推理小説読書日記(2023/10)
2023年10月04日
君の望む死に方<石持浅海>
2008年の作品で、2011年に文庫化された。余命短い社長が、ある男に復讐で自分を殺させる計画を立てる。研修会を開き社員4人を集め、ゲスト3人を加えて 開始した。ゲストの1人の碓井優佳が、社長の計画と、殺害を目指す男の計画を、次々と狂わせて行く。
2023年10月04日
ヴァンプドッグは叫ばない<市川憂人>
2023年の作品で、マリア・ソールズベリーと九条漣が主人公のシリーズの5作目だ。現金輸送車を襲った強盗団が逃走した先では、何故か警察が多数で 捜査を行う、さらに殺人が起きる。一方、マリアらは逃亡した20年前の連続殺人犯「吸血犬ことヴァンプドッグ」の確保を手伝うが連続して殺人事件が起きる。
2023年10月04日
ガールフレンド<伊藤人誉>
1962年の作品集で、2023年に再編集で復刊された。純文学の作者だが、作者は「推理小説にまなぶところは、プロットのおもしろさだと思う」「推理小説の プロットをもった普通の小説」を書いたと言う。そのような短編5作を掲載する。
2023年10月04日
怪盗ニック全仕事1<エドワード・ホック>
2014年に日本で編集された連作集だ。価値のないものを高額の報酬で頼まれて盗むという、怪盗ニック・ベルベットの全作品を発表順にまとめる作品集の 1集目だ。ただし、この時期の作品は日本でも既に翻訳・紹介されている。新訳を中心に作品集にまとめられた。
2023年10月04日
レトロ喫茶おおどけい<内山純>
2023年の連作長編だ。ある喫茶店では、問題を抱える客が来ると、客は過去の時代に行きそこで悩みへの対応を得る事になる。そのような5人の客の5つの話が 展開する。SF設定の中で幻想的に、現在と過去を繋いで行く。
2023年10月04日
硝子の塔の殺人<知念実希人>
2021年の作品で、電子書籍で読んだ。円錐形のガラスの塔の家に住むミステリ作家が、色々な客を集めると、閉ざされて殺人が起きる。そこから犯人の視点で主に 展開する。だが思惑とは異なり、刑事が客にいて、自称名探偵の捜査が行われるが、さらに事件が起きて行く。複数構造の複雑なミステリが展開して行く。
2023年10月10日
女性軌道<大下宇陀児>
1960年に新聞に連続掲載された長編で、作者の最後の長編だとされる。ただしミステリかどうかは疑問で人探しの明朗小説的な展開で進む。ところが、75% 程度進むと突然に殺人事件が起きて捜査が行われて行く。ただミステリ的には平凡な事件と展開に見える。別の意味で意外な展開かも知れないが・・・。
2023年10月10日
加賀美雅之未収録作品集<加賀美雅之>
1996年から2011年の短編・中編を集めた作品集で、2022年に出版された。2013年死んだ作者の自作作品集に未収録の作品を集めた作品集だ。アンソロジー 収録7作と、雑誌発表さの3作とが収録される。多くが密室が絡む不可能犯罪であり、全作が本格ミステリ作だ。
2023年10月10日
他殺岬<笹沢左保>
1976年の作品で、2003年に文庫化復刊された。ライター・天知が書いた記事により、対象の親子が死んだ。その後に天知の息子が誘拐されて、5日後の死を 告げられた天知は前の事件の再捜査と息子の行方の捜査を始める。時間が限られたサスペンスが展開する。
2023年10月10日
魔物が書いた理屈っぽいラブレター<林泰広>
2022年の作品だ。ある国で毒で攻撃されて倒れた彼女を日本に連れ帰ろうとするが出来ない。仲間と逃げたのが中世の城だった。そこには他の客らと、無敵の 魔物がいた。魔物との戦いがはじまるが、その中で彼女を助ける事が出来るのだろうか。特殊すぎる特殊設定ミステリだ。
2023年10月10日
修羅の家<我孫子武丸>
