推理小説読書日記(2020/08)
2020年08月02日
幽霊の殺人<辻真先>
1992年に文庫化された作品だ。作者によれば劇場用の戯曲として書いた、ミステリ舞台劇であり、それを戯曲形式のミステリー小説にして書いたと言う。作者はシナリオライター でもあるが、戯曲の小説化は3作だと言う。俳優達が芸名をそのまま、登場人物名で登場する演劇で、しかも死者が幽霊として登場する。
2020年08月02日
宗谷本線殺人事件<西村京太郎>
1989年の作品で、1993年に文庫化された。十津川警部が登場するトラベルミステリーの1作だ。その中で「XX本線殺人事件」シリーズが書かれたがその第1作だ。 北海道の北の宗谷本線でライター・田島が遭遇した事件が発端になり、その後に東京で起きた事件とまとめて十津川が解決する。
2020年08月02日
消人屋敷の殺人<深木章子>
2017年の作品で2020年に文庫化された。時間軸を長く、あるいは複雑に取ったトリックが満載された作品だ。過去から人が消えていると言われる孤立した場所にある屋敷が舞台だ。 登場人物も定かでなく、視点も同様だ。読者に何も指針になるものは無い。
2020年08月02日
ミステリー作家は二度死ぬ<小泉喜美子>
1972-1984年の作品を再編集して2020年の復刊した作品集だ。連作ではなくて単独の短篇を集めている。内容も多岐でパロディ風が全般に流れている。都会ミステリとも 作者だが、ジャンルに縛れずに自由にストーリーを展開している。
2020年08月08日
垂れ込み<堂場瞬一>
2020年の作品で文庫オリジナルだ。警視庁追跡捜査係のシリーズの9作目で西川と沖田を中心にメンバーが登場する。15年前の事件の情報を持つという人物から垂れ込みがあり、 接触しようとするが、何故か会おうとすると現れない。その内に垂れ込み人物らしき男が死体で発見されて一気に現在の事件に発展する。西川・沖田らメンバー個人の問題も 抱えて進行する。
2020年08月08日
完本人形佐七捕物帳二<横溝正史>
2020年に、人形佐七の登場する全作品の復刊と全集化が目指されている。その2巻目で昭和14年から昭和16年の短篇が19作収録されている。本集の後半から元々の初出は人形佐七 物で無い作品を、単行本出版時に人形佐七登場作に書き換えた作品が登場する。最近になりその初出作品が単行本化出版されたので比較が可能だ。
2020年08月08日
終列車<森村誠一>
1988年の作品で、1991年に文庫化された。男女4人がバラバラに新宿から信州に向かい、ゆきずりの2組の男女が誕生する。それぞれの事情を隠しながら展開する。1組は山で 転々と移りながら暮らす。東京に戻った1組の女が殺害されて、警察が捜査を始めると、男も驚き調べ始める。複数の事件が浮かび捜査すると関連性が浮上した。
2020年08月08日
たかが殺人じゃないか<辻真先>
2020年の作品で、副題が「昭和24年の推理小説」だ。戦争が終わり進駐軍の指示で時代が一気に変わった時期だ。突然に始まった高校と男女共学の中で、主人公の高校生が 学校生活で事件に遭遇する。時代を反映した特異な時期の青春小説だが一方では不可能犯罪が連続して起きる本格ミステリだ。登場人物は時代を反映した人ばかりだった。
2020年08月14日
水底は京の朝<岩下悠子>
2017年の作品で、5話からなる連作長編だ。京都の撮影所を舞台に新人女性監督と脚本家の絡みが中心となりドラマの企画から撮影までを描いて行く。俳優やベテラン脚本家や ドラマ関係者を加えて進行する。その中で幾つかな謎が起こる。女性監督の視点から語られるが、別の視点も登場する。京の四季の謎、時代の謎、登場人物が持つ謎が交錯する。
2020年08月14日
道然寺さんの双子探偵<岡崎琢磨>
2016年の連作集だ。お寺と若い和尚と父の和尚とその家族の生活を描き、そこでの事件を描く。最初は双子置き去り事件であり、それが双子探偵となるが、その関連が1話と 最終4話となる。日常の謎的だが、しれ以上の事件性にも近い謎が取りあげられている。
2020年08月14日
鮎川哲也探偵小説選2<鮎川哲也>
