推理小説読書日記(2020/06)
2020年06月03日
作家の人々<倉知淳>
2019年の作品だ。近未来の出版界と作家を描いた、ギャグ的な連作集の小説だ。世相パロディ色もある。売り込み・印税・持ち込み原稿・締め切り・ライトノベル・文学賞と選考・ 遺作がテーマだ。近未来には小説と作家の世界が変わるという架空世界をギャクで描いた。
2020年06月03日
暗い穴<堂場瞬一
2015年の作品で、文庫オリジナル長編だ。警視庁追跡捜査係の西川と沖田コンビと所属係のメンバーのシリーズ6作目だ。別の事件容疑者が都のはずれの檜原村に死体を埋めた、 自供をして山奥の斜面を刑事らが苦労して掘ると、複数の死体が見つかる。事件として追うとまたもや・・・という穴掘り捜査だ。
2020年06月03日
深海の寓話<森村誠一>
2017年の作品が、2020年に文庫版で復刊された。400作を越える著作数の作者も刊行ペースは落ちている。オムニバス形式の長編であり、元刑事らリタイアした集団が暇をもてあまし、 正義の実現を目指して巨悪に立ち向かう事にする。森村作品に職人集団が悪に対抗する作品群があるが、それの1作品だろう。棟居刑事もゲスト的に登場する。
2020年06月03日
新・本格推理05<>
2005年のオリジナルの公募アンソロジーだ。常連応募者も多い。後に作家としてデビューした人も複数入っている、高橋城太郎>高橋由太、青木知己だ。藤原宰太郎のペンネームの 藤原遊子の名もある。ただし当時は判らない。原稿用紙100枚までなので、かなり大判の作品集だ。
2020年06月09日
アウトサイダー<深町秋生>
2013年の文庫書き下ろし作で、八神瑛子が主人公の3作目だ。所轄の組織犯罪対策課刑事の主人公が夫の死亡事件の真相を一人で追う。情報入手先は暴力団や裏社会であり、 危険を無視して近づき、同時に他の事件に巻き込まれて行く。警察内外に協力者やネタ元がいるが、同時に敵も多数存在する。その微妙なバランスの中で事件が進行する。
2020年06月09日
名探偵は嘘をつかない<阿津川辰海>
2017年の作品で、この作者のデビュー作だ。架空設定の背景での本格ミステリは最近増えたミステリのスタイルだが、それを複雑にした内容であり、純粋な本格ミステリや 謎解きとして読むには架空の事が多すぎると感じた。SF小説とミステリ小説が混在したと思う。特に特別裁判が開始するまでは読むのが辛い内容だった。
2020年06月09日
汝が崇めたるを焼け<阿井渉介>
1995年の作品で、ノベルスだがかなり分厚い長編だ。主人公は警察官だが休暇を取り、興信所でアルバイトで暴力団長の依頼を調べるという内容ではじまる。次第に背景が明らかに なってゆき奇妙な設定が明かされるがそれでも変だ。興信所員は元刑事があつまり、事件は主人公自身の事情と係わりがあった。調査というなの捜査?の中で色々な人物、特に女性と会い 深みにはまって行く事になる。ハードボイルド風のサスペンスだ。
2020年06月09日
むいぐるみ警部の帰還<西澤保彦>
2013年の連作作品集で、2015年に文庫化された。キャリアで美男子で名探偵の音無警部と他の個性的な3刑事の捜査を描く連作集だ。名探偵が登場するから謎もトリッキーな 面が多い。なぜかめいぐるみを見ると反応する性格設定であり、それがキャラクターなのか、謎に絡むかは使い道がある。
2020年06月15日
ハルピンお龍行状記<城崎龍子>
1952年と1956年頃の雑誌発表作を集めて単行本として2020年に作品集にした。潮寒二が城崎龍子名義で書いた10作と、潮寒二名義の4作だ。城崎龍子名義は連作であり長編とも 言える。久山秀子の「隼お秀」的な女掏摸と、追う刑事とが、事件に関わって行く。お色気小説と、掏摸小説と、犯罪小説とユーモア小説が混ざる痛快小説だ。
2020年06月15日
代官山コールドケース<佐々木譲>
2013年の作品で、2015年に文庫版等で復刊された。刑事・水戸部は17年前の事件の再捜査を秘密にかつ急ぎで依頼されて、女性刑事・朝香と調べ、科捜研員と別事件の担当刑事と の協力で調べて行く。現在の2つの事件と、17年前の事件とその容疑者?の死の事件が絡むのか、短じかい時間で真相に近づいて行く。
2020年06月15日
昨日がなければ明日もない<宮部みゆき>
