推理小説読書日記(2021/01)
2021年01月05日
三人の双生児<海野十三>
2007年に出版された再編集の作品集だ。昭和10-20年代の作品が集められている。徳島県文学館が発行する「ことのは文庫」の1冊だ。年譜や解説で出身地の徳島と 作者を語る。作品も知名度の高いものから、多彩に選ばれている。冒頭の「三人の双生児」は徳島が舞台だ。
2021年01月05日
ルパンの娘<横関大>
2015年の作品で、2017年に文庫化された。テレビドラマ化の帯が付いている。泥棒一家と警察一家が登場し、娘と息子が恋をする。そこから過去の因縁話があり、現代の 殺人事件の謎が絡む。不自然な設定と展開だから、そこに隠された不自然な手掛かりや伏線も見落とすという、裏の狙いがある。
2021年0月05日
若さま侍捕物手帖19 薄簿ボケ侍参上<城昌幸>
2020年に再編集された1958年ころの短編集だ。1作のラジオ放送探偵劇脚本があり奇妙なアクセントだ。短編12作からなるが、基本は岡っ引きが持ち込む謎を若さまが解く。 ただ本集になると、導入やきっかけや展開に、変化を加えて来た作品が増えた。個人的にはワンパターンの安楽椅子探偵でも良かった。
2021年01月05日
友人は探偵ではない<川澄浩平>
2020年の作品だ。デビュー2作目で登場人物は共通する。4話からなるオムニバス連作長編だ。北海道の女子中学生と、その不登校の男子の友人とが登場する。 謎解きを頼む時だけに訪問して頼む、少女と探偵役の少年は友人ではないのか。青春小説に謎が含まれる。
2021年01月11日
迷犬ルパンの大逆転<辻真先>
1989年の作品で1994年に文庫化された。迷犬ルパンと朝日刑事と川澄ランらが登場するシリーズの1作だ。各地をめぐり、パロディもあるシリーズだが、本作はインド洋の島・ セイシェルを一つの舞台としている。ランが撮影で訪問して事件に遭遇する。一方では日本国内でも事件が起きて、ルパンは怪我をしながらも解決してゆく。
2021年01月11日
殺人捜査本部<島田一男>
1950年から1970年に書かれた作品を再編集した、1989年の文庫化だ。警察官が事件を捜査する作品を集めてあるが、レギュラー主人公とはなっていない。主人公がレギュラー キャラクターになるのは作者の中期以降の作品だ。レギュラーでない故の作品も当然に含まれている。
2021年01月11日
奥能登に吹く殺意の風<西村京太郎>
1994年の作品で1997年に文庫化された。警視庁十津川警部と十津川班の刑事らが登場するが、いつもとは様子は異なる。刑事4年目の北条早苗刑事が生き方になやみ、休暇をとって 能登にゆくとそこで狙撃事件にあう、狙われたのは自分か他のだれか。そして東京で清水刑事が狙撃されて殺害された。十津川が狙われているかも知れない状況で捜査する。
2021年01月11日
新吉捕物帳<大倉てる子>
1951-1955年に書かれた短編を2020年に単行本化された。初出本になるが復刊のイメージが強い。岡っ引きの新吉が主人公の作品が12作と、伝七を主人公にした作品2作を収録した。 伝七は多数の作者が書いた共有キャラだ。新吉は犯人を捕らえず、見逃す事が異様に多い、それでも捕物帳となっている。
2021年01月17日
孤島の来訪者<方丈貴恵>
2020年の作品だ。竜泉家シリーズ2作目となっているが、人物的なシリーズはなく、SF設定を含む本格ミステリシリーズになる。謎の宇宙からの来訪者は誰になりすますか、 それを含む中での殺人事件の真相は何かを読者に挑戦する。
2021年01月17日
賢者の棘<麻見和史>
2020年の作品で、警視庁捜査1課十一係シリーズの13冊目だ。如月塔子の家に脅迫状が送られてくるなかで、署に如月を名指しする予告状が来て、現場で問題を出して間違うと 処刑が行われた。連続する事件を十一係が追う事になる。過去に如月の父が関係した事件の関係が浮かんでくる。
2021年01月17日
愚者の連鎖<堂場瞬一>
