推理小説読書日記(2023/02)
2023年02月06日
十津川警部と七枚の切符<>
2022年に組まれたオリジナルのアンソロジーだ。西村京太郎の短編とエッセイは再録だが、他の7作は書下ろしだ。作品募集はなく、前にアンソロジーのシリーズ に採用された作者7人が短編とエッセイ短文を書いている。作家西村は意識するが、作品的にはそれ程には拘っていないようだ。本格味の強い作品が多い。
2023年02月06日
谷根千ミステリ散歩<東川篤哉>
2020年の作品で、4作からなる連作集だ。主人公は女子大生で、その兄がイワシ専門の居酒屋を営む。その街の東京谷中を舞台に、そこで開運グッズ専門店を営む 探偵役男性と、熱心な巡査が加わって、その地域で起きる色々な事件を解決してゆく。
2023年02月06日
ペンギンは空を見上げる<八重野統摩>
2018年の作品で、2022年に文庫化された。主人公は小学6年生で風船ロケットの打ち上げとそれからの撮影を目指す。そこにアメリカからの女性の転校生が現れる。 クラスの中で浮き気味の2人は親しくなって行くが、完全には理解しきれない。謎をひめながらの成長が語られて行く。
2023年02月06日
夜の向こうの蛹たち<近藤史恵>
2020年の作品だ。主人公で内向的な女流作家の前に、新人女流作家とその協力者?の女性が現れる。その2人の関係は不明・疑問であった。それぞれに近ずくと その反応は意外だった。その謎が明らかになると共に、新たな付きあい形が生まれて来る。
2023年02月06日
善人と天秤と殺人と<水生大海>
2011年の作品「善人マニア」で、2021年に改題されて文庫化された。主人公の八木珊瑚は婚約者・峰田征市の妹・野瀬翠に会うて同級生だった。さらに元上司で 不倫相手の阿曽から誘われた。優柔不断な婚約者とわがままなその妹と不遜な不倫相手のなかで、気が弱い主人公が翻弄され、殺人へと進行して行く。そして、。
2023年02月12日
魔弾の標的<麻見和史>
2022年の作品で、警視庁捜査1課十一係シリーズの1作だ。如月塔子が鷹野刑事とコンビのシリーズだが、本作では如月と門脇がコンビを組む。捜査中に連続殺人 が進行するパターンのシリーズであり、警察は犯人にひきまわらされる。次第に手掛かりが増えるのだが、本格味もある警察小説だ。
2023年02月12日
密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック<鴨崎暖炉>
2022年の作品で、前作の「密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック」と同じ設定で描く続編の位置ずけだ。密室の謎が解明されないとアリバイと同じで 裁判で無罪になるという設定の中でのミステリだ。密室自体が動機になり、密室が続々と登場して解明されて展開する、機械的トリックも多い。
2023年02月12日
稲妻左近捕物帖5<九鬼紫郎>
1953年から1954年書かれた作品で、2022年に再編集出版された。江戸の奉行所同心・稲妻左近と岡っ引き・吉五郎が活躍するシリーズだ。江戸と時代ならではの 事件と謎を扱う、ミステリ味の強い捕物帖であり、短編が似合う内容のシリーズだ。
2023年02月12日
伊豆下賀茂で死んだ女<西村京太郎>
1998年の作品で2001年に文庫化された。十津川警部シリーズだ。併行して起きた複数の事件に繋がりはあるのか、さらには同一犯なのか。十津川らが調べると 2年前の事件とその日に集まった人々が判った。推理は展開するが証拠はない。十津川らと犯人の駆け引きのなかで事件が進む。
2023年02月12日
絹の家<ホロビッツ>
2011年の作品で2013年に翻訳され、2015年に文庫化された。コナン・ドイル財団認定のホームズが登場する長編だ。事件捜査中にイレギュラーズの少年1人が 殺害された。そしてそれを捜査するホームズが容疑者殺害容疑で逮捕されてしまう。驚きの展開をワトソンの視点から描く、公式認定のホームズミステリだ。
2023年02月18日
連鎖<黒川博行>
2022年の作品で、大阪府警京橋署暴犯係の上坂と磯野が失踪人捜しから始めて、次第に大きな事件を掘り起こす。独特の会話とタッチで進むが、その内容は ひたすらリアルだ。捜査と聞き込み証言を基に、証拠を積み重ねて、さらに令状を得ての逮捕までを詳細に描く。まさしく警察小説だ。
