推理小説読書日記(2021/03)
2021年03月06日
魔女の封印<大沢在昌>
2015年の作品だ。「魔女」シリーズの1作で、主人公・水原の成り立ちを描いた第1作を受けてのその後のシリーズとなる。本作ではコンサルタント・水原とその相棒の星川が 事件に巻き込まれた事をきっかけに各所から依頼を受ける。1億人に一人の超能力者の秘密を追い、その能力を解明し隠れた超能力者を探し、陰謀を解明する。
2021年03月06日
指名手配<森村誠一>
1975年の作品で1981年に文庫化された。大会社のトップの死で政略結婚による後継者争いが起きた、トップの死で勢力が変わる中で殺人を犯して、不倫と逃亡を図る二人。 だが一向に死体が見つからず、新たな展開に進む事になる。
2021年03月06日
偽造同盟<岡田秀文>
2015年の作品だ。第二次世界大戦後の日本が舞台で、戦中の謎?を追ってアメリカ進駐軍と陸軍の元将校らが動きだした。そこに右翼団体や共産組織等の複数のグループも動く。 ただし謎が不明であり、異なる目的や狙いを持っており、隠したり騙したりと偽造が付きまとう事になる。
2021年03月06日
和菓子のアンソロジー<>
2013年のアンソロジーで、2014年に文庫化された。テーマは和菓子で、それが何かで登場する短編競作だ。作者は、坂木司・日明恩・牧野修・近藤史恵・柴田よしき・木地雅映子・ 小川一水・恒川光太郎・北村薫・畠中恵だ。さすがにトリックとはゆかないが、小道具としては充分に使われている。
2021年03月12日
矢上教授の十二支考<森谷明子>
2018年の作品だ。大学講師・矢上とその教え子で主人公・御牧笑が夏休みのレポートの課題を探して、田舎町の親戚を訪れてそこの歴史などを調べてゆく。疑問等を矢上に相談するうちに、 矢上の出かけてくる。日常と歴史の謎を解き明かしてゆく。
2021年03月12日
北村薫のうた合わせ百人一首<北村薫>
2014年に出版されて、2019年に文庫化された。短歌を2題ずつセットで選び自由に読むというエッセイを連載して、百題集めた。ただし読む過程で他の多数の短歌も引用する。 結果的に550首収録とされている。自らは作らず(詠まずというらしい)、鑑賞するだけの立場だ。深いと思うか、面倒と思うか、個人差はあるだろう。
2021年03月12日
石原藤夫ショートショート集成<石原藤夫>
1960年頃から現在までに書かれて来た単行本未収録のショーとショートを全て集め2020年に刊行された作品集だ。作者の代表作シリーズの「惑星シリーズ」に加えて、「海洋未来物語」 や「新電気未来物語」等のシリーズを含めた。かなりの数の作品が収録されており、沢山残っていたことが驚きだ。
2021年03月12日
落ちていた青白い運命<倉田啓明>
1912-1931年の発表作品を編集した単行本の、作品集だ。純文学から出発したが直ぐに大衆文学に転じた。大正と昭和初期のモダニズム小説作者とされるが、ジャンルは広く 時代小説も多く、本集にも多く取られている。その中に探偵小説も含まれているが、変格・怪奇探偵小説だ。
2021年03月18日
AID 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子<内藤了>
2015年の作品で、藤堂比奈子が主人公のシリーズの3冊目となる。エピソードは1話完結だが、登場人物についてはシリーズで継続性があり情報を引き継ぐので順番に読む方が良い。 キャラクターが濃く目立つのが特徴だ。本書では検死官・石上通称「死神女史」と鑑識・三木が際立つ、それ以外の脇役も濃い。
2021年03月18日
迷犬ルパンと里見八犬伝<辻真先>
196年に出版された作品で、迷犬ルパンシリーズの1作だ。犬ということで、里見八犬伝をモチーフで舞台としたが、主人公が犬に加えて多数の犬が登場する事になり、読む方は 混乱君だ。このシリーズはレギュラー人物も多いので合わせると作者の力技と強引な展開で、ようやく成立させたと感じた。
2021年03月18日
特急「あさしお3号」殺人事件<西村京太郎>
1988年の作品集で1991年に文庫化された。十津川警部が登場する短編2作と、それ以外の1作からなる。後者の「首相暗殺計画」は2.26事件後の昭和13年を舞台にした鉄道での 暗殺計画を描く、その時代ならではの鉄道状況が描かれる。
