推理小説読書日記(2023/01)
2023年01月01日
ランドスケープと夏の定理<高島雄哉>
2018年の作品集で、中編3作からなる連作集だ。数学・宇宙等をテーマにしたハードSFであり、主人公が研究している「知性定理」の3バージョンがテーマ となっている。天才科学者の姉と双子の妹、指導教官で後の妻等らと研究生活するが、その時の世界の事件とも関わる事にもなる。
2023年01月01日
喪を明ける<太田忠司>
2022年の作品だ。片方の主人公の優斗は両親の離婚や色々の経験後に職を無くして家族と別れて、名古屋の父を訪ねて一緒に生活を始める。その父親はやはり 過去に妻子と別れて暮らしていたが、老年になり、孤独になった息子・優斗と暮らす事にした。その再度一緒に暮らし始めた2人を描く。
2023年01月01日
毒虫<宮野村子>
1949年から1964年の作品で、2022年に再編集されて復刊された。ミステリ作家だが謎とか捜査を描かず、心理やサスペンスが主体の作風の作者だ。その作者の 単行本未収録作品を中心に再編集した作品集だ。再編集と言うよりも新刊に等しい。
2023年01月01日
詩的私的ジャック<森博嗣>
1997年の作品だ。助教授・犀川創平と学生・西之園萌絵のコンビで書き始めたシリーズの初期作品だ。初出当時は日本でもインターネットとかモバイル通信 が広まる時期であり、デジタル技術等の最新技術は、犯罪も捜査でも、転換期だった。それをトリックに使い、舞台もあうものに設定したシリーズとなった。
2023年01月01日
ピエロがいる街<横関大>
2017年の作品集で、2021年に文庫化された。静岡県兜市を舞台に、宍戸市長周辺と、街に現れたピエロと雇われた主人公らの周辺に起きる出来事を併行して 描く。多くの問題を抱える市の現状を変えようとする、2人だった。ピエロの正体は?。それぞれの結末はどのように進むのか。
2023年01月07日
ひよっこ社労士ヒナコ<水生大海>
2017年の連作作品集で、2019年に文庫化された。社労士の朝倉雛子は数人の小さな社労士事務所の新人だ。持ち込まれる依頼に対応する中で、色々な 事件に巻きこまれる。意外と知られていない労務問題がテーマであり、仕事ミステリとして楽しむと共に労務の勉強にもなる。
2023年01月07日
サイモン・アークの事件簿1<ホック>
2008年の日本独自編集の作品集だ。奇妙な探偵のサイモン・アークの作品数は多い。作者の死の直前で選題には作者も関わったが、死去した。長い執筆期間 からバランスよく選んだ作品集だ。オカルト探偵と呼ばれるアークは年齢不詳でそれ自体が謎を持っている。
2023年01月07日
時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2<大山誠一郎>
2022年に出版された連作集だ。時計店主・時乃のアリバイ崩しを描いた短編5作からなる。警察で解決しないアリバイの謎を、刑事の一人が時乃に仕事と して、アリバイ崩しを依頼する。ほとんどを聞いて直ぐに解決すると言う展開で、短編向きの鋭い切れ味が特徴だ。
2023年01月07日
名探偵は誰だ<芦辺拓>
2022年の作品集で、7話の短編からなる。「XXは誰だ」が7話集まり、犯人捜しではない、誰だを探す人物当てがテーマの作品集だ。変則フーダニット とカバーに紹介され、作者は奇想ミステリと呼ぶ。展開されるロジック的には共通点がある。
2023年01月07日
遅すぎた雨の火曜日<笹沢佐保>
1987年の作品で2020年に復刊された。男に捨てられた若い女性が復讐でその20才の息子の誘拐を考える。息子は事情を知って、女性と一緒に自身の誘拐を進めて行く。 不思議な誘拐事件から始まるが、犯人の2人は次第に愛しあってゆく。誘拐事件の結末が不明のままに、官能小説化して行く。
2023年01月13日
ユタが愛した探偵<内田康夫>
199年の作品で、2005年に文庫化され2014年に電子書籍になった。浅見光彦シリーズの1作で沖縄を主な舞台にして「ユタ」という風習で存在を描いた。 独自な神や宗教に近い存在は現実的でないが、沖縄では存在出来てさらに少女に近い女性がそれとして登場する。琵琶湖と沖縄を繋ぎ、異なる世界として 描かれ、シリーズでの異色作で外伝的な印象もある。
