推理小説読書日記(2019/11)
2019年11月06日
月と太陽の盤<宮内悠介>
2016年の作品集だ。副題が「碁盤師・吉井利仙の事件簿」であり、碁の棋士や碁盤師が中心となり、囲碁や碁盤に関わる事件を描く。人間関係や職人的な感性を描き、 そこに真贋問題が絡む。碁盤作りの内容を材料探しから手法や修理まで描き、碁盤は使うものと飾っておくものがあると説明される。
2019年11月06日
二重死肉<森村誠一>
2011年の作者の作家生活45年記念の再編集短篇集であり、1970年代の短篇が集められている。7短篇がとられているが、本格味が強い時期であり、社会派の面も当然にあり、 動物も扱われ、ホラー・怪奇色のものもあり、実に多彩な内容となっている。
2019年11月06日
盲剣楼奇譚<島田荘司>
2019年の作品だ。20年振りに吉敷竹史刑事が登場して、通子と大学生の娘・ゆき子の現在が紹介される。冒頭と末尾に吉敷が事件を捜査して解決するが、メインとなる 部分は金沢で起きた昔の事件とある剣豪とを描く時代小説だ。それが謎に繋がるのだが、独立しても読める内容になっている。
2019年11月06日
ダビデの星のもとに<山口光一>
1992年の作品だ。主な舞台はイスラエルだがエジプトやシリアやレバノンなど周辺の国や、欧州や西アジアやアフリカの多数の国も舞台になる。旧ナチス残党とイスラエルの その残党を探す組織の闘いを中心に、テロや抗争とその計画を描いた。誘拐された娘を探す日本人が主人公の一人として登場する。冒険・スパイ小説だ。
2019年11月12日
やっぱりミステリなふたり<太田忠司>
2019年の作品集だ。イラストレーター・京堂新太郎と愛知県警警部補・京堂景子夫妻が主人公の作品集の1冊だ。新太郎が景子から事件の内容を聞いて、解決する又はヒント を思い付く、後は景子が警察組織を使い解決するというスタイルが基本だ。短めの短篇が多く切れ味が持ち味だ。
2019年11月12日
血染めの旅籠<南條範夫>
1958-1968年に発表した作品を、2019年に再編集して編んだ短篇集だ。剣士・月影兵庫の登場とその旅と、江戸や旅先で起きる色々な事件を描き、謎を解き、剣術の腕を発揮して 解決する。剣豪小説の風味も強い。テレビドラマで有名であり、後ろ立てのいる人物が事件を解決するジャンルの1つでもある。
2019年11月12日
超・高層ホテル殺人事件<森村誠一>
1971年の作品で、度々復刊されている、2016年に掌編を加えて復刊された。初期の本格味が強い内容であり、合わせてホテルを中心にした社会性と、被害者と関係者らの複雑な 人間関係も描き、動機となり本筋にも絡む。高速道路や飛行機を利用したアリバイが登場するが、旅情ミステリの空路ものとは異なる。
2019年11月12日
襲撃<今野敏>
2000年の作品だ。古武道の達人の整体師・美崎が主人公で、周囲に不穏な人物が次々と現れる。その理由と正体が謎となり、武道と格闘技の展開が始まる。警察はもとより、 裏社会の黒幕や中国マフィアが動き、格闘技のイベントにも巻き込まれる。
2019年11月18日
新・本格推理01<>
2001年に公募された短篇を編者の二階堂黎人が選び編んだオリジナルアンソロジーだ。鮎川哲也が編者で行われてきたが、編者が代わり新・に変わった。それに伴い枚数制限が 400字詰が50枚から100枚に増えた。解説ではそれは有効だとしているが、かなり持て余している感じがあった。
2019年11月18日
仮面城<大下宇陀児>
1929年の作品が2019年に復刊された。少女向け雑誌に発表されたジュブナイルだ、主人公は伯爵令嬢であり、その令嬢が誘拐されてその召使いの爺やと令嬢と町で知り合った 少年が探す。誘拐した目的は何かが謎となり、3人の冒険が展開する。
2019年11月18日
若さま侍捕物手帖5 娘の行方<城昌幸>
1950年頃の短篇を再編集して2019年に復刊された。月1冊ペースで復刊されているがまだ前半だ。若さまに御用聞きの遠州屋小吉が解決出来ない事件を持ち込むスタイルの 作品が中心になる、安定なストーリーが多い。与力が絡むと旗本や大名が絡む事件が多くなり雰囲気が変わる。
2019年11月18日
青銅の悲劇<笠井潔>
2008年の作品だ。「バイバイ・エンジェル」から始まる矢吹駆が主人公のシリーズは、ページ数の多い大作が多い。本作は矢吹駆は登場せず、ワトソン役のナディア・モガール が登場する外伝に当たる作品であり、更に日本を舞台にしている。相当に長い作品であり、複数人による推理合戦風に根気よく描かれている。
