推理小説読書日記(2023/04)
2023年04月01日
維新の終曲<岡田秀文>
2022年の作品だ。「奇兵隊の終曲」「幕臣の終曲」「裏切りの終曲」の3章構成の時代小説だ。長州の奇兵隊に加わった卓介が幕府軍に破れて参事・中野梧一 と出会う。幕臣・斎藤辰吉が榎本武揚隊に加わり敗戦後に中野梧一となり下関に赴任する。その後商人となり成功するが、最終章に向かう。
2023年04月01日
恐ろしく奇妙な夜<ロジャーズ>
2023年に、既に発表された作品と新訳の作品で再編集された作品集だ。サスペンスとホラーやSF等の異様な作品が中心だ。作品数は多いと紹介されている作者 だが、本集では意外と日本初紹介作はすくなかった。ミステリ味の強いサスペンスは少ない印象を持ったが、実際はどうなのだろうか。
2023年04月01日
中野のお父さんの快刀乱麻<北村薫>
2021年の作品集で6作の短編からなる。日常の謎から始まったシリーズだが、編集者の主人公と本マニアのお父さん故に、本等の謎の比重が高くなり、本集では 全てとなる。ただし映画や落語や将棋とその音源・映像をも含む。作者は本の謎をエッセイと小説に書き分けている。
2023年04月01日
彼女たちの犯罪<横関大>
2019年の作品で、2022年に文庫化された。複数の登場人物の視点で入れ替わり、いくつかの話が描かれる。その視点の人物を含めて、失踪事件や自殺事件が 発生する。所轄刑事・上原が女刑事と捜査する視点が加わり、全体が混乱気味に展開して行く。
2023年04月01日
吸血魔<高木彬光>
1954年の少年向け小説で、国会図書館デジタルサービスで読んだ。斎藤一家3人が蝙蝠館と謎のマント男の謎に関わって行く。神津恭介と松下警部らが捜査に 加わるが、脅迫状は続き、さらには死体も見つかる。幽霊屋敷と空飛ぶ怪人と地下迷路等の謎が解かれて行く。
2023年04月01日
皇女の霊柩<内田康夫>
1997年の作品で2001年に文庫化された、電子書籍で読んだ。京都の大学生・池本美雪は故郷・馬籠に止まった皇女・和宮を卒論で調べた、浅見光彦は東京の殺人事件 で相談を受け、その出身地の木曽に行きそこで美雪と出会う。現在の事件と和宮にまつわる謎が絡んで展開して行く。
2023年04月07日
ギガース3<今野敏>
2003年の作品で2008年に文庫化された、宇宙海兵隊ギガースのシリーズの3冊目だ。地球連合軍と木星圏との宇宙戦争が始まり、地球軍海兵隊に新兵器ギガースが 加わる、さらに空軍が加わる。併行して地球でも記者を中心に動きが起きている。そして3冊目で大きな動きがあろ、ギガース操縦士・リーナに関する謎がさらに深まる。
2023年04月07日
お助け同心尾形左門次<笹沢左保>
2013年の作品で、2021年に文庫化された。商品を積む高さを見回る・高積見回り同心の尾形は他方「お助け同心」とも呼ばれて罪人から相談されて、教えたり調べたり する。地味な仕事の同心が裏で罪人の力になり、隠された真相を暴く。
2023年04月07日
プロジェクト・インソムニア<結城真一郎>
2020年の作品で2023年に文庫化された。夢を参加者で共有するという人体実験プロジェクトと参加者が舞台だ。特殊設定ミステリで、現実の世界と夢の中の 世界が併行して進んで行く。特殊設定の中のルールで起きる連続事件を解明する事になる。複雑な構造とルールが難解で複雑なのか、設定とルールの理解が難しい。
2023年04月07日
小樽湊殺人事件<荒巻義雄>
2023年の作品だ。SF作家のメタ・ミステリーとされ、作者が小説構造をあとがきで語るが、読むと余計に判り難くなる。架空の町の小樽湊を舞台に第二次大戦後から 現在までを描く。作者は「一度完成したミステリーを解体して再編集する。多数のミステリーを読んだ知識や色々な情報を加えて行く」とした。全体がメタ・ミステリ 構造となっている。
2023年04月07日
ウサギ料理は殺しの味<シニアック>