2023年01月13日
フェイス・ゼロ<山田正紀>
1995-2010年の作者の単行本未収録作品を集めて、再編集して2021年に文庫化された。13作が掲載される。大雑把な内容としては、ホラーと幻想とSF等 となるが、はっきり分けられない作品も多い。解説によれば、作者には単行本になっていない作品が多数あると言う。出版を期待したい。
2023年01月13日
松島・蔵王殺人事件<西村京太郎>
1994年の作品で、1997年に文庫化された。十津川警部シリーズの1作だが本作では亀井刑事が中心となる。身元不明の死体が発端で仙台にゆき行方不明者が 見つかる。亀井が残り捜査を続けるが、知事選絡みで県警は動きにくい。選挙期間が始まる前に解決できるのだろうか。
2023年01月13日
フェンシング・マエストロ<レベルテ>
スペインの作家・アルトゥーロ・ペレス・レベルテの1988年の作品を、高城高が翻訳して2022年に出版された。1988年マドリードで女王や首相や反対派らが 入り乱れて革命が起きようとしていた。主人公のフェンシング達人で教師の視点から、描かれる。新しい女性の生徒、そして後援者が絡み事件に巻き込まれて行く。 フェンシングの用語が多くその理解は難しいが雰囲気は判るように訳されている、主人公が自ら巻きこまれた事件を調べるのはハードボイルドスタイルだ。
2023年01月13日
人間の顔は食べにくい<白井智之>
2014年の作品で2017年に文庫化され電子書籍にもなった。横溝賞候補作でデビュー作だ。近未来に人間が自分のクローンを作り食用にする架空設定だ。 それ自体も含めて全体に残酷な表現が多く、近ずきたく無い雰囲気が強い、それが別の一面を隠してもいる。読者を選ぶ本格ミステリだ。
2023年01月13日
オメガ城の惨劇<森博嗣>
2021-2022年に雑誌掲載され単行本になった、雑誌で読んだ。フランスの雑誌の女性記者の1人称で描かれる。日本の孤島のオメガ城に複数人が招待され、取材 で参加して、サイカワと出会う。集まった7人と10人程度の使用人がいるという中で、夜に一気に3人が殺害される。記者とサイカワが調べるが次々事件が 起きる。
2023年01月19日
教え子殺し 倉西美波最後の事件<愛川晶・谷原秋桜子>
2021年の作品で合作だ。倉西美波は谷原の作品に登場する激アルバイターだが、本作では高校の臨時教師をしている。匿名を含めた複数の視点から併行して 描かれるが、視点の変化が不規則に見えて混乱しやすい。過去の事件を含めて混乱した事件は、終盤に探偵役・藤代修矢が登場して漸くに安定したミステリになる。
2023年01月19日
彼女の色に届くまで<似鳥鶏>
2017年の作品で、2020年に文庫化された。主人公の高校生・緑川礼は画廊の息子で既に店を手伝っていた。千坂桜と出会いその探偵力と画家の能力にきずくが 彼女は絵以外は生活力は疑問だった。二人は絵画に関わる事件を解決して行き、同時に成長して行く。
2023年01月19日
転校クラブ 人魚のいた夏<水生大海>
2012年の作品だ。転校の多い女子中学生・早川理が主人公でパソコンのコミュニティサイト・転校クラブに参加している。転校先で転校生・神崎美佐姫と 出会う。神崎家は社長一家で息子・神崎龍之介がいるが、内部事情は複雑のようだった。そして誘拐騒ぎに巻き込まれて行く。
2023年01月19日
慶喜暗殺 太鼓持ち刺客・松廼屋露八<阿井渉介>
2022年の作品で、幕末から明治初期が舞台で元旗本・土肥庄次郎が主人公だ。大政奉還から撤退した元将軍・慶喜の暗殺を狙う。土肥の過去と、暗殺計画の行方を 描く時代小説だ。実在の刺客を主人公に実在の人物を多数登場させたが、必ずしもメジャーな展開とも言えないと思う。
2023年01月19日
廉恥 警視庁強行犯係・樋口顕<今野敏>