2019年11月24日
時空旅行者の砂時計<方丈貴惠>
2019年の作品だ。鮎川哲也賞受賞作であり、時空旅行という架空の設定を含むSFミステリだ。設置やトリックには架空状態で成立する内容も含まれるが、全体としては本格ミステリ であり、その要素が散りばめられている。不可能・不可解な謎を全て架空設定に求めてしまいそうだが、それも誘いの狙いだろう。
2019年11月24日
風間光枝探偵日記<木々高太郎・海野十三・大下宇陀児>
1939-1947年の短篇連作を、2007年に再編集した作品集だ。日本のミステリでの女探偵を語り、職業探偵として合作の「風間光枝」を取りあげた。同時に似た設定で海野十三が 単独書き継いだ「科学捕物帳」と「蜂矢風子探偵簿」を合わせて、1冊とした。内容的にはミステリ味は強くはない。
2019年11月24日
魔性の群像<森村誠一>
2010年の短篇集だ。第1章から第十章までなるが、登場する魔性は色々と代わり、章題となる。「隣魔」「食魔」以下・・・「電話魔」「猫魔」・・「車魔」「音魔」。 題名だけでは判らないものも含まれるが、それぞれが日常的なストレスになり事件となって行く。
2019年11月24日
生け贄<鳥飼否宇>
2015年の作品だ。カメラマン・猫田夏海と観察者・鳶山久志が、宗教集団と宗教施設に存在する謎を追う。そこには過去に起きた、記憶の中と伝説的な不思議な謎があった。 そこで新たにまた不可解な事件が起きた。自然と生物観察者が、見つけた謎は、複雑に絡まった謎であり、この二人ならでもあった。
2019年11月24日
皆殺しの家<山田彩人>
2018年の作品だ。女刑事が死んだ父が残した殺人者を地下室に隠し、それを妹が見つける。その二人は秘密にする代わりに、刑事に謎を話せと求めた。奇妙な設定と2人が 刑事が語る話しを推理ゲーム風に解くといつかは真相らしきものに辿り付く。そして殺人者自身の謎もある。
2019年11月30日
北町奉行定廻り同心<笹沢佐保>
復刊作品集だが初出は不明だ。副題は蘭之介心形剣で、北町奉行定廻り同心・暁蘭之介を主人公にした捕物帳のシリーズだ。ただしこの主人公はスーパーマン的に設定となり、 剣術が非常に強い、しかも走るのが異様に早い。従って凶悪犯とその集団と浪人等の剣客を相手にした事件を斬って解決する、江戸から逃亡する犯人を走って追い付き斬り殺す。 剣豪小説と忍者小説の要素もある。
2019年11月30日
アウトバーン<深町秋生>
2013年の作品だ。組織犯罪犯罪対策課刑事の八神瑛子瑛子が主人公の第1話となっている。警察小説だが、組対刑事なので調べる事件と犯罪も、捜査手法も、登場する人物も 日常性からは外れる。しかも暴力捜査や違法性捜査が続々登場する。その主人公が警察組織を信じていない美人女性の設定だ。
2019年11月30日
朝顔金太捕物帳<横溝正史>
1944-1945年の雑誌掲載作品を、2019年に単行本で出した作品集だ。横溝の捕物帳は「人形佐七捕物帳」が有名で量的にも中心だ、その他の捕物帳も多くは初出雑誌から、 人形佐七シリーズに書き直されている。従ってその原形作品となってしまい復刊されていない。今回は原形作品が単行本化(復刊)されるが、その1冊目だ。 雑誌掲載時の挿絵も復刻掲載されており、それも楽しみだ。
2019年11月30日
光石介太郎探偵小説選<光石介太郎>
1931-1975年の作品を再編集して2013年に出版された作品集だ。探偵小説でデビューしたがその後に純文学に向かったという作者だ。探偵小説作家としては姿が消えた。 1975年に旧作の探偵小説雑誌への復刊と新作発表があり、それが最後となった。純文学としてのペンネームで発表された中から、ミステリ味のある作品も加えて再編集された。
2019年11月30日
時限捜査<堂場瞬一>
2017年の作品だ。「検証捜査」で全国から警察官が集められ、担当署以外の捜査を行った。そこに参加した人物が元に戻って登場するシリーズだ。今回は大阪府警梅田署が 駅に人質と立て籠もった犯人逮捕を、退任まじかの署長が中心のい対応する。同時に東京で起きた事件が関係するかsも知れなかった。
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2019/11に読んだ本の感想を随時書いてゆく。
本格推理小説が中心ですが、広いジャンルを対象とする。
当然、ネタばれは無しだがそれは理解度で変わる。