推理小説読書日記(2021/04)
2021年04月05日
女誡扇綺談<佐藤春夫>
1920年代以降の作品を再編集した作品集で「台湾小説集」の副題だ。作者・佐藤春夫は1920年に台湾を旅行して多数の作品を書いた。それを再編集して復刊した。 当時は日本が台湾統治をはじめた頃であり、刺激を受ける事に出会った、帰国後に台湾をテーマにしらた作品を書いてゆく事になった。色々な面で現在に読むには時間が かかるがそのような読書もたまには良いと思う。
2021年04月05日
スカイハイ<沢村鐵>
2016年の作品で「警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳実結」の「2」だ。前回の続編であり、登場人物はそれを踏まえているので、「1」を読んでいないと判らない。事件は新しく起きるし 新たな登場人物が加わるのだが、2作目だが続編か承前かは混ざりはっきり言い難い。順序通りに読むべきなのだろう。
2021年04月05日
志ん生一代<結城昌治>
1976年の作品でミステリ作家による落語家・古今亭志ん生の一代記だ、もちろんミステリではない。落語家として度々名を変えており、広く名が知られたのは50歳頃だ。それ以前は 資料不足で伝記にはならないと言う。呑んで仕事をせず、度々旅に逃げる、名を変えるが芽がでない、家族をかえりみない。だが落語は辞めずに続けてゆく。 。
2021年04月05日
GODZILLA 星を喰う者<大倉崇裕>
2018年作品で、映画「アニメ版ゴジラ」のノベライズ本だ。再度動き始めたゴジラに対抗するために、人類は対抗手段を試みた。異星人と協力しての対抗は、異なる考えが裏にあった。 その結果は人類は破滅的に被害を受けてゆく。ゴジラを倒すという謎の力はあるのか。
2021年04月11日
さすらいの狼<生島治郎>
1999年の出版作品だが詳細不明だ。時代小説であり、元武士でいわくのある十文字の竜が主人公で、無実の罪に追われているが竜は仇を追っている。その旅で色々な事件と人物と出会う。 追ってから逃げながら仇を探す展開で、次第に過去の事件があきらかになってゆく。小説内では一応の区切りで終わるが、過去の真相は引きつずき追う展開で終わる。
2021年04月11日
若さま侍捕物手帖23 紅鶴屋敷<城昌幸>
1958年頃の作品を再編集して、2020年に復刊された全集の23冊目だ。短編9作と中編「紅鶴屋敷」を掲載する。江戸の若さまが事件を調べるために神奈川の海辺の村に出向く話だ。 長編ではお馴染みの東海道旅での話題も描かれており、長編に近い雰囲気のある中編だ。映画化の為に短編「太公望」を潤色したとなっている。
2021年04月11日
婿ドノのいのちが危ない!<辻真先>
1989年の文庫書き下ろし作だ。主人公は夕刊サン記者の可能克郎と結婚相手の萱庭智佐子であるが、克郎は辻作品でお馴染みの可能キリコの兄だ。新婚の引っ越し先の部屋には幽霊(死霊)がいた。 そして智佐子の祖母・萱庭カヤが加わって騒動が起きてゆく。幽霊が出るアパートに侵入者が現れ、殺人事件が起きて、トリックを駆使した本格ミステリが展開する。
2021年04月11日
生贄のマチ<大沢在昌>
2010年の作品2015年に2冊を1冊の文庫にした。副題が「特殊捜査班カルテット」であり「渋谷デッドエンド」「生贄のマチ」の2作を収録する。登場人物は、タケルとカスミと ホウとクチナワであり、複雑な人物設定と関係とが物語の一面であり、順番に読むのが良いシリーズだ。現実感よりは派手な展開の冒険を楽しむ事になる。
2021年04月17日
室戸探偵事務所<須田刀太郎>
2012年の作品集で、室戸探偵事務所の所長・室戸暎介を主人公とした作品集だ。中編「白受山荘事件」と」、「ものぐさ探偵の謎解き帖」と題する6作の短編を収録している。 主人公の室戸が「私は」と語る1人称スタイルで通称・ハードボイルドとか私立探偵スタイルと呼ばれる。内容は多彩で大味な作品が多い。
2021年04月17日
雨と短銃<伊吹亜門>
2021年に出版された作品だ。江戸時代末期に土佐藩の坂本竜馬と中岡慎太郎が、仲が悪い長州藩と薩摩藩の同盟を図る。そこに起きた長州藩士殺害事件を、尾張藩公用人・鹿野師光が捜査する。 いくつかの藩と幕府や新選組がうごめく京都を舞台にした時代本格ミステリだ。背景には歴史ミステリの要素もあり、歴史上の人物も多数登場する。
2021年04月17日
ローレライの幽霊船<高柳芳夫>
1986年の作品集だ。ドイツの日本大使館の二等書記官・草場宗平を主人公にした5編からなる連作集だ。ドイツやオーストリア等の周辺国を舞台にした色々な事件に絡んでゆく。立場は捜査官でないので 関わり方は曖昧で、捜査かどうかも微妙だ。草場は地元警察に知り合いがいたり、情報が入手しやすい立場だが、第三者的な視点でもある、人としてはよく判らない。
2021年04月17日
共謀捜査<堂場瞬一>