2018年の中編と短篇の計3作からなる作品集だ。探偵事務所を始めた杉村三郎の登場作品だ、母親の依頼で娘夫婦の調査と連絡が取れない娘の調査をする杉村は依頼を終えた 筈だが・・という「絶対零度」。大家の竹中から頼まれてその親戚の結婚式披露宴に行った杉村は2つの中止になった結婚式に出会う・・「華燭」。家族と周囲に迷惑を掛ける 女性に無理な依頼を受ける「昨日がなければ明日もない」。
2020年06月15日
「明智小五郎回顧談」の謎<平山雄一>
2018年に書かれた小説風解説書だ。同一作者のパロディ小説「明智小五郎回顧談」に登場する人物の紹介だ。元ネタが小説であり、そこに実在人物と共に多数の小説等に 登場する人物を加えて書かれている。登場人物が誰か何か判らない事情があり、事典風の解説書が必要だった。故に「明智小五郎回顧談」を二度読んでから読んでくださいと 書かれているが、読まずにこれを読んだ、それでは意味不明の部分は多い。
2020年06月21日
殺愛 巡査長・倉田沙月<六道慧>
2019年に出版された。凶悪犯対策課刑事・倉田沙月はDV事件捜査で被害者になると共に犯人を逃がし黒崎警視正と共に責任を取られた。5年後に所轄少年課に移動していた倉田は 類似性が感じられる事件に出会い、捜査に関わるが自分と周囲がターゲットかとも感じた。
2020年06月21日
若さま侍捕物手帖12 神かくし<城昌幸>
1953年の作品を再編集して、2020年に出版された全集の12巻目だ。短篇10作と中編「神かくし」「浮世やみ夜」が収録されている。短篇では若さま侍の安楽椅子探偵が基本構成だが 、テーマや手法は多彩だ。この本では機械トリックや幽霊トリックの様な派手と言うか、変化技が増えて来た。
2020年06月21日
チャンバラもどき<都筑道夫>
1984年の短篇集だ。小説の主人公に憧れてなりきるという「もどき」シリーズの3作目で、時代小説の主人公に若旦那がなりきってしまう。「鞍馬天狗」「座頭市」「丹下左膳」 「紋次郎」「眠狂四郎」「梅安」のパロディだが、それ以外に裏設定や江戸と明治の東京事情や遊郭事情も見所だ。
2020年06月21日
角田喜久雄探偵小説選<角田喜久雄>
1926-1962年の作品を再編集して、2009年に出版された作品集だ。9作は「明石良輔の事件簿」と題されて、登場人物に共通性があるが、小説スタイルやキャラクターは共通性は弱い。 そもそも共通主人公を使うジャンルかどうかも難しい。代表作の「笛吹けば人が死ぬ」も1作だ。加えてデビュー当時の短篇を加えた。
2020年06月27日
黒龍荘の惨劇<岡田秀文>
2014年の作品を2017年に文庫化された。明治時代を舞台に探偵・月輪とワトソン役の杉山が登場する2作目だ。伊藤博文や山県有朋らも登場し、明治時代ならではの警察や背景で 事件が起きて、本格ミステリが展開されて行く。その時代背景故かそれでも、どうか位の大胆な展開が進んで行く。
2020年06月27日
新・二都物語<芦辺拓>
2018年の作品だ。長期新聞連載小説と言う、主人公2人の少年時代から死ぬまで(?)の長期を描く大河小説だ。東京と大阪の二人で、交流・出会いは僅かで、併行して描かれる。 関東大震災や第二次世界大戦終戦を大きな時代の変わり目として、それを含む波乱の冒険小説的な展開が続いて描かれる。
2020年06月27日
報い<堂場瞬一>
2017年の作品だ。警視庁追跡捜査係の西川と沖田らを描く7作目だ。過去の事件の再捜査担当という本来は成功が少ない筈の係を描く故に、次第に警察捜査からは外れて行く感がある。 過去の捜査が失敗した事件を見直す面があり、敵は犯罪者か過去の捜査員かが微妙になり、捜査の意味は微妙になって行く。
2020年06月27日
虚構の空路<森村誠一>
1970年の作品で度々復刊されている。作者のミステリ作家としてのデビュー当時の作品で本格ミステリだ。ホテルや空港や航空機を巡るアリバイ崩しが描かれる。空路は交通機関でも かなり事情が異なるようで、捜査する刑事にも盲点ばかりになる。スケールは大きく、アリバイの仕組みは微妙な仕掛けで行われる。
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2020/06に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。