推理小説読書日記(2022/08)
2022年08月04日
試練<時武里帆>
2022年の作品で、護衛艦あおぎり艦長・早乙女碧が主人公のシリーズの2冊目だ。1冊目は登場人物と護衛艦の紹介の意味が強いので、事件中心の意味では 本作が最初となる。海上での訓練で起きた事件、一般客の体験乗船への対応事件、さらにはその最中に発生した海に不時着した飛行機からの救難信号の受信が起きる。
2022年08月04日
君に読ませたいミステリがあるんだ<東川篤哉>
2020年の作品で、鯉ケ窪学園高校の主人公生徒は第二文芸部の唯一の女性部員から強引に書いたミステリを読まされる事になる。その状況と作中作のミステリの5作から なる連作長編だ。作中作は本格ミステリでその舞台と登場人物は現実と重なる。2人の関係や、読ませる動機はなにか。
2022年08月04日
ペンバリー屋敷の闇<T.H.ホワイト>
1932年の作品で2021年に翻訳されてROM叢書として出版された。訳者あとがきに寄れば「第1部は本格探偵小説で、第2部は当時としては破天荒な作品」となる。 異様な状況と動機から起きるサスペンスが展開する。
2022年08月04日
雪に撃つ<佐々木譲>
2020年の作品で、2022年に文庫化された、北海道道警シリーズの9作目だ。札幌の雪まつりの直前の短い期間の事件を描く。道警・佐伯は自動車盗難事件を追い、 機捜・津久井は拳銃発射事件を追い、生活安全課・小島は家出少女の虐待事件を追う。それらが重なって行き、相互に繋がって行く。
2022年08月10日
ダミー・プロット<山沢晴雄>
2000年に同人誌で出版され、2022年に文庫化されて推理クイズ4作とエッセイも収録された。作者は長編4作を書いているが作者自身も代表作としていると言う。 多人数の三人称視点で描かれるが、かなり込み入ったアリバイトリックを組み込んでいる。叙述ミステリでは無いがそれに近い注意力で読む必要がある。
2022年08月10日
ここから先は何もない<山田正紀>
2017年の作品で2022年に文庫化された。SFミステリだが、次々に登場する科学知識や最新の自然科学の話題の山がSF感とその距離を忘れさせる。小惑星探査機が 地球に戻ったがその成果が曖昧にされた。調べると、目的の小惑星とは別の星に着いたらしく、さらにそこで人骨が発見されたらしかった。
2022年08月10日
乳頭温泉から消えた女<山本功次>
2022年の作品だ。田沢湖近くの乳頭温泉での失踪事件と、北海道の積丹半島の海岸での転落死との2つの出来事が並行して描かれる。民間コンサルタントが調べ始める。 事件かどうか不明で、民間人捜査でさらに関連も不明という曖昧状態で進む。ストーリー構成自体が曖昧で、掴み所が不明の奇妙な展開だ。
2022年08月10日
清明 隠蔽捜査8<今野敏>
2020年の作品で、2022年に文庫化された。警視庁大森署長・竜崎は神奈川県警の刑事部長に異動になり、その最初の事件だ。警視庁との合同捜査となるが、早速に 対抗意識にきずく。さらには新しい人物が次々登場して、その紹介的に本筋と脇筋の出来事が進んでゆく。竜崎色が新しい職場で発揮されて行く。
2022年08月16日
あなたの謎、預かります<水生大海>
2012年の作品「てのひらの記憶」を、2016年に改題して文庫化された。主人公は質屋の娘・円(まどか)で物にそぼ記憶を見れる能力がある。見てしまった記憶 を元に謎を解決して行く。祖母と知り合いの刑事が絡んでゆく。
2022年08月16日
西村京太郎の推理世界<>
2022年に、西村京太郎の死後直ぐに雑誌「オール読物」編集部が編集したムックだ。西村のデビュー作「歪んだ朝」から雑誌掲載短編数作と、雑誌掲載の多彩な 記事を再録して、若干の書き下ろしの記事を加えた。「全軌跡」を描くとされるが、流石にそれは難しい。
2022年08月16日
振袖小姓捕物控3<島本春雄>
