推理小説読書日記(2023/08)
2023年08月05日
警視庁特殺 使徒の刻印<吉田 恭教>
2019年の作品だ。特殊殺人を担当する部署「特殺」の刑事・佐倉と有働らを描く。猟奇殺人事件が起きて捜査が始まる、警察小説だがそこから外れた事件と 刑事らだ、猟奇要素も強いが本格ミステリの要素も持つ。
2023年08月05日
治験島<岡田秀文>
2023年の作品だ。年齢バラバラの男10人が閉じた病院空間で新薬の効果の治験試験に参加した。薬と偽薬を前後に分けて2週間服用する。担当者にも区別を 知らせず進行する。だが脅迫、医師の死、白骨発見、被験者の症状悪化と次々に事件が発生する。謎は重なる本格ミステリだ。
2023年08月05日
ラットトラップ<堂場瞬一>
2023年の長編だ。1969年頃のニューヨークを舞台に私立探偵・ジョーは押しかけ助手・リズと共に少女の失踪事件の調査依頼を受ける。ハードボイルド が似合う時代の似合う失踪事件をハードボイルド探偵が捜査する。それがハードボイルドスタイルと文体で描く。
2023年08月05日
見えない復讐<石持浅海>
2010年の作品で、2013年に文庫化された。連作長編形式で3人の大学院生の起業と進行を描く。そこではベンチャー支援者が存在する。3人は大学に 対して復讐を狙っていた。会社の成功と共に復讐も微妙に変化する。天才らが繰り広げる犯行と推理が描かれる。
2023年08月05日
京都嵯峨野殺人事件<山村美紗>
1998年の作品で、電子書籍で読んだ。狩矢警部と橋口警部補が登場する。大学同窓生の男2人と女5人が、後に集まり男が結婚相手を明かす予定だが 殺人事件が起きる。そのなかの1人の女性の視点から描かれる、それは読者には容疑者が1人減るが偏った感情でもある。
2023年08月05日
血<宮野村子>
1958年の作品で、上下2巻本の長編だ、国会図書館デジタルコレクションで読んだが、復刊はされていないようだ。貴族の血=女を愛する才能=飢えた 狼の男と、その近辺の女らを描く。運命とか愛憎とかのサスペンスで、重苦しい雰囲気と内容でたんたんと悲劇的に展開する。
2023年08月11日
絞首商会<夕木春央>
2019年の作品で2023年に文庫化された。デビュー作だが、時系列的には「時計泥棒と悪人たち」の後の話になる。元銀行員で元泥棒の蓮野が探偵を行いはじめた きっかけの事件が語られる。大正時代と世相を思わせる背景での事件と捜査が描かれる。登場人物は概ね、奇妙な人ばかりだ。
2023年08月11日
吸血鬼の仮面<ポール・アルテ>
2014年の作品で、2023年に翻訳して日本に紹介された。1901年の事件とそれより10年前からの吸血鬼事件とを共に、探偵のオーウェン・バーンズが解決する、 多くがその友人のアキレス・ストックの手記で構成される。吸血鬼の伝説が全体を流れて、シリーズでなければホラーと思いこみそうだ。
2023年08月11日
連続自殺事件<ディクスン・カー>
1941年の作品で、2022年に61年ぶりに新訳された。旧邦訳題「連続殺人事件」からの改題理由は解説で語られるが、自然だ。スコットランドの古城に遺産を巡り 人々が集まると、自殺かも知れない事件が起きてフェル博士が捜査する。主人公の男性が古城への旅行中に女性と出会う道中が印象的な導入・前半だ。
2023年08月11日
ブック・ジャングル<石持浅海>
2011年の作品で2013年に文庫化された。閉鎖されたばかりの深夜の図書館を舞台に、架空設定の戦争ごっこでの冒険とアクションが描かれる。異なる目的で忍び こんだ複数の男女のグループは、正体不明の攻撃者グループからリモコン機での攻撃を受ける。動機も不明な中で、機能と性能を想像して対応する戦いが行われる。
2023年08月11日
竹人形殺人事件<内田康夫>
