推理小説読書日記(2024/05)
2024年05月01日
姫四郎流れ旅2 中仙道はぐれ鳥<笹沢左保>
2011年の作品集を再編集して、2023年に復刊された。江戸時代を舞台にして、有名な医師を父に持ち右手で医療で人を助け、左手で人を斬る渡世人の 乙井姫四郎が主人公だ。その医療行為には時代的に架空設定が入っており、架空設定の時代医療ミステリとなっている。
2024年05月01日
魔偶の如き齎すもの<三津田信三>
2019年に出版された作品集で、2022年に1作を加えて文庫化された。作家で探偵役の刀城言耶が主人公の短編3作と中編「魔偶の如き齎すもの」を収録し、 さらにホラー味の強い短編「椅人の如き座るもの」を文庫に加えた。試行錯誤のほとり多重解決が行われるが、多彩なトリックが仕掛けられている。
2024年05月01日
劉夫人の腕環<甲賀三郎>
2022年に再編集で復刊された作品集で、1932年から1942年の短編8作と中編「血染のパイプ」を収録する。主に上海や満州を舞台にした作品集だ。昭和10年 頃の中国や満州を舞台にしたミステリで本格手法の作品やサスペンスだ。
2024年05月01日
夜の京都殺人迷路<山村美紗>
2000年の作品で、電子書籍で読んだ。野田朝子は東京に移り働くが、京都では両親が死に妹・夕子だけが住んでいた。朝子は恋人に捨てられ、さらに夕子が 変死して、担当の狩矢警部と事件を自殺でないと疑った。朝子は会社を辞めて、顔を整形して京都でホステスを始めて事件を調べて行く。
2024年05月01日
十津川警部 金沢歴史の殺人<西村京太郎>
2002年の作品で、電子書籍で読んだ。十津川警部シリーズの1冊だが、本作では十津川班の西本刑事が主人公となっている。西本はメル友の金沢在住の カメラマンの女性・酒井千沙に恋した。千沙が写真集を出す予定の編集者が殺害されて、西本は捜査と千沙の警護を含めて事件にのめりこむ。
2024年05月07日
毒を食らわば<セイヤーズ>
1930年の作品で、1995年に翻訳されて日本で出版された。ピーター・ウィムジィ卿が主人公のシリーズの1冊だ。本書ではピーターは殺人容疑で裁判を 受けている被告女性に惚れて、無罪を獲得する為に奔走する。根拠なき状態から、次回裁判までの時間で、被告を助ける事が出来るのか。
2024年05月07日
天久鷹央の推理カルテ3<知念実希人>
2015年の連作長編だ。医療能力は高いが日常生活の色々は苦手の探偵役の医師と、ワトソン役の新人医師とが病院で起きた不可解な事件の謎を、 主として医療的に解明し、さらには同時に日常の謎を合わせて解決してゆく。精神科医師や新人看護師らも登場してくる。
2024年05月07日
島田一男大陸小説集1 軍報道部<島田一男>
1953年から1960年の作品を再編集した作品集で、中編「軍報道部」と短編・「反満抗日軍」「遁山部隊」「黒い旋風」「満州ひめゆり部隊」を収録する。 第二次世界大戦前と戦中の満州と中国を舞台にした作品群だ。記者が主人公になるケースが多い。
2024年05月07日
シーザー<渡辺啓助>
1955年の作品で、国会図書館デジタルサービスで読んだ。副題が「風雲の英雄、第2」で、ミステリーではなくて時代・伝記小説だが、伝奇小説でも ある。ローマ時代の英雄のジュリアス・シーザーの一代記だが、若くして部下の裏切りで暗殺されるので半生記に近い。
2024年05月07日
記憶の中の殺人<内田康夫>
1998年の作品で、電子書籍で読んだ。浅見光彦シリーズの1作だが、浅見の一人称で書かれており、さらに浅見家と軽井沢の先生の登場頻度が高い。 さらに浅見が自身の事を語り、さらに家族のことを過去を含めて語る。メタミステリ的なストーリーもあり、異色の作品となっている。
2024年05月13日
焔と雪 京都探偵物語<伊吹亜門>
2023年に出版された作品で、5話からなる連作集だ。舞台は大正の京都で、貴族の血筋で頭脳担当の露木可留良と、刑事出身で行動担当の鯛城の二人が 不思議な事件を解き明かす。全体としても登場人物に関わる謎が繋がって行き、全体で連作長編的な展開もある。
2024年05月13日
罪の年輪<堂場瞬一>
