推理小説読書日記(2020/02)
2020年02月04日
滅びの掟<安萬純一>
2019年の作品だ。サブタイトルが「密室忍法帖」であり、江戸時代が舞台の時代小説で忍者小説であり、ミステリ味も強いが特異環境でとなる。伊賀忍者5人が甲賀忍者5人の殺害を 命じられるが、実は甲賀も同じ命令を受けていた。山田風太郎の忍法帖並の殺害バトルが始まるが、予想外の展開で進んで行く。
2020年02月04日
メゾン・ド・ポリス<加藤実秋>
2018年の連作集だ。新人女性所轄刑事・牧野ひよりが捜査で退職した先輩の本庁捜査1課刑事・夏目惣一郎を訪問すると、元警官の迫田や藤堂や伊達や高平が同じ家にシェアして住んでいた。 彼らは警察上部に何故か話しを通して、それ以来牧野は度々呼び出されて捜査に巻き込まれ事になってゆく。
2020年02月04日
天災は忘れる前にやってくる<鳥飼否宇>
2019年の連作集だ。ネットにあやしい噂やゴシップを配信して稼ぐ会社の社長・郷田とバイトの二人が、記事を求めて取材に駆け巡る。災害現場や、その噂がある場所をうろつくと 何故か事件も起こった。あやしげでコメディタッチの珍道中が進んで行く。
2020年02月04日
遠い唇<北村薫>
2016年の作品集で、2019年に復刊された。ページ数が多い本が多い現在だが、短い短篇7作からなる、ページ数の少ない純粋の短篇集だ。だが短くとも1作ごとが骨太のミステリだ。 葉書の暗号を解く、死んだ夫が残した謎の俳句暗号を解く、乱歩の「二銭銅貨」を読み解く、18年振りに巫弓彦が登場する、・・・多彩だ。
2020年02月10日
愚者の檻<麻見和史>
2019年の作品だ。警視庁文書解読班の鳴海理沙と矢代らを主人公にするシリーズの1作だ。もともとが捜査権限が少ない部署だったが、対抗する存在との駆け引きが加わった事で 警察小説の味が減って、内部の勢力争いの比重が高まった。本格味の強い警察小説が特徴の作者には、かなり異色作になって来た。
2020年02月10日
紅蓮館の殺人<阿津川辰海>
2019年の作品だ。山奥の家を訪ねに行くと山火事に帰り道を断たれた。同様の複数人物が館に逃げこみ、拡がる山火事のタイムリミットの追われる中で、その館と別の館での 殺人事件に関わる事になる。館に残された人物はそれぞれが正体不明で、館自体も仕掛けのある屋敷だった。
2020年02月10日
雪煙<森村誠一>
1996年の作品で、複数回文庫復刊されている本だ。牛尾刑事・棟居刑事も登場はするが、メインは国際警察の刑事・高木であり、オーストリアの高山の登山での出会いから 始まり、日本帰国後の捜査と、事件への係わりでの再会と進む。その二人の過去の事件と、現在の事件が併行して進んで行く。
2020年02月10日
Dの殺人事件、まことに恐ろしきは<歌野晶午>
2016年の作品で、2019年に文庫復刊された。江戸川乱歩の小説を下敷きにした短篇7作からなる短篇集だ。切り口は色々で多彩であるが統一感はなく、7作は多いとも思える。 平成現在の時代を背景にしており、電子・通信社会とそれ以上の先端技術を背景にしている。
2020年02月16日
不知火捕物双紙<横溝正史>
1937年の「不知火捕物双紙」と、1941年の「紫甚左捕物帳」と、1942年の「南無三甚内」は主人公の名前と設定が微妙に異なるが、同一の部分もあり同時に編集された。 横溝の捕物帳は最終は「人形佐七」に書き換えられたとの事で未完・未復刊だったが、今回単行本化された。横溝の独特の文体とストーリーテラーは楽しめる。
2020年02月16日
ノッキンオン・ロックドドア2<青崎有吾>
2019年の作品集だ。不可能犯罪専門の探偵と、不可解犯罪専門の探偵がコンビで開いた探偵事務所の連作の第2集だ。同窓生の女性警部補ともう一人が奇妙に絡んで行く。 不可能事件と不可解事件を待っている二人に、女性警部補が事件を持ち込むスタイルが主体となっている。どこか事件に餓えている。
2020年02月16日
複合捜査<堂場瞬一>
2014年の作品だ。「検証捜査」シリーズの1冊で、そこに登場した警官が脇役的に登場する。さいたま市に出来た「夜間緊急警備班」のリーダーが主人公で、自身の出世と主流部署 への復帰を目指して、新発足部署での成果を求めて強引な捜査介入を行う。スピード捜査を目指すが、部下と部署の負担は増える事になった。
