推理小説読書日記(2023/12)
2023年12月03日
殺し屋、やってます。<石持浅海>
2017年の作品で、2020年に文庫化された。7話からなる連作集で、殺し屋と、その連絡係と、依頼を受け付ける者が殺人を請負って実行する。接する者同士しか 他を知らない。主人公の殺し屋はターゲットの名前と住所だけ聞いて、自分で調査して実行するが、そこに気になる事があるとその謎を解くことになる。
2023年12月03日
鎌倉・流鏑馬・神事の殺人<西村京太郎>
2004年の作品で、2006年に文庫化された。十津川警部が主人公の旅情ミステリのシリーズだ。だが不可能状況での殺人や大規模なアリバイトリックも登場して、 連続殺人のミッシングリンク探し、動機探しと謎が満載する。十津川シリーズでは異色のトリッキー差が強い作品だ。
2023年12月03日
角田喜久雄捕物小説集第二巻 新版大岡政談<角田喜久雄>
1949年から1955の時代伝奇小説で、2023年に再編集で復刊された。岡っ引き、同心、奉行らが登場する時代小説を集めている事で捕物小説集となっている。 だが全体に伝奇時代小説の色が強い。中編「怪盗懺悔」と長い短編「恋慕地獄」に短編3作が加わる構成だ。
2023年12月03日
神曲法廷<山田正紀>
2001年の長編で、2023年に文庫復刊された。普通の2倍の分量の長さで、ダンテの「新曲」が背景にありそれに従い主人公が考え行動する。奇妙な雰囲気で 展開して架空ミステリ感が漂うが、読むと一般的なミステリなので驚く。ホラー、SF、法廷等の多様な要素がある。
2023年12月03日
志摩半島殺人事件<内田康夫>
1988年の作品で、電子書籍で読んだ。浅見光彦シリーズの1作で、題名の通り伊勢志摩を舞台に、若い海女とその周囲が、浅見の取材記事でマスコミに知られて しまう。その中で、記者の死が起きて浅見が捜査する事になる。その関連があるのかを、過去と東北で探す展開となる。
2023年12月03日
第U捜査官<安藤能明>
2015年の作品で、電子書籍で読んだ。所轄刑事課・西尾美加の視点で「第U捜査官」と呼ばれる神村五郎の捜査を描く。所轄署長・副署長・課長らの命令系統 の中で神村の存在は外れていて、異様だ。容疑者と取調官が消えて、共に死体で発見される事件が起きて捜査が始まるが、神村の動きに西尾は悩まされる。
2023年12月09日
元禄一刀流<池波正太郎>
2023年に文庫化された作品集で、作者の初期の作品集で全て時代小説だ。中編「上泉伊勢守」と短編6作が収録される。初期の作品は、後に長編や連作集に 発展する事も多く、未収録になった理由でもあるようだ。それらは作者の全集には収録されたが、文庫では未収録だった。
2023年12月09日
空白の起点<笹沢左保>
1961年の作品で、2021年に文庫で復刊された。崖から転落する男が、走る列車から目撃された。そこには転落した男の娘と、主人公の保険調査員も含まれていた 、被害者が複数の保険に入っていた事で調査員が調べ始めるとさらに事件が起きた。事故か自殺かの状況で、殺人を疑う主人公が調査を続けた。
2023年12月09日
或るアメリカ銃の謎<柄刀一>
2022年の作品集で、中編「或るアメリカ銃の謎」「或るシャム双子の謎」からなる。検視官のエリザベス・キッドリッジとカメラマンの南美希風が、たまたま 遭遇した事件を解決する。不可能系の事件を、まさかのトリック系を駆使して解決する。クイーンの作品の設定を含む背景で事件が構成されているシリーズだ。
2023年12月09日
サイモン・アークの事件簿3<エドワード・ホック>
2011年に日本の独自編集で編まれた作品集だ。オカルト探偵のサイモン・アークが不可解犯罪・不可能犯罪に挑む。背景も設定もオカルトや超自然現象に 見えて、悪魔や呪いに見える事件が並んでいる作品集だ。事件は推理で解かれるが、オカルト的な謎が残る場合も多い。
2023年12月09日
鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿<鳴神響一>
2022年の作品で、副題が「稲村ケ崎の落日」で電子書籍で読んだ。神奈川県警捜査1課・吉川元哉が相方の所轄刑事・小笠原亜澄と作家殺人事件を捜査する。 残された原稿が副題で、さらに事件が広がり捜査陣も捜査地域も広がり、謎の範囲も文学・歴史にも広がる。
2023年12月09日
三世代探偵団 次の扉に棲む死神<赤川次郎>
2017年の作品で、電子書籍で読んだ。女性3世代の祖母・幸代と母・文乃と娘(孫)・有里が主人公のシリーズの1作目だ。幸代は元女優で、一家にはその 関係の者が出入りするので、小劇場の舞台絡みが事件背景となっている。意外と登場人物が多くて、意外な展開にも進む。
2023年12月15日
Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス<石持浅海>
2019年の作品集で2022年に文庫化された。続編に当たるがその発行間隔は長い。状況は替り二組の夫妻が集まり、食べて呑み話す。そこでの日常の謎が 解き明かされる。極一部だけは、発行順に読んだほうが良い作品もある。
2023年12月15日
コーチ<堂場瞬一>
2020年の長編で、2023年に文庫化された。全体が2部構成で、さらに第1部は3つのエピソードに分かれている。捜査に悩む3人の刑事にコーチ的な男が 現れて教えて去る。第2部では本庁1課になった3人は担当事件と、コーチ男との関連にきずき探ったり助けようとする。
