推理小説読書日記(2020/07)
2020年07月03日
安曇野殺人事件<辻真先>
1992年の作品だ。主人公が会社から長期休暇を出されて信州に道祖神を調べに旅行に行く、そこで女性と知り合い過ごした。そこで殺人事件と遭遇し焼死した名前が過ごしていた 女性の名だった、だが別人の筈だった。見立て、足跡などのトリックを盛り込む仕掛けの大きいミステリが展開される。
2020年07月03日
東京セブンローズ<井上ひさし>
1999年の作品だが、雑誌に長期(15年)連載されたと紹介されている。第二次世界大戦最後の年の4月からはじまり終戦後になる翌年4月で終わる日記でほぼ構成される。プライド は高いが世間知らずとも言える東京の団扇屋主人が主人公でその日記だ。終戦日を含めて度々警察に捕らわれて留置されるので、日記も途切れ、まさますニュースから離れてゆく。 ただ個人的に部分的に詳しい情報に接する事になり事件に巻き込まれる、または事件を起こす。
2020年07月03日
クールキャンデ−<若竹七海>
2000年の作品で短めの長編だ。少女を主人公にした青春小説でありサスペンス小説だ。ハードボイルドスタイルでもあり、犯罪小説でもある。落ち・どんどん返しのある サスペンスが無難な紹介だろう。主人公のキャラクターや性格・思いこみが伏線となり物語が展開する。
2020年07月03日
御城の事件(西日本篇)<>
2020年のオリジナルのアンソロジーだ。時代ミステリのアンソロジーのシリーズで、御城の事件をテーマに「東日本」「西日本」の2冊が組まれた。西日本篇は墨俣城・小谷城・ 明石城・若狭小浜の雲浜城・飛騨の帰雲城を舞台にする5作だ。時代小説とミステリ特に奇想かつ本格ミステリとの相性は良さそうだ。
2020年07月09日
海妖丸事件<岡田秀文>
2015年の作品で2018年に文庫化された。明治時代の時代小説ミステリで、月輪龍太郎のホームズ役と杉山潤之助のワトソン役のシリーズ3作目だ。豪華客船・海妖丸が横浜から いくつかの港を経由して上海に着く航海上で殺人事件が起きて捜査する。時間の流れが明治風での本格ミステリが展開して行く。
2020年07月09日
江戸巌窟王<島田一男>
1983年の作品で、文庫で復刊されている。江戸時代の九州は唐津藩で、唐津水軍は海上貿易を狙う藩に狙われて全滅に近い状態になる。党主の息子が生き残り、やはり生き残った 家臣と仲間らと逃げ伸びて成長した。数年後に復讐と残された一族を助ける為に江戸を目指して旅立って行く。
2020年07月09日
ダーク・リバー<二上剛>
2016年の作品で、文庫化された。大阪府警を舞台にした警察小説だが警察内部の腐敗もテーマとなっている。主人公の葛城みゆきは大阪府警黒川署暴力犯班長であり、所轄刑事の 生活が描かれて、その中で刑事の犯罪が浮かぶがそれが拡がり他の犯罪も浮かんで来る。暴力犯班の仕事がらも犯罪者相手だが、警官が犯罪を行う事で、次第に区別が判らなく なる。主人公も同じだ
2020年07月09日
我が屍に化粧する<倉田啓明>
2016年に単行本化された作品集だが、発表は大正2年から昭和6年までだ、本格では勿論無くて、奇想と怪奇と幻想が表に出た作品が並ぶ。それはトリックなのかも知れないが 奇想を通り過ぎてSF的とも言える。昭和初期の雰囲気が強いが大正の作品も多いことは、そこまで時代が古い事は意外でもある。
2020年07月15日
特命捜査官 警視庁捜査二課・郷間彩香<梶永正史>
2014年の作品の、文庫版だ。警部補・郷間彩香は亡き父も刑事で、叔父さんの刑事部長とは親しい。この二人が誘拐立て籠もり事件に巻き込まれて、何故か犯人の指名で 彩香が現場で指揮を取ることになる。奇妙で狙いが判らない事件が、異様に展開して行く。
2020年07月15日
脅迫者<堂場瞬一>
2018年の作品だ。警視庁追跡捜査係の西川と沖田らが中心で、主に過去の未解決事件を捜査する。正確には正式に捜査するかどうかを調べる事案もある。20年前の自殺で処理 された事件に疑いを持った沖田が調べ始め、西川は事件性はないと思いながらも調べ始める。警察内部でも反発も強い事案だった。
2020年07月15日
定本 久生十蘭全集9<久生十蘭>