2024年の作品で、老刑事・岩倉剛が主人公のラストライン・シリーズの6作目だ。被害者も、出頭した容疑者も87才でその接点は60年前の学生時代から 始まる。再高齢者の犯罪に岩倉は戸惑う。さらには岩倉に立川署から本庁への異動の話が進む。岩倉は若い相棒にも戸惑ったり、影響を受けたりする。
2024年05月13日
乱歩殺人事件 「悪霊」ふたたび<芦辺拓>
2024年の作品だ。江戸川乱歩の中絶作「悪霊」にはそれを取り巻く謎がある。ストーリー自体の謎と、何故に未完になったかの謎に、乱歩の言葉等の謎だ。 それらを全て取り込むと共に、作者は「悪霊」を書き継ぐだけでなく、乱歩の文に挿入したりしながら、「悪霊」を取り巻くそれぞれの謎に解を与える。
2024年05月13日
ルパンの絆<横関大>
2021年の作品で、2024年に文庫化された。泥棒一家の三雲家と警察一家の桜庭家とが、三雲華と桜庭和馬との結婚で繋がる。さらに探偵一家の娘・北条 美雲が加わる。今回は和馬に殺人容疑がかかり逃亡し、華と和馬の娘・杏が誘拐される。併行した2つの事件を解決できるのか。
2024年05月13日
後宮の検屍女官<小野はるか>
2021年の連作集で、電子書籍で読んだ。中国の後宮を舞台にして、侍女・桃花は普段は寝てばかりで目立たないが、検屍の技術と知識を持っている。後宮 で起きた事件または事件の疑いがある死を、検屍を行い解明する。
2024年05月19日
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ステイホームは江戸で<山本巧次>
2021年の作品で現代のOLがタイムスリップした江戸で女目明しになるシリーズの8作目だ。現代はコロナ感染問題で引きこもり生活になる。江戸に避難 するが感染を持ち込まないか心配だ。その江戸で、攫われた子が戻る事件が連続して起きていた。やはり現代の科学を使い捜査してゆく。
2024年05月19日
女と男、そして殺し屋<石持浅海>
2024年の中編と短編4作からなる連作長編で、殺し屋シリーズの3冊目だ。冨澤充は殺し屋も行うが自分のルールを守っている。鴻池知栄は娘と暮らすが 殺し屋で自分のルールを持つ。2人は互いを知らないが、或る時に依頼された仕事と展開を推理すると、互いに謎の存在を知る。
2024年05月19日
スイッチ 悪意の実験<潮谷験>
2021年の作品で2022年に文庫化された。大学生・箱川小雪は仲間らと、奇妙だが儲かりそうなアルバイトに参加した。主催者が融資している、売れない パン屋への融資を打ち切るスイッチを悪意で押すかどうかの実験だった。最初は誰もが避けるが、最後にスイッチが押される。悪意の正体とは?。
2024年05月19日
魔女たちのアフターヌーンティ<内山純>
2024年の作品だ。主人公は不動産営業の前屋敷真希で、目を付けた屋敷は魔女と呼ばれる女性が開くティ店だった。そこで紅茶の魅力を知る。そこの 周辺で色々な人とそのトラブル・悩みと出会い、さらには自分自身の悩みにも向き合って行く。
2024年05月19日
仙石線殺人事件<西村京太郎>
2016年の作品で、電子書籍で読んだ。十津川警部シリーズだが、東日本大震災の被災地から始まり、東京の事件から仙石線の爆破事件が起きて、さらに は沈没船引き揚げで見つかった多額のプラチナ盗難事件が関わる。さらには日本陸軍の武器調達とアヘン製造の歴史まで絡む。
2024年05月25日
パラダイス・ガーデンの喪失<若竹七海>
2021年の作品で、2024年に文庫化された。架空の街・葉崎市とそこの猫島等を舞台にしたシリーズの1作だ。私設庭園「パラダイス・ガーデン」の名を 語った老人ホーム建設予定と入居勧誘が起きた。さらに併行して、死体発見、誘拐が起きた。混乱する捜査陣と、関係者住人との視点で併行して描かれてゆく。
2024年05月25日
インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー<皆川博子>
2021年の作品で2023年に文庫化された。歴史ミステリシリーズの3作目で最終作だ。18世紀、イギリスのマン島から新大陸のアメリカに渡った者たち、 そこは東部13州がそれぞれ独立戦争を行い、それらがまとまって行く時期だった。依頼を受けた記者が、殺害事件の犯人の囚人に会い、動機を問う。すると 囚人は自身の推理と真相を語った。
