推理小説読書日記(2021/06)
2021年06月04日
寝台特急「北斗星」殺人事件<西村京太郎>
1988年の作品で1990年に文庫化された。十津川警部が登場する旅情ミステリシリーズの1作だ。上野から青函トンネルを経て札幌に到着する「北斗星」の運行に合わせて 展開するストーリーがほぼ全体を占める。列車内に爆弾をしかけて金を要求する犯人との対決が中心であり、サスペンス色が濃い。
2021年06月04日
謎の戦乱惑星ラア<辻真先>
1980年の作品で「マッドボーイ・シリーズ」の1だ。綽名がマッドの日ノ本涼太とリーナとの出会いから、別世界のラアへ移動しての活劇が描かれる。ヒーローを目指すマッドの 異世界での活躍を描いて、最後に元の世界に戻るが、そこはようやく第二次世界大戦が終わったがまもなく第3次世界大戦がはじまろうとする世界だった。
2021年06月04日
鳥居の密室<島田荘司>
2018年の作品で2021年に文庫化された。1975年末の京都を舞台に御手洗潔が、京都のある地区で起きている不思議な事件をきっかけに、10年以上前のクリスマスに起きた密室事件とその付近で起きた 複数の奇妙な事件を知り調べ始めた。御手洗が事件の真相を解明して冤罪をはらず、クリスマスストーリーだ。
2021年06月04日
私たちが星座を盗んだ理由<北山猛邦>
2011年の作品で2014年に文庫化された。5作からなる短編集であり、連作集ではない。連作ではないので、1作ごとに異なる舞台と登場人物で、犯人役だけで無く探偵役も含めて、色々な事が 覆ってゆく構成を取る。謎を直球的には見せずに幻想的に見せて行き、その反対側にある隠れた結末の意外性を高めている。
2021年06月10日
若さま侍捕物手帖25 おぼろ草紙<城昌幸>
2021年に出版された、1958年から1662年頃の作品を再編集した作品集で、短編12作からなる。若さま侍シリーズの短編の定番は、船宿の居候の若さまに岡っ引き・遠州屋小吉が難事件を持ち込む、 それを若さまがほぼ安楽椅子的に解明するスタイルだ。捜査に出かける事もあるが基本は持ち込まれ事件だ。本書ではそのスタイルは半数以下に減っている。
2021年06月10日
顔の中の昏い唄<生島治郎>
2020年に復刊された作品集で、1966年の作品集「東京2065」と1974年の作品集「あなたに悪夢を」を加えた内容だと言う。その内容は短編とショートシュートからなり、幻想・怪奇・SF小説で あり、まとめて奇妙な味とも異色短編とも呼ぶ。作者がハードボイルドを中心に書く前の時期の作品だ。
2021年06月10日
二度泣いた女<堂場瞬一>
2016年の作品で、警視庁犯罪被害者支援課シリーズの3作目だ。警察でも捜査しない部署を描くので、通常の警察小説とは異なる。他の部署が捜査しない事件や捜査内容に不満があり、 対立すると成り行きで捜査する事になる。きっかけの事件は多岐に渡るが、その途中で殺人事件等の犯罪が起きて行く展開になる。
2021年06月10日
謎解きはディナーのあとで2<東川篤哉>
2011年の連作集で短編6作が収録されている。裕福なお嬢様だが刑事でもある宝生麗子が主人公で、所轄で起きた事件を上司で成金キャラの風祭警部と捜査する。だが解決せずに、帰宅すると 屋敷に仕える執事の影山があっさりと謎を解いてしまうパターンだ。それを基本にして、似たシチュエーションで変化を加えての、ユーモア本格ミステリが展開する。
2021年06月16日
罠<深木章子>
2019年の作品「極上の罠をあなたに」を2021年に文庫化して改題した。だが、元の4話に、新たに書き下ろし5-8話を加えたので量が倍になり復刊ではなく、全面改訂の新刊だとも言える。 謎の「便利屋」を刑事・都築警部補が追う形が主な骨組だが、双方が追う謎と仕掛ける罠が絡んでおり、ストーリーは錯綜している。
2021年06月16日
完本 人形佐七捕物帳7<横溝正史>
2020年に再編集された暦年順に掲載される全集の7冊目だ。本集は1951年-1952年の作品で、他の主人公の作品を佐七物に書き換えた作品も多い。これらの作品には伝奇時代小説に近いものも多く、 多彩な内容とも言えるし、佐七とお粂と手下2人との掛け合いの面白さは減るとも言える。佐七の女難は続き、伝奇的に加えて男女の愛憎話の部分も増えている。
2021年06月16日
蝶として死す<羽生飛鳥>
