推理小説読書日記(2021/12)
2021年12月01日
新婚旅行は命がけ<新井素子>
1988年の作品で副題が「新婚物語 1」だ。作家・陽子と会社員・正彦の登場する「結婚物語」に続くシリーズ本となるが、長編が分冊になったと作者が明かしている。短編的な逸話が 並ぶ事で連作長編となっている。特殊ではあるが一般的な面もある、2人とその家族にはトラブルがついてまわる。
2021年12月01日
死の黙劇<山沢晴雄>
2021年の再編集の作品集だ。昭和20年代のデビューで2007年に初の個人作品集が刊行された、単行本の遅い作者とされたが、その作者の初の文庫となる。代表の探偵役・砧のシリーズ5作 を中心に9作が収録される。複雑なプロットで知られる作者故に、再読しても細部は忘れている。アンソロジーに採られる事が多いが、そこからも外れてきた、2作も収録されている。
2021年12月01日
沈黙のパレード<東野圭吾>
2018年の作品で2021年に文庫化された。物理学者・湯川が探偵役のシリーズの長編だ。このシリーズ的な物理トリックも扱うが、警察は有罪と信じているが裁判で無罪となった人物と、 被害者家族とその周辺が背景となる。その中で起きた新たな事件と、さらにはその容疑者となった同一人の保釈と殺害が起きて、複雑な展開を示す。
2021年12月01日
人造人魚<大河内常平>
2021年に刊行された単行本未収録作品集だ。古書価格が高く入手困難で、作品自体も入手困難な作者だが、単行本未収録作品でしかも雑誌が入手困難なので、収録短編10作全てが未読だ。 編者は大河内の新しい面を読めるとするが、それ以前に他の作品もまだまだ入手が困難な作者だ。
2021年12月01日
神話列車殺人事件<西村京太郎>
1983年の作品で、1987年に文庫化された。中期以降の西村作品では少数派になった、十津川警部の登場しない長編だ。トラベルミステリであり主人公の探偵の結婚相手が高千穂で直前に消える。 さらには失踪人依頼を受けて依頼者と出雲で探す。神話の土地からみの事件に絡んでゆくことになる。
2021年12月07日
完本 人形佐七捕物帳10<横溝正史>
2021年に出版された「完本 人形佐七捕物帳」全10巻の最終巻だ。14作に加えて、未発表資料として長編版の部分草稿が掲載されている。さらには全十巻購入読者には応募すると特典がある。 シリーズ作品には他のシリーズからの書き換え作も多い事から内容に幅があるが、最終巻にもやや趣が異なる作品がいくつか収録されている。
2021年12月07日
ダンガンロンパ霧切1<北山猛邦>
2013年に出版された、以降に続編が書かれているようだ。ゲームのノベライズとの事だが原作は知らない。謎の委員会が殺人者に費用等の応援を行うが、代わりにそれを防ぐ探偵を雇う。 そこで殺人者と探偵の競争が行われる。5人の探偵が集められて、事件に巻き込まれて行く。その中に少女探偵・霧切響子が含まれる。初回でもあり、謎ばかりの展開となった。
2021年12月07日
カササギ殺人事件(上)(下)<ホロビッツ>
2018年に日本に翻訳紹介された作品で、原作は2017発行だ。文庫本で(上)(下)2冊と長いが、(上)は小説中の小説の事件が描かれて解決直前で中断する。(下)ではその解決篇を探す 編集者の周囲で事件が起きて、それを解決する進行となる。同時に消えた解決篇の謎と、その小説の解決篇が描かれる。
2021年12月07日
混沌の王<アルテ>
2021年に出版されが、原作は2012に書かれた。語り手のアキレスが友人の探偵のオーウェン・バーンズが扱う事件と探偵活動を描く。本作ではオーウェンの不在時にはアキレスが代行する 様子が1人称で語られるのでそれ故の展開もある。複数の謎が次々と提出されて、概ね不可能犯罪に該当する。多数の謎を最後にまとめて解決するスタイルで描かれる。
2021年12月07日
割れた誇り<堂場瞬一>