1955-191961年に発表されたこの作者の少年向けの本格探偵小説を2冊にまとめた1冊目だ。中編の冷凍人間と透明人間に、連作短篇の鳥羽ひろし君の推理ノートシリーズの 12作と、それ以外の3作を収録した。ただし次の「3」で冷凍人間に連載の1月分の収録抜けがあったとして追加された、事情の説明を読んだ上で本巻を読んだが抜けに気づか なかった。
2020年08月14日
あてどなき脱出<土英雄>
2012年に中編1作と短篇4作を集めて出版された。中編は未発表作のようだ。作者・土英雄は1947年にデビューしたが教授の仕事で、作品は途絶えていた。60年振りに発表作の 短篇と合わせて個人作品集を出版した。作風は人間心理をテーマとして変格推理作品であり、本職の医学知識が関わる作品もある。
2020年08月20日
定本 久生十蘭全集10<久生十蘭>
「定本久生十蘭全集」は9巻で編年体編集の小説は終了して、10巻は「随筆ほか」(140ページ)、放送台本(120ページ)、初期作品(190ページ)、日記(220ページ) の構成となる。資料性は高いと思われるが、小説読者的には読みたいのは「初期作品」ぐらいかなと思える。
2020年08月20日
若さま侍捕物手帖14 まんじ笠<城昌幸>
2020年に再編集復刊された全集的なシリーズの14巻だ。短篇9作と、中編「だんまり闇」「まんじ笠」を収録する。短篇は若さま侍シリーズの定番的な、半安楽椅子探偵スタイル のホームズ談の捕物帳版だ。長編は異なるスタイルの伝奇小説だが、中編は多様化した内容となる、「まんじ笠」は若さまの目線で進行するスタイルで短篇に近いタイプだが内容は 濃い面白い作品だ。
2020年08月20日
21世紀本格<>
2001年に出版されたオリジナル・アンソロジーだ。編者であり、作者としても参加している島田荘司が21世紀の本格ミステリについて語った執筆依頼に応じた7名の作家が 書いた中編が集められている。科学・情報・脳科学を扱う作品が目立つが全てではない。架空設定・未来設定が多いのはテーマ故だろう。
2020年08月20日
中途半端な密室<東川篤哉>
2012年に出版された短篇集だが、収録作は1996-2003年の作品で多くは作者のアマチュア時代の作品だ。当時は公募のミステリ短篇のアンソロジーが編者・鮎川哲也で編まれていた 時代であり、そこから複数の作家がデビューした。鮎川の死後もしばらく発行されており、そのころのこの作者は常連投稿者だった。
2020年08月26日
人外境の殺人<早見江堂>
2009年の作品だ。三部作の最終作であり、部分的には前の2作を読んでいた方が望ましい部分もあるようだ。閉ざされた館に集まったミステリ研部員らがミステリ劇を開催すると 殺人事件が起きた。ゲストの探偵が捜査を開始する。さらに事件が起きて行き、クローズサークル内で事件と捜査が行われて行く。
2020年08月26日
おんな三十六景<南原幹雄>
1997年の連作集で、「付き馬屋おえんシリーズ」の6作目だ。吉原と付き馬屋が扱う商売を描く時代犯罪小説だ。依頼を受けて、取立を行う方法を描くが捕物帳や時代ミステリ 色は希薄であり、最後は斬り合いの時代小説だ。
2020年08月26日
猟死の果て<西澤保彦>
1998年の作品で、2000年に文庫化された。女子高生が殺害されて、去川警部補や城田警視ら警察が捜査を始める。組織捜査に馴染めない刑事と幹部が意見対立した。続いて殺人事件 が起きるが、捜査中に刑事が襲われる事件が起きたが容疑者が意見対立の刑事だった。異質の事件を追う捜査陣に異様で意外な展開が起きて行く。
2020年08月26日
紀勢本線殺人事件<西村京太郎>
1991年の作品で1994年に文庫化された。十津川警部とそのチームが活躍するトラベルミステリーのシリーズであり、本線シリーズの2作目だ。東京で見つかった被害者と似た外観に 死体が新宮で見つかり所轄の中村警部らが捜査すると、警視庁の十津川と亀井刑事が訪れて、合同捜査の形になる。続いて、串本と田辺でも事件が起きて行く。
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2020/08に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。