推理小説読書日記(2022/12)
2022年12月02日
殺人の多い料理店<辻真先>
1996年の作品で、2022年に復刊文庫化された。作者が書いた文学作品を題材にした3作品のシリーズの1作で、その事情は作者後書きに詳しく書かかれている。 本作は宮沢賢治作品を取材した可能克郎が色々な作品と事件に関わる。多数の引用もあるが、知らないものも多い。それは・・・・。
2022年12月02日
地下道の悪魔<新庄節美>
2002年の作品で、副題が「ファンタジック ミステリー館」だ。児童向きの作品で、主人公の少年が好きな少女に誘われて体験する幻想・怪奇談だ。 伝説の悪魔が現れるというトンネルに探しに行くと実際に現れる、少年と少女の対応の差が悩ましい。
2022年12月02日
金曜日の女<笹沢佐保>
1985年の作品で2018年に復刊文庫化された。父と対立する息子の視点から始まる、複数の愛憎劇と殺人から始まり、男女の愛憎へと進んで行く。さらに事件が 起きて行く。誰が秘密を抱え、誰が騙されているのか、サスペンス色が濃い結末に繋がって行く。
2022年12月02日
消えたなでしこ<西村京太郎>
2013年作品で2015年に文庫化された。十津川警部のシリーズで、サッカーの女子日本代表選手がまとめて誘拐される事件を描く。ロンドン五輪が近ずき、犯人に 脅迫される中で十津川らが秘密裏に解決を目指す。多数の選手が実名で登場し、チームから離れていた澤穂希に協力を頼む。
2022年12月02日
十五号室の男<黒羽英二>
2009年の作品集で、鉄道文学と称したジャンルでそこを舞台にした、ホラー・怪奇・幻想味の作品群だ。特に廃線となった鉄道を訪れる作品が主体となっている。 「月の光」は雑誌・宝石の新人集に利根安理名義で載った作品でのちに鮎川哲也のアンソロジーにもとられた。
2022年12月08日
夏の雷音<堂場瞬一>
2015年の作品で、2018年に文庫化された。楽器店とビンテージ・ギターの世界を舞台にして、愛好家と裏の世界を描いた。警察も関わるが、主人公は一般人で あり、その捜査的な行動を描くサスペンスだ。希少楽器には価格問題や真贋問題が絡み、オークションや業界のからくりが語られる。
2022年12月08日
世界の望む静謐<倉知淳>
2022年の作品集だ。犯人側から犯行を描き、探偵側の捜査とを並行して描いている、倒叙ミステリと言われるタイプだ。探偵役は死神こと乙姫警部と部下の 鈴木刑事であり、捜査側が犯人を聴取したり話を聞く場面が多い。その過程で捜査側が気が付く、犯人のミスや証拠が明らかになってゆく。
2022年12月08日
偽悪病患者<大下宇陀児>
2022年に出版された再編集短編集だ。1929年から1936年に発表された9作を収録した。作者は大正末期のデビューで、1960年までに活躍し、 変格派とされるが、発表期間を限定しても作品のジャンルやテーマは、怪奇や幻想やSFや科学小説まで広く多彩だ。
2022年12月08日
思い出列車が駆けてゆく<辻真先>
2022年に編まれた作者の鉄道ミステリのアンソロジーだ。1983年から2011年に発表された短編集に未収録の短編を中心に収録された。鉄道がテーマだが 内容や、スタイル等は多彩だ。時代と共に変わる鉄道の当時を知る一面もある。シリーズ・キャラクターも複数登場しており、それも見どころだ。
2022年12月08日
美濃牛<殊能将之>
2000年の作品で石動シリーズの1作だ。電子書籍で読んだ。題名には「ミノタウルス」の意味と、高級牛の飛騨牛を育てるが規格外で該当しなかった美濃牛 の意味がある。関連知識が豊富だが、ストーリー的には関連性は微妙だと思える。複数要素が絡む奇妙な作でもある。
2022年12月14日
アカツキのGメン<横関大>
2018年の作品で、2019年に文庫化された。元強盗団・アカツキの3人が老後の忘れた頃に現金強奪に絡むことになった、だが意外な結末になる。それが 第1部で、その後を第2部で「大逆転劇」として描く、如何にも詐欺師の対決的な題で進むが・・・。その結末はやはり意外となる。
2022年12月14日
桃源<黒川博行>
2019年の作品で、2022年に文庫化された。大阪府警泉尾署の捜査2課刑事・新垣と上坂の2人が詐欺事件を追い、沖縄や奄美のいくつかの地域を含めて、 走りまわる。入り組んだ詐欺グループは全貌が見えなく、追跡する人物とも出会えない。警察小説がユーモアを含めて展開する。
2022年12月14日
虹の涯<戸田義長>
2022年の作品だ。幕末の水戸藩主らによる天狗党結成とその終末までを描く時代小説であり、その中で殺人事件等が複数起きて、主人公の藤田小四郎が解決する 形の長編だ。ミステリ部分からはオムニバス長編とも言える。謎的にはオーソドックスな内容を時代小説に取り込んだ形となる。
