推理小説読書日記(2023/09)
2023年09月04日
吸血鬼ヴァー二ー<ライマー$プレスト>
1847年の作品で、相当に長い作品らしく、本書はその第1巻だ。ヴァー二ー卿は題名からも登場人物表からも吸血鬼だ。だが作品中では、微妙な表現であり 、さらにはその周囲の人たちが吸血鬼と疑い追及する様子が描かれる。長い第1巻が終わる頃に、決闘とそれに伴うトラブルを経て始まる場面で、以下続くとなる。 困ったところで終わる・・・。
2023年09月04日
富山地方鉄道殺人事件<西村京太郎>
2019年の作品で、2021年に文庫化された。作者がこの頃に書き継いだ、JR以外の地方鉄道のシリーズで、十津川警部リリーズでもある。長い路線長であり、 特に宇奈月から黒部にかけての地域が中心に描かれる。犯罪小説的にサスペンス色が濃い展開だ。
2023年09月04日
ガラスの橋<ロバート・アーサー>
1966年の作品集で、2023年に翻訳されて日本で出版された。短編10作が収録され、個別には翻訳紹介された作品もある。自選集となっていて、作者自身の 作品解説があり、アイデアや創作過程が語られている。短い作品が多くて、短編のアイデアと切れ味が目立つ。
2023年09月04日
アンデッドガール・マーダーファルス4<青崎有吾>
2023年の連作集で、5話からなる。鴉夜と静句と津軽の3人組のシリーズだが、本集ではそれぞれの単独の最初の話や、出会いの話などが並んでいる。 それぞれの年齢・歴史が異なるので、全く異なる時代と世界が展開する。3人が揃う最終話「人魚裁判」は本格謎解きが楽しめる。
2023年09月04日
録音された誘拐<阿津川辰海>
2022年の作品で、電子書籍で読んだ。短編で登場した探偵役の、大野糺と山口美々香が登場する。キャラクター的には続編であっても、その使われ方は全く 異なる。大野自身が誘拐されて、その捜査に山口も参加する。情報化時代の誘拐は方法も目的も変化している。本作も通常の誘拐事件とは、視点のずれがある。
2023年09月04日
所轄刑事・麻生龍太郎<柴田よしき>
2007年の連作集で、2022年に再編集で短編を追加した。電子書籍で読んだ。若手刑事の事件への関わり方と刑事としての成長を描く。地道に捜査してゆく 内に表だっていないが、複数の解決を行う。裏でそれが広まりつつあるようだ。それを取り巻くキャラクターの方が個性的とも見える事もある。
2023年09月10日
あなたには、殺せません<石持浅海>
2023年の作品で5話からなる連作長編だ。犯罪を行いたい人向けの相談員がカウンセリングを行う話だ。殺人したい相談者は、失敗するからやめたほうが良いと 具体的にアドバイスを受けゆく。思いとどまるか、計画を練り直すのか。色々な反応とその後の進展等が個々に、さらに相談者=殺人計画者の視点から 描かれて行く。
2023年09月10日
ゴースト・ポリス・ストーリー<横関大>
2021年の作品で2023年に文庫化された。刑事・長嶋日樹は血の繋がらない妹・聖奈と暮らし始めるが微妙な恋愛感情を持つ。日樹が殺害され幽霊になり、聖奈は 交通課から無理に異動して兄の後釜の刑事になり、その真相を調べる。兄の知り合いの暴対刑事や監察医などが登場する。日樹は事件被害者の幽霊らと出会う。
2023年09月10日
星合う夜の失せもの探し<森谷明子>
2023年の連作集で、副題は「秋葉図書館の四季」で6話を収録する。2014年から2023年の作品が並ぶ。秋葉図書館だけでなく、秋葉家や秋庭市の人々が絡む話し、 さらには図書や図書館に絡む話がはば広く語られる。ミステリ度はまちまちであり、図書館ミステリとしては外伝も含まれる。
2023年09月10日
伊勢佐木町探偵ブルース<東川篤哉>
2019年の作品で2022年に文庫化された。4話からなる連作集で、伊勢佐木町で探偵局を相方・黛真琴と開いている柏木圭一の1人称で描かれる。母が再婚して、 義弟がインテリの刑事・一之瀬脩だった。あちこちの現場で出会う、主人公と義弟の刑事が、意外にも事件を解決してゆく。