2014年の作品で、2016年に文庫化された。刑事・樋口を主人公にしたシリーズの1作だ。ストーカー被害を相談していた女性が殺害されて、相手の男に容疑がかかるが ストーカー自体も否定した。樋口らは先入観と迷いのなかで、女性の小泉刑事指導官とストーカー事件から見直しを行って行く事になる。
2023年01月25日
健さんのミステリアス・イベント体験記<松坂健>
2010年から2021年に書かれたエッセイを、作者の死後に2020年にまとめて出版された。日本推理作家協会会報に連載されたエッセイだ。ミステリに関する、多様なイベントを見に行き体験した。展示会・講演・劇・ミュージカル・イベント・出版関係等多様なイベントを追う。東京中心だが、場所は限定されない。
2023年01月25日
灰かぶりの夕海<市川憂人>
2022年に出版された。ストーリーを含めて、本の内容を語り難い。そもそも題名の意味も語り難い。夕海は女性の名前なのだが・・・。主人公の過去の思い出と、 遭遇した女性との出会いが描かれる。そこには謎も部分があり、さらに事件にも出会う。双方が繋がり明らかになって行く。
2023年01月25日
オホーツク殺人ルート<西村京太郎>
1984年の作品で、1997年に文庫化された。作家の取材の代行を頼まれた女性2人から始まる。十津川警部の妻・直子が失踪の調査を頼まれる。その中での殺人事件 が起きて、容疑者やアリバイを知らべると、2つの出来事が絡んで行く。
2023年01月25日
八月の魔法使い<石持浅海>
2010年の作品で、2012年に文庫化された。8月の連休に行われた会社の役員会議で事故報告書が提示だされた。併行して総務部でも報告書のトラブルが起きた。 主人公はそれを目撃して何が起きているのはを考えて、かつ巻きこまれて行く。会社と経営の中での、ミステリが展開する。
2023年01月25日
絶対猫から動かない(上)(下)<新井素子>
2020年の作品で、2022年に2分冊で文庫化された。通勤電車での出来事に巻き込まれた人たちの多数の視点で、その出会いを含めて展開される。中学生グループと 個別の高齢者たちが、事件を考える中で、不審不明な存在を見つける。その正体は何か?。一気にSF世界に入って行く。大長編だ。
2023年01月31日
ネタ元<堂場瞬一>
2017年の作品で、2020年に文庫化された。新聞記者が特ダネを追う短編小説を集めた作品集だ。時代と共に、インターネットやSNSが登場して特ダネの 追い方が変わってゆく。そこでは、同じ会社の記者同士の考え方の違いも大きくなってきた。
2023年01月31日
稲妻左近捕物帖4<九鬼紫郎>
2022年に出版された捕物帖シリーズの4冊目だ。1952年から1954年の長めの短編「黒手組」と短編11作が収録されている。捕物名人・稲妻左近と岡っ引きの 吉五郎が江戸ならではの事件を解決する。左近は当然だが、左近の足の役目をする吉五郎の登場場面が多い。
2023年01月31日
宇宙海兵隊 ギガース<今野敏>
2001年の作品で、2008年に文庫化された。太陽圏内の抗争の中で、ガンダム型の戦闘機のギガースが新兵器として配備された。シリーズの1冊目はその背景と 関係者らが登場して紹介を兼ねて、戦闘場面と能力・機能が描かれる。
2023年01月31日
あなたも名探偵<>
2021年の犯人当て小説のアンソロジーだ。市川憂人・米澤穂信・東川篤哉・麻耶雄嵩・法月綸太郎・白井智之の短編が、編集的に途中に「読者への挑戦」を 挟んで展開する。雑誌掲載時にも、2回に分けて掲載された。謎解き短編が集まっており、犯人当てを楽しめる。
2023年01月31日
伝説の里(上)(下)<宮野村子>
1963年の作品で復刊されていない。2022年5月から始まった国会図書館デジタルコレクションは、2022年12月に一部リニューアルされた。それ以前では図書館に出かけて 館内でのみ閲覧出来た書籍が、インターネットの個人宛送信サ―ビスで自宅で読めるようになった。書籍を写した写真を読む事になるので古書と同じだ。 「伝説の里」は上下分冊だが極端には長くない。捜査が描かれないミステリだ。
←日記一覧へ戻る
2023/01に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。