推理小説読書日記(2020/12)
2020年12月06日
黒い神座<森村誠一>
1988年の長編だ。かなりの長い長編であり、関東の殺人事件をきっかけに関係者と警察が調べて行く、そこに新たな事件が起きたり浮かぶ。疑惑とそれの恐喝者の殺害が 疑われて事件が複雑になり、そこから国家とその権力争いが関わって来る。複数の権力を狙う者の思惑が競う展開になって行く。
2020年12月06日
ジョン・ディクスン・カーの最終定理<柄刀一>
2006年にカーの生誕百年記念として編まれたオリジナルアンソロジーが文庫で復刊の長編だ。本作はその初出では短編だったが、長編に改稿されて単独の長編として出版された。 カーが残した遺稿に未解決事件があり、それをファンらが集まって考える。それを中心に別の事件・問題も考える。
2020年12月06日
孤島の花<香山滋>
2020年に再編集された文庫版作品集で2作を収録する。香山滋は15巻からなる作品集が存在するが、2作は色々な事情から未収録になっていた。「孤島の花」「眼球盗難事件」 ともに少年向きの小説であり、冒険小説である。未収録になった問題も提起されている。
2020年12月06日
沈黙の詩<鏑木連>
2018年の作品だ。京都にある、依頼者の思い出を探す「思い出探偵社シリーズ」の3作目で、所長夫婦と調査員3人の事務所だ。過去を語らないままに認知症になった妻の過去を 探す依頼をわずかな手掛かりで調査する。調査員個々の過去と抱える問題も並行して描かれる。
2020年12月12日
関ケ原<岡田秀文>
2012年の作品で2018年に文庫化された。時代小説と、時代ミステリを書く作者の時代小説だ。織田信長と豊臣秀吉と徳川家康の時代の作品が多い作者の、一作だ。 本作は秀吉の死後から始まり、関ケ原合戦を経て、石田三成らの処刑直後までを描いた」。
2020年12月12日
スクープを追え<島田一男>
1950年から1985年に書かれた作品を再編集した、1989年の文庫化だ。題名どうりの、新聞記者が主人公の作品集だ。東京日報の複数の記者が登場するが、北崎社会部部長が 中心となる。加えて熱海の新聞社が舞台の作品もある、同じ名字の人物も登場するが関係の有無や同人物かは不明だ。
2020年12月12日
処刑台の祭り<戸川昌子>
1988年の作品だ。戦後の混乱期のアメリカ兵との間に生まれた子の問題とその処置を背景にして、しばらく後の時代での事件を描く。混血児問題と復讐談・復讐団とが背景 となる。一方ではその親かもしれない妻と夫の視点から、事件を描く。サスペンス色が濃い。
2020年12月12日
迷犬ルパンと三毛猫ホームズ<辻真先>
1991年の文庫オリジナル長編だ。パロディ色が濃いシリーズに、赤川次郎原作の三毛猫ホームズのシリーズのキャラクターがゲスト出演する。そして赤川次郎自身が解説を 書いている。内容はパロディならではの飛躍を繰り返す、多数の登場キャラクターらの役目を振り分ける事に励んでいる。
2020年12月12日
完本久生十蘭全集 別巻<久生十蘭>
2013年に出版された全集の12巻目であり、別巻となる。書き直しの多い作者ゆえに、異稿が多数存在する。その中で主要(重要?)なものを選んで別巻としてまとめられた。 なかなか全て読んではいないが、顎十郎捕物帳を中心に読んで楽しんだ。それに加えて、座談・対談と、補遺と年譜とでこの巻はなる。ファンには月報の参考文献がうれしい。
2020年12月18日
九州新特急「つばめ」殺人事件<西村京太郎>
1993年の作品で1996年に文庫化された。東京と鹿児島を結ぶ事件で、航空機ルートと九州の鹿児島本線利用ルートが浮かぶが、証言で航空機ルートと考えられた。 だが、鉄道ルートの目撃者が狙われて事件は方向をけて行く。 。
2020年12月18日
完本人形佐七捕物帳4<横溝正史>
1942年の短編を発表順に再編集した作品集の1冊だ。度々出版されており、作者による書き直しと、出版社による変更で混乱があるらしいが、その統一と完全版を目指す。 複雑な履歴もあるのか、作品的には多彩であり、捕物帳のパターンにあう作品や、佐七一家の会話で進むパターン以外にも、色々なストーリーが展開される。
2020年12月18日
殺人七不思議<アルテ>
