推理小説読書日記(2023/07)
2023年07月06日
サム・ホーソーンの事件簿5<ホック>
2007年に翻訳出版された作品集で、シリーズの5冊目だ。不可能犯罪の短編集で、医師のホーソーンが1930-40年頃の世情と世界を背景に描かれる。保安官や 看護師や知人・隣人も含めて描かれる。戦争が起きており、アメリカにも影響が出ている、その中でも事件は続々起きている。
2023年07月06日
転校クラブ シャッター通りの雪女<水生大海>
2014年の作品で、転校クラブシリーズの続編だ。主人公・早川は中学転校生でネットの「転校クラブ」で会話する。転校先の地方都市のシャッター商店街等が 舞台で、同級生となった生徒とその家庭の問題に絡んで行く。
2023年07月06日
インタビューズ<堂場瞬一>
2020年の長編で、2023年に文庫化された。1989年から2019年まで、毎年大晦日に渋谷で1年の話題をインタビューする。それをまとめる事で平成全体を網羅する 企画を行ったという形式で、インタビューだけで成立させた長編だ。
2023年07月06日
恋する殺人者<倉知淳>
2023年の作品だ。大学生・沢木高文が志田真帆子の死を高校同級生・来宮美咲と調べる。担当刑事・鷲津ともあう。さらに来宮の視点でも描かれる、さらに 私の視点が登場する。そして新たに2人が死に一気に事件が展開する。
2023年07月06日
ビショップ氏殺人事件<曽野綾子>
1957年のから1962年の作品を、2022年に再編集した作品集だ。本格推理の「ビショップ氏殺人事件」とサスペンス色が強い5作からなる作品集だ。雑誌編集時の 江戸川乱歩に進められてミステリを書いた作家の一人だ。その中では本格味が濃いと思える。
2023年07月06日
待てばカイロの盗みあり<赤川次郎>
2011年の作品集で、2013年の電子書籍版で読んだ。「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズの2冊目でシリーズ名どうりの設定だで、5作からの作品集だ。 捜査1課刑事で焼きもちで銃を撃ちたがる妻・今野真弓に悩まされる、泥棒の夫・淳一が主人公で2人でトラブルや事件を解決する。
2023年07月12日
アリバイの唄<笹沢佐保>
1993年の作品で2023年に復刊・文庫化された。テレビドラマではお馴染みの「タクシー・ドライバーの夜明日出夫」が登場する作品は6作と解説される。 レギュラー探偵作品は多くは無いが、大がかりなトリック作があるのも笹沢作品の特徴だ。
2023年07月12日
わたしたちの怪獣<久永実木彦>
2023年の作品集で、短編・中編4作からなる。怪獣が登場したり、時間移動者が登場したり、吸血鬼が登場したりするので架空と言うかSF設定だ。 ただし登場人物の個人的な視点での話が中心に展開する。主人公には現実的だが、その背景はSFの世界となる。
2023年07月12日
古い画の家<小沼丹>
1958年から1963年の作品を再編集して2022年に編まれた作品集だ。収録作品9作の内容やミステリ後はバラバラで多彩だ。作者は、作風は私小説風とも 回想風とも言われる純文学派であるが、技巧性が高くそれはミステリにも繋がり易いとも解説される。
2023年07月12日
コロナ漂流録<海堂尊>
2023年の作品だ。田口医師と厚労省の白鳥が登場するシリーズであり、さらには2020年から始まった「コロナ」シリーズの1作品だ。ミステリ要素は少なく、 コロナの下で迷走する政治とコロナ感染パニックが描かれる。本作では「効果性表示食品」や元首相暗殺と国葬問題が絡まれ展開する。
2023年07月12日
蝶の墓標<弥生小夜子>
