推理小説読書日記(2022/03)
2022年03月01日
天の川の舟乗り<北山猛邦>
2001年の作品集で短編4作からなり、副題が「名探偵音野順の事件簿」だ。だがその中の1作「怪人対音野順」は題名の通りで登場人物は異なる。引きこもりの探偵の音野順をワトソン役が 事件に引き出すパターンのシリーズで事件は不可能犯罪であり、それが機械的なトリックで構成する事も特徴だが、それはこの作品集でも同じだ。
2022年03月01日
氷膳莉花 嗜虐の拷問官<久住四季>
2021年の作品で、異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花のシリーズの3作目だ。心理捜査官の名のシリーズだが、氷膳は普通の女刑事だが事件に異常に接近する設定だ。犯罪心理学者・阿良谷は いつも登場するが、新たに監察官・尚澄が登場する事で氷膳の人脈となりそうだ。続編があるのは間違いなさそうだ。
2022年03月01日
二人ががりで死体をどうぞ<瀬戸川猛資・松坂健>
2021年に出版された書評集だ。50年前の1970年代のミステリ雑誌での新刊本ミステリの書評集だ。雑誌からだから新刊になるのだろう。当時とその後に影響を受けた人達がエッセイを 書いている。原書を読んだ書評も含まれる。50年前の出版状況や活躍作家がダイレクトに出てくるので、当時に移動した雰囲気も強い。
2022年03月01日
或る光線<木々高太郎>
2001年に復刊された作品集だ。1938年の同じ題名の作品集であり副題は「木々高太郎科学小説集」だ、医学医療ミステリが多い作者だが、科学小説となると少ないだろう。同時期刊行の 小栗と海野は科学・SF的な印象があるが、木々はあまり無い。未来予測とか架空設定があり、異色作になるのだろう。
2022年03月07日
スクエア<今野敏>
2019年に出版された作品で2021年に文庫化された。横浜みなとみらい署暴対係シリーズの5作目だ。諸橋と城島は今回は捜査本部に呼ばれて、1課と2課と共同捜査を行う。 そのきっかけとなる新任の県警本部長・佐藤の性格と行動も注目だ。
2022年03月07日
小説 ルパン三世<>
2005アンソロジーで、2011年に文庫化された。テーマ・アンソロジーであり、参加者は、大沢在昌・新野剛志・光原百合・樋口明雄・森詠だ。似た内容を追及した作品や スピンオフ的作品や歴史風味のミステリもある。
2022年03月07日
ゆっくり十まで<新井素子>
2018年の作品集を2021年に文庫化された。ショートショート作品集で、1章は4作、2章は5作、3章は6作からなる。色々な視点、背景、立場から多様に描いて行く。個々に楽しめる ショートショート特有の面白味が満載だ。
2022年03月07日
夢野久作 迷宮の住人<鶴見俊輔>
1990年に日本推理作家協会賞を受賞した評論だ、2004年に文庫化された。「1:夢野久作の世界」「2:杉山泰道の生涯」「3:作品の活動」で構成される。夢野久作を、その父・ 杉山泰道と久作の息子の著書の引用等で語って行く。1:での代表作の梗概は読んでいる作品でも参考になる。
2022年03月07日
五能線の女<西村京太郎>
2006年の作品で2008年に文庫化された。私立探偵・橋本が青森の五能線で罠に嵌り殺人容疑で逮捕された。橋本を助けようとして五能線で調査する女探偵・阿部も解決できなかった。 それを受けて十津川警部と亀井刑事は阿部と共にアリバイ崩しを行う、一時期存在した蜃気楼ダイヤが登場する。
2022年03月13日
探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます<東川篤哉>
2017年の作品集で2020年に文庫化された。なんでも屋の橘良太と探偵の娘・綾羅木有紗が神奈川のローカルで活躍するシリーズ2冊目で、短編4作を収録した。自称名探偵の 有紗の父や、良太の知人の刑事・長峰も絡み進行するユーモアミステリであり本格ミステリだ。
2022年03月13日
青髪鬼 横溝正史少年小説コレクション4<横溝正史>
1954年頃の作品を、2021年に復刊した作品集だ。少年小説の長編「青髪鬼」「真珠塔」「獣人魔島」に加えて、短編が5作と未完作品2作を収録した。多くの作品は複数回の復刊が 行われて来た。長編には三津木俊助と御子柴進少年が登場する、短編には登場しな。
2022年03月13日
名探偵に甘美なる死を<方丈貴恵>
2022年に出版された。架空設定空間でのミステリの3作目で人物等には共通がある。本作は仮想現実空間と現実空間とが並行しての事件が描かれるが、そもそもが探偵ゲームに 素人探偵を集めて競いあう設定であった。架空設定での本格ミステリであり、推理ゲームであり、多重解決の手法を駆使している。
2022年03月13日
敗者の嘘<堂場瞬一>
2011年の作品で副題が「アナザーフェイス2」で、大友鉄が主人公のシリーズ2作目だ。まだ年少の息子を育てながら大友が警察で働く。何故か捜査課の応援で捜査する。 放火殺人容疑者が捜査中に自殺して、その後に女弁護士が犯人と言って出頭した。大友が応援に行くと捜査本部の動きは混乱して、迷走して行く。
2022年03月19日
三毛猫ホームズと七匹の仲間たち<>