2020年の作品で2023年に文庫化された。10人近くが家族の様に暮らすが母?が暴力とマインドコントロールで全員を支配している。そこで支配されているらしき 女性に恋して救うために加わるが悲惨な状況になる若者がいる。地獄とも修羅とも言える集団と犯罪を描く。
2023年10月10日
朝日殺人事件<内田康夫>
1996年の作品で、電子書籍で読んだ。「あさひ」とは何かから始まり、「朝日」が多数の旅情ミステリに展開して、新潟県北部から山形の朝日町等が描かれる。 同時にミシングリンク風でもあり、浅見の周辺人物の死も絡み、さらに複数の管轄の刑事らの描かれ方もやや変則的だ。
2023年10月16日
五つの箱の死<ディクスン・カー>
1938年の作品で日本にも翻訳され、さらに2023年に新訳された。発表時の名義はカーター・ディクスンで探偵役はヘンリー・メルヴェール卿だ、そして本作での 最初の登場シーンはやや奇妙だ。サンダース医師の視点から始まり、事件が発見されるまでの展開、さらには捜査が始まる過程はどれも異質に感じる。
2023年10月16日
或るエジプト十字架の謎<柄刀一>
2019年の作品集で、2022年に文庫化された。エラリー・クィーンの国名シリーズの題名とその設定を使ったシリーズで、その1冊目だ。南美希風が主人公で、 さらに法医学者のエリザベスが相棒的に登場する。本集は、短編と中編の本格ミステリであり謎が凝集している感が強い。
2023年10月16日
可制御の殺人<松城明>
2022年の連作集で2023年に文庫化された。工学部が舞台であり、そこに色々な人物が1話ごとに登場する。さらに謎ばかりの人物・鬼界が主人公?狂言回し? 的に全てに登場する、そして他人の行動を制御するように思える。ジャンル不明の難解さが漂う。
2023年10月16日
ナイフをひねれば<ホロヴィッツ>
2022年の長編で、2023年に日本で翻訳紹介された。探偵・ホーソーンと相棒の作家・ホロヴィッツのシリーズだ。容疑者になったホロヴィッツがホーソーンに 頼み、短時間で捜査して真犯人を探す。事件関係者を順に一回り会い、調べて行くと、最後に事件が解決する。
2023年10月16日
黒い太陽の秘密<岡田鯱彦>
1958年の作品で少年向きに書かれており、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。博士の発明を、「悪魔」が狙うそれは突然に現れさらに突如姿が 見えなくなる。少年と少女がその事件に関わるが、さらに色々なものが消えて行く。設計図の奪い合いから誘拐事件を追い、最後に消える謎が解かれる。
2023年10月16日
再雇用警察官 完敗捜査<姉小路祐>
2021年の作品で電子書籍で読んだ。大阪府警の消息対応室の安治川と新月と芝の3人が主人公のシリーズだ。本来は事務処理の部署だが、事件の捜査に 絡んでしまう。科学捜査の現代では成立し難い犯罪でも、条件が揃うと成立する。捜査部署で無く、自殺か失踪にに見えか、そもそも届も出ていない状況だ。
2023年10月22日
いろはの左近捕物帳 角田喜久雄捕物小説集第1巻<角田喜久雄>
1951年から1956年の作品を再編祥して、2023年に復刊した。「いろはの左近捕物帳」が2作、「黒門町の伝七捕物帳」が3作含む、9作からなる捕物小説の 短編集だ。捕物小説集だが伝奇色も濃い、角田は伝奇時代小説の作品が多く得意分野でもあるので、ストリー展開はその味も強く面白い。
2023年10月22日
暗い傾斜<笹沢佐保>
1962年の作品で、のちに「暗鬼の旅路」と改題された。2022年に元の題に戻して復刊された。女社長・汐見ユカは、矢崎から金を借りて、三津田の発明に 使うが事業に失敗して経営が追い詰められた。四国で三津田が、東京で矢崎がほぼ同時に死に窮地を脱した。その周囲の2人が調べ、真相が明らかになって行く。
2023年10月22日
あと十五秒で死ぬ<榊林銘>