1981年の作品で、1985年に翻訳され、さらに2009年に復刊された。フランスのとある田舎町では色々な人々が絡んで暮らしていたが、連続殺人が起きた。その中で レストランで木曜日にウサギ料理を出さないと事件が起こらなかった。何が起きたのか、理由があるのか。
2023年04月07日
闇の関ケ原<中津文彦>
1959年の作品で電子書籍化されている。関が原で何が起きて結果として東軍が勝ったのか。それに繋がる、多数のエピソードをある人物の視点を中心に描いて行く。 時代小説・歴史小説だが、視点の差がエピソードの解釈や原因の解釈も変える。
2023年04月13日
瓢庵先生捕物帖第1巻 龍神使者<水谷準>
1952年から1953年の短編を再編集して2022年に復刊された。横溝正史の人形佐七捕物帖の、拾遺作として書かれ、そこに同時に独自キャラの町医師・瓢庵が登場して 、謎を解く捕物帖となっている。さすがに佐七が登場しない作品も多いが、瓢庵は全て登場する。1作ごとは短く、じっくりの捜査でなく真相が突然にひらめく感がある。
2023年04月13日
SAKURA 六方面喪失課<山田正紀>
2000年の連作長編で、2023年に文庫化復刊された。警視庁綾瀬署失踪課は頼りない刑事が集まり、通称六方面喪失課と呼ばれている。変人の刑事らが集まり、そこの 異なる刑事の視点で各話が書かれて行く、そして全員が関わる最終話に繋がって行く。
2023年04月13日
化石少女と七つの冒険<麻耶雄嵩>
2023年の連作集だ。京都の高校の古生物部を舞台に、神舞まりあが主人公のシリーズの2冊目だ。変人高校生探偵とか特殊学園ミステリと紹介されているが、通常の ミステリの構成とは異なっている。予測不能の結末とさえるが、そもそも結末したのかが不明であり、ミステリと言えるのも判らない。
2023年04月13日
黒真珠<連城三紀彦>
2023年に単行本未収録の短編を中心に編まれた作品集で、「恋愛推理レアコレクション」とされている。短編6作と、より短い掌編8作を収録した。ミステリと 恋愛小説を書いた作者が、その融合を求め続けた作品群だと紹介されている。初単行本化がうれしいが、逆に未収録作品が無くなる寂しさもある。
2023年04月13日
オレと俺<水生大海>
2018年の作品「17X63 鷹代航は覚えている」を改題して2021年に文庫化された。鷹代航17才とその祖父・章吾63才は事件に遭い、互いの身体が入れ変わる。特に章吾は 記憶が消えていた。仕方なく入れ替わったままで事件を調べる事になった。混迷の状態だが、互いの事が判りあえる面もあった。特に航には生き方が変わるきっかけになる。
2023年04月13日
怪盗白面鬼<高木彬光>
1954年の時代小説で、国会図書館デジタルコレクションで読んだ。盗賊団が盗み隠した2万両を狙い、多数の登場人物が競う、捕物帖の要素も強い時代小説で伝奇小説の 味も強くある。六歌仙の色紙・白頭巾・刺青・花魁・目明し等が絡む、伝奇時代小説の要素が多数含まれている。
2023年04月19日
耳をふさいで夜を走る<石持浅海>
2008年の作品で、2011年に文庫化された。主人公・並木は女性3人の殺害を計画する。捕まらない為に急がずに準備するが、次々と状況が変わって行く。 章の間にはターゲットの一人の女性の独白がある。最終章は一転する。
2023年04月19日
友が消えた夏<門前典之>
2023年の作品で、題名は穏やかだが、内容は不可能犯罪とトリックで構成された、この作者のいつものスタイルの本格推理作だ。章は現在と、過去の館での事件と、 過去の拉致事件とが併行して描かれる。建築家の蜘蛛手と宮村がいつもの様に登場するが、それもトリックに関わる。この作者の文庫は少ない。
2023年04月19日
絶望の歌を唄え<堂場瞬一>