2020年に出版された。通称「検証捜査」シリーズと呼ぶ作品シリーズがあり、全国から特命で集められた6人が神奈川県警の過去の事件を検証した。それ以降は元の所属に戻ったそれぞれが、 それぞれの事件に絡みその中でその「検証捜査」の仲間とも接してきた。今回は1人が欧州の仕事中に誘拐された中で、他が東京の事件で3人が再度集められる所から始まる。残りの2人も それぞれ関わって行く。
2021年04月17日
漂泊人よ、旅人よ<竹谷正>
1995年に出版されたエッセイ集だ。ミステリも書く街医師の作者が世界を旅行した時のエッセイを集めた。23回の旅行が対象であり、私には何故にそれだけ多く旅行が出来るが判らない。 ミステリとは基本的に無関係だ。
2021年04月23日
礼儀正しい空き巣の死<樋口有介>
2020年の作品だ。舞台は国分寺署で卯月枝衣子刑事と所轄仲間と、椋と袖香のふたりも登場するので、もしシリーズ化されれば2作目になる。題名は事件の発端であり、そこから 色々な事件が絡んで起きたり過去にあったり、あるいは掘り起こされてゆく。卯月の希望する本庁転任も絡んで、署内のごたごた?も展開してゆく。小さな発端の事件がどんどん 拡がって行く展開は、前回と同じだ。
2021年04月23日
任侠浴場<今野敏>
2018年の作品で、2021年に文庫化された。かわったヤクザの阿岐本組組長と組員らが、色々な事業の立て直しに奔走するシリーズの4作目だ。今回は東京都内の公衆浴場(銭湯)の 立て直しを行う。その地域のマル暴刑事と共に、阿岐本組担当の甘糟刑事も登場する。組員らが視察の為に道後温泉に旅行するのは意外な展開あった。
2021年04月23日
ビーフ巡査部長のための事件<ブルース>
1947年に出版された作品で、2021年に日本で翻訳出版された。前半1/5が一人の登場人物の日誌となっている、それはそれまでに紹介されていたビーフ物とは異なる内容だ。 それ故にそれ以降にビーフが捜査するが、全体にいつもとは異なるストーリー展開と感じた。題名を含めた作品の校正と内容は、意外とも違和感とも感じた。
2021年04月23日
豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ殺人事件<倉知淳>
2018年の作品集で、2021年に文庫化された。短編5作と中編1作からなる。中編「猫丸先輩の出張」はレギュラー探偵の猫丸先輩がいつもの様に突然に現れて周囲を気にせず、 推測的な推理を語る。短編は事件・推理・解決の筋では必ずしも取らず、奇妙な味とユーモアとか色々な要素を加えている。
2021年04月29日
蒼海館の殺人<阿津川辰海>
2021年の作品であり、同一探偵のシリーズ3作の2冊目だと言う。長い長編であり、洪水に襲われて孤立した山の家での事件を短い日時で描いた。それは警察捜査と科学捜査が 行われ状況を設定している、洪水が襲うと現場も証拠も、あるいは人も流されて破壊される状況でもあった。
2021年04月29日
怪奇探偵 十一号室の怪<今日泊亜蘭>
1950年から1964年の作品を再編集した作品集で2020年に出版された。SF作家の今日泊がSF長編「光の塔」を発表するよりも前に発表した作品を収録した作品集だ「河太郎の受難」を含む、 。ジャンル的には多彩と言うしかないようだ。それを広義の探偵作家として紹介されている。
2021年04月29日
特命弁護士<島田一男>
1945-1956年の作品を集めて再編集して1990年に出版された作品集だ。島田作品の代表キャラクターの南郷次郎弁護士作品の中編「東京無法街」とそれ以外の作品、弁護士が登場する 作品の短編5作を加えた作品集だ。量的にも中編が中心で見ごたえがあるが、よりどりのばらばらの内容の作品集だ。
2021年04月29日
ダイエット物語 ただし猫<新井素子>
2016年の作品集に、1作と対談を加えて2019年に文庫化出版された。私小説風の小説シリーズで「ダイエット物語 ただし猫」「ダイエット物語 今度はヒト」「大腸ポリープ物語」 「リバウンド物語」という、猫を加えた家族の健康問題と生活を描く。勿論医学書では無いが、かなりは実体験にも基ずく、それ以外にもエピソードが並ぶ。
2021年04月29日
十字架の王女<大沢在昌>
2015年に出版された。カルテットシリーズの3冊目だ。シリーズとして連続性があり、順番に読む方がいくらかは好ましい。本作はカスミが姿を消した場面から始まる。 「本社」と「藤堂」との対立の中で、残りのカルテットのメンバーがカスミを探して、双方の組織の争に巻き込んて行く。表の対立と、その裏のたくらみや動きが微妙に変化してゆく。
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2021/04に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。