1954-1957年に発表された作品を発表順に再編集した全集で、2011年に出版された。1957年は作者の没年であり最終2作は中絶した作品だ。長編は「真説・鉄仮面」「あなたも私も」 「われらの仲間」「肌色の月」だ。世界短篇小説コンクール受賞作「母子像」をも含む。漸くに戦後の活動が軌道に乗り始めた頃であり、病死での活動中絶となった。全集は2巻と 別巻がまだあるが小説は最後の巻となる。
2020年07月15日
若さま侍捕物手帖13 まぼろし力弥<城昌幸>
1954年の作品を再編集して、2020年に出版された全集の13巻目だ。短篇10作と中編「まぼろし力弥」が収録されている。短篇では若さま侍の安楽椅子探偵の基本構成が減ってきて、 外で何かに出会う構成や、調べる為に出かける事が多くなって来ている。事件の多様性も同時に拡がっている。
2020年07月21日
飛鳥高探偵小説選1<飛鳥高>
1947-1958年に書かれた長編・中編・短篇を集めた作品集だ。単行本初収録作品も多い。長編「疑惑の夜」は初の復刊であり、中編「火の山」と「雲と屍」は単行本初収録だ。 飛鳥高はアンソロジーに採られる事は多いが一部に限られる、長編も「細い赤い糸」以外は全く復刊されて居なかったので漸くの感がある。
2020年07月21日
棟居刑事の「人間の海」<森村誠一>
2000年の作品の文庫化だ。森村作品のテーマにミッシングリンクがあり、異なる事件・出来事の繋がりが捜査で浮かんでくる事がある。警視庁刑事らが事件を個々に追う中で 他の事件と繋がる。併行して個々の事件の関係者が色々な事情で事件を調べる事が描かれる。その組み合わせで話しが進む。そして登場人物の意外な組み合わせも特徴だ、高齢者 と少女・若者・若い女性も多い組み合わせとなる。
2020年07月21日
銀の宝珠<二上洋一>
2020年の死後出版された短篇集だ。探偵小説や少年小説の研究家で小説やシュートショートの実作もあるが、本集は童話の短篇集だ。死後の蔵書整理で見つかった原稿が少部数出版 された。解説で作者のプロフィールが紹介されて上記の研究家活動や小説の紹介もされている。
2020年07月21日
ヴェネツィア便り<北村薫>
2008-2017年に雑誌居発表した短篇・掌篇を集めて2017に刊行された短篇集だ。「日常の謎」ミステリ作家としての著作が多い作者だが、デビュー当時から「時と人」がテーマの 作品もあった。本集はミステリでは無いが、書物を中心にした人とその歴史から始まる話しを中心に、ちょっとした日常や過去に出会った出来事に思いを拡げて行く。
2020年07月27日
銀翼の死角<麻見和史>
2020年の作品だ。警視庁文書捜査官シリーズの7作目で、しばらく警察内部の勢力争いに舞い込まれていたが、今回は外部事件に集中する。ただし飛行機ハイジャック事件の 犯人との交渉役のサポート薬だった、犯人が奇妙なクイズでゲームを仕掛けたからだ。空港に停まった飛行機内に籠もる犯人の狙いが判らないままで進行して行く。
2020年07月27日
上高地の切り裂きジャック<島田荘司>
2003年の作品集だ、書き下ろし「上高地の切り裂きジャック」と復刊「山手の幽霊」の2中編からなる。横浜時代の御手洗と石岡が持ち込まれた奇怪な謎を、あっさり的に 見抜くというシリーズの代表的なスタイルだ。名探偵が登場するだけで直ぐに謎が解ける構成は、中編ではぴったり合うスタイルに思える。
2020年07月27日
死の花が咲く家<仁木悦子>
2020年に再編集出版された作品集で、1961-1967年の作品が収録されている。復刊率の高い作者だが、単行本初収録の短篇「隠された手紙」とショートショート4作が収録され ているのが珍しい。自薦傑作集「石段の家」から4作採られておりそれが中心で、多彩な内容だと言える。
2020年07月27日
みちのく殺人行<麗羅>
1982年の作品で1990年に文庫化された。主人公・中根は殺人容疑で有罪になり、20年後に仮釈放された。20年間で母や関係者の死や動きが起きていたが、逮捕した刑事との再会等で 事件を調べ始めた。小説は20年前と現在の双方を描きながら、主人公らが調べると秘密が現れて来た。母の故郷・白石へと謎を追って行く。
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2020/07に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。