推理小説読書日記(2020/03)
2020年03月05日
青い枯葉<黒岩重吾>
1960-1962年の作品を、2019年に再編集で出版された。初期の作品が選ばれており、ミステリ味は濃いが、パズラーではなく人間関係や社会や風俗とその中の人の絡みを描いている。 背景と舞台は大阪でありそこの人を描くが、会話自体の方言味は抑えられている。
2020年03月05日
恐山「黄金の国」殺人事件<草野唯雄>
1991年の作品で、1994年の文庫版を読んだ。青森県下北半島とむつ湾と青森を舞台に金鉱脈の謎と、殺人事件の謎を警視庁嘱託・尾高が捜査する、歴史と旅情サスペンスだ。 犯人の計画と隠蔽工作が深く行われており、その謎のミステリ味も強い。捜査過程と併行した新たな事件はサスペンス色を強めている。
2020年03月05日
呪縛の家<高木彬光>
1950年の作品で、1979年の文庫版を読んだ。作者の第3長編で、神津恭介の登場する第2長編だ。戦争と新興宗教を背景にした、計画連続殺人・見立て殺人・密室殺人が複雑に 絡む事件は、複数回の読者への挑戦が挟まれている。その謎が解かれた後も、まだ問題が残る構成であり複数どんでん返し構成とも言える。
2020年03月05日
もぐら<矢月秀作>
1998年の作品で、2012年に文庫復刊された。警視庁組織犯罪部・影野が辞めて闇社会で「もぐら」の名で闇に事件を請け負って解決するが、その手段は微妙だった。 そこに発生した事件は、裏の裏が仕組まれて狙いが判らない。主人公は解決したと思ったが、その後に全く予想外の展開を見せた。シリーズ第1話と思えぬ終わり方だ。
2020年03月11日
見えざる貌<堂場瞬一>
2014年の作品だ。警視庁千代田署の若手刑事・一之瀬拓真が主人公の警察小説シリーズの2作目だ。新人刑事の2作目の仕事は通り魔的連続事件の警護であり、その捜査となった。 複数の所轄をまたぶジョギングコースでの事件で応援の形での警護と事件であり、通り魔事件の性格上で警察の対応は微妙に揺れる。
2020年03月11日
若さま侍捕物手帖8 かいやぐら<城昌幸>
1951-1952年の作品を2019年に再編集して作品集だ、復刊と初単行本作が混ざる、13作収録。中編「心中くずれ」は若さまが夜に歩いていると「殺されに行く」という女に会う のが発端だ、そこから心中騒ぎの死体に出会い殺されたと見抜く、そしていつもの岡っ引き・小吉が登場しての捜査へと進む。
2020年03月11日
それまでの明日<原寮>
名前の漢字は外字で異なる。20186年の作品だ。探偵・沢崎シリーズの長編の5作目だ。ある数日の探偵の生活を描く、そこに事務所の移転問題、女性の身辺調査依頼があった。 依頼者に連絡が取れない状態で探偵自身が事件に巻こまれた。探偵にとってはどれも厄介事だが、警察が絡む事や暴力団が絡む事では危険にも遇いそうだった。ミステリでは 無いのだろう、本にもミステリとは書かれていない。
2020年03月11日
定本久生十蘭全集7<久生十蘭>
1949年-1950年の作品を再編集して、2010年に復刊された全集の7巻。長編「黄昏日記」、「氷の園」、「みんな愛したら」=「ノア」と15作の短編を発表順に掲載した。 1948年に戦後のGHQの検閲は終わったが戦争とその時代の人間を振り返る内容が多く書かれている。雑誌初出のまま単行本になっていなかった作品が多く、単行本や全集で 省かれていた作品が多数集まっている。
2020年03月17日
死刑台の舞踏<森村誠一>
2005年の作品で2014年の文庫復刊版だ。子供時代にいじめを受けた子が父の死後に刑事になった。その虐めた2人が、別々の場所で死体で見つかり、警視庁と神奈川県警は それぞれに捜査をおこなっい、刑事になった男も複雑な気持ちで係わった。一方偶然に知り合った男女も事件に関係して行くことになった。他方面か複数の事件を描く。
2020年03月17日
神とさざなみの密室<市川憂人>
2019年の作品だ。少数意見を主張して現政権打倒を主張する団体の広告塔の女性は拉致されて気がつくと密室に代表の死体と閉じ込められていた。隣の部屋には正反対の右翼 団体の男性が閉じ込められてた。意見が反対の二人は何故かスマホが残されていたが状況が理解出来ていなかった。目的不明の自体を二人は対応出来るのか。
2020年03月17日
