推理小説読書日記(2023/05)
2023年05月01日
君がいなくても平気<石持浅海>
2009年の作品で、2011年に文庫化された。携帯電話関連商品会社はベビー商品会社と業務提携して、開発した着ロボが売れた。さらに第二段商品や多数の開発を 行っているが、チーム内で不審な死が起きた。その開発部員らの視点で事件を含めた、仕事や恋愛が描かれる。視点は探偵か犯人か、それ以外か?。
2023年05月01日
禁じられた館<エルベール&ヴィル>
1932年の作品で、2023年に翻訳されて日本に紹介された。訳者・小林晋が掘り起こした知られていなかったフランスの本格ミステリだ。日本に翻訳して紹介されて いる作品だけでは全貌は判らない事は、ファンに知られて来た。未訳作や未紹介作者の作品は、訳されて実際に読まないと判らない。日本での評判は、少ない翻訳作 を基にしているので誤差が多い。本作は知られざる本格ミステリだった。
2023年05月01日
マスカレード・ゲーム<東野圭吾>
2022年の作品で、シリーズ4作目で長編では3作目だ。過去2回警察が潜入捜査で事件を防いだホテルで、また事件の可能性が浮かび、刑事・新田らはまたもや潜入 捜査を行う。秘密の過去の捜査は一部で噂になっていた。異動していた山岸尚美もホテルに呼びもどされて新田刑事とまたもコンビを組む。クリスマスのホテルを舞台に 事件と捜査が描かれる。
2023年05月01日
オフマイク<今野敏>
2020年の作品で、2023年に文庫化された。テレビのニュース番組の報道記者・布施京一のシリーズ5作目だ。刑事・黒田は20年前の事件を調べはじめる。布施は情報を 交換して関わる。テレビ番組「ニュースイレブン」は放送終了の噂が出る中で、キャスター・香山恵理子が失踪した。複数の出来事が絡み、布施と黒田が動く。
2023年05月01日
能登花嫁列車殺人事件<西村京太郎>
2018年年の作品で、2021年に文庫化された。警視庁の十津川警部のシリーズだ。能登の七尾の観光列車・花嫁のれんで殺人事件が発生する。そこから15年前の映画 「北の城の花嫁」が絡み、さらにリメーク映画製作が絡んで進行する。そこにはリメーク映画のストーリー・脚本の内容が深く絡むらしかった。
2023年05月01日
帰ってきたK2<横関大>
2020年の作品で。2023年に文庫化された。警視庁池袋署刑事課の黒木刑事と神崎刑事の通称K2が活躍するシリーズの3冊目だ。優等生タイプの神崎と型破りの黒木が、 時にはバラバラに捜査し、最後には2人で事件を解決して行く。オムニバス的な構成の、連作長編だ。多視点が有効に使われた警察小説だ。
2023年05月07日
一ッ目小僧捕物ざんげ 第1巻<戸川貞雄>
1949年から1956年の作品を、2022年に再編集して出版された。江戸時代に八丁堀の小伝次は片目をつむって考えることから、一ッ目小僧と呼ばれた。それが主人公で 事件を解決する捕物帳のシリーズだ。謎解き性は薄く、事件の成り行きを描いている。
2023年05月07日
その朝お前は何を見たか<笹沢左保>
2013年の作品で、2021年に文庫化された。元パイロットの父と息子は。ラジオから公開捜査されている誘拐犯の声を聴いて、行方不明の妻だと思った。夫は様子を 見るが、ひそかに調べ始める。妻が犯罪者かもしれないので、誰にも言えず一人で追ってゆく。複数の事件が絡み意外な展開を見せる。
2023年05月07日
灰色の階段<堂場瞬一>
2020年の作品で2023年に文庫化された。岩倉剛シリーズのO(ゼロ)で若い頃からの成長を描く短編集で6作からなる。そしてあとがきで、作者が岩倉について 語っている。刑事としての異動、前の妻との出会いと結婚と娘誕生、さらに別居。大友との事とある女性との出会い。過去の私生活が埋まってゆく。
2023年05月07日
女の敵には向かない職業<水生大海>
2023年の作品だ。葛城彩華は漫画志望で、憧れのまんが家・香蓮のまんがスタジオのアシスタントになった。香蓮の夫・神薙もまんが家だがパワハラ・セクハラが強く困る。 そこにネットでスタジオや香蓮に対する中傷が書かれる。神薙がパワハラ性格で反発すると炎上する。色々な事件と中傷がエスカレートして行く。パワハラ男に悩む主人公は解決できるだろうか?。
2023年05月07日
おはようおかえり<近藤史恵>
2021年の作品だ。小さな地方和菓子店の姉妹・小梅とつぐみは異なる生活を送っている。だがつぐみに死んだ曽祖母の魂が乗り移り、姉妹に43年前のことで頼み事をした。 姉妹は母・祖母ら家族についてあまり知らなかったが、曽祖母の頼みを家族とその周辺で調べてゆく。
2023年05月07日
難事件カフェ2<似鳥鶏>
2020年の作品で、シリーズの2作目だ。兄の喫茶店で元刑事の弟がパテシエしている、その店に県警秘書室の女性警官・直井が未解決事件を持ち込む。その3人が 難事件をそれぞれの思惑のなかで解決して行く。直井のキャラが爆発して無理な設定に、いつしか溶け込んでしまう。