1987年の作品で浅見光彦シリーズの1冊で、電子書籍で読んだ。福井で竹人形に関わる事件を描く。水上勉の小説「越前竹人形」を背景にするが、そもそもそこで 描かれる竹人形は存在したのかの問題が浮かんでくる。さらに地方新聞記者や越前観音堂などの多数の話題も併行して登場する。
2023年08月11日
秋山善吉工務店<中山七里>
2019年の作品で、電子書籍で読んだ。火事と父親の死(不審死)により、母と息子2人は祖父母の家(工務店)に引き取られる。そこで、3人の思いと事件が 描かれるが、それぞれは祖父・善吉に助けられる。後半は不審死を捜査する刑事が描かれ、そこでは善吉とその家族との絡みが奇妙に展開して行く。
2023年08月17日
まるで名探偵のような 雑居ビルの事件ノート<久青玩具堂>
2023年の連作集だ。雑居ビルに喫茶店や古書店や占い部屋や探偵事務所等が入っている。喫茶店で高校生・小南は店の娘・三津橋と出会う、さらにはビルの住人らと 出会いその周囲の事件とも出会う。2人が中心に、それらの事件を解決して行く。
2023年08月17日
みちびきの変奏曲<内山純>
2022年の連作長編だ。通り魔殺人の裁判から始まり、被害者・真空について傍聴した棚橋が調べていく。その先で次々と出会い登場した人物の話が始まる。 オムニバス風のそれぞれは、時にはミステリ色が強い部分もある。広がった話題が次第に収束して行く。
2023年08月17日
すべてはエマのために<月原渉>
2023年の長編だ。第一次大戦後期のルーマニアはドイツ侵略から逃れながらも領地拡大を目指す。姉・リサは妹・エマの輸血のために近親者を探す。リサは看護婦になり 名家から依頼を受け出向く。リサと出会った医師・シズカとは、名家の事件に巻き込まれて行く、リサとシズカは何故依頼されたのか・・・。
2023年08月17日
幕が下りて<ナイオ・マーシュ>
1947年の長編で、2023年に翻訳されて日本に紹介された。ニュージーランドに出張したアレン警部が3年ぶりにイギリスに帰国する。3週前に画家の妻・トロイは 肖像画製作依頼を受けた、その一家で当主が遺言を変えてさらに死ぬ。病死か殺人か?。帰国したアレン警部はトロイから話を聞き、さらに事件捜査の依頼を受ける。
2023年08月17日
三世代探偵団 枯れ花のワルツ<赤川次郎>
2020年の作品で電子書籍で読んだ。三世代探偵団シリーズの1冊で、祖母・幸代と母・文乃と高校生・有里が主人公だ。往年の大女優の映画撮影を舞台にして、複数の トラブルと事件が併行して絡みあって、さらには多数の登場人物の多視点から描かれる。
2023年08月17日
消えた魔人<高木彬光>
1967年のジュブナイル作品で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。蝙蝠館と吸血魔の事件を、斎藤警部とその子の玲子と敏夫が絡み、さらには大きく巻き込まれて行く。 そして松下課長と神津恭介も捜査に加わり、空を飛ぶ怪人と事件の謎を解明してゆく。
2023年08月23日
わたしたちが少女と呼ばれていた頃<石持浅海>
2013年の作品で2021年に文庫化された。碓井優佳が主人公のシリーズの1作で、本作は彼女が高校生の時に時間が戻り日常の謎を解いて行く7作からなる連作集だ。 ワトソン役の親友・上杉小春の視点で高校生活とそこでの謎と、それへの優佳の名探偵ぶりあるいは後に名探偵になってゆく様子が描かれて行く。
2023年08月23日
本格王2023<>
本格ミステリ作家クラブが刊行する2023年のアンソロジーで、2022年の発表作から選んでいる。今村昌弘、結城真一郎、潮谷験、矢樹純、荒木あかね、白井智之、 道尾秀介の作品が収録されている。完全に独立した短編であり、本格といっても多彩なジャンル・手法で描かれている。
2023年08月23日