2023年09月10日
再雇用警察官<姉小路祐>
2019年の作品で電子書籍で読んだ。大阪府警で定年後に再雇用された警察官・安治川信繁が消息対応室で働く。捜査権はないが刑事時代の技術と他の県警とのコネを 使って、事件を解決してゆく。行方不明者を探す中で奇妙な事と新たな事件が起きて来る。大阪弁の会話があふれる警察小説だ。
2023年09月10日
虹の視角<鷲尾三郎>
1963年の作品で、国会図書館デジタルサービスで読んだ。この時期の本は改題が多く混乱しやすい。本作は「結婚式殺人」も改題であり、中編1作と短編2作からなる。 中編「虹の視角」は三木要が探偵役のシリーズの1作で、この作者の作品の中では本格味は強い、結婚式会場というやや閉ざされた環境でな殺人が描かれる。
2023年09月16日
死者はよみがえる<ディクスン・カー>
1937年の作品で日本には1955年に翻訳された。さらに2020年に新訳された。ギデオン・フェル博士が探偵役のシリーズの1作だ。フェル博士が作中の後半で12の質問を 自ら投げかけて、関係者一同と話し合う。その前には過去の色々な事件を羅列する場面もある。ここからの議論は長く厄介だが見せ場でもある。
2023年09月16日
吸血鬼飼育法<都筑道夫>
1967年から1972年頃の作品を再編集して2020年に復刊した連作集だ。主人公の片岡直次郎は一匹狼のなんでも屋でトラブルがあると商売につなげる。2冊の本と、 未収録作品を全て集めて、完全版として復刊された。ただしサブキャラで登場する物部太郎シリーズは収録されていない。
2023年09月16日
村でいちばんの首吊りの木<辻真先>
1986年の連作集で、2023年に復刊で文庫化された。中編「村でいちばんの首吊りの木」「街でいちばんの幸福な家族」「島でいちばんの鳴き砂の浜」が収録される。 書簡での語りだったり、語り手が変わって行く作品だったり、人間以外も語り手だったりで、それぞれが技巧的な語りを展開している。
2023年09月16日
時の呪縛<麻見和史>
203年の長編で、副題は「凍結事案捜査班」で未解決事件を担当する部署の警察小説だ。数人からなる新設の部署で、本作では老刑事・藤木が中心で描かれている、 だがメンバー全体にも個性が設定されているようだ。事件は目次から連想される猟奇的な色彩がある事件だが、そのようなシリーズかは不明だ。
2023年09月16日
シャーロック・ホームズの十字架<似鳥鶏>
2016年の作品で連作長編だ。架空設定ミステリで、冒頭に背景の用語「ホームズ遺伝子群」「機関」をはじめいくつかのキーワードと登場人物の紹介がある。 さらに小説全体に渡り、多数の問題・パズルとか謎々とかのトリック的な問題が登場する。
2023年09月16日
十二単衣殺人事件<山村美紗>
1989年の連作集で電子書籍で読んだ。探偵役のキャサリンとワトソン役の浜口一郎のコンビが活躍する。素人探偵故に、京都府警・狩矢警部と橋口警部補らの 捜査が重要となる。短編ではキャサリンコンビの場面が多くなり個別には良さそうだが、連作となると事件に出会いすぎる素人の不自然さが強くなる。
2023年09月22日
賛美せよ、と成功は言った<石持浅海>
2017年の作品で2020年に文庫化された。碓井優佳が主人公のシリーズの1作で、高校生の15年後の同窓会が舞台だ。そこで起きた殺人事件を、その一人の 小春の視点で描かれる。小春と優佳の関係は微妙というか、同窓会だから日常に会っている訳でない。高校生時代の「わたしたちが少女とよばれていた頃」 を読んでいると身近な存在と錯覚しそうだ。
2023年09月22日
水 本の小説<北村薫>
2022年の連作集で7作からなる。ただし本と録音等の作者親子2代もコレクションを元に話題が構成される。それはエッセイとして書かれてきた内容だが、 小説として描く場合もある。後者に当たるのが本作品集だ。たとえば表題作「水」は金沢の徳田秋声のイベントでの講演からはじまり、その話題から始まり 広く展開してゆく。