2019年のアンソロジーで、赤川次郎のエッセイと短編再録して、それ以外は公募作品を7作集めたアンソロジーだ。動物が登場するミステリのしばりはあるようだ。動物の種類は色々で 作品的には、三毛猫ホームズを意識した傾向も感じる。活字化が初めての作者はいないか少ないが、発表作は少ない作者が主体だ。
2022年03月19日
ダンガンロンバ霧切4<北山猛邦>
2015年の作品で、シリーズの4冊目だ。シリーズ自体は他からのスピンアウトであり、殺人犯に機会と手段と費用を与え、それと探偵とを競い合わす設定だ。そこに参加・巻き込まれた 女学生探偵・霧切響子と五月雨結が解決してゆく。多すぎる密室事件が登場して、その謎の解明と時間に追われる。
2022年03月19日
いわゆる天使の文化祭<似鳥鶏>
2011年の作品で、学園シリーズの4作目という。文化祭の準備が行われる中に、「謎の天使」のイラストが多数貼られる事件が起きる。いたずら的だったが、次第にエスカレートして、 ついには文化祭の中止が要求された。主人公らは文化祭を行う為に、準備に追われながらも事件解決を目指す。
2022年03月19日
和菓子迷宮をぐるぐると<太田忠司>
2021年の作品で主人公が、和菓子に目覚めて菓子作り学校に入り、そこで学びながら和菓子職人を目指す。作者は、ミステリ意外にSF・幻想・怪奇・ショートショートも書き多彩だ。 だが本作はそのどれでもなく、その他と言うか一般の和菓子作りを目指す話だ。
2022年03月25日
キンモクセイ<今野敏>
2018年の作品で、2021年に復刊された。警察庁キャリア・隼瀬が主人公で同期のキャリア仲間4人と度々集まり親しい。その中で主人公の周囲で奇妙な事が起きて、警察組織や 上司と仲間への疑いを持って行く。ついには危険を感じて逃亡する。その真相は何か、誰を信じるのか。
2022年03月25日
議員探偵 漆原翔太郎<天祢涼>
2013年の連作長編で2017に文庫化された。二世議員の漆原翔太郎の異様な行動を、秘書からの視点で描く。秘書を悩ます行動が事件を起こすが、敏腕秘書が行く詰まっても、 翔太郎が探偵役となって解決して行く、だがその行動は謎が多い。
2022年03月25日
満鉄探偵 欧亜急行の殺人<山本巧次>
2022年の作品だ。昭和11年の満州を舞台にした、時代ミステリだ。満鉄職員の主人公が探偵役で書類紛失事件を調べると、あちこちのスパイや軍や警察が絡み、大きく拡がる。 それを追って、海沿いの大連から満鉄で新京・ハルビン・満州里へと長い追跡となる。ロシアから欧州への逃亡を防げるか。
2022年03月25日
死まで139歩<ポール・アルテ>
1994年の作品で2021年に翻訳された。ツイスト博士が登場するシリーズの1作で、舞台は1940年代のロンドンだ。不可能犯罪をその時代を背景にやや奇妙な論理も含めて力技で 解き明かして行く。シリーズ愛読者にはお馴染みの進展だ。
2022年03月25日
招運来福 まねき猫事件ノート<水生大海>
2014年の作品集で、アンソロジーからの復刊短編と書き下ろし中編からなる。まねき猫のまねこが生きた猫になり、現れたり消えたりという設定のなかで、主人公の少女の 周囲で起きる事件とトラブルが描かれる。陶器の招き猫h割れて壊れるが、繋ぎ合わせて生き(?)返る。
2022年03月31日
記憶の中の誘拐<大山誠一郎>
2022年に出版された。「赤い博物館」シリーズの2冊目で短編5作を収録する。赤い博物館は、警視庁の事件の証拠や書類を保管してデータベース化する部署だ。そこの女性館長と 元刑事の係員が、疑問を持った過去の事件を再調査して解決する。コースドケースを扱う作品は多いがこのシリーズは、短編で切れ味が鋭いのが特徴だ。
2022年03月31日
グッバイ・ヒーロー<横関大>
2011年に出版され、2013年に文庫化された。2部構成の長編で、第1部はピザ配達屋の主人公・伊庭が立て籠もり事件に巻き込まれて、そこで刑事や奇妙な犯罪者のおっさんと出会う。 伊庭は4人組のバンドを組んでいて、次第に人気が広まる、その頃が第2部となる。
2022年03月31日
若さま侍捕物手帖34 おどろ踊り<城昌幸>
2021年に復刊された、若さま侍シリーズ全作の最終巻で、中編「千姫万姫」と長編「おどろ踊り」が収録される。約400編が1年半で34冊出版された。「おどろ踊り」は狐が人を 騙したり化かしたりする話でシリーズ中でも、ホームズ流のミステリから離れた異色作で、最後に妙な作が登場した感がある。
2022年03月31日
素子の碁 サルスベリがとまらない<新井素子>
2018年のエッセイ集で、2020年に改稿されて文庫化された。40才になってから囲碁を全く初級から始めた経験を書いたエッセイ集だ。囲碁雑誌連載と単行本は、囲碁中級者向けのエッセイ だったが、文庫化時に初心者向けに改稿されたと言う。副題の「サルスベリ」は囲碁用語で、初心者には対応が難しい形だという。
2022年03月31日
おやつが好き<坂木司>
2019年のエッセイで、2022年に文庫化された。ひたすらおやつに関して書かれたエッセイ集で、小説ともミステリとも関係はない。「おやつが好き」「続おやつが好き」 「おやつ雑文集」からなる。興味がない人には、読むのは厳しいと思う。
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2022/03に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。