2023年05月13日
野球が好きすぎて<東川篤哉>
2016年から2020年の短編をまとめた連作集だ。プロ野球が舞台で、熱狂的なファンと同様の探偵役が、事件を解決する。実際の出来事を取材して、それを鍵に 使用した。野球好き向きだろうが、ファンが謎を解きやすいかは微妙だ。1年1作で悠々と書かれた連作なのだ。
2023年05月13日
昏き聖母<トレメイン>
2000年の作品で、2023年に翻訳されて日本で文庫2冊で出版された。7世紀のアイルランドを舞台に修道女でさらに弁護士の役もあるフィデルマが主人公だ。 当時の法が舞台だが、異なる法制度の国もある。本作はその異なる法で処刑が決まった男の救出に駆けつけて、意外な真相を暴いて行く。
2023年05月13日
琥珀の闇<麻見和史>
2023年の作品だ。警視庁文書捜査官シリーズの9冊目だ。特殊な専門官と部署が主人公故に、普通の警察小説にはなりにくい。文書が中心になりにくく、犯人が警察に ゲームを仕掛ける内容になりがちだ。そのようなミステリだと割り切れば、そこそこ多いジャンルとも言える。
2023年05月13日
加田三七叢書 第1巻<村上元三>
1953年ごろの短編を、2023年に再編集して復刊した。江戸町奉行所の同心・加田三七は活躍したが、明治維新後は翁庵という蕎麦屋を行った。その同心時代の 活躍と、蕎麦屋時代の活躍を混ぜての連作集となった。江戸時代の捕物帳は、微妙だが時代はそれほど差も区別はつかない。
2023年05月13日
赤い鳥、死んだ<辻真先>
1997年の作品で、2023年に文庫化復刊された。北原白秋にあこがれる詩人・北里が主人公だ。北里は隣家の妻への夫の暴力を知るが妻に恋する。その中で妻が死に 自殺と判断された。さらに北里が死に疑いがかかり、それを北里の弟の中学生と相手の妻の娘とが、真相解明のために調べ始めた。子供の心を持つ詩人の死を、 子供らが調べる。
2023年05月13日
希望のカケラ<水生大海>
2023年の連作作品集だ。社労士のヒナコのシリーズの3冊目で5作からなる連作集だ。仕事に慣れて来た時期のヒナコだが、コロナウィルス感染問題が起きて 労働環境が変わり、新たな問題にも関わることになる。クライアントには古い価値観が多く、不況業種も多い。新たな問題が続出する。
2023年05月19日
BG、あるいは死せるカイセル<石持浅海>
2004年の作品で、2009年に文庫化された。正体不明の言葉「BG」とは何か?、故に題名も意味不明だ。冒頭から奇妙な世界が始まり、女性が一部のみが男性に 変わる世界での出来事が描かれる。架空設定状態のミステリとなるが、実世界からの感覚ではパラドックス的に見える。
2023年05月19日
外国人墓地を見て死ね<西村京太郎>
2012年の作品で2021年に文庫化された。十津川警部シリーズの1冊で西本刑事が横浜の外国人墓地で死体発見者となる。同名異人の謎から、墓石の碑銘の人物を 調べると日中戦争に遡る。そして連続殺人から誘拐事件と展開してゆく。アメリカから来た弁護士は遺産相続人を探しているのか?。
2023年05月19日
迷宮遊覧飛行<山尾悠子>
2023年に出版されたエッセイ集だ。50年前のデビューからの、全体のエッセイ・解説等を集めたが、量的には最近10年くらいが多い。結果として、文体・内容・ テーマ的に多彩になる。すべてが年代別では無いので、繰り返し取り上げられる内容もある。容易に読める内容も多いので、難しい文は後に残すのが賢明だろう。
2023年05月19日
名探偵登場 芦辺拓と13の謎<芦辺拓>
2020年の作品集で、30年間に書かれきた短編と戯曲等を収録している。作者が登場させた名探偵13人から1作ずつ選んだ。探偵毎の作品数はばらばらで、マイナー 探偵も多い。探偵名とイラストと紹介からはじまるが、なぜか目次が無い。本当に13人なのか判らないままに、次々と登場してくる。
2023年05月19日
かいぶつのまち<水生大海>
2010年の作品だ。2008年のデビュー作「少女たちの羅針盤」の続編にあたる。高校卒業の5年後に演劇ユニット「羅針盤」のメンバーだった4人の内の3人が 母校の演劇部と高校で起きた事件に絡む事になる。3人の進路と現在のそれぞれの事情と悩みのなかで、後輩らの事件に無関心ではなかった。
2023年05月19日
新幹線殺人事件<森村誠一>
1977年の作品で、文庫化されてさらに電子書籍化された。作者のミステリのデビュー初期の作品であり、本格ミステリ度が高い。複数の事件をしれぞれの 担当部署が追うと、相互に関係性が出てきて捜査協力してゆく。この進行はその後の森村作品でも多い。東海道新幹線が絡む謎が前半・中盤に中心となり、 さらなる謎が加わってゆく。
2023年05月25日
約束の河<堂場瞬一>