2021年03月18日
ソーンダイク博士短編全集1 歌う骨<フリーマン>
2020年に出版されたソーンダイク博士が登場する短編全てを3冊の全集にする企画の第1集だ。「ソーンダイクの事件記録」「歌う骨」の2冊の短編集を収録した、8作+5作を収録する。 既に日本でも有名な作品も含むが、雑誌等の挿絵等を掲載した事でイメージは一新された感がある。
2021年03月24日
蛮政の秋<堂場瞬一>
2015年の作品で2018年に文庫化された。新聞「日本新報」記者・南康祐を主人公にする3部作の2冊目だ。1作目で誤報問題を起こした南は本社に移動になったが、そこに不正献金不正 を告発する匿名メールが届いた。同時進行で少数野党議員・富永と、落選中元議員・西がそれぞれの思惑で、関連事件に絡んでゆく。特ダネ狙い、政治的な駆け引き狙いの異なる狙いで 絡むなかで、事件は奇妙な展開を示してゆく。
2021年03月24日
中野のお父さんあ謎を解くか<北村薫>
2019年の作品集であり短編8作を収録する。出版社勤務の田川美希が主人公であり、日常の謎や本の謎や、本の中の謎が登場する。そして、中野に住む父に謎を離すと謎が解かれる。 父は退職した古書マニアで奇妙な蔵書を駆使して謎を解いてゆく。美希の担当作家にも古書マニアがいて話題は尽きない。
2021年03月24日
若さま侍捕物手帖 22 おきん狐<城昌幸>
2020年に復刊された「若さま侍捕物手帖」シリーズの1冊で、全作復刊を目指す22冊目だ。短編賞が減ってくるが同時にテーマが時期によって似たものに集まる傾向がある。 この本の頃では、表題作「おきん狐」を代表として、狐が登場する作品が目立ち、幽霊や死神などが連続して登場する。テーマを絞るのが多作出来る理由かも知れない。
2021年03月24日
死線の風景<森村誠一>
1976年に出版された「森村誠一自選傑作短編集」の文庫化改題だ。短編11作と作者の自作解説も「私の推理小説作法」が収録されている。初期の作品であり、本格推理小説の味が強い。 短編では警察や警官の視点で描かれる事は少なく、事件の中心にいつ人物の視点から描かれる事が多い。
2021年03月30日
密室から黒猫を取り出す方法<北山猛邦>
2009年の作品集であり2021年に文庫化復刊された。変わった名探偵・音野順の事件簿の作品集の2冊目で5作を収録する。文庫化が遅いのに驚く、第1作は早く文庫されて増刷も 行われており、出版事情が謎だ。不思議な探偵のキャラクターと、作者特有の奇妙なトリックが見どころだ。ただしトリック単体では色々と意見は異なるだろう。
2021年03月30日
歌舞伎座の怪紳士<近藤史恵>
2000年の作品だ。現代風のスタイルの日常の謎のミステリだ。主人公を含む登場人物の個々が抱える、過去の事情と現在の不安を同時に描き、それも読者には謎となっている。 引きこもりがちの主人公女性が叔母からチケットを貰い代わりに行った歌舞伎座で老紳士と出会い、同時に不思議な事件にも出会う。それを老紳士と解いてゆく。ただそもそも、 その人物との出会いも謎だった。
2021年03月30日
少年探偵・春田龍介<山本周五郎>
1930-1938年の作品を集めて再編集して2007年に出版された。山本周五郎探偵小説全集全6巻+別巻の、第1集だ。少年探偵・春田龍介が登場する長編「ウラルの東」と短編5作と、 それ以外の4作が収録されている。昭和初期で戦争直前で少年向きの作品であり、内容的には時代と対象読者と検閲的な環境が影響している。純粋に今の目では厳しいのは仕方がない。
2021年03月30日
星空のパレット<安萬純一>
2021年の短編集だ、書きおろしで連作ではない純粋な短編集は、今では珍しくなった。狭いスタイルや設定・背景なしに1作ごとに異なる狙いを供えた短編が4作集められた。 謎解きミステリだが謎の種類は色々な物が組み合わさり、相互に隠しあっている。探偵役が不明なのでそれ自体も謎になっており、意外な展開につながる。
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2021/03に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。