推理小説読書日記(2023/11)
2023年11月03日
サーカスから来た執達吏<夕木春央>
2021年の作品で、2023年に文庫化された。明治・大正時代を背景にしたシリーズの1冊だ。子爵の借金を取り立て人のサーカスの少女と子爵令嬢が 借金返済のために、財宝の有りかを探す。そこには別のグループが関わり、さらに過去の事件が関わっているようだった。
2023年11月03日
沈黙の追跡者<笹沢左保>
1980年の作品で、2020年に文庫で復刊された。主人公の自家用飛行機のパイロットが墜落した。助かるが失語症になる。復帰を目指して東京に戻ると 意外な状況になっていた。自分は死亡になっていて、いない筈の同乗者がいて死亡になっていた。何かに巻き込まれたようで、徐々に真相が判り始める。
2023年11月03日
赤い影法師<柴田錬三郎>
1963年の時代伝奇小説だ。将軍家光が行った寛永御前試合を軸に描く。その勝者に太刀が与えられるが、それを忍者・影が狙う。影は何者で出生の秘密 が併行して描かれる。柳生宗矩や服部半蔵や多数の歴史上の人物と、剣客らが面々と登場する伝奇小説だ。
2023年11月03日
平家谷殺人事件<和久井清水>
2023年の長編で、「浅見光彦シリーズ番外」となっている。内田康夫の最終作の後半を書いた作者が、明治初期を舞台に光彦の先祖の浅見元彦を主人公に して書いた、先祖も名探偵の作品だ。時間を掛けて辿りついた高知の奥の村で、事件を調べ始める。伝奇色が濃い作品だ。
2023年11月03日
科学と空想<岩田賛>
1955年の連作集だ。少年少女向きの作品で、科学編が4短編、空想編が3短編掲載されている。科学編は惑星とそこに住む宇宙人の話だ。一方の空想編は 秘境小説風でありアフリカ等の未開地域とそこの部族等の絡みを描いている。
2023年11月03日
伊勢志摩殺人事件<山村美紗>
2006年の作品で2009年に文庫化された、電子書籍で読んだ。主人公・大原路子が婚約者の死を調べて、鳥羽や白浜や京都等のあちこちを回る。ノンシリーズ に当たると思うが、最後にだけ京都府警・狩谷警部や橋口刑事が登場する。サスペンス色が濃い。
2023年11月09日
帆船軍艦の殺人<岡本好貴>
2023年の長編で、第33回鮎川哲也賞受賞作で3年ぶりの受賞作だ。1795年の英国の帆船軍艦上の3つの事件を描く。帆船軍艦の知識が豊富にあふれ、それが謎と 密接に関わる。舞台がレアでそれが謎と繋がるので謎自体もレア味があり、不可能犯罪を構成している。寡作作家の多い鮎川賞だが、作品数の面でも期待したい。
2023年11月09日
Rのつく月には気をつけよう<石持浅海>
2007年の連作集で、2010年に文庫化された。わたし・夏美の視点で長江と熊井の3人が飲み会を開き、毎回ゲストを招いてそれが語るネタを元に推理を繰り広げる という連作集だ。テーマは酒とグルメであり、さらには恋愛問題である、故に日常の謎でもある。さらには連作での趣向もある。
2023年11月09日
間の悪いスフレ<近藤史恵>
2023年の作品集だ。ビストロ・パ・マルとそこのメンバーとシェフ・三舟が、客が関わる謎や客が持ち込んだ謎を解くシリーズだ。シリーズが進むなかで1作の 長さが短くなり、事件を聞いて推理する事よりも、客のふるまい等を推測する事が増えて来た。コロナ問題での店の変化も背景に取り込まれている。
2023年11月09日
天を測る<今野敏>
2020年の作品で、2023年に文庫化された。幕末を舞台にして、笠間藩士でのちの幕府軍艦方・小野友五郎を主人公にした時代・歴史小説だ。物作りに興味がある 技術者の主人公が数値を駆使して新しい技術を取り入れて幕末を生きて行く。一方では人使いと交渉力に長けて偶像化される事が多い人物を醒めた視線で描く。
2023年11月09日
喪われた道<内田康夫>
