推理小説読書日記(2021/10)
2021年10月02日
ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子<内藤了>
2016年の作品で藤堂比奈子の登場するシリーズの5作目だ。シリーズぼ前作の内容をある程度含んで展開する。だがこの5作目は完結していなく、次に続いて終わる。エピローグはある のだが、それは無関係だ。何故に分冊になりそれが表示されていなのかは不明だ。
2021年10月02日
若さま侍捕物手帖28 影姫道中<城昌幸>
1972年頃の短編3作と、1965年の長編を収録して再編集して2021年に復刊された。長編「影姫道中」は題名どうりで、隠し子の姫を江戸で探して上方の国元に送る話だ。複数のグループが 探し異なる姫候補を見つけて、秘密に東海道を送る事になる。そこでの騒ぎに若さまも関わる事になる。遠州屋小吉に代わり配下が加わっている。
2021年10月02日
童女裸像<宮野村子>
1949年から1962年に発表された単行本未収録作品の短編8作と、未発表中編を再編集して、2021年にに出版された。宮野の未収録作品集の2作目だ。未発表中編「童女裸像」の収録は 驚きだ。絵をモチーフにそのモデルと作者が絡み、中編らしく落ち着いて話が展開する。
2021年10月02日
完本 人形佐七捕物帳9<横溝正史>
2020年から刊行されている10冊の全集の9冊目だ。昭和29-30年で1冊で創作意欲は旺盛だ。他の捕物帳シリーズとして発表されてから、人形佐七が主人公で書きなおされて単行本に 収録作品がまだ幾つかある。どうしても配下の辰と豆六、そして女房・お粂との掛け合い場面は少なくなるので、やや雰囲気は変わる。それもお馴染みになって来ている。
2021年10月08日
秀頼、西へ<岡田秀文>
2004年の作品で2007年に文庫化された長めの長編だ。大阪冬の陣から始まり、大阪夏の陣での大阪城落城を経てその後を描いた時代小説だ。豊臣秀頼が大阪落城で死なずに、 薩摩の島津を目指して西へ向かう、その陰謀は誰が描き、誰が実行者となり、どのような顛末になるかを描いた。
2021年10月08日
ミステリー列車が消えた<西村京太郎>
1982年の作品で、1985年に文庫化された。膨大な十津川警部シリーズの中でも、量と質ともに知名度が高い作品だ。それはトラベルミステリであり鉄道ミステリであり、大量誘拐であり、 消失トリックミステリであるというテーマに依る所が大きい。臨時列車、行く先を隠したミステリー列車を最大に生かした作品だ。
2021年10月08日
正彦くんのお引っ越し 結婚物語(中)<新井素子>
1986年の作品で結婚物語の(中)に当たる。作家の原陽子と恋人・大島正彦がようやく家族から結婚を認められて準備にはいった。2人は結婚準備を始めて式場探しを始めるが、思惑 どうりには進まず、ブライダルフェアに行くが混乱するばかりだった。だが新婚の家を考えると引っ越しが必要でまた大騒ぎで探し始めた。ようやく引っ越しを終えたが、 まだ忘れていた事があった。
2021年10月08日
軍師の生きざま<>
2008年に出版され2013年に文庫化された。戦国時代の軍師に注目した、時代小説のアンソロジーで、編者は末國善己だ。板垣信形・斎藤道三・山本勘助・黒田勘兵衛・石田三成・直江兼続、 柳生宗矩、真田幸村、後藤又兵衛、真田信之が登場する。話題が多く、作品も多い時代でテーマのしばりも少ないので、多彩な作者と傾向の作品があつまった。
2021年10月08日
泡坂妻夫引退公演手妻篇<泡坂妻夫>
2012年に2冊本で出版された、2019年に文庫化された。その1冊を手妻篇と改題した。ヨギ・ガンジーものと奇術関連作を中心に編まれていたが、後日に見つかった「酔象組曲」を追加した。 作者の後記の単行本未収録作品を集めているので、ミステリー性やトリック性はそれほどは無い。もしろ拾遺集的な意味だ、それが出版された事に意味がある。
2021年10月14日
オールド・アンの囁き<ナイオ・マーシュ>
1955年の作品で、2021年に翻訳された。アレン警部が地方都市というか農村の事件を捜査する。古くからの名家が点在し、広い年代の人が住むが、その地域以外の人を疎外する雰囲気が あるが、それを含めて複雑な人間関係が出来ていた。同時に過去の経歴には色々とあり、現在でも影響している。事件現場にあった大きな魚=オールド・アンが微妙に捜査に絡んでゆく 。物証で事件を解決するマーシュの作品をもっと読みたいものだ。
2021年10月14日
こうして誰もいなくなった<有栖川有栖>
2019年に出版された短編集で、2011年から2019年に発表された短編13作と中編1作からなる。中編「こうして誰もいなくなった」は本格ミステリーだが、それ以外は短い作品が主体であり、 掲載誌とか依頼テーマとか長さとかに合わせた作品であり、作品集としては集められにくい作品だった。「こうして誰もいなくなった」はクリスティの長編を意識した内容だ。