2023年09月22日
三人書房<柳川一>
2023年の連作集だ。大正時代に江戸川乱歩とその弟2人が営む「三人書房」等を舞台に、松井須磨子・宮沢賢治・横山大観・高村光太郎らが登場して 、あるいはその話題が語られる事件や謎が登場する。それぞれのエピソードと著作等を、乱歩兄弟との絡める連作集だ。
2023年09月22日
最後の光<堂場瞬一>
2023年の作品で、警視庁総合支援課と柿谷晶が主人公のシリーズの2作目だ。柿谷のプロフィールが次第に詳しくなるが、かなり危ない。一方では相方の 後輩・秦香奈江がいかにも支援課に向いている。シーズン1の村野に対する元妻・愛の存在は、柿谷と弁護士・神岡なのだろうか。
2023年09月22日
讃岐路殺人事件<内田康夫>
1989年の作品で、電子書籍で読んだ。浅見光彦の母・雪江の遍路と記憶喪失事件から始まる。光彦が活躍すると言うか、異様にひらめきと押しの強さが 目立つ作品だ。警察との関係も微妙で、特に大原刑事との絡みは異様にも見える。背景と話の展開が大きく、読書感は悩ましい。
2023年09月22日
セイレーンの懺悔<中山七里>
2016年の作品で2020年に文庫化された、電子書籍で読んだ。2014年9月以前の日本が舞台と注記がある。ニュース番組が是正勧告を受けたテレビ局、そこの新人 女性記者が主人公だ。誘拐殺人事件の報道で特ダネを狙う中で、さらに誤報をおこなう。大規模異動人事の中で、話が展開して行く。感情に揺れ動く中で、 自信を失って行くが・・・。
2023年09月28日
英国古典推理小説集<>
2023年に日本で編まれた作品集だ。訳者=選者は「推理小説」と「古典」を定義しているが、現実は微妙だ。1930年頃以前の作品だが、実際はフィりークスの 中編「ノッティンガム・ヒルの謎」が半分のページを占める。それ以外は引き立て役か?。知名度の高い作品は不要だったと思う。
2023年09月28日
そこにいるのか<似鳥鶏>
2018年の作品集を、2021年に文庫化した。副題が「13の恐怖の物語」で、ホラー短編集だ。個人的には苦手な分野の、苦手な長さであり、読むのに苦労したが、 記憶に残しにくい本だった。
2023年09月28日
暮鐘<今野敏>
2021年の作品集で、2023年に文庫化された。警視庁東京湾臨界署安積班シリーズの1作で、10話からなる連作集だ。安積班長と5名の班員に加えて、その周囲の メンバーが総動員的に登場する。時短と残業規制、水上班、ドライブレコーダーの多彩な内容で警察小説が展開する。
2023年09月28日
アンと愛情<坂木司>
2020年の作品集で、2023年に文庫化された。5話からなる連作集に文庫では2短編が追加された。20才になった主人公のアンこと杏子の視点からアルバイト先の 和菓子店と人々と和菓子の話題が描かれる。成人式にバレンタイン等のイベント、さらには金沢への旅行等と少しずつ世界が広がって行く。
2023年09月28日
凪の司祭<石持浅海>
2015年に出版された長編だ。個人の復讐による多数の殺人が計画から実行までとその後が描かれる。そのサポート役の5人の関わりも描かれる。1対1の殺人が、 多数起きると警備側と警察はテロと思いこむ。事件の読み違いは、対テロの訓練が役に立たない事になる。
2023年09月28日
悪魔のような女<赤川次郎>
1982年の作品集で、電子書籍で読んだ。副題は「懐かしの名画ミステリー2」で名作映画をモチーフにした4作からなる短編集だ。元ネタの映画を見ていないので、 内容的には犯罪小説・サスペンスあるいはホラー・恐怖小説になるのだろう。
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2023/09に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。