1991年の作品でもちに文庫化された浅見光彦シリーズの1作で、電子書籍で読んだ。東京北部の青梅付近の街道と、伊豆の下田街道を結ぶ共通点はあるのか。 双方で目撃された虚無僧は関係があるのか。顔の見えない虚無僧の謎を追うと、大久保長安の黄金の謎が絡む。
2023年11月09日
再雇用警察官 0の構図<姉小路祐>
2022年の作品で、電子書籍で読んだ。大阪府警の消息対応室の安治川と新月と芝の3人が、行方不明者が絡む事件を解決する。3中編からなる作品集だ。 謎の設定は長編的だが、事件の展開と解決がやや唐突感があり、中編的だ。
2023年11月15日
忌名の如く贄るもの<三津田信三>
2021年の作品で2023年に文庫化された。怪奇作家・刀城言耶が主人公のシリーズの1冊で、ホラー味が濃いが本格ミステリだ。刀城の推理は思い付き的な 頭の中での推理が中心で、思考実験であり試行錯誤を繰り返す。不可能犯罪が普通のミステリ展開と、そこから外れた推理で覆る展開が重なる。
2023年11月15日
サイモン・アークの事件簿2<エドワード・ホック>
2010年に編まれた日本独自編賞の作品集だ。2000年生きるオカルト探偵の設定だが、全ての作品がオカルト絡みではないが多様性を持てる設定だ。そして それは不可能犯罪を中心にしたホックの作風と合う面がある。
2023年11月15日
ぎんなみ商店街の事件簿(ブラザー編・シスター編)<井上真偽>
2023年の連作長編で、(ブラザー編)と(シスター編)の2分冊だ、だがどちらが先ではなく違う視点の併行進行作だ。男4人の兄弟が主人公のブラザー編と、 女3人の姉妹のシスター編が同じ町の同じ事件を含み展開する。それぞれが少年探偵団、少女探偵団的な存在で事件を追う事になる。
2023年11月15日
棘の街<堂場瞬一>
2009年の長編で、2023年に文庫版で復刊された。架空の地方都市・北嶺で起きた誘拐事件で本庁刑事・上条はミスで未解決となった。1年後に骨が発見されて、 上条は所轄に異動して周囲の制止を無視して事件の捜査を再開した。強引でかつ孤独な捜査は意外な展開に進む。
2023年11月15日
そして誰も死ななかった<白井智之>
2019年の作品で電子書籍で読んだ。クリスティの有名な作品と同じ状況で事件が始まり、あっと言う間に5人全員が死ぬ。そこから架空設定のミステリが 始まる。異様でホラー的な設定での本格味の謎解きと多重解決が展開する。死者が生き返る中で題名の展開が進む。
2023年11月15日
杜の都殺人事件<内田康夫>
1988年の作品で電子書籍で読んだ。レギュラー探偵が登場しない、少数派の作品だ。仙台の青葉城で写真屋を行う池野栄治の死後に、警察捜査が不満の娘・ 真理子が真相を探す。複数の登場人物の視点で描いて行く、レギュラー探偵でない理由だろう。さらに10年前の地震が絡む展開もある。
2023年11月21日
扉は閉ざされたまま<石持浅海>
2005年の作品で2008年に文庫化された。碓井優佳が探偵役をつとめるシリーズの第1作だがその後の作品は年齢・時代も小説スタイルも内容も多岐に渡り、 変わらないのは優佳の名探偵振りだけだ。本作は倒叙形式のミステリで、犯人の視点で犯行とその後の展開と、優佳が真相を暴く過程が描かれる。
2023年11月21日
鬼哭洞事件<太田忠司>
2021年の作品だ。中学生探偵・狩野俊介と野上所長が依頼を受けて調査するシリーズで、久しぶりの新作だが時間は僅かしか進んでいない。洞窟の中に 建設された奇妙な屋敷で起きる事件に関わる事になる。作者あとがきでシリーズを振り返っている。
2023年11月21日
巫女島の殺人 呪殺島秘録<萩原麻里>
2022年の作品だ。三嶋古陶里を中心にしたシリーズの2作目で、民俗学研究室の准教授と学生らが第1作に続いて呪殺を調べに行き、そこで事件に巻きこまれる。 第1作目の「呪殺島の殺人」の続編だが、舞台の島も事件自体も独立している。過去からの風習と巫女が支配する島での閉塞環境で事件が展開する。