2017年に出版され、2020年に文庫化された。元公安警官が海外のテロ事件で退職して、東京でカフェを開いている。ところがその店の周囲で爆発事件が起きて、 巻き込まれて調べ始める。現れる謎の女性、過去の知人、警察関係者等・・・。地域自営団としてパトロールするが・・・・。
2023年04月19日
濃霧は危険<クリスチアナ・ブランド>
1949年の作品で、2023年に翻訳出版された。ブランドが書いたジュブナイルで、裕福な家の息子・ビルが荒れ地で取り残されて、出会った少年・パッチとが、 少年院脱走者や大男ら悪党らから逃げながら、暗号を解いたりする冒険談だ。そしてミステリでもある。挿絵に加え、漢字に全てルピがついている。
2023年04月19日
清明変生<森谷明子>
2022年の作品だ。この作者が得意の平安時代物だが、安部晴明の子供時代(葛丸)をそこで出会う人と事件とで描く。6名の子供時代の視点から描く5つの章と 、その十年後の終章から構成される。個性と能力を持つ子供らが事件と謎を解いて行く、時代ミステリ連作集だ。
2023年04月19日
取調室 敵は鬼畜<笹沢佐俣>
1999年の作品で、2010年に電子書籍化された。佐賀県警を舞台に、取調べ担当で達人とされる水木刑事の取調べの模様が、後半に描かれる構成だ。東京の少女が 佐賀で見つかる。一度目は母が迎えに来たが、二度目は母は現れず死体で発見された。誘拐事件だったのか?。容疑者を逮捕したが黙秘した。
2023年04月25日
宝の山<水生大海>
2020年の作品だ。東の山と村と西の山と村からなる村が地震により被害を受けて、さらには温泉がでなくなり、人が離れていった。そんな村で主人公・女性が 厄介な家族や村人らに悩みながら、仕事を探す。さらに仕事先で事件が起きて巻き込まれて行く。村と家族と過去に秘めた謎が、浮かんで来る。
2023年04月25日
十日間の不思議<エラリー・クイーン>
1948年の作品で1976年に翻訳された、さらに2021年に新訳された。同時期に翻訳出版された「エラリー・クイーン創作の秘密」の内容を反映した新訳だと解説がある。 その本には3冊の本がネタばれ注意となっているので、先にこの「十日間の不思議」を先に読む事にした。
2023年04月25日
神様の値段 戦力外捜査官<似鳥鶏>
2013年の作品で、2015年に文庫化された。海月警部と設楽刑事が新興宗教とそれが関わる事件の捜査を行う。捜査1課の捜査本部をくびになり、公安との特別 チームに加入して、そのメンバーたちは無差別テロの阻止を狙って大胆な捜査を行う。その先鋒は海月コンビだ。越前刑事部長のキャラが光る。
2023年04月25日
北村薫の創作表現講義<北村薫>
2008年のエッセイ的な講義集で、大学の実際の授業が基になっている。講義から始まり、ゲストを招いての演習へと進んで行く。さらには編集の仕事や作業を 語り、作品や作家についても講義して行く。
2023年04月25日
勿忘草をさがして<真紀涼介>
2023年に出版された、2022年度の鮎川哲也賞の優秀作だ。5章からなる連作短編集だ。主人公の高校生・森川航大が、老婆・園原菊子とその孫・拓海と出会う。 そして航大が出会う謎を、拓海がその植物に関する知識で解く。知識で解くので、日常の謎かどうかは微妙だが、謎の比重を抑える事でバランスは取られている。
2023年04月25日
メゾン・ド・ポリス6<加藤実秋>
2021年の作品で、電子書籍で読んだ。牧野ひよりと、メゾン・ド・ポリスの退職警察官らが事件の捜査を行うシリーズで、3作目と本作は長編だ。回を重ねて それぞれのメンバーの情報や家族も登場してくる。さらに牧野が本庁に異動になる、このメンバーでの捜査も終わるかに見えたが、だが・・・・。
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2023/04に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。