2006年の作品で20204年に翻訳された。探偵・オーウェン・バーンズのシリーズの1作だ。7つの不可能状況の犯罪を一気に解決するという構成だ。そこでは謎が多い だけではない、作品上の理由もあるようだ。見立て殺人でもあり、バーンズのための事件の感もある。
2020年12月18日
高速の罠<堂場瞬一>
2015年に出版された。大友鉄が主人公のアナザーフェイス・シリーズの6作目だ。東京から長野へ向かう高速バスでの事件が舞台だ。大友は息子と別々に長野県の佐久の 実家に行くが息子が事件に巻き込まれる。その後で高速バスの事故が起きる。高速バスの運航システムを利用した犯罪が行われたのか。大友が県をまたいで捜査する。
2020年12月18日
大坂の陣<岡田秀文>
2019年の作品だ。戦国時代の特に豊臣を中心にした時代小説長編の1冊で「賤ケ岳」「関ケ原」に続く。徳川家康と豊臣秀頼の二条城での対面からはじまり、 大坂夏の陣までの豊臣滅亡までを描き、家康の死で終わる。
2020年12月24日
深海の迷路<森村誠一>
1989年の作品だ。複数の事件が起きてそれぞれが警察と素人の関係者に捜査されて行く、そしてそれぞれの事件に繋がりがある可能性が生じてゆく展開だ。素性を知らない女性と 出会い暮らした男性が、その死を調べてゆく。あまりにロマンチックだが森村作品では普通の展開だ。夢は夢で終わる・・・・。
2020年12月24日
ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子<内藤了>
2014年の作品でデビュー作だ。物騒な題名だが、所属部署は、刑事部組織犯罪対策課で、新人の藤堂は内勤だが、途中から捜査に出かける事が増える。 そこそこ変わった人物設定だが、キャラクター的には東大法医学部教授で検視官・石上妙子博士通称・死神女史が圧倒的に濃くてそれには負ける。
2020年12月24日
若さま侍捕物手帖18 天を行く女<城昌幸>
2020年に復刊されて出版された再編集の作品集だ。若さま侍シリーズの長編「天を行く女」と短編4作を収録する。長編は伝奇色が強く、2派による念流の試合を背景に描かれる。 若さまは念流・念術は苦手な筈だが、そこはそれで若さまは全編で登場して活躍する、作者も長編に慣れた。
2020年12月24日
あずみの殺人行<麗羅>
1985年の長編だ。「殺人行」が付く作品の1冊だが、連作でない。スリラーやサスペンス色が濃い展開で、ウールリッチの作品のような雰囲気もある。出生の秘密を追うと他の 犯罪も浮かんでくる、同時に現在進行中の事件もあり、サスペンス色は十分にある。その多数の訪問する地の中に「あずみ」のがある。そこが重要であり、題名でも予想できる。
2020年12月30日
樹海警察<大倉崇裕>
2017年の作品で、山梨県警上吉田署の遺体専門の地域課特別室で樹海の遺体処理専門を行うグループを描く。メンバーはそれぞれの訳を持ち、その中で異様な仕事を行う。 異様な背景と設定は、通常捜査とは異なる雰囲気と事件への対応が展開される。
2020年12月30日
新本格猛虎会の冒険<>
2003年のオリジナル・アンソロジーであり、「阪神タイガース熱烈応援ミステリ・アンソロジー」となっている。解説も序文も同様に熱く、いしいひさいちの漫画も同様だ。 逢坂剛・北村薫・小森健太朗・ホック・白峰良介・いしいひさいち・黒崎緑・有栖川有栖・佳多山大地が何らかで登場している。ホックも違和感は少ない。
2020年12月30日
異常心理捜査官・氷膳莉花 怪物のささやき<久住四季>
2020年の作品で、3話構成のオムニバス長編だ。新人女刑事・莉花が上司の指示で異様な心理学者と会い、捜査の助言を受ける。そしてそこから事件を解決する事になる。 だが、異様な関わりと捜査は、予想外の展開を見せる。キャラが個性的だが、次の登場はあるのだろうか。
2020年12月30日
静かな哄笑<戸川昌子>
1988年の作品集だ。短編8作からなる、純粋の短編集だ。年間選集や、その後の復刊に選ばれた作品も含まれる。「怪奇ミステリー」と紹介されているが、本格ミステリでは ない事であり、怪奇と言い切れる内容でもない。多彩な内容と展開で読ませる、ジャンルに捕らわれない作品集だ。
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2020/12に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。