2021年の連作集だ。副題が「平家物語推理抄」の時代ミステリであり、平清盛の異母弟・平頼盛が主人公で、平家一門だが傍流でその盛衰のなかを一族を守る為に知恵で世渡りしてゆく。 清盛時代の京で、清盛の死後に平家が木曽義仲に京を追われた時の京で、その後に源頼朝を頼った鎌倉で、そして平家が壇ノ浦で滅び源義経が頼と頼朝に京を追われた後の京で頼盛は謎を 解いて行く。
2021年06月16日
涼子点景1964<森谷明子>
2020年に出版された。異なる視点の1人称の8章から構成されるストーリーは時間的にも場所的にも微妙にずれたり重なりして進行する。その中心にいるのが小野田涼子で1964年頃から描かれるが 断片的であり、徐々に繋がって行く。その生い立ちの謎が背景にあるが、それぞれの章は日常の謎を涼子が解く形の連作ミステリの形にも見える。
2021年06月22日
ルパンの帰還<横関大>
2019年の作品だ。泥棒一家の三雲家と警察一家の桜庭家を描いた「ルパンの娘」に続く第2作だ。三雲華と桜庭和馬の娘・杏が成長している。警視庁捜査1課に名探偵の血筋の北条美雲が 新人刑事として赴任してきて、和馬とコンビを組み捜査を始めた所から始まる。和馬と美雲の捜査が中心となるが、そこに三雲家と桜庭家のメンバーが関わり話が展開して行く。
2021年06月22日
メインテーマは殺人<ホロビッツ>
2017年の作品で、日本での紹介は2019年だ。名探偵・ホーソーンの活躍を作家・ホロビッツが一緒に捜査におもむき記録して、本として書くというスタイルだ。ホームズとワトソンの関係で あり、オーソドックな本格ミステリのスタイルであり、内容もそのように言える。コンビ初登場だが書き継がれて行くとされている。
2021年06月22日
茨の墓標<麻見和史>
2021年に出版された、警視庁文書捜査官シリーズの8作目だ。捜査1課科学捜査係文書解読班の立ち位置は毎回微妙に変わり、安定はしない感は強いが、チーム構成は安定してきている。 文書解読班でもその対応は鳴海理沙1人だけで、他は捜査員中心であり友軍的な性格が強い。本書のストーリーは意外に古典的な内容に感じた。
2021年06月22日
名古屋駅西 喫茶ユトリロ 龍くんは食べながら謎を解く<太田忠司>
2021年の連作短編集で、シリーズ3作目だ。喫茶ユトリロの孫で大学生・龍が探偵役となる連作集で、背景に名古屋の食べ物がテーマとなる。本作品集は、依頼者的な人物の視点から 事件あるいは謎が語られて、それを龍が解く。「モーニング」「味噌煮込み」「なごやん」等の5つの名古屋の食べ物が登場する。
2021年06月28日
若さま侍捕物手帖26卍むらさき<城昌幸>
1965年の作品を、再編集して2021年に復刊したシリーズの1冊だ。短編2作と長編「卍むらさき」を収録している。「卍むらさき」は長編では多い伝奇時代小説だが、若さまは冒頭から全作に 渡って登場している。だが短編での推理の切れ味では話が直ぐに終わってしまうので、長編特有の事件の解決に手間取るモードが長く続く。本格ミステリ仕立ての長編は無理なのだろう。
2021年06月28日
アンデッドガール・マーダーファルス3<青崎有吾>
2021年の作品で、シリーズの3作目となる。首だけの不死の探偵役の鴉夜と、同行者・津軽と静句の怪物3人組が主人公で、そこに怪物の犯罪組織と、保険機構との3組が絡み敵対する。 その中で人狼が出る村の事件の絡む。架空設定の世界・登場者の特殊環境の中で起きた連続事件を解決する本格ミステリだ。色々な要素が絡みあっている。
2021年06月28日
祖谷・淡路殺意の旅<西村京太郎>
1994年の作品で1995年に文庫化された。十津川警部シリーズの1作だ。元刑事の私立探偵が依頼された仕事中の徳島で事件が起きた。十津川は徳島からの協力依頼に元部下の名を見つけて 会う事で、両者が繋がり協力して事件の解明に進む。だが事件が広がってゆき、大きくなって行く。
2021年06月28日
本能寺六夜物語<岡田秀文>
2001年の作品で、2003年に文庫化された。本能寺の変の30年後に6人の関係者あるいは関係者の関係者が集まって、表に出ていない変の裏の事実を順に語って行く。信長の周囲、家康の周囲、 等の話が進み最後に、本能寺の変の全く異なる真相も語られる。歴史小説でなくて時代伝奇小説として読む話だろうか。
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2021/06に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。