<生島治郎>
1962-1986年の作品を再編集して、作品集とした復刊作品集だ。全集1は生島治郎集で、長編「死者だけが血を流す」と、短編6作を収録した。大沢在昌のエッセイ 「宝物」と北上次郎の解説がある。日本ハードボイルドの初期の作品を集めて、生島のハードボイルド観を読み解いて行く。
2025年02月13日
失恋地帯<山村美沙>
1992年の作品で、電子書籍で読んだ。脇役女優・梨乃が主人公で、ドラマやCMへの出演と、男性らとの交際の中で、殺人事件に関わってゆく。狩矢警部と出会い一応の 信頼を得るが、周囲からは疑われている。梨乃の友人、ライバル、交際男性らも事件関係者であり、自らも事件を調べようとするが、また事件が起きる。
2025年02月19日
淡雪の記憶<知念実希人>
2016年の作品だ。「神酒クリニックで乾杯を」の続編で、主人公の九十九勝己とクリニックのメンバーが再登場する、大胆な設定と背景と登場人物なので、前作を読んで いる方が良さそうだ。題名から予想させる、記憶喪失の女性が登場してその治療とともに事件に関わってゆくことになる。
2025年02月19日
賊徒、暁に千里を奔る<羽生飛鳥>
2024年の作品集で、連作長編的な構成でもある。鎌倉時代で、伝説の盗賊の棟梁・小殿が老いて、その視点・私から描かれる。色々な人物が私に過去の話を聞きに来る。 僧だったり上皇だったりして、私が起こした不可能な事件の謎を解こうとする。相手に合わせて、謎解きの真相を明かしてゆく。
2025年02月19日
或るギリシャ棺の謎<柄刀一>
2021年の作品だ。南美希風とエリザベス・キッドリッジが主人公の国名シリーズの1作の長編だ。二人は死んだ知人老女の家を訪れる。ただ、自殺か他殺かは不明で さらには、その一族は変わった因習と人間構成であり、過去に未解決の事件の謎もあった。訪問中の短期間に二人は多数の謎の解明に挑む。
2025年02月19日
初心の業 ボーダース4<堂場瞬一>
2024年の作品で、警視庁特殊事件対策班のシリーズ「ボーダース」の4作目だ。メンバー5人の一人が主人になり事件が展開する。本作はナンバー2の綿谷亮介が主人公になる。 綿谷は6年前に逃がしてしまった容疑者を出身地の盛岡で確保した。だが、その後綿谷自身が襲われ、過去と現在の事件を追うことになる。
2025年02月19日
十津川警部 時効なき殺人<西村京太郎>
2007年の作品で、電子書籍で読んだ。十津川警部シリーズの「北の秘密」の改題だ。会社社長が消えて、家族が行方探しを私立探偵・橋本豊に依頼する。橋本が細い 手がかりを探してゆき、元上司の十津川にも連絡する。東京で殺人が起きて被害者と失踪した社長が友人とわかり、十津川らも捜査を開始した。
2025年02月25日
鼻<曽根圭介>
2007年の作品集で、中編3作が収録される。分野はホラーだが、個々には異なる分野とも言える。「暴落」はSF設定からその結果がホラー的な結末に向かう、「受難」 は酔って気づくと監禁されていた男の話しで訳が分からずに災難が続く、「鼻」は近未来設定でかつ架空設定の込み入った話だ。
2025年02月25日
密書の行衛<北原尚彦 編>
2024年に編集された復刊で、副題が「コナン・ドイル少年少女翻案集だ。「密書の行衛」はホームズものの翻案で大正7年に翻案された。「敵の少女」は昭和7年 の翻案で「勇将ジェラール」シリーズの翻案だ。どちらもレア作で、編者・北原による解説が詳しい。
2025年02月25日
写楽ブームの正体<高井忍>
2024年の研究書だ。謎の多い浮世絵作家・写楽については、ノンフィクションと小説とテレビ等の映像で色々な形で取り上げられてきた。研究や紹介と見せていたが、 そのほとんどが嘘や創作の嘘だった、その事をこの本の作者が文献を多用して明かしてゆく。「写楽ブーム」は意図的に捏造されたか、フィクションだった。
2025年02月25日
神無虚無最後の事件<紺野天龍>
2022年の作品だ。「かんなぎうろむ」とルピが振られている。この本全体の語り手と関係者がいて、その中に登場するベストセラー「神無虚無」シリーズと登場する 名探偵・神薙がいる。だが最後の作品では 謎が解決しないままで完結していた。それをこの本の語り手たちが解こうとする。
2025年02月25日
闇に香る嘘<下村敦史>
2014年の作品で、電子書籍で読んだ。太平洋戦争後の東京が舞台で、41歳で失明した老人が主人公でその見えない視点から描かれている。孫の腎臓移植の問題を 抱えている。別れて暮らしていた娘や、中国残留孤児の兄らがいる。主人公の抱く疑惑か妄想かは、プライドや思い込み等で迷走する。
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2025/02に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。