2023年の作品だ。最初と最後にシングルマザー・里花が登場する、その母違いの姉・夏野の母・由子から遺産が残されてその条件が29年前の夏野の死を 調べる事で、事件は高校生4人の心中事件だった。そして、夏野の小学生時代のいじめが描かれ、次に関係者が再会して事件に繋がる高校時代が描かれる。
2023年07月12日
死線上のアリア<内田康夫>
1992年の作品集で、電子書籍で読んだ。警視庁捜査1課・福原警部が探偵役のシリーズが3作、それ以外のシリーズでない作品が4作からなる短編集だ。 大食いで太りフグハラと言われる福原は意外にも事件をどんどん解決して行く。
2023年07月18日
さよならの次にくる 新学期編<似鳥鶏>
2009年の作品だ。市立高校シリーズの1作だ。名探偵役の伊神が卒業して、ワトソン役の葉山が中心となる学園ミステリで、目次では第5話から第9話までと なっている。演劇部との微妙な関係の中で、美術部の新入女子・佐藤とそのストーカー対応で走りまわる事になる。
2023年07月18日
図書館<ジブコヴィッチ>
2002年の作品で2023年に翻訳された。作者はセルビアの作家で、近年に英訳が増えていると言う。それからの日本語訳は限定的と解説されている。 幻想かSFかホラーか的なジャンルであり、色々な図書館がテーマの連作集となっている。
2023年07月18日
エラリー・クイーン創作の秘密<グッドリッチ>
2012年に合作作者・エラリー・クイーンの間で交わされた往復書簡を元にした評論で、2021年に日本に翻訳された。プロットと詳細な梗概を担当するダネイと、 それからの文書化担当のリーの間で起きる議論が書簡で交わされる。それぞれの主張が対立する。それに加えて、家庭の事情やラジオドラマや雑誌の事が語られる。
2023年07月18日
居酒屋「一服亭」の四季<東川篤哉>
2021年の連作集で、「純喫茶「一服堂」の四季」の続編の位置ずけだが、関連は微妙にある。安楽椅子探偵連作集だが、事件の内容は死体切断ばかりで 相当に怪奇・猟奇的だ。編集者と刑事らが持ち込む事件を、女将が料理を作りながら解き明かす。
2023年07月18日
捜査線上の夕映え<有栖川有栖>
2021年の作品で電子書籍で読んだ。コロナ感染問題の中で、火村と有栖は大阪府警の事件に参加する事になる。地味な事件に見えたが、容疑者も定まらず 犯行方法も判らない。刑事らの視点での捜査が描かれる中で、火村らが加わり状況を聞く、そして捜査が意外な進展を示す。火村は違和感を持ち、捜査の旅に出る。
2023年07月18日
竜の雨降る探偵社<三木笙子>
2013年の作品で、電子書籍で読んだ。水上櫂の探偵社はいつになぜに仕事するのか、そもそも何者か。不明な背景のままで3話までが描かれる。そして最終話の 「月下の氷湖」が描かれる。雨天のみ営業の探偵社とは、それはパラレルの世界なのだろうか。
2023年07月24日
すり替えられた誘拐<ディヴァイン>
1969年の作品で203年に日本で翻訳紹介された。この作者の長編13作はこの作品で全て翻訳された。レギュラー探偵のいない本格派の作者だが、本作は不審な誘拐 事件が誘拐側と家族側と捜査側とで描かれる。途中から殺人事件にかわり大きく展開が変わる。本格として見ると異色作になるだろう。
2023年07月24日
密林の医師<渡辺啓助>
1944年の作品集を、20238年に復刊された。戦地に送る慰問用の文庫本でレアの本だと紹介されている。その経緯と作品が書かれた時代から、国策的な内容が 含まれるが、出版規制があった当時ではよくある事だ。日本以外を舞台にした作品が集められており冒険小説・秘境小説の色合いが強い。
2023年07月24日
この国。<石持浅海>
2010年に出版された連作長編で、2013年に文庫化された。舞台は独裁的な管理国家という特殊設定だ。5作からなり、それぞれが異なる舞台の事件が描かれるが 番匠という軍人が共通キャラとして登場する。さらに反政府組織の人物が対抗勢力として登場して謀略戦を繰り広げる。