2023年12月15日
あの魔女を殺せ<市川哲也>
2023年の長編だ。魔女と、魔女的な女性と、魔女を殺そうとする者らが錯綜する。生きている人間かと思わせる人形を製作する3姉妹がカルトファンから 人気を得ているが、その過去と境遇は闇を抱える。それらが住む館で起きる連続殺人事件はどの様な解決があるのだろうか。
2023年12月15日
日本ハードボイルド全集7<>
2023年に編まれたアンソロジーで文庫全集の最終巻となる。故北上次郎を含めた編者3名が選んだ16短編と、編者が書いた日本ハーボボイルド史とで 構成される。黎明期・成長期・発展期に分けて、さらに1979年レビューの大沢在昌以降を現代ハードボイルドと位置付けて、それ以前の作者で全集を組んだ。
2023年12月15日
仮面病棟<知念実希人>
2014年の長編で、電子書籍で読んだ。夜の病院で宿直医師を主人公に一夜が描かれる。ピエロとそれに襲われた女性が逃げ込む。入院患者を人質に立て籠った ピエロに対して、医師・看護師・院長らが対応するが、事件が拡大して行く。病院の抱える秘密と襲撃犯の狙いは何か?。
2023年12月15日
恐山殺人事件<内田康夫>
1988年の長編で、電子書籍で読んだ。浅見光彦シリーズの1冊だが、もう一人の主人公でイタコの末裔の藤波紹子の双方の視点で描かれる。東京で死んだ 青森出身者ら、さらに北から来た男とは?。浅見は被害者の出身地を訪ねて行く。そこはイタコがいて異次元の世界に感じる場所だった。
2023年12月21日
探偵が早すぎる(上)(下)<井上真偽>
2017年の作品で上下の2分冊で出版されたが、それほど長くはない。多人称の変則的な視点で、色々な切り口で犯罪計画と実施が描かれる。さらにそれが、 成功するまえに、対応が早すぎる探偵に阻止される。ただし探偵の視点は、簡潔にさらに省かれる形で描かれる、優秀すぎる探偵なのだが・・・。
2023年12月21日
ロータスコンフィデンシャル<今野敏>
2020年の作品で2023年に文庫化された。公安部の倉島が主人公のシリーズだ。担当はロシアの倉島は、ベトナム人の殺害事件に対して、無関係と判断したが 周囲の反応は逆だった。遅れて担当事件と知って、慌てて捜査体制を作ろうとした。はたして他部署の協力を受けられるのか?。
2023年12月21日
君を恋ふらん<>
2023年に編まれた「源氏物語」アンソロジーだ。女流作家6名の時代小説だ。色々な切り口で、源氏物語の時代と背景に絡む作品が並ぶ。テーマ・ アンソロジーなので、逆に小説のジャンルはバラバラで多彩になっている。さらに書下ろし作品も含まれる。
2023年12月21日
南海ちゃんの新しいお仕事<新井素子>
2022年の作品だ。主人公・高井南海はあちこちで転んだ、だがその時に色々な物を修復する超能力の持ち主だった。世の中のヒビを見つける超能力者・板橋 との出会いで人生がかわる。2人の超能力者が仕事?でその中のヒビを修復して行くが、いったい何ならば修復できるのか?。
2023年12月21日
黄色い部屋<高木彬光>
1957年の作品で国会図書館デジタルコレクションで読んだ。原作はガストン・ルルウで、少年向きに出版された。海外の原作を元に書かれた作品が、シリーズ として多数出版されている。ミステリーでは有名な作品だが、枝葉を省いて簡略化してさらに読みやすくした。
2023年12月27日
二歩前を歩く<石持浅海>
2014年の作品集で、2016年に文庫化された。架空設定ミステリだが、日常の謎的に扱う、さらに如何にしてそれが起きているのかは考えない。如何に 起きているかではなく、何が起きているかを解き明かして行く。そこには論理展開の世界が広がっている。
2023年12月27日
人形島の殺人<萩原麻里>
2023年の作品で、三嶋古陶里と秋津真白?が呪殺島に関わる事件に絡みシリーズの3作目だ。ただ本作は2人自身が強く関わる事件であり、結果として シリーズ全体の中での位置ずけが微妙となる。民俗学・呪いを背景にした不可能犯罪という前2作と外見は似ていても、大きく異なると言える。
2023年12月27日
「御宿かわせみ」の世界<平岩弓枝>
2023年に刊行されたムックだ。死去した平岩弓枝のデビューからの作家生活を「御宿かわせみ」シリーズを中心にまとめた。小説は「鏨師」「初春の客」 「白萩屋敷の月」「祝言」で、他には講演、座談会、インタビュー、交友録、エッセイ等を多彩に掲載した。
2023年12月27日
失踪都市 所轄魂<笹本稜平>
2014年の作品で、2017年に文庫化された。電子書籍で読んだ。ベテランの所轄刑事・葛木邦彦と所轄メンバーの捜査を息子で本庁刑事の息子と共に描く。捜査を 管理してコントロールしようとする本庁管理官に対抗して事件捜査を行う。事件と背景にかくさえた連続失踪事件、さらに捜査自体を否定する監理官の、闇に対抗する。
2023年12月27日
テミスの剣<中山七里>
2014年に出版され、2017年に文庫化された。電子書籍で読んだ。警察・検察・裁判を通じての冤罪をテーマにする。若手刑事として事件に関わった刑事が 主人公で冤罪が生まれる過程と、真相の発覚と展開を描く。それ以外の捜査側の視点からも描かれるがそのいくつかは重要だ。組織悪がそれ以上に描かれる。
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2023/12に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。