推理小説読書日記(2020/01)
2020年01月05日
上海殺人人形<獅子宮敏彦>
2017年の作品だ。中国を舞台にして、上海ピュアドールとして有名な踊子と記者を中心に話しが進む。上海デスドールと呼ばれる謎の殺し屋が噂になり、同時に不可能状況 での不可解な殺人事件が続いて起こった。不可能殺害事件を色々な方法で描きながら連作短篇集的に連作長編として奇妙な展開が進む。
2020年01月05日
凍結捜査<堂場瞬一>
2019年の作品だ。「検証捜査」から始まったシリーズの5作目だ。「検証捜査」で一緒に仕事した全国の刑事らが入れ替わり登場し、警視庁の神谷を中心に多数の地域で事件が 進行する。本作では北海道警の保井凛が中心となる。札幌での女性暴行事件容疑者だった男が函館で殺害され、捜査が進む中で被害女性が行方不明となった。そして東京で 第二の殺人事件が起きた。
2020年01月05日
まぼろし曲馬団の逆襲<太田忠司>
2003年の作品だ。新宿少年探偵団シリーズの7作目で、前作に登場したまぼろし曲馬団が再度新宿に現れてまたもや妖しげな興業を始めた。それ以前のシリーズで登場した 大烏博士や紅天蛾も登場し、警察側の阿部や鮫島もすっかりレギュラーだ。マッドサイエンス色がますます強くなっている。
2020年01月05日
早朝始発の殺風景<青崎有吾>
2019年の作品集だ。5作の短篇とエピローグから構成されて、弱い連作集ともなっている。日常の謎風な状況と人物の出会い・会話から始まり、会話は次第に本格ミステリや サスペンスの強い内容に変わって行く。会話等から相手やその絡む事件等を推理してゆく展開だ。
2020年01月05日
左門捕物帳・鷺十郎捕物帳<横溝正史>
2019年に単行本初収録で出版された作品集だ。「左門捕物帳」は昭和24-25年に雑誌に書かれた7作で、「鷺十郎捕物帳」は昭和15年に雑誌に書かれた5作だ。その後に 「人形佐七捕物帳」の作品として書き直された事で、単行本化はされていなかった。雑誌掲載時の挿絵も収録されており、ファンでも珍しい作品として楽しめる。
2020年01月11日
大下宇陀児探偵小説選1<大下宇陀児>
1929-1938年の長編と短篇を2012年に再編集した作品集だ。メインは長編「蛭川博士」で昭和4年の本格探偵小説味の強い作品だ。時代性が強いので、現代的な違和感は 多々有るが、それも含めて読む作品だ。短篇が3作掲載されており、いずれも犯人当ての懸賞小説だ、これも違和感は多いが時代を考えると、日本では初期だ。
2020年01月11日
遠い国のアリス<今野敏>
1989年の作品で、後に復刊された。若い漫画家女性が主人公で仕事に追われているが、休暇先で気づけば周囲が異様になっていた。色々とずれがある状況の理由を求めて行く。 そもそも青春小説とも思っていなかったが、別のジャンルだったと判って行く。隣人の博士が説明する宇宙論が登場して行く。
2020年01月11日
夜行列車<森村誠一>
1992年の作品で、繰り返し復刊された本だ。信州に旅行に行ったままで帰らない父親が信州に行く、一方では妻に離婚宣言して信州に旅に出た、二人は夜行列車で出会った。 そこに妻と別居生活中の男も加わる。神奈川で殺人事件が起きた、続いて新宿で別の殺人事件が起き所轄の牛尾刑事らが調べ、3人の男も関わる事になって行く。
2020年01月11日
大怪樹<太田忠司>
2004年の作品だ。新宿少年探偵団シリーズの全9作の、8作目だ。新宿の町に大きな木が登場してしかも成長し始めて、より以上に巨大化してゆく。新宿少年探偵団もアジトが 樹に覆われて追い出されてしまう。そしてメンバーの行動が個別というかバラバラ的になる。新宿に限られていた異常状況が、世界に拡がる可能性が生まれて、一気に状況が 変わって行く。
2020年01月11日
不可能犯罪コレクション<>
2009年の二階堂黎人が編者の不可能犯罪をテーマにしたオリジナルアンソロジーだ。参加は、太山誠一郎・岸田るり子・鏑木蓮・門前典之・石持浅海・加賀美雅之で、 密室事件を中心にした不可能犯罪を描いた。。
2020年01月17日
冷蔵庫の中の屍体<楠田匡介>
1952年の雑誌掲載された短篇が1959年に短篇集として単行本出版された。2019年に元の雑誌の連載順と題名に戻して復刊された。事実探偵小説の副題が有り、「吉川・宇野刑事シリーズ」 として刑事が地道に調べて解決してゆくスタイルの内容だ。当時の世相・風俗を同時に描いていると解説されている。
2020年01月17日
定本久生十蘭全集6<久生十蘭>
1946-1948年の作品を年順に掲載した全集の6冊目だ。探偵小説が制限されて小説の内容が規制されていた戦中が終わった戦後の昭和21年からで、漸く軍の検閲は無くなったが、 占領軍によるメディア検閲は続き、一気の自由とはならなかったと解説されている。戦中の作品は中断・中絶が多いが、その書き継ぎや書き直し連載や改稿出版などが行われ まだまだ移行時期にあたる様だ。初出・改稿・新稿が入れ混ざり編集も難しいだろうが、読む方もかなり戸惑う。