1951-1952に雑誌発表され1955年に出版された、再編集して2022年に復刊された。奉行の色小姓で十手持ちでもある振袖美弥太郎が主人公の捕物帳の第3巻だ。 だが特殊な経歴と術とを持つ伝奇時代小説だ。登場人物はほぼ皆が只者でなく、どんどんと死んで行く。
2022年08月16日
豪剣お庭番竜之介<笹沢佐保>
1988年の作品で、2014年に文庫化復刊された。江戸時代中期にお庭番・伊吹竜之介の潜入しての捜索を描いた連作長編だ。特に主人公は腕利きとして、 難しい藩や事件に向かう事になる。それを色々な視点から描かれる。特に最初は第三者から見て、お庭番は誰だモードで描かれる。
2022年08月22日
北辰挽歌<辻真先>
2004年の作品だ。副題が「土方歳三 海に戦う」で、一部はミステリの手法も使っているが、全体は歴史小説だ。明治維新の前に新選組は解体して、近藤と 沖田は死に、残った土方は蝦夷の五稜郭に辿り着く。だが勝機を求めて僅かな艦で官軍と、宮古湾で船の闘いを行う、その戦闘が小説の多くを占める。
2022年08月22日
炎上チャンピオン<横関大>
2016年の作品で2021年に復刊文庫化された。プロレスラーの殺人事件を切っ掛けに、プロレスの自粛が行われている世界を描く。さらにそこでは元レスラー が襲撃される事件が連続して起きた。さらにアメリカから帰国したレスラーと出所したレスラーの試合が組まれる事になる。
2022年08月22日
十津川警部 三河恋唄<西村京太郎>
2009年の作品で、2017年に復刊された。十津川警部が登場するシリーズの1冊だ。「忠臣蔵」の吉良家の名誉を挽回する目的の「逆さ忠臣蔵」という 小説の存在が鍵となっている。現在の動機や犯行はリアル性は疑問もあるが、歴史ミステリの変種としての読み方もあるだろう。
2022年08月22日
揺籃の都<羽生飛鳥>
2022年の作品で、作者の初長編ミステリだ。平清盛が遷都した福原で奇妙な事件が連続して起きる。清盛の傍系の平頼盛が自身と家を守る為に、それらの 解決を図る。歴史背景や人間関係や、時代性からの謎を駆使して描いた、歴史ミステリでしかも本格ミステリだ。
2022年08月28日
仮面の君に告ぐ<横関大>
2017年の長編で2022年に文庫化された。主人公の女性は1年前に殺されたが、別人となり目覚めるが記憶がない。一方ではその恋人は仕事を変えて 復讐を狙っていた。双方の視点から描かれて行く架空設定のミステリだ。知ってる事と知らない事の食い違いが、狭まるのか?。
2022年08月28日
シーラカンスの海<井原まなみ>
1990年の作品だ。三浦半島の東南端にある新見家の庭にある人工池「シーラカンスの池」は波の力で海水が吹き上げられる。人が多数のパーティでの 毒殺事件と、岬の密室状態での殺人事件が描かれる。主人公の女性と館の女主人との生き方が並行して描かれる。
2022年08月28日
京都陰陽寮謎解き減妖帖<伊吹亜門>
2022年の作品で、3作からなる作品集だ。妖魔に対応する陰陽師養成機関の学生3人が、実習として3つの事件の謎を解いて妖魔と戦う。パラレルの世界 か架空の世界かを舞台の、謎解きと戦闘が描かれる。背景にページ数が多く使うが、シリーズになるかは不明だ。
2022年08月28日
時効の果て<堂場瞬一>
2021年の作品で、警視庁追跡捜査係のシリーズの10作目だ。続編が書かれるのかは不明だ。2021年の3つのシリーズのコラボ企画の1冊で、本作には 刑事・岩倉剛が登場して異様なほどに暴走する。追跡捜査係は西川が活躍するが沖田は別の事件が忙しい。さらに元追跡捜査係でシンガポール新婚旅行中の 庄田とさやか夫妻が頼まれて調べる事にもなる。
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2022/08に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。