2021年10月14日
ラストライン<堂場瞬一>
2018年に出版された。ベテラン刑事・岩倉剛が主人公のシリーズの第1作だ。岩倉のプロフィールと性格が徐々に明らかになって行くという、シリーズ1作目らしい内容だ。事件を呼ぶ 刑事の設定はシリーズでは仕方がないし、異動先の最初の事件であり周囲から浮いているのも自然の成り行きだ。むしろ所属所轄以外の知人が多いのは都合が良いとも言える。
2021年10月14日
人間の証明<森村誠一>
1976年の作品で1977年に文庫化された。ベストセラーで複数回映像化されていて見ていたが、原作小説を読むのは始めてだで、文庫は横溝正史の解説がある。棟居刑事の初登場作であり、 映像は色々に描かれたが、原作はその後の作品の人物像と違和感はない。色々な側面を含む作品だが、ロマンチストとしての作者の印象が強い、それは作者のあとがきの影響もあるとも 思う。
2021年10月20日
白霧学舎探偵小説倶楽部<岡田秀文>
2017年の作品だ。第二次世界大戦時に主人公の少年は、東京から田舎の全寮制学校に編入あるいは疎開に入る。そこでは奇妙な人物がいるが、探偵小説倶楽部に入るが本が入手できず、 実際の事件の謎に取り組むという。米軍爆撃機墜落事件等の時代を反映した事件を、戦時中という背景で描く。少年と仲間との青春小説でもあり、ミステリでもある。 19年に文庫化された。。
2021年10月20日
さかさま少女のためのピアノソナタ<北山猛邦>
2019年の作品集「千年図書館」が、2021年に改題されて文庫化された。5作からなる短編集であり連作ではない。奇妙な内容の奇談的な内容でモチーフや主題は書かれているが、必ずしも 直接的でもない。背景や時代や場所や登場人物がぼやかしているので、奇妙な内容に感じると思えるし短編向きのテーマとも思える。
2021年10月20日
櫛の文字<野村胡堂>
2019年に出版された再編集した復刊作品集だ。副題は「銭形平次ミステリ傑作選」であり、銭形平次が登場する383編から17編を選んだが、ミステリ色の濃い作品が選ばれたと書かれている。 シリーズの内容は編者・末國善己の解説に詳しいが、以外だったのが平次が犯人を捕らえるよりも見逃すことのほうが多い事だ。当然に投げ銭はほとんど登場しない。ドラマとは異なる世界だ。
2021年10月20日
Q夫人と猫<鷲尾三郎>
2021年に少部数出版された、再編集復刊された。編者は鷲尾を戦後ハードボイルドの先駆者としており短編集を組んだ。短編集は当然ながら内容は多岐になる。この本を読む前の鷲尾の印象は 多彩な作者だったが、読後はさらに広まった感がある。発表年代は拡がっているが、後になる程に内容に広がりが多くなっていると感じた。続編も出ると言う事で期待だ。
2021年10月26日
ソーンダイク博士短編全集3 パズル・ロック<フリーマン>
2021年に出版された全3冊の全集の3冊目だ。英語版短編集2冊を1冊にまとめている。ソーンダイク登場短編は、犯人側から事件を描いてその後に探偵がそれを暴くと言う倒叙方式の作品が 複数あり特徴だった。本集では通常の記述方式のみで書かれている。科学捜査と言うソーンダイクの探偵方法は特徴的であり、1925-927み発表された作品だが現在でも楽しめる。
2021年10月26日
ホームズの娘<横関大>
2019年の作品だ。「ルパンの娘」から始まるシリーズ3作目だ。どろぼう一家の三雲家と警察一家の桜庭家の結婚騒ぎの1作目に、探偵一家の北条一家の娘・北条美雲が加わって来た。桜庭和馬と 美雲との刑事コンビが中心で話が進む。本作は美雲の意外な相手との恋を描く、予想外の展開はこのシリーズならではだ。
2021年10月26日
ひかり62号の殺意<西村京太郎>
1987年の作品で、1990年に文庫化された。東京で起きた宝石強盗犯が岡山で逮捕されて、亀井と西本刑事が新幹線で東京に護送したがその途中で犯人が殺害された。十津川ら捜査人は共犯者を 追うがその容疑者がフィリピンで殺害されてしまう、十津川はフィリピンで捜査するが疑問だった、だが容疑者の妹は兄は死んだと主張した。
2021年10月26日
探偵部への挑戦状<東川篤哉>
2013年の連作作品集だ。主人公の霧ヶ峰涼と学園の探偵倶楽部とが活躍する学園ミステリだ。テーマ・背景は多彩で微妙だ。だが謎解きとその手法的には本格ミステリ色は濃いと言える。 リアル性の弱い背景設定は、逆にミステリ的には自由度が増えている。それをユーモアミステリと呼ぶのだろう。
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2021/10に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。