推理小説読書日記(2021/07)
2021年07月04日
雪割草<横溝正史>
1941年頃に新聞連載された非ミステリ小説で、2018年に出版された。本書は2021年の文庫化だが、欠落していた部分も追加された完全版だ。ある女性の波乱の恋愛小説であるが、 現代漢字等に改められている事もあるだろうが、同じ年代の他の作品と比べて、非常に読みやすかった。かなりの長さの長編であり発見時は幻の長編と言われた。
2021年07月04日
ラスト・コード<堂場瞬一>
2012年の作品で2015年に文庫化された。非シリーズ作品で、警視庁所轄刑事・筒井が主人公で殺人事件被害者の14歳の娘の担当になるが狙われており警護役になるが、警察上司は 任せきりだった。娘は天才頭脳で話しが合わないが、刑事は知人を頼り連れて逃げる。シリーズキャラクターの鳴沢らもゲスト登場する。
2021年07月04日
ソーンダイク博士短編全集2 青いスカラベ<フリーマン>
2020年に出版されたソーンダイク博士短編全集2で、本国の短編集2冊を掲載している。倒叙方式の短編はここが最後になり、その後は普通形式になるようだ。中編「ニューイン31番地」 を含む11作が原点の挿絵を含み訳されている。題材は、発表年を錯覚させる内容が多くあり、驚く。
2021年07月04日
風よ僕らの前髪を<弥生小夜子>
2021年の作品で、2020年度鮎川哲也賞の優秀賞だ。元探偵が叔母から頼まれてその夫の死を調べる。夫妻には娘がいるが、その娘と夫以外との子を養子としている。それだけで充分にややこしい 関係だ。その養子の友人の同級生も、母が実母で父は養父だ。主人公が調べると、友人同士の養子二人の近くで事件が起きていた。
2021年07月10日
公安捜査2<浜田文人>
2002年の作品で、2008年に文庫化された。シリーズ2作目の位置つけだが、公安の蛍橋が主人公となる。警察庁公安課長からの指示での極秘捜査を行うが、なかなか全てが極秘とは行かない。 登場する人物は敵か、協力者か、競争者か、無関係か、分類不能か。そしてそれが変わるのか。
2021年07月10日
おれの名は殺人犯<辻真先>
1985年の作品で、「株式学園・番外編」となっている。「株式学園の伝説」シリーズの登場人物のムサシが主人公だ。喧嘩好きの主人公も殺人をして落ち込み旅に出るが、後では死体が消えて 騒ぎになる。そして事件が起きて関わって行く。
2021年07月10日
虚空に消える<ウィンズロウ&カーク>
1928年のイギリス作品で、2021年に日本語に訳された。紹介文によるとエィディーの選んだ不可能犯罪物ベストに選ばれた、解説では色々なタイプがあり、好みは読者により異なると慎重だ。 不可能現象が満載である長編だが、その全ての解明が行われているか、それが読者が納得するかは微妙だとの認識のようだ。ミステリではその解説は難しい。
2021年07月10日
謎解きはディナーのあとで3<東川篤哉>
2012年の連作集でシリーズの3作目であり、短編6作が収録されている。裕福なお嬢様刑事・宝生麗子が主人公で、所轄上司で成金の風祭警部と捜査する。実際の解決は屋敷の執事・影山が行う。 本集の最終作で風祭警部の異動が決まる。本格謎解きミステリだが、影山と麗子のかけあいと、麗子と風祭の掛け合いの面白さが中心ともなるユーモアミステリでもある。
2021年07月10日
偽神の審判<麻見和史>
2021年の作品で、「捜査1課十一係」シリーズの探偵役の鷹野刑事が公安に異動になった後のシリーズの2作目だ。「捜査1課十一係」シリーズでも前作が関係する事はあったが、本作では前作 「偽神の天秤」の続編であり前作を読んでいないと判り難いだろう。2作で一応の解決になった形と思える。続編も可能かも知れないが・・。慣れない公安捜査の中で、刑事部捜査を生かす 形だが、あっけない進行にも見える。
2021年07月16日
CUT 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子<内藤了>
2015年の作品で藤堂比奈子の登場するシリーズの3作目だ。八王子を舞台にした所轄の警察小説なのだが、事件が猟奇犯罪ばかりだ。それに加えて捜査側の身内が関わる事も多く、特殊感覚満載だ。 レギュラーの面々のおたく感が続々と明らかになって行く。
2021年07月16日
秀吉になった男<木村生死>
2021年に再編集で復刊された。1956年から1961年頃に書かれた理系SFであり、ジャンルでは宇宙科学小説が多い。長編「秀吉になった男」はタイムマシン的な設定で、主人公が過去に行き秀吉になり 科学知識で勢力を広げて行く話だ。作品数からは少数派だ。1世代前の最新科学を使ったSF小説と言うことになる。
2021年07月16日