2009年の作品で、2019年に復刊された。ノン・シリーズであり、落ちこぼれ?の法律事務所の2代目所長が主人公だ。25年前の高校時代の友人たちはそれぞれの進路 を選んだ。作家となった人物の死に疑問を持ち調べ始めたが、主人公の仲間を中心に多数の人物の過去と現在が登場して絡んで行く。
2023年05月25日
捜査1課ドラキュラ分室 大阪刑務所襲撃計画<吉田恭教>
2019年の作品だ。紫外線が浴びれない病気になった女性捜査官・堂安が部下・舟木を目や足として使い捜査する、ほぼ安楽椅子探偵として活躍する。監視カメラや インターネットが普及した現代の警察小説だ。舟木の視点が読者の視点であり、堂安の思考と指示は双方にヒントとなる設定だ。
2023年05月25日
431秒後の殺人 京都辻占探偵六角<床品美帆>
2022年の作品だ。ワトソン役がカメラマンの安見直行、探偵が法衣店主・六角聡明の連作集だ、辻占とは六角を指す。京都市の中央の烏丸通り付近の詳しい描写が あるが、京都人以外はかなり戸惑う。主人公の2人が関わる事件も多く、不可能犯罪的な事件が多い本格ミステリ作品集だ。
2023年05月25日
小説集 明智光秀<>
2019年の時代小説のアンソロジーだ。多彩な作者の12作からなるアンソロジーだ。主に朝倉・足利との出会い以降の時代が中心だ。波多野兄弟を罠で殺害した 事件が多い、さらに本能寺の変は当然ながら作品数が多い。そして「いきていた光秀」が最後に掲載されている。2020年の大河ドラマの前だから、それも注目だ。
2023年05月25日
東京湾アクアライン15.1キロの罠<西村京太郎>
2004年に出版された、十津川警部が登場するシリーズの1作だ。東京人以外にはアクアラインは詳しくは無い、それが舞台の犯罪計画自体が面白い。簡単に 犯行を許す警備体制も現実にありそうに思える。いつもは走りまわる十津川だが、場所柄か待機して指示している感があり、それは珍しい。
2023年05月25日
あやかしの夜<岡田鯱彦>
1958年の作品集で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。短い目の短編10作を掲載する。変格ミステリというか色々なジャンルの作品を集めている。 犯罪小説や「私は誰」小説やサスペンスが不規則にならぶ。ショートショートよりは長く、本格を書くには短すぎる長さの作品で、苦心を感じる。
2023年05月31日
平成古書奇談<横田順彌>
2000-2001年に雑誌連載された作品で、作者の死後の2022年に出版された。題名どうりの奇談であり、9話のそれぞれはSFなのかホラー風なのか、ジャンルがなにか 不明の色々な内容だ。古書店主とそこの娘と、客のフリーライターが古書を中心に多彩な事件と関わって行く。
2023年05月31日
届け物はまだ手の中に<石持浅海>
2013年の作品で2015年に文庫化された。殺人犯が主人公で、犯行後に事件が発覚する前にある人物に会う必要がある。その家を訪問すると3人の女性がいて、 目的の男になかなか会う事が出来ない。それは何故かを犯人の視点で描く。同時に裏の事情が3人の女性や、会えない男にもある筈だった。
2023年05月31日
Jミステリー2023<>
2023年に編まれたオリジナル短編6作からなるアンソロジーだ。東野圭吾・結城真一郎・阿津川辰海・真梨幸子・白井智之・近藤史恵が参加している。 本格ミステリと変格とが交互に掲載されている感がある。長めの短編が多く、書下ろし文庫でもあり楽しいアンソロジーだ。
2023年05月31日
シャーロック・ホームズの誤謬<バイヤール>
2008年の作品で2011年に翻訳されて日本に紹介され、2023年に文庫化された。副題が「「パスカブィルの犬」再考」であり、コナン・ドイルの作品に対して 疑問を提示して、その真相が異なることを指摘する。小説を解析して別の真相を見つけ出している。
2023年05月31日
その鉄柵の中で<鷲尾三郎>
1962年の作品で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。私立探偵・牟礼順吉のハードボイルド探偵談だ。記者・三瓶孝一と内藤信吉警部とが絡むことで ストーリーが大きく展開する。派手で不死身風の主人公であり展開で、小刻みに話が加わってゆく長編だ。
2023年05月31日
化身の哭く森<吉田恭教>
2017年の作品で、電子書籍で読んだ。鏡探偵事務所調査員・槙野康平と早瀬美央のコンビが依頼を受けて調べる。一方で警視庁刑事・東條有紀は別に 事件捜査を行うと、槙野の調査と接点が出てくる。互いに利用する形で情報交換する事で、互いの捜査等が進展する。
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2023/05に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。