推理小説読書日記(2021/05)
2021年05月05日
猿神<太田忠司>
2020年の作品だ。帯文にはホラーと書かれているが、それは一面でありその見方も出来る。本格ミステリでもあり社会派ミステリでもあり、さらにはサスペンスミステリでもある。 題名は、舞台となる工場が建っている知名であり、何故その知名があるのかが背景にある。それはホラーと呼ばれる由縁になるのだろう。
2021年05月05日
謎の妖ATOM城<辻真先>
19181年の作品で「マッドボーイ・シリーズ3」となっている。シリーズ途中から読むマイナスもあるかも知れないが気にはならない。ただし内容が歴史改変テーマであり、SF小説と 歴史小説と、シュミレーション小説の要素がありその他にも多様な要素を含むので油断がならない。可能克郎も登場している。
2021年05月05日
完本 人形佐七捕物帳6<横溝正史>
2020年に再編集された暦年順に掲載される全集の6冊目だ。本集は1947年-1950年の作品になるが、他の主人公の作品を佐七物に書き換えた作品もある、故に内容的には 暦年でない部分もある。概ね長さが揃った短編だが「緋牡丹狂女」は3倍長いが内容的には伝奇時代小説に近くなっているので異色作で佐七は多くは活躍していない。
2021年05月05日
棟居刑事と七つの事件簿<>
2020年の公募によるオリジナルアンソロジー作品集だ。公募での7短編に、森村誠一のエッセイと短編を再録した。7作にはそれぞれの作者が「森村誠一に関するエッセイの短文を 書いている。幅広いジャンルで活躍する森村故に、7作は幅広い内容となっていて、小説が初めて活字になる作者は少ない。それゆえにジャンルは広くとも安定した内容が 多いと言えるだろう。
2021年05月05日
壊れる心<堂場瞬一>
2014年作品で、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズの第1作だ。警察官だが捜査しない部署を描き、そのメンバーの行動を描く。村野、優里、芦田、安藤梓、長住、らと、 民間支援団体の西原愛らが中心となる。それぞれが問題を抱えており、考え方も経験もばらばらであり、まとまった組織にはまだなっていない状況だ。
2021年05月11日
憐れみをなす者(上)(下)<トレメイン>
1999年の作品で2021年に日本に紹介された、上下2冊の長編だ。修道女・フィデルマのシリーズだが、翻訳者の死で中断していたとの事だ、新しい翻訳者で再開した。 舞台はアイルランドから巡礼先を目指す船の中だ。嵐や海賊などの危機の中で、殺人事件等が次々起きる。
2021年05月11日
幽霊紳士<大下宇陀児>
1934年の新聞連載作品を未収集部分を追加して単行本化した。作者の別の作品「恐怖の歯型」に途中で合流するという解説は意味が悩ましい。最近にうずもれた作品の掘り出しがあるが、 周辺知識不足故に悩む事になる。大下作品は奇妙な(意外と言うべきか)なストーリー展開が多いが、それは異なる前半を別の展開にも変えられる意味なのか?、と思う。
2021年05月11日
踊るジョーカー<北山猛邦>
2008年の作品が2011年に文庫化された。音野順が主人公の名探偵のシリーズ1冊だ、最近2冊目が文庫になり、3冊目が出版された。何故に2冊目の文庫化が遅れていたのかが疑問だ。 基本はワトソン^ホームズのスタイルだが、それに縛られていない色々な設定や展開もある。自信の無い探偵がトリッキーな謎を解いてゆく。
2021年05月11日
謎解きはディナーのあとで<東川篤哉>
2010年の連作集で短編6作が収録されている。大ヒットして連続テレビドラマとなった。その影響か?東川作品では何故か読んでいなかった。裕福なお嬢様刑事とのその執事の組み合わせだ。 そこに自動車会社の御曹司の上司が絡む。あくまでも本格ミステリで、謎が提出されて、解明されて行くのが楽しい。
2021年05月11日
新・本格推理07<>
2007年に刊行された、公募に短編集だ。長めの短編9作に、選者の二階堂黎人の講評等が掲載されている。常連投稿者が主体であり、その後にプロデビューした投稿者の名が複数あるのが 興味深い。年に一度の大作のアンソロジーだが、これがラス前となった。100枚ものは短編とそては長く、個人的には最後まで読まない作品もあり長い感があった。
2021年05月17日
迷宮<倉坂鬼一郎>
2000年の作品だ。精神科と外科の大型病院での連続事件を描くが、密室であり不可能犯罪の構成だ。だが話が進んでゆくと、純粋の本格ミステリでは無くてなんでも有りというか、異様な話というか、 奇怪な話というか、論理的な推理では太刀打ちできない。特に挿入される小説というか本の内容は幻想と怪奇的な内容だ。最後は破局するのがこの種の話の収束だ。
2021年05月17日
邪神の天秤<麻見和史>
2021年に出版された作品だ。「警視庁捜査1課11係」シリーズの探偵役の鷹野秀明が異動で公安部に配属された所から始まる。公安5課の他の5人のメンバーらとの捜査方法の違いや考え方の違いに 戸惑い悩みながら捜査に参加する。その中で自らの「筋読み」推理が生かせるのか?。1話完結かと思ったが、事件は続く展開となった。それは意外な展開だった。
2021年05月17日
オーロラの叫び<高柳芳夫>