2021年の短編集で、2023年に文庫化された。短編・中編4作に「15秒」という共通テーマがある。死の直前の15秒を描いた「15秒」。首のすげ替えが可能な一族の 架空設定では死んでも15秒以内に首をすげ替えれば生き延びる、そこで展開するロジックミステリ「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」が印象的だ。
2023年10月22日
八角関係<覆面冠者>
1951年に非ミステリ雑誌に発表された埋もれた作品で、2023年に単行本出版された。解説でその事情や作者は誰?や発表前後の事情が述べられている。4組8人が 住む館で、夫婦以外を好きになる三角関係が複数起きる。一人密室で死に三角関係が変化する。少しずつ時間を置挟んで4つの密室での死が起きる。不可能犯罪が 展開する作品だ。
2023年10月22日
鎮憎師<石持浅海>
2017年の作品で2021年に文庫化された。2つの大学サークルが合体したサークルで事件が有った。時間を経た同窓会の後で1人が死体で発見される。主人公は 他のメンバーに動機があり連鎖する可能性がある事で、鎮憎師に相談した。はたして何をする人物なのか、事件は終える事ができるのか。
2023年10月22日
スタート<中山七里>
2015年の作品で、電子書籍で読んだ。テレビドラマが全盛の時代に、フィルム映画の巨匠監督の撮影にスタッフが終結したが、出資者のテレビの人間と対立する。 双方が混じった中で巨匠の撮影が始まるが、トラブルが続発する。ついには殺人、傷害も起き、監督が病気悪化で倒れる。映画と事件はどうなるのか。
2023年10月28日
惑星まほろば<太田忠司>
2023年のショートショートの作品集だ。「十二ケ月の掟」「十二支の噂」「十二色の旅」のグループに分かれて3作が1セットで、12セットが組まれている。 地球から移住した星での出来事が語られて行き、相互の関りも徐々に判って行く。
2023年10月28日
近鉄特急 伊勢志摩ライナーの罠<西村京太郎>
2008年の作品で、2021年に文庫化された。雑誌の取材に選ばれた平凡な60歳の夫婦が消えた。平凡な過去を調べると少しずつ違和感が見つかる。さらに 殺人事件が起きてその関連も疑われる。夫婦の旅行先には何があるのかを、十津川らが調べる。
2023年10月28日
放課後ミステリクラブ1 金魚の泳ぐプール<知念実希人>
2023年の作品で、「親子で楽しめる」コンセプトでイラストを多く使った児童書であり、本格ミステリだ。長さ的には短めの中編だろうか。小学生の5人組が 身近の事件の謎を解き明かす。まさしく一気読みが可能な、ミステリで楽しめる。
2023年10月28日
NOVA2023 夏号<>
2023年に組まれたSFのアンソロジーだ。登場作家13名が全員女性作家だ。テーマの縛りは無いが動物が絡む作品が目立つ。編者・大森いわく、日本SF史上 はじめての女性作家アンソロジーであり、数的には第二段もすぐにでも可能な状況のようだ。
2023年10月28日
透明な螺旋<東野圭吾>
2021年に出版された長編だ。ガリレオこと湯川学が探偵役のシリーズの1作だ。湯川が母の老衰と介護の為に、両親の家で暮らしている。さらに昔、湯川が 本で関わった女性も登場する。事件捜査で関係者の本に湯川の名を見つけた、草薙らが湯川に協力を求めるが・・・。
2023年10月28日
星のふるさと<森村誠一>
1977年の作品で、電子書籍で読んだ。夫が愛人を作りさらには突然に失踪した、妻は行方を追うが不明で、愛人とは無関係の失踪と判る、そして行方を追って ギリシャやトルコに行く。愛人も消えた男を追う。色々の事件が絡み複雑な展開になって行く。
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2023/10に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。