2023年07月24日
能面検事<中山七里>
2020年の作品で、電子書籍で読んだ。大阪地検検事・不破俊太郎は感情を出さず能面検事と呼ばれる。新人事務官・惣領美晴の視点から独特の仕事と捜査が 描かれる。組織の不祥事を暴く事で担当事件を解明する。検事にそんな時間があるのかは別として、超人的な活躍が描かれる。
2023年07月24日
怪談の道<内田康夫>
199年の作品で、電子書籍で読んだ。小泉八雲の長い引用からはじまり、辿った怪談の道が舞台となる。鳥取県倉吉の人形峠の核燃料開発事業団の取材に行った 浅見光彦は放射性廃棄土の騒ぎに出会う、そこで記者と宿の家族や姉妹らと出会う。八雲と怪談の道、さらにウラン鉱と放射性土問題の中で事件が描かれる。
2023年07月24日
生還 山岳捜査官釜谷亮二<大倉嵩裕>
2008年の作品集で短編・中編4作からなる、電子書籍で読んだ。山と渓谷社から出版された、山の知識と事故とに犯罪が絡む事もある。主に山での捜索と調査を 描いて、真相が解明されるが。遭難かどうか自体が曖昧な状況での捜索という難しい事態が描かれる。新人捜査官・原田の成長記でもあり、山の難しさも描かれる。
2023年07月30日
刑事何森 逃走の行方<丸山正樹>
2023年の作品集で、何森刑事が登場する中編・短編3作からなる。シリーズ2冊目だが定年間際の年齢故に今後の展開は不明だ。所轄刑事の荒井みゆきと共に しばしば本流を外れた捜査を行う。互いに独断専行捜査故に、逮捕状等も下り難くて上から捜査中断を命じられてしまう。
2023年07月30日
フランケンシュタインの工場<エドワード・ホック>
1975年の作品で、2023年に翻訳された。コンピュータ検察局シリーズの長編とされるが、捜査員のジャジーンが登場するだけで特殊設定ミステリだろう。 近未来に冷蔵保存していた遺体を他の遺体の内臓を移植して命を復活させる手術が行われる。成否不明で、殺人事件が起きてその対象に容疑がかかる。 そして「そして誰もいなくなった」状態が起きてゆく。
2023年07月30日
あなたは月面に倒れている<倉田タカシ>
2023年の作品集で、短編9作が掲載されている。日常の謎のSFとも言えないが、未来の日常かもしれない所でおこるSFの性格がある。ナンセンスSFの雰囲気が 濃い。それは読者側がどう感じるかに関わるのだが。
2023年07月30日
マザー/コンプレックス<水生大海>
2023年の作品だ。地下鉄で起きた痴漢事件・騒ぎとそれに関わる被害者と容疑者と目撃者と証言者たちが登場する。それぞれの家族、特に母の視点から 描かれてゆく。息子の冤罪を信じる母、被害者の母は自身の被害を感じる、夫が逮捕されその夫と義母に悩まされる妻。それが新たな事件を起こしてゆく。
2023年07月30日
幽霊湖畔<赤川次郎>
1988年に出版され、1991年に文庫化された、それの電子書籍で読んだ。警視庁の宇野警部とその彼女・永井夕子が主人公のシリーズの作品集で、短編5作 からなっている。原田刑事を加えた3人が管轄外を含めて活躍する、素人のはずの夕子も当然の様に事件に首を突っ込む。
2023年07月30日
警視庁アウトサイダー2<加藤実秋>
2021年の作品で、3話からなる連作集だが、全体でも話は繋がる。さらには1作目の続編であり、この2冊目も普通に次に繋がってる。連作長編では無くて、 複数分冊の本の1冊と思える。所轄刑事・蓮見と架川とがコンビだが、主に蓮見刑事の背景に何かがあり、過去の事件の捜査比率が増えてくる。
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2023/07に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。