2024年05月25日
天久鷹央の推理カルテ5 悲恋のシンドローム<知念実希人>
2016年の連作長編で、短編2作と中編とが、個別作とさらには長編的に繋がる。病気が呪いが原因と考える患者の謎、ゴミ屋敷に住む男の謎、 遺体が瞬間移動した謎を、医師・天久鷹央とその部下の医師の僕・小鳥遊が解き明かす。
2024年05月25日
署長シンドローム<今野敏>
203年の作品で、2024年にノベルス化された。竜崎伸也が主人公の「隠蔽捜査」シリーズの舞台・大森署に女性新署長・藍本小百合が赴任した。男を 虜にする署長とその事件捜査への対応と進展が、副署長・貝沼の視点から描かれる。副署長は忙しいのだ。
2024年05月25日
ぼくらは回収しない<真門浩平>
2024年の作品集で、純粋に独立した短編5作からなる。必ずしも日常の謎では無いが、架空設定モノではなく、警察捜査も名探偵の捜査もなく、 それぞれの主人公のぼく・おれたち・おれ・おれ・ぼくらが調べて行く。昔は普通だったかもの知れないが、現在では逆に新鮮だ。
2024年05月25日
でぃすぺる<今村昌弘>
2023年の作品で、電子書籍で読んだ。小学生3人が、6つの怪談の謎を調べる。一人は怪異だと考え、一人は謎を解こうと推理する。親や教師からは、 勉強のためにと反対されるが、壁新聞の記事の取材だという名目にする。証拠なしの妄想と推理の行く先はホラーなのか。
2024年05月31日
追憶の彼女 警視庁文書捜査官<麻見和史>
2024年の作品で、警視庁文書捜査官シリーズの10冊目だ。本作では文書解読班の一人の矢代朋彦刑事が、休日に7年前の事件を個人で調べている場面から 始まり漸く手掛かりを見つけた。仕事に戻ると新たに事件捜査がはじまった。やがてその事件捜査で、7年前の事件との関連が浮かんでくる。
2024年05月31日
おまえは生きなければならない<太田忠司>
2024年の作品だ。主人公の中村裕太は就職したが馴染めず引きこもりになり、売れないユーチューバーになっている。女優セナに会うために中学同窓会 に参加して、中学時のいじめ被害と加害者の死を聞いた。興味を持つとともに成り行きで捜査させられる事になる。弱く不安定な探偵の元で事件が進んで ゆく事になる。
2024年05月31日
戦艦金剛<蒼社廉三>
1967年の作品で、2024年に復刊された。昭和17年のソロモン海域で戦艦金剛と榛名は囮的な行動でアメリカ空母を探す場面から始まる。その後に戦闘が 起きると船内は攻撃されていないが、死者が出た。戦死か?。呉に寄港して登場人物の過去等の背景が描かれる。さらに出航してレイテを目指す、真相が 判るが金剛も沈没する。
2024年05月31日
遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか<詠坂雄二>
2008年の作品で、2014年に文庫化された。刑事・阿比留は遠海市の2つの事件で佐藤誠を疑うが捜査は進展しなかった。別件で逮捕された佐藤は86件の 殺人を自供したが死体さえ見つからなかった。唯一死体が見つかっていた遠海事件について阿比留は再捜査を依頼されるが、その中でその2件だけは犯人 ではないと感じ始めた。
2024年05月31日
恋と禁忌の述語論理<井上真偽>
2015年の作品で、2018年に文庫化された。語り手の森帖詠彦は、関わった事件に対して探偵役の解決を確かめる為に年上の叔母・硯に相談する。論理 学者の硯は論理式と思考を駆使して検証して、探偵の推理を覆して行く。続々と探偵が登場して推理する、さらにそれが検証で覆される。
2024年05月31日
隠岐伝説殺人事件<内田康夫>
19900年の作品で、電子書籍で読んだ。浅見光彦は雑誌の仕事で隠岐での「後鳥羽上皇遺跡発掘学術調査団」に同行する。隠岐の地理と歴史と観光を 旅情・歴史ミステリ的に展開するが、背景には隠岐での連続死の謎がある。さらにそのまた背景には戦争絡みと現在のタブーが見え隠れする。真犯人は 後鳥羽上皇なのか?。
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2024/05に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。