短篇ミステリの二百年1<>
2019年に出版されたアンソロジーだ。江戸川乱歩選の世界短篇傑作集5冊への言及があるので似たものを期待したが違った。編者の長い評論はミステリーから外れがちであり 、収録された短篇12作の中にミステリが無いという、題名と異なる裏切り内容だった。前途多難としか言えない。
2020年03月17日
ときめのとき殺されて<阿井渉介>
2003年の作品だ。女性タレントが主人公で不審なメールを受け取る所から始まる旅情ミステリだが、徳川家康の肖像画とその霊??が関連してのミステリで展開する。 女性2人のグルメ・リポート番組取材に事件がつきまとう。
2020年03月23日
アウトクラッシュ<深町秋生>
2012年の作品で、組織犯罪対策課刑事・八神瑛子シリーズの2作目だ。八神は自らの夫殺害事件の情報を得るために暴力団や情報屋に接近した。そこでは逃亡者を匿い、暗殺者の 情報を求めていて、八神と情報の取引が行われた。だが最強最悪の暗殺者の登場で、八神も巻き込まれたが、意外な展開に進んだ。
2020年03月23日
ミステリ・オールスターズ<>
2010年のオリジナル・アンソロジーで、2014年の文庫版だ。本格ミステリ作家クラブの面々が30枚の超短編で、競作したオリジナルのアンソロジーだ。いろいろな切り口で 切れ味を求めた短篇を書いた、内容のバラツキは当然有るが、結果的に1冊の本としての密度は異様に高くなっている。
2020年03月23日
怪盗の後継者<久住四季>
2020年の作品だ。秘かに集められた訳ありの人物達は、それぞれが特技を持っていた。普通の平凡な大学生がいきなり誘われて仲間に入る事になり、そこから特技に目覚めて行く。 警戒厳重で不可能に見えるミッションを半倒叙方式で描いて行く、表の犯罪計画と実施の裏に隠された真の犯罪計画な何か、その結果はどうなったか?。
2020年03月23日
蜂に魅かれた容疑者<大倉崇裕>
2014年の作品で、2017年の文庫版だ。警視庁総務課いきもの係シリーズの2冊目で初長編だ。昆虫という微妙ないきものであり、スズメ蜂を使った犯罪を描いた。長編だから 複数の事件が複数の場所で発生した、そこへ蜂絡みの事件から須藤・薄コンビが捜査しらべ始めて、全体にも絡んで行く。
2020年03月29日
殺さずにはいられない<小泉喜美子>
1986年の作品集を基にして、2017年に再編集復刊した作品集だ。独立した短篇を集めた短篇集に書き下ろしエッセイを加えたのが初出本であり、2017年にこれに単行本初出になる ショートショート6作を加えた復刊した。連作でな無い短篇集が多いこの作者らしい、多彩な内容の作品集だ。
2020年03月29日
検証捜査<堂場瞬一>
2013年の作品だ。作者の勢力的な文庫書き下ろしシリーズの1つの「検証捜査」シリーズの第1作だ。全国の警察から神奈川県警に集められた刑事らが冤罪を疑われる事件の 再捜査を命じられる。色々な圧力の中で、捜査は意外な展開を見せた。本作で集まった刑事らはその後に、地元に戻りそれ第2作以降の事件の捜査を行う。そしてサブ的に 他の人物も登場する。
2020年03月29日
高層の死角<森村誠一>
1967年の作品で、度々に復刊されている。作者の江戸川乱歩賞受賞作で初期作品だ。テーマや舞台に社会派味はあるが、本作は本格ミステリである、社会派としての作風の比重が高くなる のは少し後だ。密室と鍵のアリバイ、ダイイング・メッセージ、航空機を中止としたアリバイ崩し、ホテルのチェックアウトのアリバイが連なって登場する。当時としたは目新しいトリック と舞台だと言える。
2020年03月29日
名探偵は密航中<若竹七海>
2000年の作品で、2003年に文庫復刊された。7話からなるオムニバス方式の長編だ。横浜からロンドンに向かう豪華客船で起きる出来事と事件を異なる人物の視点から描いた連作スタイルだ。 昭和5年が舞台なので情報量も交通機関も現在より制限されている。日本から殺人事件容疑者出航してしまう事から始まり、誰が探偵役かも不明のままに複数の事件が進んで行く。
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2020/03に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。