2020年01月17日
乱歩と東京<松山巌>
1984年の研究書であり、1994年に文庫化されて以降に幾度か復刊されている。江戸川乱歩が登場した1920年台から死んだ1960年台の東京の状況を多数の文献を使い研究して 読み解いて行く。地方の人間が集まり、書生・学生・高等遊民が生まれて存在した。アパートや洋風建築の状況や風俗等を調べ、乱歩の小説世界が如何に構築されて行った のかを読み解いて行く。
2020年01月17日
真夜中の探偵<有栖川有栖>
2011年の作品で、2014年に文庫化された。私立探偵が禁止されている架空のパラレル世界での事件と探偵を描く。通称「探偵ソラ」シリーズの第2作目だが、第3作目で中断している。 禁止されている探偵を目指す少女・空閑純が主人公で探偵名を「ソラ」と言う。背景設定が異なる世界での本格ミステリだ。
2020年01月17日
伽藍堂の殺人<周木律>
2014年の作品で、2017年に文庫化された。堂での事件を描くシリーズの5作目で、建築家が同じで建物自体にトリックがある。独立した作品ではあるが、本作は前の4作を読んでいる事が 望ましい様だ。そして次の第7作も似た傾向がある。独自の世界観とスト−リーが順番で読むことで理解しやすい。
2020年01月23日
共犯捜査<堂場瞬一>
2016年の作品だ。検証捜査から始まるシリーズの3作目でかなりボリュームのある文庫書き下ろしシリーズだ。本作の主人公は福岡県警の皆川刑事で、誘拐事件捜査に絡み 、それからの連続事件に振り回されながら捜査を行って行く。他のシリーズキャラクターは時々にゲスト的に登場している。
2020年01月23日
若さま侍捕物手帖7 花見流れ<城昌幸>
2019年に復刊された全集を目指すシリーズ刊行の7冊目だ。初出は1951年頃で、その後の刊行本を含めて底本としている。16短篇を収録しており、目明かしの遠州屋小吉が 船宿喜仙に居候する若さまを頼って、停滞している事件の解決を頼むという若さま侍シリーズの一番多い形の作品が並んでいる。だから発端は安楽椅子スタイルだ。
2020年01月23日
AIには殺せない 東京−出雲殺人ライン<深谷忠記>
2019年の作品だ。題名は意味が不明だ。黒江荘・美緒シリーズの1作だが、舞台の出雲の所轄の捜査と、東京の勝刑事らの捜査が中心となり、探偵役の黒江の活躍は 抑え気味だ。しかも警察小説並に捜査で見つける展開が中心だ、実証の難しい推理なのだ。
2020年01月23日
新・本格推理04<>
2004年の公募短篇を集めて編集したアンソロジーだ。枚数規定を100枚以下にしたシリーズだが、もてあましている作品が多い。公募短篇は50枚以下でも感想が強い。 15年後に読むと、その後にデビューした作者に注目が行くが、少なくとも読みやすい。
2020年01月23日
膠着<今野敏>
2006年の作品の文庫版だ。接着材メーカーのトラブルを主人公の社員の目から描いた。社内の噂や人脈を背景に、突然に極秘会議に招集されて開発に失敗した商品の対策を 考える事になった。主に社内のトラブルと勘違いと噂と陰謀?を、社外からの会社乗っ取りの動きの中で、ユーモア風に描いた。
2020年01月29日
宙<太田忠司>
2004年の作品であり、10年書いて来た新宿少年団シリーズの完結編となった。新宿に現れるマッドサイエンスが生んだ異様な現象だが、前作に続いて巨大植物のなかで いままでの登場人物の達すうが、それぞれの思いで動き、終末に向かった。幻想的ともSF的とも言える、あるいは因果的な展開となった。
2020年01月29日
潮首岬に郭公の鳴く<平石貴樹>
2019年の作品だ。この作者としては久し振りの作品だ。北海道の函館の太平洋よりの潮首岬付近にある岩倉家で起きた連続事件を地区警察の老刑事らが捜査する。 複雑な一家の人間関係と過去からの歴史が絡むのかどうか、俳句短冊が現場に残され見立て殺人を思わせた。現代に起きた横溝風の事件を、追うとやはり過去も関わってくる ようだった。多様なタイプの本格ミステリを書いている作者のまた一面だ。。
2020年01月29日
白バイガール<佐藤青南>
2016年の作品だ。交通機動隊巡査の二人の女性=通称白バイガールが主人公とサブ主人公だ。ミステリーではあるが、青春小説でもある。白バイ隊員ら個人の事情や過去が 背景で有り、主人公ではそれが課題・テーマとなる。コンプレックスと技術とノルマの克服というテーマが同時に進行して行く。
2020年01月29日
殺人は女の仕事<小泉喜美子>
1974-1982年に書かれた短編を1984年に短篇集になり、これに1作加えて2019に復刊された。元々が連作では無い、純粋の短篇集で再編集という意味は少ない。長さもテーマも 文体も全てバラバラであり、エッセイ風の作品もあるのが特徴だろう。
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2020/01に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。