2022年12月14日
第8監房<柴田錬三郎>
1957年から1963年の作品を、2022年に再編集して復刊された。もとより本格ミステリではなく、サスペンスや犯罪小説的な作品が主体の短編集だ。時代小説の 作者が初期に書いた、ミステリ作品集のなかからの再編集短編集となっている。
2022年12月14日
警官の証言<ペニー>
1938年の作品で2009年に翻訳して出版された。解説によるとペニーの作品は8作で、近年では半数くらいが訳されている。後半が探偵役の一人称で書かれている、 さらに読者への挑戦や、最終の附録の手掛かりリストも加わり、外観上の本格ミステリ感との微妙な差が感じられる。
2022年12月20日
最後のページをめくるまで<水生大海>
2019年の短編集で2022年に文庫化された。連作ではない個別の短編集で、5短編を収録した。語り手・犯人・探偵役が不明のどんでん返しを設定した作品を 集めている。詐欺犯罪等もあるが生活の中の謎や偽りを、隠れた謎として設定していても、最後まで隠されていてサプライズで終わる。
2022年12月20日
午後からはワニ日和<似鳥鶏>
2012年の作品で、通称で動物園シリーズとも言われるシリーズの1作だ。ワニの盗難?から始まる動物園内での不思議で不審な事件だが、動物では器物盗難 や器物損壊になるのか?、飼育員らが捜査を開始する事になる。ユーモア・ミステリが展開する。
2022年12月20日
異常者<笹沢佐保>
1981年の作品で、2019年に文庫で復刊された、かなり長い作品だ。マスコミがなずけた「残虐魔」による連続殺人事件が起き、共通点から同一犯と思われた。 弁護士・波多野は妹が被害に遭い、犯人を追う。連続事件なのか?、動機は愉快犯なのか?。次第に解明されて行くが、全貌が判る前に次の事件が起きて行く。
2022年12月20日
ライオンは仔猫に夢中<東川篤哉>
2017年の短編集で、「平塚おんな探偵の事件簿」シリーズの3作目だ。4話からなり、探偵・生野エルザとそのパートナーで語り手・川島美伽が捜査する。 平塚のローカル情報は判らないが、色々なタイプの事件が展開して行く。宮前刑事のキャラクターに目がゆく読者が多いかも知れない。
2022年12月20日
金環日蝕<阿部曉子>
2022年の作品でだ。20歳の大学生・春風は窃盗犯を見つけたが逃がして、その時に出会った高校生と探し始め、その家族と出会う。貧乏家庭の理緒は生活の為に 働くが詐欺仲間に関わって行く。対称的なこの二人が併行して描かれ、それぞれが関わる事件が交叉して行く。金環日蝕のように外側だけが光るが中は闇の世界だった。
2022年12月26日
稲妻左近捕物帖3<九鬼紫郎>
1949年から1952年の作品で、2022年に再編集で復刊された。短編13作からなり、うち5作は「前に掲載した作品の改題作品ですが、全面的に改稿されているため、 別の作品として掲載しました。」となっている。
2022年12月26日
歪<堂場瞬一>
2012年に出版され、2013年に文庫化された。澤村慶司シリーズの2作目だが、内容と構成的には1作目や3作目とかなり異なる。3部構成の2部になって、漸くに 澤村が動き始めるが、2部の題名が「後手」とは・・・。遅れに遅れた捜査は、最後の最後でようやくに容疑者に追いつく事になる。冒険小説的な構成だ。
2022年12月26日
冷火<久米正雄>
なんと1924年の作品で、2022年に復刊された。明治期の長編探偵小説は黒岩涙香以外は知らないが多数あるらしい。ただし翻案とか実話が多いと言う。その 中で書かれた創作小説の1つという。宝石の盗難・万引きと行方探しと絡み、家族内の問題風に展開するが、現代のミステリとはかなり印象は異なる。
2022年12月26日
invert2 覗き窓の死角<相沢咲呼>
2022年の作品で、城塚翡翠が主人公のシリーズの3作目で倒叙集としては2作目だ。「medium 霊媒探偵城塚翡翠」のネタばれは2作目と同じだ。犯人側からも描かれるが 倒叙小説というよりは単に叙述にも絡む謎を含むミステリと言う内容だ。1話がどんどん長くなるのが気がかりだ。
2022年12月26日
メゾン・ド・ポリス5<加藤実秋>
2020年の作品で、シリーズ5作目の連作集だ。4話からなり牧野とメゾン住人が事件に関わるが、その中の一人にややスポットが当てられる。さらに新しい人物の 登場もある。過去の迷宮事件を絡めて、住人らの過去も幾つか語られる事になる。
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2022/12に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。