人魚姫<北山猛邦>
2013年の作品で2016年に文庫化された。副題が「探偵グリムの手稿」で1816年のデンマークを舞台に主人公で子供時代のアンデルセンと探偵・グリムが事件に関わる。人魚と王とのかかわりと そこで起きた事件での謎を解き明かしてゆく。時代と幾つかの特殊状況設定が重なるミステリであり、謎の構成的には本格ミステリだ。
2021年07月16日
Re-Clam ex vol.1<三門優祐>
2019年に出版された、海外クラシックミステリに関する雑誌の別冊で、短編を翻訳して紹介している。スプリッグ、ヘアー、セイヤーズ、ルーファス・キング、ウエイドの短編が翻訳されて 紹介されている。
2021年07月16日
山形新幹線「つばさ」殺人事件<西村京太郎>
1994年の作品で1995年に文庫化された。十津川警部シリーズの1作だ。十津川の部下の刑事が「つばさ」で出会った男が死に別の犯罪が浮かぶ。犯人か被害者か意見が分かれるなかで、似た状況で 事件が起きてゆく。必然性が薄い進展の中で、予想外の事件がどんどんと展開してゆくサスペンス小説だ。
2021年07月22日
源助悪漢十手<岡田秀文>
2009年の連作集で、御用聞き源助が主人公だ。題名とうりの悪漢で、町で弱みを見つけると延々とたかるので嫌われている。だが事件を解決する能力もあるという設定だ。謎を解いても 金になるならすんなり解決せずに、金をたかる。
2021年07月22日
身代わりの空(上)<堂場瞬一>
2017年の作品で、警視庁犯罪被害者支援係とそこの村野警部補が主人公のシリーズの4作目だ、平均してページ数の多い書き下ろしの文庫だが、それよりもやや長くなり、上下2冊に分れた。 富山空港で飛行機事故が起こり多数の被害者が出る事件が起きた。支援課も出動したが、地方の小さな所轄・富山県警・航空機会社の対応部署が始めての最大級の事件に対応してゆく。
2021年07月22日
身代わりの空(下)<堂場瞬一>
乗客リストから被害者を特定して対応して行くが、偽名客がいてそれが指名手配犯と判明した。刑事課は被疑者死亡方向で動くが、村野らには被害者でもありその家族と接触した。重症患者にも 偽名がいたと判りそこにも関わる。さらには富山で死体が見つかる。拡がる事件と過去の事件、行方不明者へと拡がり、失踪人捜査課・高城や追跡捜査係・西川と沖田も登場しての捜査が行われる。
2021年07月22日
三味線鯉登<永瀬三吾>
1951年から1955年に書かれた短編の捕物帳を2021年に再編集して復刊された。江戸は辰巳芸者の本名・小糸の鯉登が事件を聞くだけで、その謎を簡単に解いてしまうシリーズ。 安楽椅子的な設定から始まるが、現場にも度々出向く事もある。武士の娘だからの特技もあり、シリーズが進むと話もパターンも増えて行く。仇役で最初に事件の解明を間違う御用聞きが 登場するが、それは毎話変わる。
2021年07月28日
二百十番館にようこそ<加納朋子>
2020年の作品だ。主人公の引きこもりのネットゲームおたくは叔父が残した小島の両施設に住むことになる。生活の為に仲間を集めて、少ない人数の島に住む老人達との絡みのなかで暮らして行く。 その中で起きる事件を通して、引きこもり人間が変化してゆき、ネットゲームの匿名参加者の正体も判って行く。
2021年07月28日
奈良ー紀州殺人周遊ルート<高柳芳夫>
1988年の作品で、1991年に文庫化された。アイドルの自殺が話題の中で、推理作家の主人公は自作の映画化でロケ地の奈良に行く。そこで撮影中に主演女優が刺される事件が起きる、それを 含めて連続して事件が起きるが、それは映画原作の内容だった。主人公が事件を調べ始めて行く。
2021年07月28日
謎々将棋・囲碁<>
2018年のオリジナル・アンソロジーだ。6人のミステリ作家・SF作家が、将棋か囲碁をテーマに短編を書いた。囲碁がテーマは、新井素子・宮内悠介・千澤のり子で、将棋がテーマなのが 葉真中顕・深水黎一郎・瀬名秀明だ。SF傾向が強い作品が多いと感じる。
2021年07月28日
超動く家にて<宮内悠介>
2018年の作品集で、2021年に文庫化された。シリアスなSFで直木賞候補になった作者だが、本作品集は作者曰くのバカSFの短編を集めたものだ。作者はこのジャンルも好きで1対1の 比率を目指すが、先にシリアスなジャンルが評価された事で編集者の目が冷たいと言う、それも逆がなのかもしれない。「超動く家にて」は円形の閉ざされた施設の平面図からはじまり「回ったり しないよな」「いや回るけど」の会話が最初だ、それが本集の雰囲気だ。
←日記一覧へ戻る
2021/07に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。