2020年02月16日
わたしの本の空白は<近藤史恵>
2018年の作品だ。ほぼ全体が一人称の文章で書かれている。その多数が記憶喪失した主人公だが、他の一人称も混ざって構成される。主人公が夫と義姉と義母、そして自分の妹と 出会うが記憶を思い出せない。以前に何があったか、記憶喪失の理由は何か知りたいと望み、話しは展開して行く。
2020年02月22日
大下宇陀児探偵小説選2<大下宇陀児>
1925-1940年の作品を、再編集して2012年に復刊された。大下の戦前の作品を2冊にまとめる出版の2冊目だ。長編「鉄の舌」と8作の中短篇からなり。デビュー作の「金口の巻煙草」 や「悪女」やSFの「宇宙線の情熱」も含まれている。現在のミステリ小説から見ると違和感はあるが、解題の「当時という発表時を想定して読む」というスタンスが必要だ。
2020年02月22日
青月記<榊原姿保美>
1986年の作品集だ。「螢ヶ池」「カインの月」「奈落の戀」の中短篇からなる、デビュー作品集だ。舞踏と音楽と古典芸能の世界での、伝統と後継・世継ぎ問題とそこに 絡み人々を、従属と開放との両面から描く、それが性とか病とか血筋とかなのかは当事者視線が中心で判りにくい。
2020年02月22日
猫島ハウスの騒動<若竹七海>
2006年の作品だ。葉崎シリーズとの事だが私は始めて読んだ。架空の神奈川県葉崎市の海岸に猫島があり、その地図が掲載されておりその島と周辺での日常と非日常とが 描かれれている。非日常は全て事件であり、その中には警察が絡む盗難・猫絡み・物の破損や不審者もある。観光客や島住民が絡み大小の事件が起きて行く。
2020年02月22日
同期<今野敏>
2009年の作品の2012年の文庫版だ。警視庁捜査1課刑事・宇田川亮太から事件を描くが、そこに同期で公安部の蘇我が絡むと言うか一方的に気になる。本作は蘇我が退職し 音信なしになった頃から始まる。宇田川は気になるが一方で事件捜査にも追われ、そこでのコンビ刑事ら先輩や上司が絡み、進行する。
2020年02月28日
栗田信傑作選(上)<栗田信>
1957-1963年の作品を2019年に編集した作品集だ。作品がほとんど知られていない作者・栗田信の作品を2冊で出版した。殆どは雑誌からの初単行本化になる。長編「醗酵人間」 の復刊で知名度が上がった作者だがそれ以外の作品は読むのが困難だったので、マニアにはうれしい作品集となった。上巻は和製シャーロック・ホームズの中州砂六が登場 する作品を中心に選ばれた。
2020年02月28日
栗田信傑作選(下)<栗田信>
上巻・下巻共に森英俊の解説が詳しく、下巻には作品リストがあり貴重だ。下巻はミステリ中心の編集だとう言う。パロディや怪奇小説やSF小説や時代小説と、広いジャンルの 作品を書いているようだ。全体にサスペンス色が濃く、奇想と奇妙な味が特徴だろう。リアリズムや社会派とは縁が少ない。
2020年02月28日
アリバイ崩し承ります<大山誠一郎>
2018年の作品だが、テレビドラマ化の影響なのか2019年に(1年3月後)に文庫版復刊された。原作のこの本は、安楽椅子探偵が推理したアリバイ事件を解く、短い短篇集だ。 短篇特有の切れ味が特徴であり、しかも謎の設定とその解明というパズラー性を前面に押し出した本格ミステリだ。2つ組み合わすと長編のなる濃い謎だ。
2020年02月28日
シャーロック・ホームズの事件簿<コナン・ドイル>
1927年に出版された作品集を、1991年に翻訳出版された。ホームズが登場する第5短篇集で日本でも翻訳はあったが、本国の著作権が切れた1990/07以降に複数の新訳が出版された。 この本は深町真理子訳で、それ以降にホームズ作品全ての同一訳者での翻訳が揃っている。ホームズ物はワトソンの語りの印象だが、本作品集は多彩な視点であり、それは戸惑う。
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2020/02に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。