推理小説読書日記(2020/11)
2020年11月06日
雁行夫婦剣<須田刀太郎>
2012年の連作長編で副題は「豪八・お京事件控」だ。戦後直ぐの時期に見かけた作者の60年振りの作品だという。時代小説で剣豪の夫婦の話だ。雁行とは並行でも順行でもなく、 夫婦が2人で斜め横に並んで敵と向かう闘い方を指す。オムニバス形式の短いエピソードが多数で、構成されている。
2020年11月06日
フェイスレス<沢村鐵>
2013年の長編だ。墨田署強行犯係の一柳美結が主人公の警察小説だ。ただし、謎の組織や黒幕が絡む公安事項や国際事項が絡む、サイバー犯罪や情報技術の争いやスパイが絡む。 通常の警察捜査を越えた事件に展開してゆき、警察小説かどうかは判らなくなって行く。そもそも事件は全ては終結しない。
2020年11月06日
死の快走船<大阪圭吉>
2020年の再編集された文庫版作品集だ。本格探偵小説作家としてデビューしたが、昭和15年頃から戦争により自由に書けなくなり、他の可能なジャンルに移ってゆく。防諜小説、明朗小説、 捕物帳、少年少女小説などだ。戦時に亡くなった作者の後期の作品を集めた多彩な作品集だ。単行本では復刊・出版された作品も多く含まれる。
2020年11月06日
丸を書く女<大阪圭吉>
2020年に出版された短篇作品で、単行本初収録だ。前述の文庫版「死の快走船」にも2作収録されている。弓太郎事件帖はまだ全ては見つかっていない。その1作を文庫版で出版した 小さな厚さの本だ。かなり多くの作品が復刊されたが、まだ残っているらしい。
2020年11月12日
歓喜の歌 博物館惑星3<菅浩江>
2020年の作品で、博物館惑星シリーズの3冊目だ。1、2冊目は連作作品集だが、本作は繋がりが強くなり、オムニバス形式の長編だと言える。テーマは贋作問題だ。 設立50周年式典を絡めて、美術・工芸部門を中心に進み、惑星の中の隔離地域が絡み国際組織との対決に進む。2冊目に続いての刊行はうれしい。
2020年11月12日
南風吹く<森谷明子>
2017年の作品で、20202年に文庫化された。高校生が松山で俳句を競う全国大会の「俳句甲子園」を描く作品で、前作の「春や春」のアナザストーリーになる。前作は東京の 女子高を描いたが、本作では愛媛の島の分校が舞台となる。生徒数も部員も少ないなかで、個々の部員の事情と気持ちを描いてゆく。
2020年11月12日
晴れた日は謎を追って<>
2010年のオリジナル・アンソロジーで2014年に文庫化さえた。架空の都市を舞台に5人の作者が色々なタイプの短編ミステリーを共作した。おおむねが不可能犯罪であり、 市にはそれ専門の捜査係が存在する。架空の都市の設定は不可能犯罪には向いている。
2020年11月12日
完本久生十蘭全集11<久生十蘭>
2013年に出版された全集の11巻めだ。作者が翻訳したフランスの探偵小説を収録した。解説によると、通常の翻訳はごく少数で、ほとんどは超訳とか翻訳後の翻案であり、 久生が原作をもとにして自由に創作した内容だと言う。実際に「ルレタビーユ1」を現在流通する「黄色い部屋」と比較するとその違いは直ぐに判る。
2020年11月18日
魔法使いは完全犯罪の夢を見るか!<東川篤哉>
2012年の作品集で2015年に文庫化された。刑事・小山田は美人の上司の警部・椿木の元で働いている。事件現場にゆくと変な美少女がいて家政婦だったり売子だったりする。 それが魔法使いだが気まぐれで、小山田はここでも振り回される事になる。不可能犯罪と不可解犯罪だが捜査側も不可解な状況だ。
2020年11月18日
刑事弁護士<島田一男>
1960年頃の作品と作品集を1989年に文庫で再編集復刊された。刑事事件が専門の南郷次郎弁護士が主人公で、助手や知り合いの刑事らが登場して物語が進行する。 複数あるシリーズ長編自体が本格推理からアクション・スリラーまで幅が広いが、短編でもその広さが現れている。