2019年に出版された、ラストライン・シリーズの2冊目で岩倉剛が主人公だ。隣の所轄で逮捕された容疑者が地裁で無罪判決を受けて岩倉の所轄に戻った。有罪と考える者もいる中で 当時の被害者の恋人という男が執拗に元容疑者に有罪と迫りトラブルになりそうだった。岩倉も監視する中で、恋人の男が殺害されて元容疑者に疑いが向く。
2021年12月13日
最果てのブルートレイン<西村京太郎>
1986年の作品集で、1987年に文庫化された十津川警部シリーズの1作だ。中編「愛と死の飯田線」と短編2作からなる。典型的な旅情・トラベルミステリであり、さらには時刻表ミステリ でもある。発表当時は時刻表ミステリや鉄道ミステリは多く書かれた。だがそれは時代変化で変わり・廃止になたりして行く。ミステリもそれに合わせて変化した。
2021年12月13日
若さま侍捕物手帖30 牡丹に唐獅子<城昌幸>
2021年に出版された再編集の作品集で、長編「牡丹に唐獅子」と短編3作が収録される。発表順での全集を目指す30冊目だ。作品数が増えてゆくと、テーマや手法にも変化がある。 長編に関しては、初期は伝記小説であったが、後記になると若さまの登場シーンが増えて来て、ミステリにより近くなって来た。ホームズ風の短編とは異なるが、捕物帳の長編の イメージに近づいて来ている。
2021年12月13日
葬られた女<鷲尾三郎>
2021年に出版された復刊だ。単行本ではなく雑誌からの復刊になる。長編「葬られた女」と短編「嵐の中の女」からなる。「葬られた女」は、主人公の青年が死んだ婚約者に関する謎を 調べて行く、1人称ハードボイルドスタイルの冒険スリラーだ。波乱の展開だが、何故か主人公が謎の真相を知って行く事になる、謎を解いているとも言えないのだが。
2021年12月13日
引っ越し貧乏<新井素子>
1988年の作品で、結婚物語の3だ。3冊からなるが、オムニバス形式に近いので続きものではあるが、順序が逆でも読むことに不都合は少ない。正彦と陽子夫妻の関わるトラブルが書かれている。荷物と本が多すぎて新居が狭くなった2人の生活が描かれる。より広い所への引っ越しを決めたが、それはそれで問題も手間も多くある、さらには費用がどんどんかさむことになる。
2021年12月19日
魔術師・模像殺人事件<佐々木俊介>
2021年に長編2作の合本として個人出版された。長編「魔術師」は作者が2016年にインターネット上に発表したとされ、長編「模像殺人事件」は2004年に出版された作品の文庫化になる。 それぞれが通常の長さの長編なので、合本はかなりの分厚い本となった。デビュー作「繭の夏」を加えて紙媒体では長編となったが、それぞれが異なる世界を描いていると感じる。
2021年12月19日
足利兄弟<岡田秀文>
2016年の作品で、2020年に文庫化された。足利尊氏とその弟・足利直義(名前が度々変わってゆく)を中心に、尊氏の妻・登子や家臣・高師直等多数の人物を描きながら、尊氏と登子との 婚儀から尊氏の死までを描く。それは北条家の滅亡と足利幕府の成立までの過程を描く事になる。 。
2021年12月19日
medium 霊媒探偵城塚翡翠<相沢沙呼>
2019年に出版され。2021年に文庫化された。4話とプロローグとエピローグからなる、連作の形を取るが全体としては長編だと言える。作家・香月が出会った霊媒・城塚と共に謎を解決する 事になる。城塚は条件が揃うと犯人が判る、だが証拠がないので如何にそれを対応するかで話が進む。
2021年12月19日
おせん<池波正太郎>
1985年に再編集された短編集で、女性を主人公にした時代小説集だ。13作からなり、主人公の人物像や生き方や時代背景等には類似性や規則性はない。異なる境遇で異なる生き方をする様子が 描かれる。あえて言えば、周囲から見ればある出来事に対して、人物が変わったように見える様を描いた感がある。
2021年12月19日
用心棒<多岐川恭>
1988年の作品で、2005年に文庫化された。かなり長い時代小説だ。全体を流れるストーリーはあるが、それよりも枝葉にあたる話が多数積み重なる構成であり、読むうえではこちらが中心となる。 用心棒となるがそちらの腕は疑問であり、周囲をあきれかえす無力感で世渡りしていく主人公を中心に、複数人の過去と行動を描いてゆき、裏切りと世渡りが中心だ。