2023年11月21日
烙印<大下宇陀児>
1928年から1960年の作品を再編集した作品集で2022年に出版された。大下の初期から最後期までの作家活動全体から選んだ作品群の作品集だ。その結果では、 知名度の高い作品も複数あり、古くからの読者としては既読作も多くなる。現在で言う変格ミステリの作品集だ。
2023年11月21日
死者の夜<下村明>
1962年の作品で国会図書館デジタルコレクションで読んだ。雑誌ライターが主人公で自らが関わった事件を記者としてとも個人としても調べて行く。自分も容疑者の 状態でもある。一人称視点で、自ら事件の渦中に飛び込み巻き込まれて行く、ハードバイルドスタイルのサスペンスだ。
2023年11月21日
スタート<中山七里>
2020年の作品で、電子書籍で読んだ。新人幼稚園教諭が勤め始めた幼稚園は園長も先輩も曲者揃いだった。しかも近隣とトラブルがあり、内部も色々と問題がある。 そこに動物殺害が続き、さらには園児の殺害事件に発展する。その責任を問われた主人公と同僚や所轄刑事らとで、犯人を探し始める。
2023年11月27日
真っ白な嘘<フレドリック・ブラウン>
1653年の作品集で、1981年に訳されて日本に紹介された。さらに2020年に新訳された。短編18作が収録されており、短い作が多くサスペンスや変格ミステリが中心だ。 冒頭の「笑う肉屋」は本格ミステリだろう。広義のミステリで多様な作品が集まっている。
2023年11月27日
母の国から来た殺人者<西村京太郎>
2010年の作品で、2011年に文庫化された十津川警部シリーズの1作だ。殺人事件現場から姿を消した女性の正体を追うと、次々と殺人事件が起きて行く。十津川 がたどり着いた室蘭で同名女性は既に死亡していた。正体不明の犯人を追いながら、次の殺人阻止の戦いが描かれる。
2023年11月27日
あなたが誰かを殺した<東野圭吾>
2023年の作品で、刑事・加賀恭一郎シリーズの1作だ。1年前に別荘地で起きた複数の殺人事件は犯人が逮捕されたが、未解明部があった。生き残った人らが 1年後に集まり事件解明を考える、その一人に頼まれて加賀が参加する。警察捜査では無く、安楽椅子探偵に近い形で事件に取り組む。
2023年11月27日
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ドローン江戸を翔ぶ<山本巧次>
2018年の長編で、関口優佳がおゆうの名で江戸にタイムスリップして江戸で同心を助けるシリーズの5冊目だ。現在の協力者・宇田川が江戸にタイムスリップして 捜査を行い、さらにドローンを飛ばす。電気の無い江戸でバッテリー動作で科学機器を使う。
2023年11月27日
鉄仮面<大デュマ・高木彬光>
1996年に出版された、少年少女世界の名作:61となっている。国会デジタルコレクションで読んだ。大デュマ原作・高木彬光著と表示されている。フランスでルイ 14世の時代に、バシュテーユの囚人の鉄仮面の謎とそれが絡む大事件を描く。鉄仮面の正体の謎を含む冒険小説だ。
2023年11月27日
ラベンダー殺人事件<山村美紗>
1994年の作品集で、電子書籍で読んだ。花が題名に付いた短編5作からなる短編集だ。1作はノンシリーズで、他はキャサリンと浜口のコンビが事件の謎を解く シリーズで、全作に狩矢警部らが登場する。題名の花とその性質等が謎の解明に関わるテーマに使われている。
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2023/11に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。