2016年の作品で刑事・大友鉄が主人公のシリーズの7冊目だ。大友は東京と神奈川にまたがる窃盗事件の応援を命じられた。殺人でなく、容疑者は完全黙秘でしかも現場捜査官に 嫌がる者がいた、しかも検事が熱心に早期解決を要求した。その中で神奈川で殺人が起きて事件が複雑化してゆく。息子の独り立ちに戸惑う大友が捜査してゆく。
2021年01月17日
銀河英雄伝説列伝1<>
2020年に出版されたアンソロジーだ。田中芳樹の「銀河英雄伝説」のトリビュートとして、6名の作家がそこの中から別のエピソードを書いた。原作の優れた読者では無いので 心配もあったが、読むほどにその世界が理解でき初めて、アンソロジーの面白さも分かって来た「1」だから続編もあるのだろう。
2021年01月23日
十八時の音楽浴<海野十三>
2007年に徳島で復刊されたオリジナル編集の作品集の2冊目だ。表題作を含む8作からなら短編集だ。科学小説や科学SF小説が集められ、科学の恐怖をユーモア的な内容で書いた。 奇想を科学知識と結び付けて、ユーモア的な文体で表現してゆくスタイルが満ちている。
2021年01月23日
村に医者あり<大坂圭吉>
1942年の新聞連載小説を、復刊的に単行本化した。当時は探偵小説が禁止されていた時代なので大坂も、他のジャンルの小説を書いていた。本作は出身地の愛知の新聞に その土地に戻って来た若い医師が村を少しでも良く使用とする行動と気持ちを描いた。
2021年01月23日
砂の街路図<佐々木譲>
2015年の作品で、2018年に文庫化された。主人公は母が死に、過去に父が死んだ北海道の運河の街を訪れる。自殺となっている事件だったが、そこが父の学生時代の街と知り、真相を調べに行く。 物語はほぼその運河街で進む、小さな街を歩きまわるが、掲載された街の地図を見ながらでも細部の位置はなかなか分かりずらい。それほど狭い所を繰り返し歩きまわるのだ。
2021年01月23日
幻綺行<横田順彌>
1990年の連作短編集で、2020年に短編4作を加えて復刊された。初出時の副題が「中村春吉秘境探検記」で、春吉らが秘境を探検する秘境冒険小説だ。架空設定・SF設定は 当然だが、雰囲気は小栗虫太郎や香山滋の秘境小説と同じだ。ほとんどが仲間の女性と男性との3人が色々な形で参加する事も面白い。
2021年01月29日
かがやき荘西荻探偵局<東川篤哉>
2016年の作品で2019年に文庫化された。西荻窪のアパートに住む3人の女性は家賃が払えず、家主から探偵捜査を命じられた。家主の親戚の雑用係の秘書を巻き込んでのミステリーだ。 謎解きミステリの連作だが、設定や登場人物的には不純物が満載で先が読めない展開を示す。
2021年01月29日
公安捜査<浜田文人>
2000年の作品で、2002年に文庫化された。題名どうりに公安警察とその捜査がえがかれるのだが、それは一面であり、警視庁と神奈川県警の刑事が捜査が主体で進められて、 そこに公安捜査が絡む。それが交わるのは小説では後半となる。警察の複雑な組織とその中の不正があり、末端の捜査にも影響する。
2021年01月29日
応仁秘譚伝<岡田秀文>
2012年の作品で2015年に文庫化された。応仁の乱を複数の視点から描く時代小説だ。多数の要因と偶然が絡み長期化した乱は、視点で見方が変わる。足利義視は僧から突然に将軍に誘われた。 実際は候補でありなれなかったが、乱にはまり込む事になった。日野富子は夫の将軍・足利義政の無気力から政治に絡んだ。細川勝元は執権として制御する事が出来なかった。足利義政は その庭師の視点から語られる。
2021年01月29日
義経号、北溟を疾る<辻真先>
2017年の作品だ。明治14年に北海道開拓使・黒田清隆は敷いた小樽-札幌間の鉄道に天皇を呼び乗せる事にした。だが黒田へや開拓政策への反対やらが絡んで妨害が起きそうだった。 警視総監の依頼で元新選組の藤田五郎と次郎長の子分・法印大五郎は、黒田が絡んだ事件捜査と、妨害工作との対応に行く。多彩な登場人物の伝奇的なサスペンスと冒険小説に謎解きが絡む。
←日記一覧へ戻る
2021/01に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。