2021年12月25日
迷宮の扉<横溝正史>
2021年に出版された、横溝正史少年小説コレクションの2巻目だ。長編「仮面城」「金色の魔術師」「迷宮の扉」と、短編「灯台島の怪」「黄金の花びら」が復刊で収録されている。何らかの 形で金田一耕助が登場する作品が集められているが、活動の内容は広く名探偵的な役割とは限らない。少年小説のスタイルに沿った、活躍だと言える。
2021年12月25日
皇帝溥儀<橘外男>
2021年に出版された、橘外男の単行本未収録作品集の3冊目で最終巻で「満州残影編」と題する。橘は中断作が多いとされているが、長編「皇帝溥儀」も中断作であり作者自身が理由等を書いて いるが、それもどこまで信用できるか不明だ。未完は残念とも思うが、その奇妙な内容は未完故により協調されており、それまでも計画かも知れない。他の短編も怪しい内容が満ちている。
2021年12月25日
ルーキー<堂場瞬一>
2014年の作品で、刑事・一之瀬拓真が主人公のシリーズの1作目だ。刑事に異動したばかりの新人刑事が主人公のシリーズであり、故に「ルーキー」の題となっている。新人がベテランの教育係と コンビを組んで捜査する過程を描く。成長期だから、シリーズが進むと次第にかあるいは直ぐに新人でなくなるのは、他のシリーズでも見られる傾向だろうと思う。
2021年12月25日
検屍官の領分<アリンガム>
2005年に翻訳されて日本に紹介された、原作は1945年の作で探偵役のキャンピオンが登場する。第二次世界大戦のロンドンが舞台で、海外で仕事していた主人が久しぶりに戻った自宅でいきなり 事件に遭遇する。アリンガム的な複雑な事件が絡み合ったストーリーだ。英国で戦時中で、その当時ならではの社会背景が絡む犯罪であり、特殊設定ではないがそれに近い雰囲気がある。
2021年12月31日
二十面相暁に死す<辻真先>
2021年に出版された。「焼跡の二十面相」の続編的な作品で、江戸川乱歩作の「少年探偵団」シリーズのキャラクターを登場させて戦後を舞台にしている。主人公は小林少年であり、 明智探偵や二十面相や警部らはサブ的に登場する。部分的にトリックが散らばるが全体は冒険・サスペンスのストーリーだ。本作は偽物が現れる事から始まる。
2021年12月31日
さりならの手口<若竹七海>
2014年の作品で、探偵・葉村晶が主人公で1人称のハードボイルドスタイルだ。葉村は書店員の元探偵だが、依頼を受けて調査を始めると、次々と色々な事に巻き込まれて行く。 葉村の下宿先の住民や大家との不思議な生活や人物も並行して描かれて、それも複雑に事件のも絡んでゆく事になる。
2021年12月31日
七妖星<保篠龍緒>
1930年に出版された作品で2021に復刊された。解説によれば、ルブランの「カリオストラ伯爵夫人」の主要部分を切り出して、それに独自の展開を加えて、日本を舞台に書いた 作品だという。犯罪研究家・品川隆太郎がルパン役となり展開する。
2021年12月31日
北帰行<佐々木譲>
2010年の作品で2012年に文庫化された。主人公の関口は旅行店員だがヤクザ組織と警察に追われる事になる。そこで女殺し屋・タチアナに出会う。既に複数のターゲットを殺した タチアナと主人公が、追われながら次を狙い、かつ逃亡を図る。東京から新潟へ、そして稚内へと追いつ追われつの展開が描かれる。
2021年12月31日
開化鉄道探偵 第102列車の謎<山本巧次>
2018年の品で2021年に文庫化された。明治の鉄道を舞台に元同心・草壁と鉄道局職員・小野寺が鉄道局長・井上の頼まれて事件を捜査する。そこで爆破事件に遭遇する。 小栗上野介の財宝や秩父党や自由民権運動や色々が関係してゆく。小野寺の妻が加わり、事件を混ぜ返して行く。
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2021/12に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。