2023年02月18日
ダンガンロンパ霧切7<北山猛邦>
2020年の作品で、シリーズ7作目で最終巻だ。奇妙な探偵世界で出会った霧切響子と五月雨結の少女探偵2名がコンビで活躍する。巻ごとに日常から 非日常の世界に移り探偵して、最後に日常に戻る。だが最終巻は異なる展開になり元には戻らない。
2023年02月18日
千福万来 まねき猫事件ノート<水生大海>
2018年の作品で、「まねき猫事件ノート」の2作目だ。設定が特殊で、まねき猫の置物と生きている猫が姿を行き来する。猫と主人公の少女・凪とでトラブルを 解決するかも知れないシリーズだ。何も知らない母親が加わると一気にヒートアップする。
2023年02月18日
埋もれた牙<堂場瞬一>
2014年の作品で2016年に文庫化された。本庁から地元の武蔵野中央署の刑事に異動したベテランの瀧が、刑事になったばかりの野田あかねとコンビで捜査する。 事件は同窓生から頼まれた失踪事件で、地元は顔なじみや同窓生とうの知人が多い。さらに年が離れた野田の教育係としても苦労する。
2023年02月18日
竜王氏の不吉な旅<鮎川哲也>
1972年から1974年の作品で、2022年に再編集で文庫化された。たぶん3度目の文庫だろうが、表題作「竜王氏の不吉な旅」ははじめてだろう、作者が長編化を 考えて収録されていなかったが死後に三番館シリーズとして収録された。短編シリーズであり作品数的に作者の代表シリーズと言える。
2023年02月18日
みだれ街道<島久平>
1954年の作品で国会図書館デジタルコレクションで読んだ。大阪奉行所の大塩平八郎に中心にした時代小説だ。大塩のまわりに集まった人々とそれに対抗 する人々との、思惑と対決を描く。その裏には幕府やそれ以外の権力がある。大塩が一揆を起こす少し前まどの描く。ただ大塩の活躍とは言い難い。
2023年02月24日
新謎解きはディナーのあとで<東川篤哉>
2021年の作品で短編5作の連作集だ。3冊の前のシリーズの続編になる。主人公の宝生麗子と執事・影山に加えて、本庁から戻って来た風祭警部に新人警官・若宮愛里 が加わった。前シリーズのキャラとスタイルを継続して、新シリーズが展開する。キャラの継続は、ドラマ化が容易になると期待される。
2023年02月24日
Gストリング殺人事件<ジプシー・ローズ・リー>
1941年の作品で1950年に日本で訳された、2022年に新訳で出版された。クレイグ・ライスの代筆説は解説で否定されている。だが読書後の感想は、ライスの 作品を読んだイメージが強く残った。劇場の踊り子が主人公でその視点・1人称で、周囲の人々と劇場での出来事を描き、殺人事件も描く。
2023年02月24日
11文字の檻<青崎有吾>
2017年から2022年にアンソロジーに発表した短編と掌篇の7作品に、書下ろし中編を加えた短編集だ。最近のアンソロジーなので既読作が多い。書きおろしの表題 作が中心になる。囚人がパスワードの解読に取り組むという暗号テーマだ。解けそうも無い問題で、ロジック的に解けるのかは微妙だが伏線が多くあり展開する。
2023年02月24日
トラップ・ハウス<石持浅海>
2012年の作品で、2014年に文庫化された。トレーラーハウスと言う狭い場所に複数人が閉じ込められ、そこに仕掛けられたトラップで死者が出る中で展開する。 電気以外は止まり連絡も出来ない狭すぎる密室状態で、知人の集まりだが知らない面もある集団が描かれる。内部犯の可能性を含めて謎が満ちている。
2023年02月24日
暗約領域<大沢在昌>
2019年の作品で、2022年に文庫化されたが926ページで分厚い。「新宿鮫」シリーズの11作目だ。主人公・鮫島刑事以外の登場人物がほぼ一新された。鑑識・藪の存在感が 強くなり、阿坂課長ほかに継続して登場しそうな人物が自作に繋がる形で終わった。小説の長さを感じさせない読みやすさは健在で、今後も期待だ。
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2023/02に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。