2020年11月18日
心中くずし<多岐川恭>
1992年の作品で1994年に文庫化された。「紅屋お乱捕物秘帖」の1冊だ。江戸の荒れ寺に住む住職と虚無僧に、紅屋お乱や他の人物が常連となり訪れる設定だ。お乱は女向けの 小間物屋の主であり女の岡っ引きだ。このメンバーが中心で事件の解決を行う。グループでの物語進行となる。
2020年11月18日
クロフツ単行本未収録作品集<クロフツ>
2020年に翻訳して出版された。少年探偵・ロビンが主人公の短編2作と、犯罪実話2作に、「樽」の著者序文、を掲載した。全ての長編が翻訳された作者だが、短編には 未紹介短編はまだ残っていると解説されている。
2020年11月24日
平戸から来た男<西村京太郎>
2018年の作品で、2020年に文庫化された。巻末の作品リストによると614作目の本だと言う、そのほとんどが十津川警部が登場するシリーズのようであり、最長のシリーズだ。 平戸のトラベルミステリーかと思えば違い、隠れ切支丹信仰と、世界遺産認定に関わる、歴史を中心にした社会派・歴史ミステリーとなっている。
2020年11月24日
にぎやかな落葉たち<辻真先>
2015年の作品で、2017年に文庫化された。嵐で閉ざされた介護施設の中で起きる不可能犯罪を描く。場所・時代・人物等がそれぞれ特殊な状況であり、それが組み合わさった、 その状況でのみ成立する犯罪だ。背後に流れる時代とその経過が作者な羅ではの世界に合っている。
2020年11月24日
若さま侍捕物手帖17人魚鬼<城昌幸>
2020年に復刊されて出版された長編だ。若さま侍シリーズの長編には伝奇時代小説の雰囲気が濃いものが多いが、本作も背景に人魚がいる島とそれ使った永遠の美を得る事がある、 それを狙う複数のグループと周囲の争いに若さまが関わり活躍する。若さまは剣客と探偵との双方で活躍する。
2020年11月24日
黒魔王<高木彬光>
1959年に出版された長編が2020年に復刊された。作者の生誕100年の記念の年だ。私立探偵・大前田英策のシリーズの1作だが、やはり探偵の川島竜子と作中で結婚して、 以降の作品では夫婦探偵として活躍する事になる。正体不明の黒魔王との対決を描く、ミステリーとアクションとサスペンスが混ざった内容だ。
2020年11月30日
凍る炎<堂場瞬一>
2013年の作品で、大友鉄が主人公のシリーズの5作目だ。警察小説としては異色な題材であり、公安やテロやサイバー犯罪が深く絡み、シリーズの他とは異なる。 先端研究施設での犯罪に異色の研究者や留学生グループが絡み、警察の理解を超えている。捜査陣は対応に困る展開となった。
2020年11月30日
紅独楽銀平捕物帳<大林清>
1950-1957年の作品を、20209年に再編集して復刊された。時代小説では有名な作者の捕物帳だ。侍くずれの曲独楽師が事件を解決するシリーズだ。 典型的な捕物帳形式で構成されておるが、謎の設定と解決については面白さ優先であり、ミステリ的な謎解きとはやや異なる。
2020年11月30日
五色の殺人者<千田理緒>
2020年の作品で、鮎川哲也賞受賞作だ。介護施設で発生した殺人事件を警察が捜査するが、作品では若い看護師が調べてその視点から描かれる。 探偵役は平凡で、目撃者は介護老人であるが、食い違う目撃証言が多過ぎた。後半は話の展開が急に速くなり、一気読みモードになる。
2020年11月30日
鬼首村の殺人<篠田秀幸>
2003年の作品だ。探偵・弥生原公彦と作家・築島龍一のシリーズの1作だ。題名どうりに横溝正史の「悪魔の手毬唄」のオマージュという。 一方では裏背景には「下山事件の謎」が流れてこちらは松本清張作とも絡んでいる。
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2020/11に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。