1985年の作品集だ。ドイツの日本大使館の二等書記官・草場宗平を主人公にした5編からなる連作集だ。欧州の国を舞台にした事件だが、草場はどちらかと言うとプライベートでの巻き込まれが多い。 欧州の伝説や話の素材が多い的な使用が目立つ、外交官との結びつきはむしろミスマッチに感じる。ただし突然に社会派的な展開になる事もあり、無法的なシリーズだ。
2021年05月17日
若さま侍捕物手帖24 虚無僧変化<城昌幸>
2021年に出版された、1960年の復刊だ。若さま侍捕物手帖シリーズの復刊の24で長編「虚無僧変化」だ。「虚無僧」という言葉と同様に「ぼろんじ」が多用されている、辞書では「梵論字」で同じ意味のようだ。使い分けているのか、適当に使っているのかが判り難く、悩ましい。作者はこれ以前は虚無僧に統一されていた。本編は若さまは後半に登場して、それほども活躍しない。
2021年05月17日
キネマ探偵 カレイドミステリー<斜線堂有紀>
2017年に出版されたデビュー作だ。「映画好きによる映画好きのためのミステリ」と言う事なので、該当しない私にはきつい内容だった。4話からなる連作で、それぞれに映画が副題となっているらしい。 映画を見る事に没頭する引きこもりを外に連れ出す命令を受けた主人公として、事件に巻き込まれる。
2021年05月23日
謎のギヤマン機関<辻真先>
1981年の作品だ。マッドボーイ・シリーズの2でタイムオペラ編という。主人公は時空間転移装置で未来へ行くつもりが江戸時代についてしまった。そこでロボットとからくり師・ 大野弁吉と共に歴史改変を目指した。シリーズだから改変は失敗して、最後はロボットは未来に戻り、大野は国に戻り、主人公は20世紀に戻る。そして次の改変に向かう事になる。
2021年05月23日
山の人魚と虚ろの王<山尾悠子>
2021年の作品で、2021年に文庫化された。山の宮殿への新婚旅行の話であり、舞台設定や状況設定は、話の展開と共に次第に明らかになって行く。過去を思い返す事でそもそもの 人物関係や背景が明らかになって行く。山の人魚と呼ばれる叔母とは、山の宮殿に人が集まる理由とは、不思議な旅が描かれてゆく。
2021年05月23日
魔将軍<岡田秀文>
2006年に出版され、2009年に文庫化された。室町幕府6代将軍・足利義教が主人公で、誕生から暗殺されるまでを描く。くじ引きで選ばれ将軍の真相から恐怖政治と呼ばれた手法とは 何かがミステリ手法を含めて、多面的に描かれてゆく。応仁の乱より二代前の将軍であり、その死で有力な将軍がいなくなり、混乱の時代に戻って行く。
2021年05月23日
邪心<堂場瞬一>
2015年の作品で、警視庁犯罪被害者支援課シリーズの2作目だ。元彼氏からのストーカー被害の訴えを聞いた支援課が微妙な内容に悩む中で、依頼者女性が襲われて昏睡状態になる。 さらには容疑者男性が死ぬ。自殺と考える刑事課に対して、事件と考える支援課が対立した。
2021年05月23日
山河哀号<麗羅>
1979年の作品だ、あとがきによれば1952年に初稿が完成したとなっている。太平洋戦争前の日本占領下の朝鮮を舞台に、朝鮮人の反対運動や独立運動があるが一方では朝鮮人自身の 勢力争いも行われた。それは日本や中国を含めた周囲でもあった。そこに関係した複数の人物の視点から、複雑な状況が描かれる。終戦後は英雄探しやそれに名を借りた勢力争いが 行われた。
2021年05月29日
綾辻行人殺人事件<>
2013年の出版で「ミステリーナイト」イベント」をレポートした。天祢涼のノベライズ「綾辻行人殺人事件 主たちの館」と、イベントレポートと、作家対談と、仕掛け人対談とからなる。 犯人あてミステリイベントのレポートを中心に、色々な角度から描き、中編のノベライズもうまく組み込まれている。
2021年05月29日
いなくなった私へ<辻堂ゆめ>
2016年の作品だ。直前の記憶を失い、しかも自分が死亡したとされてほとんどの周囲から認識されない主人公が、自らその死の真相を調べる。不可解ミステリだが流石に純論理的な解答は 無理だ。そこは超自然設定とも架空設定とも呼ばれる展開になる事になる。かなり長い小説であり、サスペンスは強く描かれているが、反面に切れ味は鈍る。
2021年05月29日
魔力の胎動<東野圭吾>
2018年の作品で2021年に文庫化された。「ラプラスの悪女」の登場人物が再登場して同じ世界感で展開する。自然を変える事は出来ないが、現象を予知する事は出来る能力の存在が設定される。 5章の話題を見ると作者が過去にテーマとしたスキージャンプや野球が登場して、作者の興味の持ち方が判る。
2021年05月29日
青い館の崩壊<倉阪鬼一郎>
2002年の作品だ。ゴーストハンターが主人公で怪奇現象が起きたマンションを舞台にして密室現象と事件が起きる。奇妙な登場人物と探偵役なので、普通の話ではない。次々登場する謎も 解かれるかどうかが不明だ。
2021年05月29日
ネメシス1<今村昌弘>
2021年に出版された。同時期の放送されるテレビドラマ「ネメシス」の脚本協力としての書き下ろし中編「天才探偵、現る」「美女と爆弾と遊園地」が収録されている。 ドラマの題名も同じだが、後者は内容は異なる。基本は本格推理だが、キャラクター設定もありユーモア感も強い。
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2021/05に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。