迫りくる自分<似鳥鶏>
2016年の長編だ。ジャンル不明で主人公が冤罪を着せられて逃亡する。ただ何から逃げているのかが判らなくなる。自分と同じ顔の男がいるらしい、さらにそれからも 追われているらしい。味方を探すと、意外な人物が見つかる(そこも意外)。全編が理解が追いつかない展開だ。
2023年08月23日
シェイクスピアの誘拐<笹沢左保>
1984年の短編集で、2023年に文庫で復刊された。8作が収録されて、それぞれに副題がある、「暗号と殺人、安楽椅子と殺人、倒叙と殺人、不在証明と殺人、 動機と殺人、人物消失と殺人、完全犯罪と殺人、怪奇と死体」がそれぞれついていて、多彩なアイデアが盛り込まれる。
2023年08月23日
アミュレット・ホテル<方丈貴恵>
2023年の連作長編で、4つのエピソードからなる。犯罪者を独自のルールを守るならば、保護するというホテルが舞台だ。そこで起きた事件は、警察には関与させずに ホテル探偵が捜査して解決して、ホテル内部で秘密に始末する。時系列ではなく、途中にホテル探偵の誕生の話も含む。
2023年08月23日
東京結合人間<白井智之>
2015年の作品で2018に文庫化された、電子書籍で読んだ。2つのエピソードをプロローグとエピローグで挟んだ長編と、掌編「船橋結合人間」が収録される。 結合人間とは文字通り、2人が結合した人間でその過程もある。アイデアが多数埋め込まれているが、異様な設定を含めて、難解だ。
2023年08月29日
やさしい共犯、無欲な泥棒<光原百合>
2023年の作者の死後に編まれた作品集だ。架空の町「潮ノ道」が舞台の短編3作、本格味が強い短編3作、民話風が2作が収録される。そして作者の年譜と 作品リストがある。もともと作品数は少ない作者だが、この作品集もやや少な目の作品数だ。
2023年08月29日
サエズリ図書館のワルツさん1<紅玉いづき>
2012年の作品集を、再編集して2023年に文庫で復刊された。本が電子書籍化されて紙の本が高価で入手困難になった世界での、紙の本の図書館での出来事が 館長のワルツさんを中心に描かれる。2冊分冊で出版された。
2023年08月29日
黙示<今野敏>
2020年の作品で、2023年に文庫化された。警視庁捜査3課は窃盗犯を担当する、そのベテラン刑事の萩野と新人女刑事・武田のコンビがプロの犯罪者である 窃盗犯とその事件に関わる。本作はシリーズ3作目で長編だ。「ソロモンの指輪」の盗難はあったかが謎だ。
2023年08月29日
急行霧島<山本巧次>
2023年の作品だ。舞台は昭和36年の新幹線がない時代だ。鹿児島から東京に向かう「急行霧島」の中で、多数の事件や出来事が併行して起きる。それを 乗務員らや、客ら、同乗した刑事らの複数の立場から併行して描かれる。
2023年08月29日
死の家の記録<楠田匡介>
1960年に出版された、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。この作者の作品としては本格味が強いと言える。網走刑務所を仮出獄した男の怪しい 行動と、それを追う複数の人物が登場する。その人物がそれぞれ殺害され、その容疑者も殺害されて行く。
2023年08月29日
薔薇の殺人<内田康夫>
1991年の作品で、電子書籍で読んだ。宝塚歌劇団を背景にしている。女子高生誘拐事件が起きて、その両親がタレントであり、母親が宝塚歌劇団出身だ。 さらに歌劇団時代の事が絡み、浅見はその頃の宝塚関係者を訪問して調べて行く。実在の女優の名前も多数登場する。
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2023/08に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。